「よしっ。これで完成かな。」
「なんか、案外簡単でしたね。」
私たちは今、部室で異世界転送装置なるものを製作していた。
「それにしても、申し訳ないね、明夜。僕の我儘に付き合わせちゃって。」
「いえ、私だってこれが完成するのが見たかったので。それに、また、菫子に会えると思ったら楽しみで少し、ビックリさせてみたかったんです。」
「ああ、確か、明夜は宇佐見さんの幼馴染みだったっけ。彼女、異世界に行ったって物凄い話題になってたし。僕達もそんな神話を引き継げるように次のコンペ頑張らないと。」
オカルト論文コンペ。私達オカルト研究部はそれに出場するために論文と装置を製作していたのだ。本当に使えるのかどうかは分からないけど。
「完成記念に一回使ってみる?最終負荷実験も兼ねて。」
「へ?」
「大丈夫。すぐに帰ることもできるように設計してあるから。」
「本当ですか?」
「うん。今回たくさん貢献してくれたし、明夜、行ってみる気はある?」
「いっ…いいんですか?」
「勿論。君には日頃の感謝もあるし、行きたいならば、異世界をその目に焼き付けて欲しいなって。」
そういうわけで、私は装置の実験台となり、異世界に飛ばされることとなったのだった。
「大丈夫かい?狭くない?」
壁を隔てた向こう側から先輩の声が聞こえる。
「はいっ!流石に快適とまではいかなくても、窮屈ではありません!」
恐らく、今の私の顔はこれ以上もない程希望に満ちているだろう。外の世界に行ける日が来るだなんて。とてもワクワクする。
今、先輩がボタンを押した。目に映る景色が目まぐるしく移り行き、いつの間にか私は意識を失っていた。
(…桜?)
目を開くと、一面は薄いピンクに染まっていた。その奥には、雲一つない青空。今までは学校の部室で先輩と一緒に居たはずで、しかも夜遅くだったのに…。
私の付近には誰もいない。
幻想的で美しく、そしてどこか寂しさを感じる風景。
かつて見たこともないほどの素晴らしい景色だった。
(成功…したんだ…!私、今異世界にいる…!!)
早くこの事を先輩に伝えたくて、私は学生鞄から青みがかった薄紫色のカバーをつけたi〇honeを取り出して、先輩への連絡を試みた…が、
(ぅわ…圏外…)
ある意味、予想通りの展開だった。
携帯が通じない以上、私には何もできることがないので、この辺りを散策することにした。
そして、歩いているうちに朱色の鳥居を見つけた。多分神社なのだろう。鳥居に書かれていた文字はかなり掠れていて読みづらかったが、辛うじてこの神社が"博麗神社"という名称らしいということは分かった。
廃墟のような雰囲気が漂っていて少し怖かったが勇気を振り絞って鳥居に足を踏み入れてみる。
意外にも、中は綺麗に掃き浄められていて余り桜の花弁は落ちていなかった。
もう少し奥へ行くと、賽銭箱があり、社務所もあるようだった。
そして、好奇心に従って神社内を歩き回っていると、不意に少女の声が背後に投げ掛けられた。
「貴女、ここで何をしているの?」
はっとして振り向くと、そこには長い黒髪を赤い巨大なリボンで飾った、赤い不思議な形をしたワンピースを着た少女が巫女さんがよく持っている白い紙がたくさんぶら下がった木の棒を片手に持ってこちらを睨み付けていた。
「あの…私、ですか?」
「貴女以外に誰がいるというの?」
「…ですよね…」
「まさか貴女、ここのお賽銭を盗もうって思った訳じゃないわよね?どこかの誰かさんみたいに。」
「そんなこそ泥をする程お金に困ってはいません。というよりも、貴女は一体誰なんですか?」
私が尋ねると、少女は少し得意気になって言った。
「私は博麗霊夢。ここの巫女で、妖怪退治を生業としているわ。」
いかがでしたか?投稿は不定期になるかもしれません…
感想、ご指摘受け付けておりますので、よろしくお願いしますm(__)m