妖精の尻尾 前
「久しく帰って来たが‥‥何だこりゃ?」
ギルドのあちらこちらに鉄の棒が突き刺されていた、俺は鉄に触れてみる。
「ほぉ~滅竜魔導士か、つぅことは幽鬼の支配者に居るって噂の鉄竜のガジルか」
魔力で解る、同じ竜の力が‥‥
(ってももう滅竜魔導士って名乗れないよな)
笑いながら一本引き抜き齧る。
柔いがまぁ味は美味い。
(マカロフの事だ、この位じゃ戦争はしないだろう)
鉄を齧りながらそう考える。
こんな事で戦争してたらお互い唯じゃ済まない、それにギルド間抗争禁止条約がある。
迂闊に攻撃できない。
「まぁ‥‥何か有ったら助けてやるか」
近くのホテルに泊まり、長旅の疲れと傷を癒す。
ルーシィSIDE
一人で居るのが危ないからチームの皆が遊びに来た。
だけで、皆自由過ぎ。
「…で、例のファントムって何で急に襲ってきたのかな?」
気に成り問う。
「さぁな…今まで小競り合いはよくあったが、こんな直接的な攻撃は初めてだ」
「…じっちゃんもビビってないでガツンッとやっちまえばいーだ」
「ナツ起きてたの…」
さっきまで寝ていたナツがいきなり会話に混ざって来てビックリした。
何か、苛々してる。
「じーさんはビビってるわけじゃねぇだろ。あれでも一応、聖十大魔導の1人だぞ」
「って何自然に読んでるわけー!?」
グレイの手から私が書いて居る小説の原稿を奪い取る。
「コラー続きが気になるだろうがよー」
手を出して返すよう促すグレイ。
「だぁめ! 読者第一号はレビィちゃんに決まってるんだから!」
「ん」
「その手は何なのよ!」
私は必死に説明するが聞いて居ないようで「寄越せ」とエルザまでも手を出す。
「ダメだって言ってるでしょー!!」
取り敢えず、小説は置いておいて、気に成る事が有ったので聞く。
「───ところで、聖十大魔導って?」
「魔法評議会議長が定めた大陸で最も優れた魔導士十人につけられた称号だ」
「へぇー凄ーい」
「ファントムのマスター・ジョゼもその一人なんだよー」
「そして、あの男もな…」
エルザが険しい顔で呟く。
「後は‥‥アレスだったら持ってそうだよね!」
ハッピーが言う。
‥‥アレス?
「誰それ?」
グレイに聞く。
「二年前まで妖精の尻尾に居た最強の魔導士だよ、今じゃ居ねぇけど」
「アレスは生きてる! 勝手に殺すんじゃねぇ!」
身を乗り出し、ナツがそう叫ぶ。
「止せ。今はファントムだ」
「ビビってんだよ! ファントムの奴等、数だけは多いからよぉ!」
バンッと机をナツが叩く。
「だから違ぇーだろ。マスターもミラちゃんも二つのギルドが争えばどうなるかわかってっから、闘いを避けてんだ、魔法界全体の秩序のために、な」
「そんなに凄いんだ…ファントムって…」
私の言葉に「あんな奴等大したことねぇよ」とナツが返す。
「いや‥‥実際争えば潰し合いは必至。戦力は均衡している、ファントムにはマスター・マカロフと互角の実力を持つと言われている聖十大魔導のマスター・ジョゼ、フェアリーテイルで言うS級魔導士であるエレメント4、それを束ねる頂点のオールと言う男、そして一番厄介なのは今回のギルド急襲の犯人と思われる、鉄の滅竜魔導士、鉄竜のガジル」
「滅竜魔導士!? ナツの他にもいたんだー!」
「そんな奴、アレスに比べたら雑魚だよ雑魚」
「だから、アレスって誰よ~!」
結局、アレスが誰なのかは教えてくれなかった。
夜
外を見ながら煙草を吸う。
何だか胸騒ぎがして眠れない。
暫く外を眺めていると大きな音が聞こえて来た。
「っ! 誰か遣られたのか!」
窓から飛び降り、その場所に向かう。
すると、ガジルがドロイとジェット、レビィを襲って居た。
「ギヒィ!」
ドロイに鉄の拳をぶつけ、ジェットを蹴り飛ばす。
「ドロイ、ジェット!」
「んだよ、張合いがねぇ野郎だぜ」
残ったレビィを見て、嗤い、拳を振り上げる。
「オメェもボコボコにしてやるぜ」
そう嗤い、振り下ろす‥‥だが、その拳はレビィの一歩手前で止まる。
(な、何だこの魔力!?)
体を重い鎖か何かで縛られたかの様に動かない。
『女を殴るのは良くねぇな?』
後ろから声が聞こえた。
だが振り向く事が出来ない、振り向けば‥‥死んでしまう。
全身がそう言って居る、そう錯覚してしまう程の殺意と魔力が背に当てられているのだ。
「ダアァァッッ!!」
恐怖を押し殺す様に声を張り上げ、振り向き、拳を放つ。
だが、何も無い地面を殴っただけだった。
『俺はこっちだぜ、鉄竜さん?』
耳元でそう声が聞こえた。
「ッ!?」
手を剣に変え、振る。
だが空を斬るだけだ。
「チッ! 何処に居やがる!」
『俺は此処だ』
屋根の上を見る。
すると漆黒の狼が三人を背に乗せていた。
『幽鬼の支配者(ファントムロード)のガジルで有ってるだろ?』
「テメェは誰だ!」
『名乗る程の者じゃないが‥‥知りたきゃお宅のマスターに『紅き魔神』って聞いてみな?』
そう言い残し、何処かへと消えてしまった。
その途端、体から力が抜け、地に膝を突いた。
(何なんだ、あの魔力!)
しかし、気掛かりが正体をうちのマスターが知って居ると言う事だ。
「‥‥帰って報告しとくか」
その場から急いで去る。
一秒でも早くその場を立ち去りたかったからである。
病院 ルーシィSIDE
病院の人から連絡があり、皆で来て見るとドロイとジェットがベットで寝ていた。
「ドロイ! ジェット!」
「容体は安定して居ます、幸いにも傷は殆ど癒えて居りました」
看護師の言葉に安堵を吐く。
「ルーちゃん」
包帯を巻いたレビィちゃんが松葉つえを突いて歩いて来た。
「誰に遣られたのじゃ!」
マスターが問う。
「幽鬼の支配者です」
レビィちゃんの言葉にマスターが宣言した。
「戦争じゃ! 幽鬼の支配者を潰すぞぉ!」
「「「「「おぉ―――!!!」」」」」
「よぉ~し! 私も「ルーシィは留守番を頼む」えぇ~!? 何でですか!?」
エルザの言葉に少し不満を覚える。
「誰がレビィ達を見るんだよ」
「安心しろ、ファントムなんかギタギタにしてやるからよ!」
グレイとナツの言葉で結局諦めた。
皆が言った後、私は病院を出てギルドに行こうとした。
すると三メートルは超える狼が外に居た。
「で、デカッ!?」
『お前、見ない顔だな? 新入りか?』
突然話し掛けて来た‥‥と、言うか。
「喋った!?」
『あぁ‥‥これ魔法、姿を狼に変える』
狼がそう言うと突然光だし、人の姿に戻った。
「お前、妖精の尻尾だろ? 俺はアレス宜しく」
フードで顔は見えないけど優しい声だった。
「こ、此方こそ!(あれ? アレスって確か)」
「あぁ‥‥できれば俺の名前は誰にも言わないでくれ」
そう頼まれた。
何でだろうと思い、問う。
「何でですか?」
「理由は聞かないでくれ‥‥特に、ミラの前で俺の名前は言わない方が良い、彼奴が俺を許してくれるなんて思って無いから無い」
何処か悲しそうに呟き、狼の姿に戻る。
『俺は幽鬼の支配者の支部を潰してくる、気を付けろ、彼奴等の狙いが解らない以上、迂闊に一人で出歩かない方が良い』
そう言い残し、走り去った。