ファントムロード本部 ???SIDE
ガジッボギッガリゴリ‥‥
辺りに鉄を食う音だけが響く。
俺の額には冷や汗が流れ、止まない。
「おいおい、如何したんだよガジルゥ~? そんなに震えてよぉ~?」
俺の目の前に巨体の男が座る。
その男はギルド内で最強を誇る魔力と実力の持ち主だ。
「オールか‥‥何でもねぇ」
そう言って鉄を取ろうとするが手が震える。
先程味わった恐怖が抜けない。
「ガジル、如何したんだ? 殺した奴の霊でも見たのかぁ~?」
「‥‥オール、『紅き魔神』って知ってるか?」
「? 何だそりゃ? 聞いた事ねぇな、何処かのギルドかぁ?」
『ガジルさんにオールさん、如何したのですか?』
マスターが来た。
丁度良い、聞いてみるか。
「マスター‥‥聞きたい事が有るんだ」
『はて? なんでしょうか?』
「紅き魔神って言葉に聞き覚えねぇか?」
マスターは目を見開いて驚いていた。
しかし、直ぐに何時もの表情に戻る。
『その名がどうかしたのですか?』
俺は身に起きた事を伝える。
『ふふっ‥‥ガジルさん、それはきっと聞き間違いですよ、もしそれが本物だとしたら尚更ね』
「‥‥一体何なんだ? その『紅き魔神』ってのは?」
「マスター、俺も聞きたいねぇ~興味がある」
マスターは思い出に浸りながら語る。
『紅き魔神とはコンビ名です、妖精の尻尾の魔導士ミラジェーンとある男が組んで名乗った名前、そのコンビは数多くの伝説を残し、大陸全体にその名と恐怖を轟かせた‥‥何時しかその名を知らぬ者は居ないと言われる程にね‥‥ですが‥‥二年前にミラジェーンの妹が死んでからその名はピタリと止みました』
「‥‥つまり彼奴はミラジェーン?」
『いえ、きっと貴方が見たと言うのはもう一人の方でしょう‥‥妖精の尻尾最強にして最小で聖十大魔道に選ばれた天才、いや鬼才と言うべき男』
「ソイツの名は?」
『アレス・エーアスト、全知全能の魔導士の異名を持ち、あらゆる魔法を操り、妖精のように舞戦う最強の魔導士です‥‥まぁそれも過去のものですがね』
「何故だ?」
『アレス・エーアストは百年クエストに挑み、化け物と同士討ちしました、お墓も遺品も有りましたし、二年間、誰もその姿を見た者がいないのです、居るとしたらもう幽霊でしょうね』
「なんだ、折角戦えると思ったんだがな~残念だぜ」
『オールさん、貴方には今回の戦争は面白くないでしょう、貴方はうちのトップ、いや時期マスター候補なのですからね』
「へっ! さっさと戦争終わらせて美味いもん食おうぜマスター!」
『そうですね、その前に仕事をして貰いましょう、ジュビアさん、ソルさん、お願い致しますよ?』
奥から傘を差した女と片眼鏡を付けた男が現れ、頷き、外へと出て行った。
「それじゃあ俺も暇潰しに付いて行きますかねぇ~」
オールも二人の後を追って出て行った。
俺は一人、胸騒ぎを覚えた。
(本当に勘違いなのか?‥‥だが‥‥あの殺意は本物だった)
そして戦争は始まった。
マグノリア ミラSIDE
今、ルーシィと共に買い物をしている。
と言っても買い物と言うより、暇を潰しをしているって所かしら。
「あぁ~私も行きたかったぁ~!」
「ルーシィって結構戦闘狂だったりするの?」
私が問うと物凄い速度で首を横に振る。
「まさか! ナツじゃあ無いんですから!」
「じゃあ、ナツの性格が移ったのね」
そんな話をしながら歩いていると雨が降り出した。
「しんしんと」
後ろから声が聞こえ、振り向くと傘を差した女が立って居た。
「誰!?」
「しんしんと‥‥ジュビアは雨女、貴方達は何女?」
「え? はい?」
「貴方誰?」
問い掛けるが答えは帰って来なかった。
「しんしんと‥‥楽しかったわ、ご機嫌よう」
「だから、あんた誰よ!?」
『ノンノンノン・ノンノンノン・ノンノンノンノンノンノンノン』
地面から何かを言いながら何かが出て来た。
「三三七のノンでボンジュール!」
「今度は何!?」
「ジュビア様、駄目ですなぁ~仕事放棄は~」
「ムッシュソル」
「私の眼鏡が囁いておりますぞ、そのマドマーゼルこそが愛しいシブルだと」
「シブル‥‥標的!?」
この人達、もしかして!
「ルーシィ! 逃げ「ギヒャヒャッ! テメェは引っ込んでな」きゃっ!?」
巨漢な男が現れ、剛腕を振るい、私を壁に叩き付ける。
「おやぁ? オール様、いらしてたのですか?」
「おぅ、どんな女か見たくてな、しっかし、まさかミラジェーンまで居るなんてな‥‥まぁこんな雑魚に興味ねぇけど」
「ルー‥‥シィ‥‥」
私は気を失った。
幽鬼の支配者 支部
大きな扉をノック代わりに蹴り破る。
一番近くに居た男を地面に叩き付け、中指立てて言う。
「時間がねぇんだ、纏めて来な、一分で潰しれやるから」
飛びっ切りの笑顔でそう言い、支部を破壊した。
数だけ多いんだよな、面倒だけど、本部と合流されれば流石にマカロフが居ても難しいだろう。
「まぁ‥‥命までは取らんよ、取っても価値なんてない」
笑って次の支部を潰しに行く。
気付けばあっと言う間に残り一つに成った。
「あぁ~面白くないよ、まぁ戦争なんてそんなもんだけど」
頭を掻きながら最後の支部に行く。
すると覆面の男が支部から出て来た。
「ミストガンか」
「‥‥アレスか?」
魔力を抑えているのに正体がばれた。
溜息を吐き、フードを取る。
「久し振りだな‥‥と言ってもお前とはあんまり話してないな」
「‥‥‥生きていたんだな」
「当たり前だ‥‥まぁ死に掛けたけど」
苦笑いを浮かべながら方向を変え、歩み出す。
「‥‥何処に行く?」
「支部は全部潰した、後は戦争が終わるまで何処かで暇でも潰す、俺はあそこに戻れないし」
「‥‥‥知って居ていない様だから教える、マスターが倒れた」
足を止め、ミストガンの方を見る。
ミストガンは言葉は続ける。
「不意打ちで遣られた、それに‥‥ミラが誰かに襲われたらしい」
「!‥‥誰に遣られた」
「解らない、ただ、幽鬼の支配者だと言う事は解って居る」
「そうか‥‥ちょいと寄り道して戻る、先にマカロフを頼む」
瞬間移動を使い、ある場所へ行く。
その場所は評議院。
評議院 ジークレインSIDE
「た、大変です!」
部下の一人が慌てて入って来た。
「如何したんだ?」
「あ、アレス・エーアスト様が帰って来ました!」
百年クエストを受け、二年前から姿を消した男。
その男が帰って来たのか、しかし何の様だ?
審議場に集まると男は居た。
「突然の呼び出し済まない、要件を言ったら帰るから楽に良いぞ?」
『それで‥‥要件とは?』
男は笑みを浮かべ、とんでもない事を言う。
「俺達、妖精の尻尾は幽鬼の支配者から攻撃を受け、戦争を仕掛けた、俺はその戦争に先程参加し、手始めとして支部を全部潰した、これから本部を壊滅させに行く、それを言いに来ただけだ」
「なっ! お前達はギルド間抗争禁止を知らない訳ではぐっ!?」
一人の議員の首が何かに掴まれたかの様に締め付けられる。
「知ってるさ、知ってるから態々時間がねぇ中でオメェ等に宣戦布告を言いに来たんだよ、あぁあれか? 殺すなって意味か? こっちは仲間遣られてんだ、一人二人は殺るかもな」
笑顔でそう言い、男は解放された。
「あぁそうだ、もし仲間に手を出して見ろ、この街ごとオメェ等を消す」
全員がその言葉に身を震わせた。
その男から放たれる魔力、そして殺意が全て本当だと語って居る。
「罰を与えるなら俺だけで良い、戦争が終われば煮るなり焼くなり好きにしな」
そう言って消えた。
皆が騒ぐ中、一人微笑む。
(生贄を彼奴にした方が良さそうだな)
計画の完成が彼奴の生贄により確実に成ると確信した。
妖精の尻尾 裏 エルザSIDE
幽鬼の支配者の本部が攻めて来た。
まさかこんな攻め方をしてくるとは予想だにしなかった。
そして建物から巨大な大砲を出してきた。
魔導集束砲ジュピター。
当たればギルドは愚か、皆が消し飛ぶ。
「全員伏せろぉぉ!!」
私は金剛の鎧に換装する。
これは最大の防御力を誇る鎧だ。
しかし、幾らこの鎧でもジュピターを防げるかどうか。
(だが、命に代えてもギルドは守る!)
盾を構え、衝撃に備える。
「相変わらずの馬鹿さだな」
後ろから声が聞こえた。
振り返ると黒いローブを付けた男が居た、顔はフードによって見えない。
「誰だか知らないが下がれ!」
「そう言う所が馬鹿だってんだ、何で二年も経って成長しねぇんだよ」
「二年?」
男の言葉に何かが引っ掛かった。
私を押し退け前に立ち、話す。
「良いか、アレを消すには三つの方法がある、一つ、お前が遣ろうとした捨て身の防御、二つ、同威力をぶつけて相殺‥‥」
男が話している最中にジュピターが発射された。
「っ! おい! 其処を退けろ!」
叫ぶが男は退かず、片腕を此方に迫るジュピターに向ける。
爆風が起こり、吹き飛ばされる。
『ふはははっ! やったぞ! マカロフもエルザもこれで戦闘不能だ! それにその他のS級魔導士は全て不在! 貴様らに勝ち目は無い!』
ジョゼの笑い声が響く。
しかし、その笑い声は爆風で巻き上がった砂煙が晴れた瞬間止まった。
男が無傷で‥‥しかもジュピターを片手で受け止めていたからである。
「三つ、受け止めて‥‥」
魔力の塊は段々と縮み‥‥男の手の中で握り潰された。
「握る潰すかだ」
「「「「「「えぇぇぇぇっっっ!!!???」」」」」」
全員が驚き、声を挙げた。
ジュピターを受け止め、しかも握り潰す、この男何者なんだ!?
「まだお前では無理か‥‥マカロフかオッサンなら出来そうだけど‥‥」
「! お前まさか!」
こんな事出来る人物、マスターを呼び捨てで呼ぶ唯一の人物。
二年前、誰もが死んだと思って居た愛しい男。
「アレス!」
私は男に飛び付く。
だが、ひらりと躱された。
「今は戦争中だ」
「あ、済まない、嬉しさの余り‥‥つい」
アレスはため息を吐いて、幽鬼の支配者の本部を見る。
「おい幽鬼の支配者、俺の愛したギルドを、愛した家族を、愛した者を‥‥よくも傷付けてくれたな」
辺りが凍る様な寒気を誰もが感じた。
アレスの視線は、冷たく、凍て付く吹雪に似ていた。
「其処で待ってろ、生きてる事すら後悔させてやる」