「貴様ぁ‥‥天変地異を望むのかぁ!」
ジョゼの言葉に俺は笑みを見せ、言う。
「天変地異を望む? 笑わせるな、テメェにそんだけの力なんざねぇよ」
ジョゼを殴り飛ばし、笑う。
「ぐふっ! 今更貴方が闘っても遅い。ギルドはすでに破壊されています」
ジョゼは壊れて行くギルドの光景を俺に見せる。
「ギルドが壊れようとも‥‥無意味だ、ギルドとは人と人との輪で出来る」
指先で輪を描く。
マカロフから教えて貰った事を胸に叫ぶ。
「全ての家族に告げよう‥‥よくやった! 妖精の尻尾である事を誇れ」
「くくくく、誇ったところでなんになります? もはや貴方さえ倒せばフェアリーテイルは終わる」
「何処までも愚かな奴だ、自分の力量も解らずに敵と対峙する、それは死を意味する‥‥だが」
ジョゼを指差し、言う。
「お前には死は要らない、死より恐ろしい罰を与える‥‥恐怖しろ、そして絶望しろ、俺の愛した家族を傷付けてた事を」
次第に声は怒声へと変わる。
「俺の愛する友を傷付けた事を‥‥そして‥‥愛する者を傷付けた事を‼‼‼」
怒りを‥‥そのまま力に変える。
「調子に乗るな餓鬼がぁぁぁッッ‼‼」
闇の波動が俺を襲うが放った魔法は当たる事なく霧と成って消えた。
「!? デットウェーブ!」
再度撃つが消える、だが消える。
「くそっ! 如何成って居る!?」
『お前は理解出来て居ないんだ、お前と俺の力の差を‥‥』
「そんな馬鹿な! 貴様の様な小僧に私が‼」
『それが現実だ』
纏う魔力が底が見えない闇の様に漆黒に変わる。
「有り得ん! 貴様の様な餓鬼にぃぃぃ!」
『お前は俺の足元にも及ばない』
この時、エルザ達は酷く怯えていた。
戦う俺の姿が‥‥先程まで不気味に見えたジョゼが可愛く見える程‥‥
俺は‥‥‥
恐ろしく見えたと言う。
俺はこの二年間で神と同等の力を手に入れた。
それを扱える俺は‥‥人では無いのだ。
化け物‥‥と言われても俺は構わない。
家族から嫌われても構わない。
仲間から嫌われても構わない。
愛する者から嫌われようとも構わない。
ただ‥‥俺が愛した全てを護りたいからこそ‥‥俺は神に力の全てを渡し、この力を手に入れた。
ジョゼの顔を掴む。
「覚悟は良いな?」
ギロリと紅い瞳がジョゼを捕える。
「ふ、フグゥゥゥッッ‼‼‼」
必死に魔法を放つ。
だが、それは当たる事なく消える。
「殺しはしない、そう言った、死より恐ろしい罰を与える」
手から黒光が漏れる。
「神ノ審判」
空を巨大な魔方陣が覆い、幽兵達が荒れ狂い、自ら消滅して行った。
「何だいこれ!?」
外に居たカナは起こって居る出来事が理解出来ずに居た。
俺の近くに居たエルザはこう呟いた。
「妖精の法律に似ている」
禍々しい光だが‥‥何処か妖艶に見える。
光が止んだ時‥‥ジョゼは真っ白な老人に成って居た。
「ジョゼ・ポーラ」
俺はジョゼを睨む。
「俺を見ろ、俺が誰か解るな? 忘れるな、俺の名を‥‥そして二度と近付くな、死にたいのなら来い、今度は跡形もなく消して遣る」
ジョゼは恐怖で顔を歪め、気を失った。
「お前の力は優秀だ、使い方さえ間違えなければ良き魔導士に成って居ただろう」
聖十大魔道の証を取り、言う。
「人は化け物でも神でも殺せる、それだけの力が有るんだ、だが、一人で出来る者ものはない」
踵を返し、言葉を続ける。
「お前の敗因は‥‥家族を、友を、仲間を信じる心だ、それを知らぬお前は‥‥俺達に勝つ事はまず無い」
そう言い、エルザ達の元に歩み寄り、治癒を掛ける。
「アレス、済まない」
エルザは申し訳なさそうに謝る。
「何言ってんだ、誰もお前の謝罪を求めてない」
溜息を吐きながら治癒を掛け続ける。
そんな俺を背後からエレメント4のアリアが襲い掛かる。
「!? アレス‼」
エルザは叫ぶがアレスは振り向かない。
(悲しいなぁ~今なら殺れる、貰った‼)
飛びかかってくる直前に誰かの拳がアリアを吹き飛ばした。
「マカロフ、少し遅いぞ」
治療をしながら横目で妖精の尻尾マスターであるマカロフを見る。
「済まぬのぉ‥‥もう歳じゃからな」
「良く言う舌だな、久し振りに見たが大分老けたな?」
「お主は大きくなったのぅ‥‥さて、戦争は終わったんじゃこれ以上続けるならそれは掃滅、跡形もなく消すぞ」
「これだけ派手にやらかしたんだ。お互いタダじゃすまんだろう……ジョゼを連れてとっとと帰れ」
俺は空間転移の魔法を使い、ギルドにおいて来た剣を転移させ、それを引き抜く。
空から光の粒子が降り注ぎ、傷付いた者達を癒して行く。
皆が勝利に喜ぶ中、俺はこっそりと皆の眼を盗んで抜け出す。
「アレス‼」
後ろから呼び止められる。
振り向くと‥‥銀色の髪の美女が立って居た。
直ぐに解った、ミラだ。
「‥‥アレス? 誰だそれ?」
俺はわざと首を傾げる。
「アレスなんでしょ! 何で惚けるの!」
「そんな奴知らねぇよ、つか、お前誰だ?」
にやけながらそう問う。
パチ―――ンッ‼
乾いた音が響き、頬に鋭い痛みが走る。
直ぐに理解した、ミラが俺に平手打ちをしたのだと。
「ッ!」
今度は押し倒し、マウントを取って殴る。
俺は何もせず、拳を受け続けた。
「‥‥ッ、何で!」
殴りながら叫ぶ。
「何で置いて行ったの! 答えて!」
殴るのを止め、胸倉を掴み、睨む。
「手紙」
ボソッと呟く。
「え?」
「手紙、呼んだだろ? 書いてある通りだ、お前を思って置いて行った」
ミラは顔を伏せ、身を震わす。
「‥‥けないじゃない」
「何言ってんぐっ!?」
言葉が出なかった、いや、言葉を発する為に開く口がミラの唇に防がれていたのだ。
俺は動けず、困惑しながらもミラが解放してくれるのをただ待った。
静寂の中で自分の心臓の音がやけに馬鹿でかく聞こえた。
数秒後にミラはそっと唇を放し、話す。
「忘れる事なんて出来る訳ないじゃない」
ミラは涙を流しながら俺を見る。
「貴方が居なくなって‥‥寂しかった、リサーナも居なくなって‥‥でも、きっと帰って来るって思って二年間‥‥待ってたんだよ」
ただミラを見る事しか出来なかった。
いや、眼を離す事が出来なかった。
「アレス‥‥行かないで‥‥傍に居て、私を一人にしないでょ」
強く抱き締められる。
俺は‥‥‥何も言えずに居た。
何て言えばいい、如何すれば良い?
解らない、ただ‥‥胸が張り裂けそうなほど苦しい。
(俺は妖精の尻尾に居て良いのか?)
(俺は家族を救えるのか?)
(俺は強いのか?)
俺は‥‥弱い。
この二年で救えた命、壊した物、数え切れない程、救い壊した。
悪だろうが善だろうが‥‥救いを求められ、壊して欲しいと願われたものを全て壊した。
それが正義だろうが‥‥悪だろうがだ。
最低で最悪の男だ、自分でも解る、良い様に使われていると‥‥知って居ながら壊した。
そんな俺が‥‥この場所に居れるだろうか?
「傍に‥‥か」
ミラをそっと抱き締め、頭を撫でる。
「お前は‥‥俺を恨んで居るか?」
首を横に振る。
「お前は‥‥弱い俺を許してくれるか?」
「アレスは弱くないよ」
「俺は‥‥此処に居ても良いか?」
「アレスは‥‥家族よ、家族が家に居ちゃ駄目なの?」
逆に問われた。
俺は笑みを浮かべる。
そうだった、俺は此処の家族の一員だったんだ。
「そうだよな」
俺は人じゃなくても此奴等フェアリーティルは俺を家族と見てくれる。
馬鹿ばっかだが‥‥面白いギルド、俺の愛する家族達。
「ただいま、そしてごめんな、二年間、お前を一人にして」
ミラは笑顔で答える。
「お帰り、アレス」
この時のミラの笑顔は‥‥どんな宝石よりも美しく輝いて見えた。