SIDE エルザ
「ジェラール、お前にこの私が殺せるか!」
私はナツを庇う為に前に出る。
「ゼレフ復活に必要な肉体なんだろ?」
「あぁ‥‥おおよその条件は聖十大魔道にも匹敵する魔導士の肉体が必要だ。しかし、今と成っては別にお前でなくてもよい、お前より優れた魔導士がこの塔に居るのだからな」
ニヤリと笑い、その魔導士の名を口にする。
「アレス‥‥この男こそゼレフ復活に相応しい肉体だ」
「! 馬鹿な! アレスがこの塔に居る筈が無い!」
「いいや居るさ、俺が態々此処に来るよう仕向けた、それに彼奴ならばお前の魔力を察知するなど造作もないだろ、お前を救いに此処までくる、其処で倒し、この塔の生贄に成って貰う、だから用済みなお前と其処のドラゴン、二人揃って砕け散れ!」
「どけエルザ!」
「お前は何も心配するな。私は守ってやる」
「やめろぉ――――!」
「天体魔法、暗黒の楽園(アルテアリス)‼‼」
黒い球体が私達を襲う。
「エルザっ!」
すると、私の目の前に誰かが立った。
「!? シモン!?」
「エルザは俺が守る‼」
シモンが両手を広げ、受け止めようとするとそれを押し飛ばし、誰かがアルテアリスを受け止めた。
凄まじい爆風が辺りを襲い、煙が舞い上がる。
「シモン! 大丈夫か!?」
「あ、あぁ‥‥一体誰が?」
煙が少しずつ晴れる。
すると辺り一面に血が飛び散り、血を紅く染めている。
煙は段々と晴れ、誰かが見えた、其処に立って居たのは‥‥
「「アレス!」」
血だらけのアレスだった。
明らかに血を流し過ぎている、本来なら倒れていても可笑しくない。
「二人共、無事か?」
アレスは此方を見らず、そう問う。
その声が落ち着いて居た。
「あ、あぁ無事だ」
「そうか‥‥なら良かった」
アレスは微笑み、ゆっくりと私の頭を撫でる。
「今まで辛かったな‥‥俺が助ける、だから安心しろ」
アレスの言葉に私は驚いた。
もしかして‥‥知って居るのかと。
「アレス、何故此処に居る」
私はそう問う。
するとアレスは大きく息を吸い、大声で言う。
『お前等を救いに来た!』
その一言が塔全体に木霊する。
『エルザ・スカーレット! ジェラール・フェルナンデス! お前等を助けに俺は今此処に居る!』
力強く叫ぶ様に言う。
『エルザを救うにはジェラール! お前の闇を払う! それはお前を助けると同じだ!』
「俺を助ける? ハッ! 笑わせるな! 誰も貴様等の助けを求めていない!」
『お前はゼレフの亡霊に憑りつかれた哀れな男だ、全てを見た俺だから解る、お前は助けを求めていると!』
「ハハハッ! 憑りつかれただと? 違うな! 俺はゼレフに選ばれた! だからこそ俺はお前を倒し、ゼレフを復活させる!」
ジェラールはそう言い、アレスに飛び掛かる。
だが、アレスは瞬時に攻撃を避け、ジェラールを掴む。
『ゼレフはお前を苦しめているだけだ‥‥お前の闇、俺が背負う』
アレスはそう言うと巨大な闇が二人を包み込んだ。
不気味で悍ましく、何処までも続く様な‥‥闇に似ていた。
SIDEend
SIDEアレス
「ッ!? 此処は何処だ!」
ジェラールは暗いこの空間を見渡し叫ぶ。
「此処はお前の心の中だ」
俺はゆっくりとジェラールに近付く。
「何だと?」
「お前の心は蝕まれている」
ジェラールの後ろを指差す。
其処には鎖に縛られたもう一人のジェラールが居た。
『嫌だ‥‥もう‥‥』
涙を流しながら弱々しく呟く。
『助けて』
「これが‥‥俺の心だと?」
ジェラールは暫し自分を見詰め、笑い出す。
「ハハハッ! これが俺の心? ふざけるな! 俺は助けを求めていない! これはお前の作り出した幻覚だ!」
ジェラールは魔法を使う
「流星ミーティア」
天体魔法の一つで流星のように速く移動する魔法だ。
「‥‥喰らえ」
俺の言葉に応える様に腕から闇の手が伸び、ジェラールを魔法を食らう。
「なっ!?」
魔法が消え、驚くジェラールを俺は蹴飛ばす。
「ガハッ!?」
地面を撥ね、ジェラールは地面に倒れる。
だが、直ぐに立ち上がる。
「俺は‥‥負けられない! 俺が‥‥創るんだ! 自由の国を‼‼」
七星剣グランシャリオを放つ。
「痛みと恐怖の中で、ゼレフは俺に囁いた!真の自由が欲しいかと! そうさ‥‥ゼレフは俺にしか感じる事が出来ない!俺は選ばれし者だ!俺がゼレフと共に、真の自由国家を創るのだ!」
弾きながら問う。
「人の自由を奪って創るモノなのか?」
「世界を変えようとする意志だけが、歴史を変える事が出来る! 貴様には、何故それが分からんのだァァ――――――‼」
ジェラールが魔法陣を描く。
禁忌魔法、煉獄砕波アビスブレイクだ。
「吹き飛べぇぇぇぇぇッッ‼‼」
俺はアビスブレイクを片手で弾いた。
「なっ!?」
「お前は自分が相手しているのが誰か知って居るか?」
俺は自分の過去を話す。
「俺の父親は‥‥の子孫だ、俺はその血を引く者だ」
ジェラールは眼を見開き驚く。
「ば、馬鹿な! お前の様な奴が‥‥有り得ない!」
「‥‥もう一度言う、俺は‥‥」
「貴様の様な奴がぁぁぁぁ!」
ジェラールは怒声を上げながら殴り掛かって来るが俺はあっさりと受け止めた。
「俺は造られた、お前は人として生きている、俺はお前の様な哀れな人間を救うと決めた、だから‥‥」
拳に光と力を籠め‥‥
「だから‥‥己を解放しろ! ジェラール!」
闇を吹き飛ばす程の光が辺りを包み込んだ。
鎖から解放されたジェラールは涙を流しながら呟く。
『‥‥ありがとう』
SIDEend
SIDEエルザ
二人を包んで居た闇が光に変わる。
そして光が晴れ、ジェラールは涙を流しながら地に倒れた。
「‥‥お前は‥‥これで‥‥」
自由だ
そう言い、アレスも涙を流しながら倒れた。
それと同時に地面が崩れ、奈落へと落ちるアレスとジェラール。
「ッ!」
私は最後の力を振り絞り、走った。
痛みで体が上手く動かない、だがそれでも走った。
「クッ!」
腕を伸ばし、掴もうとするだが片腕では一人しか掴めない。
何方かしか助けられない、選択肢は二つ、アレスかジェラールか。
私は迷わず手を掴んだ。
重みで私も落ちそうになる。
「「エルザ!」」
ナツとシモンが私を掴む。
何とか落ちずに済んだ、もう片方の手で掴んだ手を放さない様に掴む。
私が掴んだ手は‥‥
「しっかししろ! アレス‼」
アレスだ。
私達はアレスを引っ張り上げる。
「おまえ‥‥なんで‥‥」
虚ろな目で私を見ながら問い掛ける。
私はそっと抱き締め、涙を流しながら言う。
「お前のお蔭で私達は救われたんだ、だから今度は私がお前を救った、それにお前には愛する者がいるだろう」
私はアレスが居なくなった後のミラを知って居る。
この塔で傷付いた私の心より傷付き、自身を追い詰めた。
そして戻って来た時の彼奴の笑顔を私は見た、太陽の様に明るい彼奴の笑顔を‥‥
「彼奴は‥‥いや、私達フェアリーティルはお前が居ないと駄目なんだ」
アレスは私の頭を軽く撫で、小さく呟いた。
「ありがとう」
私達はアレスの肩を担ぎ、外に出ようと歩む。
すると、周りのラクリマが膨張してきた。
「まずい!? エーテリオンが暴走を始めた!」
「暴走!?」
「元々、あれだけの大魔法をここに留めておく事自体不安定なんだ!」
シモンが状況の説明をする。
「行き場をなくした魔力の渦が弾けて‥‥大爆発を起こす!」
「おい、まずいじゃねぇーかそりゃ!? 急いで逃げねぇと!?」
「それどころではない! 俺達と外にいるショウ達を含めて‥‥全滅だ!」
「諦めんな! なんか方法があるはずだ!」
「しかしナツ、エーテリオンが暴発したら、どんなに急いで脱出してもその被害は免れない!」
「‥‥くそ――――!」
拳を地面に叩き付けるナツ。
こんな絶望的状況でアレスは口を開いた。
「方法なら‥‥ある」
「「!?」」
「マジか!?」
私とシモンは驚き、ナツは歓喜の表情を浮かべる。
アレスはフラフラとラクリマまで歩き、手を当てる。
それと同時に私達を結界が覆う。
「何だこれは!?」
「転送…魔法だ、お前等を…グレイ達の所まで…移動させる」
「ッ! お前まさか!」
勘が良いナツは何かに気付いた。
「行き場のないこの魔力を…俺が取り込み、空に打ち上げる…これが方法だ」
「! それではお前の身が‼」
「お前達を…護る為だ、それに死ぬなんて言って居ない‥‥」
アレスは微笑み、ラクリマと同化した。
必ず‥‥帰って来る
「「アレス――――――ッッッ‼‼‼‼」」
私とナツの叫びと同時に魔法が発動し、私達は船の上へと送られた。
SIDEend
SIDEグレイ
船でアレス達が来るのを待って居るとエルザ達が行き成り現れた。
「うおっ!?エルザ!」
エルザにナツ、シモンも居る。
だが、一人足りない。
「ん? アレスは?」
エルザは震えた声で言う。
「アレスは…エーテリオンを止める…為に…」
「なんだと!? じゃあアレスは!」
俺は楽園の塔を見た。
するとそれと同時に塔が光に包まれ、空に上がり、弾けた。
塔は音を立て、崩れて行く。
「アレスが‥‥遣ってくれたのか」
「助かった‥‥のか?」
エルザは塔を見詰め、涙を流した。
「‥‥アレスの‥‥バカヤロォォォォォォォォォォォォッ!」
ナツの悲痛な叫びが海に響く。