仕事に行くのか、ガジルがギルドから出ていった。
少し後、静かに後を追い掛ける三人がいた。
彼奴等‥‥気持ちは解らん事ないが‥‥止めるか。
「? 如何したのアレス?」
先程からじっと外を見ている俺が不思議に見えたのだろう、ミラが話し掛けて来た。
「少し出掛ける」
そう言い、治療室から出て行こうとしたのだが出してくれなかった。
当然と言えば当然だ、傷はまだ癒えていないから。
「傷が治るまで出ちゃ駄目!」
ミラはそう言って体を縄で縛り、一人部屋を出て行った。
「‥‥縛る必要ないだろ」
部屋に取り残された俺は溜息を吐きながら縛られた手足の縄を解き、壁をすり抜け外に出た。
すると‥‥肌をビリッと刺激する魔力を感じた。
「こりゃ雷が落ちるな」
晴天の空を見ながら溜息を吐き、急いで三人を追った。
普段は静かなマグノリア西口の公園に、激しい爆撃音が響き渡る。
「…ぐぁ…っ」
ラクサスの電撃を受けたガジルが地に倒れる。
「テメェのせいで…!」
「よせよラクサス!やりすぎだ!」
思いもしなかった出来事に焦り、ジェットがやめるよう叫ぶが、ラクサスは聞く耳を持たなかった。
ガジルの後を追って行ったのは、レビィにドロイ、ジェットの三人だ。
ファントムの事件での最初の犠牲者、その三人を傷付けたのは他でもない…ガジル。
それなりのケジメを付ける為に、ガジルを攻撃する二人だが‥‥ガジルは一切反撃をせず、ただ攻撃を受けるだけ、そんな中に静かに現れたラクサスの現れた、そしてラクサスはギルドを壊したガジルに激しい攻撃をする。
「…ぐっ」
ラクサスの雷撃を受けて動けなくなったガジルだがラクサスは攻撃を止めない。
「妖精の尻尾に逆らった奴がどうなるか教えてやる!」
「っ…」
ラクサスが足に電撃を纏い、今まで以上の力でガジルを踏みつけようとする。
「「っ」」
「いやっ…」
目の前の事を見るのを拒否するかのように三人は目を逸らす。
地を揺らす程の凄まじい音が辺りを包む。
「…あん?」
ラクサスの不機嫌そうな声に、三人が恐る恐る視線を戻す。
しかしそこにはガジルは居なかった。
『あぶねぇな、傷め付けるにしても加減しろよ』
アレスが何時の間にかガジルの体を抱き抱え、立って居た。
あの雷撃の速度を上回る速度で助けたのだ。
「…チッ…余計なこと…すんじゃ、ねぇ」
「そうか? お前が良くてもそんなボロボロだと助けたくなっちまうんでね」
笑いながら俺はラクサスから眼を離さない、此奴は気を抜くと今の俺でも危ないからな。
「全く‥‥オメェはこんな事して楽しいのか?」
「当たり前の事をしたと思ってるんだがな?」
お互いに睨み合い、魔力を溜める。
「俺と殺り合う気か?」
「別に? 殺す気なんざねぇよ‥‥ただ」
手に魔力を纏い、言う。
「“動かねぇ様にするんだ”」
同時に動く。
傷が痛み、速さが上がらないがそれでもラクサスより僅かに上だ。
激しい殴り合いを繰り広げる、拳から放たれた拳圧で地面が抉れる。
「す、スゲェ‥‥動きが見えねぇ」
ドロイは唾を飲みながらそう呟く。
これ‥‥どっちも全力出してないんだよな、ラクサスは雷すら纏って居ない、俺は魔力を溜めているだけで使って居ない。
そう考えていると急にラクラスの動きが速くなる、雷を纏ったのだ。
「うおらッ!」
ラクサスの拳が俺の頬を捉えるがそれを受け流しながらアッパーを決める。
「グゥ!?」
よろめくのを見て、追撃の蹴りを放つ。
だが止められた、そしてラクサスはゆっくりと口を開く。
口の中からバチバチと音が聞こえる。
「あぁ‥‥不味い」
咄嗟に防御しようとしたが遅かった。
『ガァッ!』
雷が俺に直撃し、吹き飛ぶ。
木に叩き付けられ、体中の傷口から血が流れる。
「「「アレス!」」」
「そんな体でよくもまぁ俺に立ち向かおうと思ったもんだ‥‥大人しくベットで寝てろ」
体をゆっくりと起こし、立ち上がる。
「いんにゃ‥‥そうでもねぇよ、傷は開いちまったがこの通りだぜ?」
笑顔で答える。
痛くはねぇんだが何かムズムズする。
「何なら今直ぐお前の骨折ってやろうか?」
爽やかな笑顔でそう言う。
横に居た三人はガタガタと震えていた。
何か傷付くんですが‥‥
「いや‥‥止そう、今遣っても得なんかねぇからな」
拳をコートの中に納め、溜息を吐く。
「あ? 来ないのか?」
昔ならこれ位の挑発で飛び掛かって来るのだが‥‥
「時期が来たらお前纏めて倒してやるよ」
ラクサスはギロッと睨むがその眼には殺意と呼べるものは無かった。
「そうか、ならその日が来るのを待ってるぜ」
笑顔でラクサスを見送る。
「ガジル、大丈夫か?」
横目でガジルを見ながら問う。
「‥‥もう良いか? 仕事が有るんだ」
「怪我の治療位してやるぞ?」
「ほっといてくれ」
フラフラと何処かへと歩いて行く。
俺はため息を吐き、三人を見る。
「さてさて、お前等は気が済んだか?」
「「「‥‥」」」
三人は黙り込んだ。
「簡単には許せねぇよな、解るぜ、だから‥‥気が済むまで俺を殴ってくれても良い」
三人は驚いた表情で首を振る。
そんな事出来ないと言いたげな目で俺を見ながら。
「‥‥言いたい事ないならこれで御終い、ギルドに戻るぞ‥‥あ、別に責任なんか感じるな、お前等の遣った事は許せねぇ事だが‥‥お前等の気持ちが解るからマスターには何も言わねぇよ」
煙草を取り出し火を付けを吸う。
その時に思い出したかのように三人に言う。
「あっ! この事ミラに言うなよ!」
「「「はっ?」」」
「彼奴に『怪我が治るまで大人しくしろ』って言われてるんだ、だから頼んだぞ」
俺は苦笑いを浮かべながらその場から去った。
その日の夜
俺は息を切らしながらベットに寝転んでいた。
傷口が少し開き、血が流れる。
「アレス、まだ寝かせないわよ!」
ミラはそう言い、俺の上に跨る。
その顔は少し不機嫌なのか膨れ面だった。
「ま‥‥待てミラ、傷が‥‥」
先程から今に至るまで約数十回程、激しい動きをした俺は体力の限界を超えている。
「ふ~ん、外に出る元気はあるのに私とヤルのは嫌なんだ~」
ギロリと睨みながらそう呟く。
駄目だ、逃げれねぇ‥‥
「動けない程、今日はするから覚悟してね♪」
黒い笑みで俺にそう言う。
遺言書を書いときゃ良かったと思いながら俺は朝まで解放されなかった。