バトルオブフェアリーテイルで続出した怪我人とマカロフの不調、それ等の重なるハプニングにより、ファンタジアを1日延期することになった。
知らない間に倒れ、危篤とまで言われたマカロフの容体は、ポーリュシカさんのおかげで一命を取り留め、無事だという。
一応、俺の治癒の魔法も掛けた。
「────よかったー‥‥一時はどうなるかと思ったよ」
「あのじいさんがそう簡単にくたばるわけねぇんだ」
マカロフの無事を喜び、安堵に包まれるギルド。
「しかし、マスターもお歳だ。これ以上心労を重ねれば、またお体を悪くする。皆もそのことを忘れるな」
エルザの言葉に俺は苦笑いしながら呟く。
「発信源が良く言うな」
「何か言ったか?」
笑顔で問われた。
「べ、別に」
すぐさま目を逸らす。
「でも、こんな状況で本当にファンタジアをやるつもりなの?」
「マスターの意向だし、こんな状況だからこそ、って考えた方もあるわよ?」
「ジュビアもファンタジア見るの楽しみです!」
「あんたは参加する側よ」
「まぁ、怪我人が多いからねー。まともに動ける人は全員参加だってー」
「俺は出たくない、昨日から怪我人の治療で忙しくて休んでねぇn「アレス~どの衣装が良い~?」‥‥」
ミラは綺麗なドレスを身に纏い、抱き付いて来た。
こうなったら逃げれない、何だかんだで俺とミラの出し物は昔は意外と人気だった‥‥らしい。
「ってことは、やっぱあたしも…」
「困ってんのか、喜んでんのか…ま、あんなの参加できねぇからな」
そう言ってグレイが指差した先には、包帯をぐるぐるに巻かれたガジルとナツの姿。
ラクサスに遣られた傷だ、治癒で直しても良いがそれでも無理がある。
「あんなのとか言うなよ…」
「ほがもがが!」
「何言ってるかわかんないし」
口まで包帯を巻かれたナツは、何を言っているか全くわからない。
笑い声が響き、ギルド内がいつもの賑やかさを取り戻し、明日のファンタジアの準備を始めようとした、その時だった。
開かれた扉の前にいる人物を見、ざわつくギルド。
今回も騒動の原因、ラクサスだ。
「ラクサス…!」
「お前…!」
俺は一人笑顔でラクサスに近付く。
「よう、待ってたぜ」
ラクサスは横目で俺を見て言う。
「…ジジィは?」
ざわつく周りを気にせず、ラクサスはマカロフの居場所を聞いてきた、因みにナツたち並みに包帯でぐるぐる巻きだ。
「てめぇ…!」
「どのツラさげてマスターに会いに来やがった!」
罵声がラクサスに浴びせられる。
「ちょっと黙ってろ!」
俺の怒声が響く。
皆は納得がいかないという表情を浮かべるが、睨むと皆ぐっと押し黙る。
「奥の医務室だ‥‥まぁどんな判決でも受け入れな」
笑いながら肩を叩く、ラクサスは無言で足を進める。
しかし、その行く手を遮るようにナツが立ち塞がった。
「ナツ…」
「ふぐぁぐらむー!ふーふー!!」
何を言っているかはわからないが、息を切らしながらラクサスに向かって叫ぶナツ。
「通訳よろしく」
「…二対一でこの様じゃ話にならねぇ、次こそは絶対負けねぇ。いつか勝負しろラクサス‥‥だとよ」
「‥‥」
何も答えずに再び歩みだすラクサス。
しかし、言葉の代わりに、スッと片手を挙げた。
今までのラクサスからは考えられぬ行動に、ナツや皆が目を丸くしている。
俺は一人、微笑んだ。
「お前等ぁ~ファンタジアの準備をするぞぉ~」
「出ると決まったら練習しなきゃ!」
「ジュビア頑張ります!」
「アレス、今回はどんなのにする?」
「俺は出るの止めて良い?」
「動ける奴は全員参加でしょ!」
「はぁ‥‥じゃあエルフマン呼んで打ち合わせするか」
〜幻想曲ファンタジア〜
夜空に色取り取りの花火が何百発も打ち上げられる。
遂に迎えたファンタジア当日。
皆で一生懸命準備したおかげで、何とか間に合わせることができた。
たくさんの人の歓声を受け、ファンタジアのとりであるパレードが街道を進んで行く。
美しい踊り子たち、不思議な生き物、様々な魔法がより一層観客たちを盛り上げる。
「‥‥脱ぎたい」
今着ているは鎧だ、鎧と言うには肌の露出が多い気がする。
因みに兜をするのが面倒なので仮面をしている。
「アレス、似合ってるよ!」
ミラはドレスだ。
うむ、似合っている、流石ミラだ。
しかし、抱き付くのは止めて貰いたい。
「行くぞ、ミラ、エルフマン」
ミラとエルフマンを乗せた大きな台車が動き出す。
俺は翼を生やし、宙を舞う。
「踊り子可愛いー!」
「あの飛んでんの誰だ?」
「あ! エルフマンだ!」
「すげー迫力だな!」
「見て見てー!ミラジェーンだー!」
「え、蛇…!?」
ビーストソウルを発動したエルフマンに、薔薇の中から現れるミラジェーン。
まるで本当の妖精だ。
だが大蛇への変身が台無しにした‥‥が俺がエルフマンの前に現れる。
『グガァー!』
剛腕を受け止め、煙を吹き付ける。
それと同時にエルフマンはビーストソウルを解き、元に戻る。
更に蛇に変わったミラの頭にキスをし、再び煙を出し、その間にミラが接収テイクオーバーを解き元に戻る。
「キャー! カッコイイ!」
俺に向かって黄色い歓声が飛び交う。
それに少しイラッとしたのか、ミラは行き成り唇を重ねて来る。
おいおい、台本に無いぞ‥‥と思いながら受け入れた。
後に二人は付き合っていると噂されるのだが‥‥それは置いておこう。
「わー!綺麗!」
「氷のお城だよー!」
今度はグレイとジュビアが観客を魅せる番だ。
ジュビアが水を操って高く巻き上げ、その水をグレイが凍らせ、FAIRY TAILの文字を造り出す。
「おい、あれ見ろ!エルザさんだぞー!」
エルザの番だ。
エルザはたくさんの声援に応えるように、無数の剣と共に舞い踊る。
次はナツとハッピーの出番で、ナツは背後に炎を背負い、自慢の炎の魔法を使って空に“FAIRY TAIL”の文字を書いてみせようとしたのだが途中で噎せてミスる。
「何だーー!!出来てねーぞ!!」
「てかなんでそんなボロボロ何だーー!!?」
そして最後の台車が来た。
「あ!マスターだ!」
「マスターが出てきたぞ!」
「妙にファンシーだ!」
最後に出てきたのは、マスター マカロフ。
猫らしき帽子を被り、周りの観客にかなりバカな笑顔で手を振っている。
マカロフらしい格好だ。
ふと、今まで笑顔だったマカロフが人差し指で星が輝く天を指差した。
それに続く様に皆が天を指差す。
妖精の尻尾の仲間全員が、高く天を指差していた。
これは昔、ラクサスがマカロフに見せた物だ。
「じーじのとこ見つけられなくても、俺はいつもじーじを見てるって証! 見ててなー?じーじ!」
たとえ姿が見えなくても、
たとえ遠く離れていようとも、
わしはいつでもお前を見ている。
お前をずっと、見守っている。
これはマカロフが、ギルドの皆が、ファンタジアをどこかで見ているであろうラクサスへ向けたメッセージ。
「うぉっし!!まだまだこれからだー!燃えてきたぞ!」
「あいさー!」
俺は空に巨大な妖精の尻尾の紋章を打ち上げ、高らかに叫ぶ。
「俺達は、妖精の尻尾の魔導士だ!!」
「「「おおぉおおおおおおおおおお!!!!」」」
こうして幻想曲は無事に終わったのだった。
???SIDE
「あれって兄さんだよね?」
屋根の上に立つ私は隣でイカ焼きを頬張る姉に問う。
「ん? そうだよ、顔は変わってないけど‥‥まるで別人だった」
『次は気を引き締め戦うのだな』
妹がそう呟き、焼きそばを食べる。
私は黙って兄さんを見詰めた。
昔の優しい兄さん、私達の誇りだった兄さん。
「‥‥」
「まぁ‥‥計画を進めて‥‥とっとと元に戻そう」
「‥‥そうだね、兄さんはやっぱり此方側だから」
微笑みながら呟く。
「おぉ~い、そろそろ帰るぞ」
マハト姉さんが手に大量の食べ物を入れた袋を下げ、言う。
私達は静かに闇の中に溶けるかの様に消える。
「もう直ぐです、必ず‥‥迎えに来ます、私達の魔王」
私はそう呟き、闇へと帰った。