クローバー 定例会会場
俺は今期の昇格試験でS級魔導士に成ったエルザと共にギルドマスターが集まる定例会に来ていた。
本当は来たくなかったが‥‥エルザに頼まれて付いて来た。
来たのは良いが‥‥遣る事が無い、唯食事を食べる位しかやる事が無い、正直言って‥‥
「暇だぁ‥‥」
壁に凭れ掛かり、ワインを飲む。
何か乱闘とか起きないかな、それを肴にして楽しむのだが‥‥会場を見渡してもエルザとブサメンの男が戯れている位しか見えない。
溜息を吐き、大人しくワインを飲む。
「失礼、妖精の尻尾のアレス殿でございますか?」
目の前に巨漢のスキンヘッドの男が立つ。
この男、正しければ次期聖十大魔道の候補『岩鉄のジュラ』の筈だ。
「あんた‥‥岩鉄のジュラか?」
「おぉ! 私の事を知って居られたのですか!いやいや光栄ですなぁ‥‥」
「色々噂は聞いてる、次期聖十大魔道だって‥‥一度手合わせしたいな」
ワインを飲み干し、そう呟く。
「いやいや、私の様な者ではまだまだ貴方とは戦えませんよ」
「まぁ何時か手合わせをお願いするさ」
「ははっ、その時はお手柔らかにお願い申しますぞ」
「こっちからお願いするぜ、あんた、顔に似合わず強い魔力持ってるからな」
近くに置かれている酒瓶を持とうとするとマカロフが手招きをして呼んだ。
その表情は‥‥何処か面白そうな物を見付けた子供の様だった。
SIDEend
ジュラSIDE
マカロフ殿がアレス殿を手招きし呼ぶ、アレス殿にマカロフ殿が何かを小言で話す、アレス殿は渋い顔をされたが直ぐに外に出て行かれた、一体何が有ったのだろうか、気に成りマカロフ殿に尋ねてみた。
「マカロフ殿、アレス殿は一体?」
マカロフ殿は「外に出れば解る」とだけ言い、自身も外に出て行かれた。
私も後を追う様に外に出る、すると外には何百何千と言う数の魔導士が居た。
其々、何かしらの紋章が書かれた旗を掲げている、見て解る、全て闇ギルドの物だと。
その闇ギルドの目の前にアレス殿が仁王立ちして居た。
「あぁ~これ絶対つまんねぇよ、マカロフ~自分で如何にかしてくれよ~」
私は驚いた、これだけの相手を前に「つまらない」と言うその言葉に‥‥相手は激怒し、大量の魔法をアレス殿目掛けて撃ち込む。
一つ一つが其処まで強い魔力ではないが‥‥様々な魔法が混じり、巨大な魔力の塊と化した。
「アレス殿‼」
幾ら強くてもこれは危険と思い、叫ぶ。
アレス殿は前を向き、巨大な魔力の塊を見る。
「不味そうだな」
そう溜息を吐き、自ら魔力の塊に向かって歩み出した。
爆風と砂煙が視界を遮る、そして何かを吸い込む音が聞こえた。
眼を開けると‥‥砂煙の中で巨大な魔力の塊をジュースを飲むかのように吸い込むアレス殿が居た。
「んぐっ‥‥やっぱ不味い」
唾を吐き、顔を顰める。
眼を疑った、あれだけの巨大な魔力の塊を食ったのだ。
「マカロフ殿、アレス殿は一体何者なのですか!」
「アレスの使う魔法は滅竜魔法、じゃが奴は特別でのぉ~全ての魔法を食べ、扱える魔導士なのじゃよ、儂も詳しくは知らんのじゃがな‥‥」
マカロフ殿はそう言い、頬を掻く。
「信じられません、この様な魔導士が‥‥」
驚愕の二文字しかない。
書物で滅竜魔導士の事は知って居る、その属性を食べ、力とすると‥‥だが他の魔法を食べ、力にする事が出来ないとも知って居た、だが彼は違う、彼は全てを食らい、全て力と変える。
驚愕しながら彼を見る、彼一人に駆逐される魔導士達の姿だった。
宙に舞う者、地に伏せる者、吹き飛ばされる者、逃げ出す者、様々だ。
アレス殿はつまらなそうに魔導士を薙ぎ払い、魔法を食らい、魔法を放つ。
地を抉り、肉を裂き、天を揺るがす、身が震えた、これがアレス殿の力なのかと。
気付けば魔導士の山が出来ていた、その頂点に腰を据え、アレス殿が欠伸をする。
「だからつまんねぇって言ったんだよ、マカロフ」
山から下り、此方に歩み寄る。
「後は頼んだぜ、俺は小腹が空いたから飯食ってくる」
会場に一人戻る。
私はその場を動けずに居た。
余りにも力の差に体がすくんで動けなかったのだ。
「マスター! 先程の音は‥‥これは!?」
妖精の尻尾のエルザ殿や他のマスター達が続々と出て来た。
皆、魔導士の山を見て驚いている。
「おい、まさかこの山って‥‥」
四つ首の番犬(クワトロケルベロス)のマスターであるゴールドマイン殿が尋ねる。
「アレスが遣ったのじゃ‥‥しっかし遣り過ぎじゃのぅ‥‥」
マカロフ殿は溜息を吐く。
「前もそうじゃった、怪我人の山を作って一人帰ったからのぉ‥‥後片付けする儂の身になって欲しい物じゃよ」
マカロフ殿は辺りを掃除し出す。
私はもう一度山を見て、己の力を、アレス殿の力の大きさを確認し、決心を付ける。
(彼の様に強く成ろう)
今日の一件で彼は各ギルドに知れ渡った。
その時、何処かのギルドの者がこう言ったと言う。
彼はもしかしたら全知全能の魔導士なのかも知れない‥‥と。