バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第十二話

「うわーー!」

テレビの中に投げ出された僕たちは少し高いところから落下していた。

でもこのくらいの高さなら受身を取ればなんとかなるかな、もっと高いところから投げ捨てられた経験もあるし……

「よっと」

頭を突っ込んでいたところを押されたから頭が下にある体制だったけど体を丸めて背中から落ちるようにしつつもそのまま回転をする。

「ふぅ……なんとか無事に……ぐはぁ……」

な、なに!? 僕の背中に何かが落下して……

「ご、ごめん」

「里中さん……いいから降りて……」

「あ、うん……って……ここ、どこ? ジュネスの一部?」

「んなわけねーだろ! 俺達テレビに……」

里中さんの言葉に同じように落ちてきてお尻を打ったらしい花村くんが答える。

「ねえ、なんなのコレ……」

濃い霧に包まれていて周囲の様子はよく見えないけど……とりあえずは

「みんな怪我はない?」

僕は慣れてるけどこの高さから落ちたんだし軽い怪我くらいはしてるかも

「あ、うん、あたしは大丈夫、吉井くんこそ怪我ない? 思いっきり上に落ちちゃったけど……」

「あ、うん、この程度なら慣れてるし平気だよ」

「俺は若干ケツが割れた……」

「もともとだろが!」

うん、二人とも大丈夫そうだね。

「うおっ!」

「な、なに、ついに漏らした!?」

「花村くん、落ちた衝撃があったとはいえそれは……」

高校生にこれは恥ずかしい。

「バカ、見てみろってまわり!」

花村くんに言われて周囲を見渡すと……

「これってテレビのスタジオ? すごい霧……じゃなくてスモーク? こんな場所うちらの町にないよね……」

「あるわけねーだろ」

確かに、これがなにかの撮影現場だとしたらスモークを炊くというのも納得だ。

「つまりあのテレビはジュネスのCMの撮影現場に繋がっていたということだね」

「んなわけねーだろ! ジュネスのCMこんな雰囲気じゃねーし!」

「そういう問題でもないと思うけど……」

「しかしどうなってるんだここ……やたら広そうだけど……」

テレビのスタジオだとしたらこの広さは納得できる。アイドルグループが踊るとしたらこのくらいの広さは必要だしね。

「どうすんの……?」

どうするか、か……

「そうだね、撮影しようにもカメラとか持ってないし衣装も学校の制服だしね。そもそも台本とかないしなにを撮影するかをまず決めないと……」

ドラマを撮るには脚本が必要だし歌を歌おうにも音響設備はない。こういう時は演劇部の秀吉か撮影機材を常時持つムッツリーニがいれば心強いんだけど……

「なんの話してるんだよ!」

「とにかく一回帰って……」

そこまで言って里中さんは周囲を見渡す。

「あ、あれ……? あたしら、そういや、どっから入ってきたの? 出れそうなとこないんだけど!?」

「ちょ、そんなわけねーだろ! どどどーゆことだよ!?」

「知らんよ! あたしに聞かないでよ! やだ、もう帰る! 今すぐ帰る!」

「だから、どっからだよ!」

「大丈夫だよ、二人とも、よくあることだよ」

「落ち着いてるね……ところでよくあるって例えば?」

「うん、あれは……」

あれは確か美波に絞められた時だった。

「気がついたら川の近くの花畑にいて川と反対方向に行ったら帰って来れたとか」

「臨死体験じゃねーか!?」

「頼もしいというか不安になるっていうか……」

「ま、まあ、ちょっと落ち着くことができた気はすんな」

「とりあえず出口を探してみようよ」

「あ、ああ、そうだな」

とりあえずここには出口が見当たらないので少し他を回ってみることにした。

 

 

「なにここ……さっきんトコと、雰囲気違うけど……」

「建物の中っぽい感じあるけど……くっそ、霧が深くてよく見えねえ……」

僕たちがいるところがアパートの渡り廊下みたいなところ

「大丈夫? かえって遠ざかってない?」

「わかんねえよ、けどある程度カンで行くしかねえだろ」

「そうだけど……」

「とにかく進んでみようよ」

とりあえずここで止まっていても帰れないんだし、花村くんの言うとおりとりあえず動かないと、こういうとき雄二がいてくれたらな、あいつはこういう時は妙に頭が回るし。

「お、この辺ちょっと霧薄くない?」

僕たちがついたのはだれかの私室みたいなところ。

「圏外か……まあ、当然か……」

「う~ん、やっぱり稲葉市は携帯の範囲狭いのかなあ……」

「いや、ここは稲葉とかそういう問題じゃねーだろ」

花村くんが携帯を取り出していう。確かに携帯は圏外表示。

「さっさと行かないでよ、よく見えないんだから……」

「あ、ごめん」

気がついたら僕と花村くんが先に歩いてたみたい。女の子に歩くペースを合わせないといけなかったね……

「え……なにここ……」

里中さんに言われて振り向く。

「行き止まりだよ? 出口なんてないじゃん!」

「見た目も気味悪くなる一方だな」

なにか顔を切り抜かれたポスターらしきものが大量に貼ってあるのが見える。霧の中でぼんやりとしてるから余計に気味悪く見える。

「アーッ! つかもう無理だぜ……俺の膀胱は限界だ!」

「ちょっ花村! 何してんの!?」

花村くんが壁際に駆け寄る。

「出さなきゃ漏れんだろうが!」

我慢するのが辛いのはわかるけど……

「そこでやんの!? 勘弁してよ……」

「み、みんなよ……見られてっと出ないだろ……」

男同士ならともかく女の子の前じゃしにくいよね……

「ああああ~出ねええええ~、膀胱炎になったらお前らのせいだぞ!」

「しらねーっての……」

「大丈夫だよ、花村くん、人間の体って意外と丈夫だから」

「にしても……なんなの、この部屋。このポスター、全部顔ないよ……切り抜かれてる……めっちゃ恨まれてるってこと?」

「それにこの椅子とロープ、あからさまにまずい配置だよな。輪っかまであるしこれ、スカーフか」

花村くんの前にある椅子とロープ、椅子の前に上からロープが吊り下がっていて先がスカーフの輪になっている……

恨まれるのは怖いよね、呪いの言葉つぶやかれたり文房具が刃物となって飛んできたりするし……

「ね、戻ろ……さっきんとこ戻って、もっかい出口探した方が良いよ」

「そうだね、こっちは行き止まりだし……」

「なあ、あのポスターってどっかで……」

女性物の和服を着たものみたい、顔がないから僕はよくわからないけど……

「いいから、行くよ、もう! やだ、こんな場所! それになんだか気分悪い……」

「そういや……俺も……」

言われてみれば僕もちょっと体が重い気がする。しばらく風邪をひいたことはないんだけどなあ……

「わかった、戻ろう。なんか、マジ気持ち悪くなってきた……」

 

 

「ふぅ……やっと出口に戻って来れたよ……って何あれ……?」

里中さんの声に振り向くと……

「な、なんかいる!」

そこにはなにか丸いフォルムをした着ぐるみみたいなのがいた。

「なにコレ……サルじゃない……クマ?」

「なんなんだ、コイツ……」

「君らこそ誰クマ?」

「喋った!? だ、誰よあんた、やる気!?」

「そ、そ、そんな大きな声出さないでよ……」

クマ? というのは怯え始める。

「そうか! わかったよ、着ぐるみがいるってことはここはどこかの遊園地のアトラクションなんだ!」

僕の一部も隙のない推理がひらめく。

「いや、なんでジュネスのテレビが遊園地に繋がってるんだよ」

「クマは着ぐるみじゃないクマよ!」

あれ?

「着ぐるみじゃないの? じゃあ君は誰?」

「クマはクマだよ? ここに一人で住んでるクマよ。ここはクマがずっと住んでるところ。名前なんてないクマ」

「ずっと住んでるところ……?」

このシチュエーションをもう一度整理しよう。

ここは普通の場所じゃない→僕の知っている普通じゃない場所と言ったら美波や姉さんに強制的に連れて行かれる川→そこにはお爺ちゃんがいてまだこっちに来るなと言う→ここにはクマくんが一人で住んでいる→クマくんは僕のおじいちゃん!?

「そっか、おじいちゃんだったのか……」

「え? クマおじいちゃんじゃないクマよ」

「たまに吉井が何言ってるのかわかんなくなるんだが……」

「とにかく、君たちは早くアッチに帰るクマよ。最近誰かがココに人を放り込むから、クマ、迷惑しているクマよ」

「は? 人を放り込む? なんの話だ?」

「誰の仕業か知らないけど、アッチの人にも少しは考えてほしいって言ってんの!」

このシチュエーションは聞いたことがある気がする。つまり

「不法投棄の問題だね」

「人をって言ってんのになんでそういう話になるんだよ!」

「ちょっと、なんなワケ? いきなり出てきてなに言ってんのよ! あんた誰よ!? ここはどこよ!? なにがどうなってんの!?」

花村くんが僕に突っ込んでいるあいだに里中さんがクマくんに怒鳴っている。

するとクマくんは怯えて僕の後ろに隠れる。

「さ、さっき言ったクマよ……と、とにかく早く帰ったほうがいいクマよ……」

「要はこっから出て行けって言うんだろ? 俺らだってそうしたいんだよ! けど出口がわかんねーんだよ!」

「まあまあ、里中さんも花村くんも落ち着いてよ」

出口を探さないといけないけどここでクマくんに当たっても解決はしないし。

「うん、そういうことだからクマくん、出口が見つかったら僕らは帰るからさ」

「ムッキー! だから、クマが外に出すっつってんの!」

だから……わっかんねーかな、出口の場所がわかんねーつってん……って……へ?」

花村くんが言葉につまる。そしてクマくんが軽く足踏みをすると目の前に縦に積まれた古いテレビが出てくる。

「んだこりゃ!?」

「て、テレビ? どうなってんの!?」

このテレビと出口がどう関係するんだろう?

「さー行って行って、行ってクマ。ボクは忙しいんだクマ!」

そう言ってクマくんは僕たちをテレビに押し込む。

 




バカテス11巻発売記念にちょっと執筆。ギャグが入れづらかったです。長い割に内容が薄いなあと反省です。
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