僕は無事、美波から逃げ帰って家に着いた。
「おかえり、お兄ちゃん、雨に濡れなかった?」
「あ、うん、ちょっと濡れたけど大丈夫だよ」
「お風呂、入ったほうがいいよ」
菜々子ちゃんに言われたのでお風呂に入って部屋に戻る。
そういえば雨が降ってきたってことは今日はマヨナカテレビ見れるのかな? 映っているのは完二くんということはわかっているけど一応チェックしておかないと。
Prrrr Prrrr
ん? あれ? 天城さんだ、
「もしもし」
「あ、もしもし? 天城ですけど、ごめんね、遅くに」
「大丈夫だよ、雨だからマヨナカテレビをチェックするつもりだったし、陽介とか雄二とかはもっと遅くにかけてくるから」
それにまだそこまで言うほど遅くないし、こういうところが天城さんがしっかりと礼儀を躾けられてきたことがわかる。
「うん、ありがとう」
「それでどうしたの?」
「あのね、完二くん、家にいないんだって!」
「ええ!?」
「旅館のちょっとした用のついでに、染物屋に連絡してみたの。それでね、完二くんのお母さんと話したんだけど……完二くん、どこかに出かけちゃって、そのまま帰ってないみたいなの」
「もしかして……僕を追いかけてるとか?」
「それはないと思う……今日は吉井くんを追いかけていたのは島田さんだけみたいだから」
「いなくなるのはよくあることだってお母さんは言ってたけど……どう思う?」
「……やっぱり僕を殺すつもりじゃ」
僕が彼をナンパしたと思われたことがよほど気に障ったみたいだ。誤解なのになあ……
「そうじゃなくて、誘拐されたんじゃないかな?」
あ、そうか、誘拐された可能性もあるんだ……
「うん、今日のマヨナカテレビ、しっかり確認しよう、陽介と里中さんにもチェックするように連絡しないと」
「なら千枝には私の方から話しておくね、花村くんの番号は知らないから……あと翔子にも伝えておくね」
そうして天城さんの電話は切れる。あ、そうか、里中さんより先に僕に連絡してきたのは陽介にも連絡するためか、さすが天城さん、頭いいな。
そのあと僕は陽介と雄二に連絡しておいた。
陽介には「お前いつの間に天城と番号を交換してたんだ……」と言われたけど友達なら普通に交換くらいすると思う。
そして深夜12時、雨は降り続いている。
僕はテレビに向かい合う、そうするとマヨナカテレビが映り出す、鮮明な映像だ。これは……脱衣所?
そしてそこに……上半身裸の完二くんがカメラに映る。
…………だ、脱衣所だからだよね?
『皆様……こんばんは。ハッテン、僕の町!の時間どえす』
聞き間違えだよね? 昔、平日の午前中に流れてた番組名だよね?
『今回は……性別の壁を越え、崇高な愛を求める人々が集う、とある施設を紹介しまぁす』
「超えちゃいけない壁を越えようとしてるーーー!?」
ええ!? 完二くんは何を言ってるの!? これはシャドウ!? でも隠された本音でもこれは……まさか雄二の言った嘘が原因でそっち方面に目覚めたとかじゃないよね!?
『極秘潜入リポートをするのは、このボク、巽完二くんどえす!』
僕が呆然としているあいだも完二くんの言葉は続く……
『一体、ボクは、ボクの体は、どうなっちゃうんでしょうか!?』
どうにかなっちゃダメだよ!?
『それでは、突・入、してきます』
「いっちゃダメだ、帰ってくるんだ!?」
そのまま奥へと完二くんのシャドウらしき人は入っていく……そこで完二くんの下半身も映ったが……フンドシだった……
Prrrr Prrrr
そのまま呆然としたが電話が鳴る。
「もしもし……」
『おう、明久か、マヨナカテレビどうだった?』
「何も映らなかったよ!」
『うお!? そんな大声で言うな』
「画像は鮮明になんて映らなかった、何もなかったからね!」
僕はこの数分の記憶を抹消しようと強く否定する。
『ふむ、そうか、で、何が映ったんだ?』
そして雄二にあっさり見破られる。
「ははは、いやだなあ、何も映ってなかったんだって……」
『隠しても陽介や里中、天城に連絡すればわかるだけだぞ』
くっ……その手があったか……
「わかった、話すよ……」
僕は観念して雄二にマヨナカテレビの内容を話す。
「か、完二くんに意外な一面があったんだよね」
『ふむ、つまり明久にナンパされて惚れてしまったわけだ』
「言うな! それを聞きたくなかったんだ!!」
僕が目を逸らしていたことを雄二が突いてくる。
「ねえ、雄二、今回は僕抜きで完二くん救出してくれない?」
『バカ言うな、明久があいつの愛を受け入れれば解決するかもしれないんだ』
「僕を犠牲にする気なの!?」
『明久の犠牲で一人の命、安いものだ』
「犠牲にしちゃダメ! 僕は男に興味ないんだからね!?」
『なんだと!?』
「そこは驚くところじゃないからね!?」
『ま、そこは明日話し合うとしようか、じゃあな』
雄二はそこで無情に電話を切る……
Prrrr Prrrr
次は陽介か……
『あ、明久か? ずいぶん長い電話だったな、何度もかけちまったよ』
「うん、雄二と電話してたから」
『あ、そ、そうだよな』
さっきの番組で陽介も動揺してるみたいだ。
『さ、さっきの完二だよな、それで確認して電話しようと思って……』
「僕としては見なかったことにしたかったんだけど……」
『あー、もしかしてあのシャドウの原因は明久の誤解のせいかもってか?』
陽介もその可能性を思いついてしまったか……
『だ、大丈夫だって、その前にあのちびっ子とも妙な雰囲気だったし……って安心できねえか』
一応陽介は気を使ってくれているけど不安は消えない……
『と、とにかく明日話そうぜ』
「うん、それじゃ、また明日」
そのまま陽介との電話を切る……まさかこの事件で命以外の物が危機に晒されるとは予想してなかった……
すみません、少し時間が開いてしまいました。
今回は完二のマヨナカテレビです。
今回は明久の危機感がすごいことになっています。原作からこっち方面に関しては色々危ないですからね……
では次回もよろしくお願いします。