バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第五十話

「おっ、完二のカンジ、ここに居るクマ」

「ようやく着いたというべきか、着いちまったというべきか……」

僕たちはようやく完二くんのいる部屋の前にたどり着いた。

「でも行くしかないんだ、行こう」

僕はみんなに声をかけ扉を開く。

「いた!」

「完二くん!」

里中さんと天城さんが本物の完二くん声をかける。

「お……オレぁ……」

『もうやめようよ、嘘つくの、人を騙すのも騙されるのも嫌いだろ? やりたいことをやりたいって言って何が悪い』

「お前は騙されるのが好きでよく騙されているけどな」

「好きで騙されてるんじゃないからね!?」

僕を一番騙すことの多い雄二に言われたくない。

「それとこれとは……」

『ボクは君のやりたいことだよ』

「違う!」

否定を止めたいけど……あれがやりたいことというのを肯定するのはそれはそれで怖い……

『女は嫌いだ……』

ええ!? やっぱり完二くんはそっちの趣味……

『偉そうで、わがままで、怒れば泣く、陰口は言う、怒る、試す、化ける、殴る、蹴る……』

最後の殴る蹴るは美波が僕を痛めつけた時のことを言ってる気がする……

『気持ち悪いものみたいにボクを見て変人変人ってさ……で、笑いながらこう言うんだ。裁縫好きなんて気持ち悪い、絵を書くなんて似合わない。そしてこう言うんだ。男のくせに……男のくせに!……男のくせに!!』

僕もよく罵倒はされているけど気持ち悪いと直接言われたことはない。いや、女装でそう思われているかもしれないけど……

『女は怖いよなあ……』

「「「あー」」」

その瞬間僕らはわかってしまった。

「確かに女は怖い……」

雄二が霧島さんを見て言う。

「うん、トラウマになってもおかしくないよね」

僕は美波の方を見て言う。

「だよなあ……洒落にならねえよ……」

陽介が里中さんを見て言う。

「……雄二、どういうこと」

「アキ! あんた何言ってるのよ!」

「ちょっ、なんてあたしまで!?」

それぞれ痛い目にあわせられている。僕と雄二は言うに及ばず陽介も僕が転校してきたばかりの日に里中さんに強烈な一撃もらってたしなあ……

「こ、怖くなんかねえ!」

「完二、無理をするな……」

「うん、怖いものは怖いといっても良いんだよ」

「ああ、正直俺も怖い」

強がる完二くんに陽介、僕、雄二が順に声をかけるけど……

『男がいい……』

完二くんの影が不穏なことを言う。

『男のくせにって言わないしな。そうさ、男が良い』

「「「いやいやいや!」」」

女の子達にひどい目に合わされても僕たちはそっちの結論にはいかない。

「ざっけんな! テメエ、人と同じ顔をして巫山戯やがって!」

「そうだ、完二言ってやれ!」

否定する完二くんを応援する陽介。

「ちょっ、花村!?」

女子達にはこの気持ちわかるまい……

「あーウチはアキたちが否定したい気持ちはわかるかも……実際そういう趣味の相手に付きまとわれるのはキツいわよ……」

訂正、美波には気持ちがわかったようだ……

『キミはボク……ボクはキミだよ……わかってるだろ』

「違う……違う、違う!」

「気持ちは分かるぞ、完二!」

雄二が声援を送る。

「……雄二、応援しちゃダメ」

「テメェみたいなのが俺なもんかよ!」

「完二くん、よく言った!」

「ちょっと、吉井くん! 否定しちゃシャドウが暴走しちゃう!」

天城さんが僕を止めようとする。

「「「あ……」」」

僕たちはそこで我が身可愛さに思わず否定の方を応援してしまったことに気づいた。

『ふふ……ふふうふふ……ボクはきみ、キミさあァァ!』

しかし気付いたときはもう遅く完二くんの影が暴走を始めムキムキな体を持ち薔薇に包まれた顔を持つシャドウに変異していた。そしてその両脇に禿頭のヒゲのマッチョな男の形をしたシャドウが現れる。

「完二くん!」

「みんな、構えークマ」

「やってしまたものは仕方ない、止めるぞ!」

 

 

『我は影……真なる我……ボクは自分に正直なんだよ……だからさ……邪魔なもの、君たち女の子の集団には消えてもらうよ!』

「これ、完二くんの本音なの?」

「こんなの本音じゃねえ! タチ悪く暴走してるだけだ!」

「そうだ、女性恐怖症が変な方向に向いてるだけだ!」

「みんなで彼をそっちの道から救い出そう!」

天城さんの言葉に陽介、雄二、僕が次々と答える。

「え? 暴走からじゃなくてそっち? まあ、助けることに異論はないけど」

里中さんが戸惑いながらも答える。

「……うん、雄二を取られるわけにはいかない」

霧島さんはそっちの趣味に走って雄二が取られることを心配しているみたいだ。

「そうね、アキは男も好きだから狙われる前に彼を正しい道に戻す必要あるわね」

「ないからね!?」

美波はどうしてそういう勘違いをしているんだろう……

『おや、君たち、随分男みたいな声だね?』

ヤバイ!?

「そ、そんなことねーですわよ」

陽介が裏声で答える。その言葉使いは危険だ!?

「俺……じゃない、私たちは女だぞ?」

雄二、言い繕えてない。

「そうだよ、僕たちが男なわけないじゃない」

「アキ、少しは演技しなさいよ……」

しまった!?

「くっ……そんなことないと証明して見せよう、ペルソナ!」

そう、ここで女性型ペルソナを出せば僕が女と思われるだろう。

「サラスヴァティ!」

女教皇のペルソナ『サラスヴァティ』がマハブフを放つ。

『残念、君は女の子みたいだね』

よし!!

『でも他の子はどうかな?』

「……キビツヒコ」

「トモエ!」

「コノハナサクヤ!」

「キヨヒメ!」

女の子たちは気にする必要ないからみんなペルソナを出す。

「ど、どうすんだよ、雄二、明久がペルソナで誤魔化したから……」

「ああ、出してもダメで出さなくても男認定だな、やってくれたな明久……ペルソナで誤魔化そうとするとは……」

「この裏切り者が!」

雄二と陽介はそう言うが……

「入口で二人が僕を見捨てようとした恨み、返させてもらう!」

先に僕を見捨てたのは二人だ。

「くそっ、しかたねえ、やるぞ、陽介」

「そうだな……ジライヤ!」

「こい、ウラ!」

観念してペルソナを召喚する二人。

『嬉しいなあ、意外なことに男の子が3人もいるじゃないの』

なんだと!? まさか僕に気づかれた!? 溢れ出る僕の男らしさは隠せなかったということか!?

『君の変装には騙されたけど、ペルソナと本体のその胸の無さは誤魔化せないよね』

完二くんの視線の先にいるのは……美波!?

「ウチは女よ!?」

『でもその胸は……』

「それ以上言うなー!」

「美波ちゃんが激昂しているクマ、パトラで治すクマよー」

「いや、素で切れてるのには効かないと思うよ……」

クマの言葉に里中さんが冷静にツッコミを入れる……

「よし、それなら本体は島田と明久に任せよう、俺と翔子、陽介、里中、天城、5人で速攻で取り巻きのマッチョを倒すぞ」

「「「了解!」」」

「ちょっと、あの状態の美波と完二くんの影を僕に押し付ける気なの!?」

「頑張れ、明久、お前ならできるぜ!」

陽介がサムズアップしてあっさり言う、さっきの復讐か!?

『君たちが相手してくれるの、それじゃあ、潰しちゃうよ!』

そう言っていきなり力を溜める。

「美波、攻撃に集中してないで防御して!」

しかし美波はその忠告を聞かずに……

「いって、キヨヒメ!」

ペルソナに魔法を使わせる!?

「美波!?」

僕は防御体制のまま美波をかばえる位置に行く。

『いくよ!』

完二くんの影がラッシュを仕掛けてくる。やばいか……

「あ、あれ……? 確かに強烈だけど思ったよりは痛くない」

「さっきタルンダかけたのよ、あいつのパワーは落ちてるわ」

そういえば美波のシャドウ相手に僕も苦しめられたっけ、美波はそれを使って相手に攻撃を前もって削いだのか。

「アキ、ウチが援護するから!」

思ったより美波は冷静だったみたいだ、なら……

「わかった、美波、フォローは頼むよ!」

美波を相棒として信頼し戦うのみだ!

 

『我は汝……汝は我

汝新たな絆を見出したり……

 

絆はすなわちまことを知る一歩なり……

 

汝、塔のペルソナを使いしとき

我ら、更なる力の祝福を与えん』

 

僕の頭の中で声が響く……これは……

「トウテツ!」

新たに芽生えた塔のアルカナ、それを解き放つ。

「キヨヒメ、ラクンダよ!」

美波は僕が攻勢に出るのを察したのか敵の防御を緩める魔法を放つ。

「メギドだ!」

トウテツが魔力を解き放つ!

『キクー。でも今度はこちらの番だよ、イくよ!』

「う、うわ!?」

彼の言葉に僕の身体が崩れかかる。

『あれ、おかしいなあ、今のは男の子にしか効かないはずなんだけど?』

僕の体から毒に侵されたように徐々に体力が奪われる。けど美波は平気。

『ええ!? じゃあ君が男の子で君が女の子!?』

「くっ……」

せっかくペルソナで誤魔化していたのに気付かれたか!?

「さっきから言ってるとおりウチはどう見たって女でしょうが!」

動揺する僕の横で美波は怒っている。

「ウチをそこまで執拗に男扱いするのはあんたで二人目よ!」

「え? 一人目は?」

「去年女子の制服着てるのにウチを男扱いした馬鹿がいたでしょう!」

あ、言われてみればそんなことした記憶も……

美波がそのまま手に持ったレイピアで切りつける。

『い、痛い、だから女は怖いんだ』

「それは間違っている、完二くん! 僕もよく女の子に痛めつけられているそれでも!」

『それでも?』

「それでも胸を張って言おう、僕は女の子の方が好きだと!」

『な……』

「雄二相手とか噂されるなんて虫唾が走る。僕は……女の子のほうが良いんだ!!」

「激しく同感だが……なかなか胸張って言いづらいよな……」

「ああ、あいつのああいうとこ素直にすごいと思うぜ……」

向こうで戦っている雄二と陽介の言葉も聞こえるが……

「ジャックフロスト!」

僕はペルソナを呼び出し、さっきの完二くんの影の技でボロボロの体から力を振り絞る。

『え? なにその可愛いの!?』

なぜかジャックフロストにみとれて隙ができた完二くんに全力で魔法を叩き込む。

「いっけー!!」

『イ、イクーー!?』

全力のブフーラをうけて完二くんの影が倒れる。それと同時に雄二たちの方もマッチョ二人に止めをさしたようだった。




完二シャドウ戦、やっぱ戦闘は難しいですね。今回は美波との絡みを頑張ってもらおうと思いましたが結局は明久の活躍。美波が男と思われるというのはコメントで頂いたアイディアを使わせてもらいました。
トウテツはレベル35のペルソナなんですが塔は全体的に高レベルなんですよね。だからレベル高いペルソナ使ったのただのは演出上の都合です。
次回で完二編は完結です。
では次回もよろしくお願いします。
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