バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第五十一話

完二くんのシャドウを倒したが完二くんが受け入れない限り彼の影が消えることはない。

先頭が終わり僕たちが振り向くと完二くんはシャドウ暴走後の放心状態から抜け出し立ち上がったところだった。

「ち……くしょう……」

「完二くん!」

立ち上がる完二くんに天城さんが声をかけるが……

「まて、天城、何か様子がおかしい!」

完二くんの影を警戒していた陽介がそれを止める。

すると倒れていた完二くんの影が立ち上がり僕たちの方に視線を向ける。

「ま、まだ向かってくるクマか! よほど強く拒絶されてるクマ……?」

「そりゃこんだけギャラリーがいたら無理ないよな……」

「それに内容が内容だしな……」

陽介と雄二が次々にいう。

『情熱的なアプローチだなぁ……』

「え?」

なぜか完二くんの影の視線が僕に向いている。

『君は素敵なカレになってくれそうだ』

「よし、俺と陽介はターゲットから外れたようだ。本体と戦わなくてよかったな」

「ちょっと、それで僕だけが見つめられるとか困るんだけど!?」

「あ、明久はそういう趣味じゃないんだ、勘弁してやってくれ」

陽介……薄情な雄二と違って僕をかばってくれるのか……

「や……めろ、何言ってるんだ、てめぇ……」

完二くんが声を振り絞っていうが……

『なら君が受け入れてくれるの?』

「そ、それは嫌だ……」

「ちょっと、陽介、僕を盾にしようとしないでよ!?」

『誰でもいい……ボクを受け入れて……』

僕たち……男3人+クマだけでなく女子たちもちょっと引き気味だが……

「や……めろ」

そこで完二くん本人は立ち上がろうとする。

「か、完二、止めるのは良いけど否定しては……」

その完二くんに雄二は声をかけようとするが……

『ボクを受け入れてよー!!』

シャドウの叫びが雄二の声を打ち消す。

「ちょ、無理やりはやめてー!?」

「無理やりじゃなくても俺は嫌だ!?」

「……雄二は私のもの、あなたには渡さない」

「アキが男のほうが好きだからって無理やりはダメだと思うわ!」

「ちょっと待って、誤解だからね!? 僕は女の子の方が好きだからね!?」

「吉井くん、その言い方だと女の子の方がより好きだけど男も好きって解釈にも取れるよ」

「いや、雪子、この状況でそれを言うは……」

影の叫びに対してそれぞれが好き勝手言い始める。けど……

「やめろっつてんだろ!!」

 

バキッ

 

立ち上がった完二くんが完二くんの影を殴り飛ばし影が吹き飛ぶ。

「ったく……情けねえぜ……こんなんが、オレん中にいるかと思うとよ……」

「完二、お前……?」

陽介が驚いたように声を出す。

「自分を受け入れた……?」

雄二も驚いたように声を出す。

「知ってんだよ……テメェみたいなのがオレの中にいるくらいな! 男だ女だってんじゃねえ……拒絶されるのが怖くてビビってよ……自分から嫌われようとしているチキン野郎だ……」

「完二……お前……」

雄二が複雑そうな表情を浮かべる。

僕も理由は知らないけど……出会った頃の僕と仲良くなる前の雄二は悪鬼羅刹の異名を否定せず誰とも関わろうとしない、話しかけてくる美人の女の子(今思えば霧島さんだった気がする)をも拒絶していた。クラスでも誰とも関わろうとしなかった。

それを思い出しているのかもしれない。

「完二、お前だけじゃねえんだよ……」

雄二が完二くんに声をかける。

「そうね……ウチだって他人事じゃない……自分で壁作って……他人のことを理解しようともしない……ウチだってそんなこともあった。あんただけじゃないわよ」

美波も続いて声をかける。

美波も出会った頃、帰国子女だからと周りに馴染めず、自分から他の人に話しかけることはなかった。それでも理由はわからないけど嫌っていたはずの僕に話しかけてきて友達になったけど……

「うん、完二くん、それは……君だけじゃないんだ」

僕はここで多くの見られたくない友人の姿を見てきている。だから完二くんにも進んで欲しい。誰もがそういう面を持っていることを知っているから……

「……」

完二くんは僕たちの方を見てわずかに頷く。

「オラ、立てよ、オレと同じツラ下げてるんだ、ちっボコられたくらいで沈むほどヤワじゃねえだろ!」

それに言われて殴り飛ばされ倒れてた影が立ち上がる。

「テメエがオレだなんて事ぁ、とっくに知ってんだよ……テメェはオレで、オレはテメェだよ、くそったれが!」

そしてその完二くんの言葉に影は頷く。

 

そしてシャドウはペルソナに変化する。

 

「うっ……くそ」

そして完二くんは力尽きたように倒れる。

「完二くん」

僕たちは完二くんに駆け寄る。

「とにかく、外へ運ぼう」

「こ、この程度なんともねえよ」

「強がるんじゃねえよ、ほら、肩貸してやる」

僕と雄二が両側から彼を支えて立たせる。

「あ、あんたらこの間の……なんでそんな格好してるんだよ」

そこでようやく僕たちがこの前会った相手と認識したみたいだ。この状況じゃ僕たちをじっくり見る余裕なんてなかっただろうな。

「俺と陽介はここの雰囲気を警戒してだな、明久のは趣味だ」

「僕のも趣味じゃないからね!?」

「はは……確かにあんたらのはわかりやすいぜ……」

完二くんが雄二と陽介に言う。

「僕だって男らしいよね!?」

「俺も……ここで誤解受けちまってるし……そういう誤解受ける辛さはわかる、信じるぜ」

完二くんは僕にそう言ってくれる。

「ありがとう、完二くん!」

完二くんは僕のことを理解してくれたみたいだ。

「はは……説得力ねえかもしれねえけど……俺のも……」

完二くんは辛そうに話し始めるが……

「大丈夫、わかってるよ」

「……俺たちだけでなく、完二自身も誤解していたんだろう……お前は女性に対する苦手意識、そして男同士の場合は気楽だからそれをもしかしてってな」

「ま、女が怖くて男同士が気楽ってのは俺たちも思うときあるもんな」

僕の言葉に雄二、陽介も続ける。

そしてそのまま完二くんを外に運ぶ。

僕は着替えるのを忘れそうになったけど雄二が気付いていたおかげで男の姿で……

 

 

完二くんが長時間テレビの中にいたせいで疲れきっていたので今日のところは帰って休んでもらうことにした。

体が治ったら僕たちの方からも、彼の方からも話を聞かせてもらうことを約束して。

そのあと雄二が僕の家によって夕飯を食べて帰った。久しぶりに賑やかな夕食に菜々子ちゃんも喜んでいた。

その時叔父さんに僕たちが染物屋に出入りしていることを怪しまれたが雄二が天城さんの名前を出して誤魔化した。

とりあえず完二くんは助け出したし、できれば清涼祭に遊びにいくまで次の事件が起こらないといいな。




熱気立つ大浴場編はこれで終了です。最後の方はさらっと流したけど今回は割とシリアスかな、それでも少しはバカやってますけど。
次回からは日常……と言いたいですがペルソナ外のイベント清涼祭が入るので次回から日常編をやらずに清涼祭編に入ろうと思います。当日には完二も復帰できる予定ですがその前の準備もありますからね。
では次回もよろしくお願いします。
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