6/6 月 晴
今週の週末が清涼祭という時期、ようやく完二くんが学校に登校してきた。
昨日までは清涼祭の大会に備えて僕と陽介、里中さんは勉強をし続けていて、昨日の休日に試験を受けようやく解放されたところだ。
「それで、完二が来るっていうのに雄二たちは来れないのか?」
完二くんと屋上で待ち合わせをして待っている間に陽介が話しかけてくる。
「うん、清涼祭の準備が忙しいみたいだよ」
「翔子もそう言ってたよ」
「美波もそうみたいだね」
女の子たちはメールや電話で頻繁に話しているらしく天城さんと里中さんも続けて言う。
「それでも雄二はサボりも多そうだし電話で参加するかも……」
僕は雄二に電話してみる。
Prrrr Prrrr
「出ないなあ……」
少しのあいだ呼び出し音が続き
「…………明久か?」
「え? ムッツリーニ?」
なぜか雄二の電話にムッツリーニが出る。
「…………今、雄二は死にかけている」
また霧島さんかな?
「今日は何をやったの?」
「…………まさか姫路の……がこんなに……いや、なんでもない」
「え? 姫路さんがどうかしたの?」
「…………気にするな、俺は雄二を蘇生させるからこれで……」
そう言ってムッツリーニは電話を切る。
「雄二はなんだって?」
陽介が訊ねてくる。
「あ、今死にかけてるみたい」
「ふーん」
「坂本くんも大変だね」
「いや、花村も雪子も慣れすぎでしょ、普通に死にかけるとかおかしいから」
いつものことだというのに里中さんはわざわざツッコミを入れる。天城さんは霧島さんと仲が良いためか慣れた様子なのに……
「う、うぃーす!」
そこで少し緊張した様子で完二くんが屋上に来る。
「ぷ……以外に敬語じゃん」
「え!? うぃーすって敬語だっけ?」
里中さんの言葉に天城さんがツッコム。
「ま、不良にとっては○○っスとか付けると敬語だよな」
陽介が補足する。
「や、だってその……先輩だったんスよね」
その言葉に僕たちは頷く。
「えと……ありがとうございました、あんま、覚えてねえけど……でも先輩方が女装してまで助けてくれたのは覚えてるっス、インパクト強かったんで」
「むしろそこは忘れてくれ……」
完二くんの言葉に陽介が返す。
「僕たちの女装は忘れてもらうとして、教えて欲しいことがあるんだ」
黒歴史は葬られるべきだと僕は話題を変える。
「さっそくだけど、あの時会ってた男の子、誰?」
「え? 事件の方じゃなくてそっち?」
里中さんの言葉に思わず僕は聞き返す。
「坂本くんも気にしてたし重要じゃん」
「あ……っと、あいつのことはオレもよくは……つか、まだ二度しか会ってねえし」
「二人で学校から帰ってたじゃん。何話したの?」
「や、えと、最近変わったことねえかとか……ほんとその程度で……けど、自分でもよくわからねえんスけどオレ……気付いたらまた会いたい、とか口走ってて……」
「男相手に?」
里中さんのツッコミがちょっと厳しい。
「さ、里中さん、あまりそこには触れないでおこうよ」
嫌な予感しかしないので僕は里中さんの追求を止める。
「だ、だよな、そこは気にしない方向で行こうぜ」
陽介も僕の言葉に同意する。
「すんません、オレ、自分でもよくわからなくて……女ってキンキンうるせーし、スゲー苦手で……男といたほうが楽なんすよ。だからその……自分が女に興味を持てねー性質なんじゃないかって……けどゼッテー認めたくねーし、そんなんでグダグダしてたっていうか……」
「まあ、そこは雄二の分析したとおりだな、確かに男同士の方が気楽なとこあるよ」
陽介が言い。
「うん、僕も女の子といると生傷が絶えないからね。それでもやっぱり女の子のほうがいいと思うけどね、完二くんだって女性に興味あるでしょ?」
「いや、吉井くんのはちょっと特殊だと思うけど……」
僕の言葉に里中さんは言うが雄二もそうだし割と一般的だと思う。
「もう大丈夫っスよ、先輩を見てると自分がまだ良い方だって思えるっス」
僕の問いかけに完二くんは答えるけどその認識は……
「オレのは勝手な思い込みだってことっスよ、壁作ってたのはオレのほうだったんだ」
完二くんの作ってる壁? 僕達が疑問の表情を浮かべているのを見て完二くんが説明をする。
「あ、えーと……うち代々染物屋なんスけど……あ、知ってるのか。親は染料は宇宙と同じとか、布は生きてるとか、ま、ちっと変わってたんで……」
うちの親ほど変わってはいないと思うけど……
「んな中で育ったもんで、オレ、ガキの頃から服縫うとか興味あったんスよ。けどそういう事言うとやっぱ微妙に思うやつもいるみたいで……女にはいびられる、近所は珍しがるで、一時はもうなんもかんもウザかったんスよ。で、気付いてみりゃ一人で暴れてたってことっスかね」
「へえ、僕は裁縫が出来るのはすごいと思うけど」
僕も最低限は出来るけど本格的なのは無理だ。
「だな、明久の料理もそうだけど俺の印象だと家庭的な男って意外とプラスになったりするよな」
陽介も同意する。そこら辺は考え方の違いなのかな。
「どもっス……すんません、なんかオレ一人で喋っちまって……あー、今のなし、なんかオレすごくかっこ悪いっスね」
「そんな事無いよ、僕は完二くんのその考えは隠す必要ないと思うな」
ムッツリーニのようにエロ目的の場合は少し隠した方が良いと思うけど完二くんのは誇って良いと思う。
「そうっスか……でもこんなん人に始めて話したぜ……」
完二くんはスッキリした顔で言う。
「意外に純情じゃん、つか良い子じゃん」
その様子に里中さんは言う。
「い、良い子はやめろよ」
「でも暴走族を退治したのもお母さんのためでしょ? 普通に良い子だと思うよ」
僕も便乗して完二くんをからかう様に言う。
「ちょ、なんで知ってんスか!?」
慌てた様子の完二くんに僕達は笑う。これから完二くんとも仲良くやっていけそうだ。
「んで、二度目に俺らと会った後のこと何かおぼえて無いか? ほら、お前が明久を追いかけていかなかった方の日」
「あ、えーっと……うちに戻って……部屋で不貞寝決め込んで……あれ、誰か来た様な……」
天城さんのときと同じ!? 陽介も同じことを思ったのか顔色が変わって完二くんに問い詰める。
「誰か来た!? どんな奴だ?」
「あ、いや、そんな気がしただけで誰も来て無いかも……」
けど完二くんも天城さんと同じでそこは覚えてないみたいだ……
「あと思い出すことって言や……なんか変な入り口みたいなのとか……気が付いたらあのサウナみたいなとこにぶっ倒れてたっス」
「それってもしかしてテレビだったりしない?」
あそこにいたという事はテレビに入ったという事、天城さんが確認をとる。
「あ? あー言われてみりゃそんな気も……てか、なんでスか?」
「うん、そこはあとで説明するよ」
テレビの中は入ってもらって説明した方が良い。
「警察に何か聞かれたか?」
「あー、お袋が捜索願とか出しちまったんで、ちっとだけ聞かれたっス。今と同じような事言ったらわけわかんねーって顔してたけど……」
そこまで言ってから完二くんは思いついたように僕達に聞く。
「あー、先輩方もしかして探偵みたいな事やろうっての?」
「うん、今ここにはいないけどこの前一緒に完二くん助けた3人も含めて犯人を捕まえようとしてるの」
里中さんが答える。
「あ、そう言えばいないっスね、どうしたんスか?」
「あの3人は学校違うから、向こうはもうすぐ学園祭なんだ、僕達は遊びに行くけど……完二くんも一緒に行くよね?」
遊びに行くなら人数が多いほうが良いと思って僕は完二くんも誘う。
「え? オレも行っていいんスか?」
「うん、もちろん」
「そ、そういう事ならお供するっス」
「明久、話逸れてる」
陽介が注意してくる。
「あ、そうだったね、雄二たちも含めて犯人を捕まえようとしてるって所だっけ」
「あ、そうだったっスね、それ、オレも頭数に入れてほしいっス、ひでえ目にあったから誰かの仕業って言うのなら十倍にして返さないと気がすまねえ!」
完二くんもやる気を出しているみたいだ。
「完二なら戦力として頼りになりそうだし、歓迎するぜ」
陽介が答え
「うん、あたしも賛成」
里中さんが答えて天城さんも頷く。
「もちろん僕も賛成だよ、よろしくね、完二くん」
「あざっス! 巽完二、先輩らのためにも命張るっス! あと吉井先輩、オレの事は完二で良いっス、同性の先輩相手に君付けだと硬い気がするんで」
「わかった。それなら僕も明久で良いよ。よろしく、完二!」
僕は完二と握手を交わす。
『我は汝……汝は我
汝新たな絆を見出したり……
絆はすなわちまことを知る一歩なり……
汝、皇帝のペルソナを使いしとき
我ら、更なる力の祝福を与えん』
「仲間が増えた祝いは雄二達と合流したときにやるとして、クマんとこ行っておくか」
陽介の言葉で僕達はテレビの中に入ることにした。
「あー言われてみればいたような……先輩方のほうがインパクト強くて忘れてたっス……」
完二はクマを見て思い出すように話す。
「クマだったのか?」
「うん、クマらしいよ」
きぐるみに見えるけど本人がクマというからクマなんだろう。
「っつかなんでクマなんだ?」
「知らん」
完二の言葉に陽介が返す。僕と陽介が一番クマと付き合い長いけど分からない事だ。
「クマも知らん。ずっと悩んでいるの」
本人も知らないみたいだ。そしてクマはまだ自分が何者かで悩んでいたんだ。
「な、なんか可愛いじゃねえか……さ、さわって良いか?」
そう言えば完二のシャドウも僕のジャックフロストに反応してたっけ、可愛い物が好きなのかな?
「お触りはお断りクマ」
クマに断られて完二はちょっと残念そうだ。
「ところで、天城先輩もさらわれたんスよね?」
「え、うん、完二くんの前に……」
「てこたぁ……先輩もなんかさらけたんすか?」
「バカ、完二、お前!?」
完二の言葉に陽介が止めに入るが……
「どんなだったんスか、先輩の……」
パン
それでも聞こうとする完二が天城さんに叩かれる。
「うごあっ!」
「あ、ごめん、スナップ効いちゃった」
「あ、あごが……」
「完二、天城さんで良かったほうだよ」
「だよな……今いない連中にそんな事聞いたら何されるか分かったもんじゃねえ……」
攻撃力という面では里中さんも含めて女子達の中では天城さんが一番低い。まだましな方といえるだろう。
「き、気をつけるっス……」
完二も学習したようでよかった。みんな聞かれたくないことだろうからね。
「そうそう、仲間になった記念に完二にこれをプレゼントするクマ!」
「お、これだな、例のメガネ」
そう言って完二がつけたのは……
「に、似合う……うぷぷ……」
天城さんが笑い出す。つまり例の鼻眼鏡だ……
「ぷぷ……あはははは!」
「ハハ、すげえ、明久と同じで完二も似合ってるよ」
陽介も笑い出す。
「完二、これも通過儀礼と思った方が良いよ」
「明久先輩も着けたんスか?」
完二の言葉に僕は頷く。
「ちゃんとしたのあるのに、雪ちゃんこっちにしようって聞かないクマよ」
クマは女の子に言われたら従うだろうな、正直僕でも従う。
「翔子達にも見せないと……あはは」
「いや、あまりさらし者にするのも可愛そうでしょ」
爆笑する天城さんを里中さんが止めてくれる。このメンバーだと里中さんがかなりまともに見えてしまう。
「そうだな、いい加減ちゃんとしたの渡してやれよ」
陽介が言って完二くんにきちんとした少し色の付いたメガネが渡される。
「予備もあったのに残念クマ」
「それ、天城やクマに持たせておくと色々つけて回りそうで危険だな」
陽介がそう言って予備の鼻メガネと完二がつけた鼻メガネを回収する。
「花村が預かるってのも心配だけどね」
里中さんがそういうが陽介はまだマシなほうだと僕は思う。
そしてクマへの紹介が終わったので僕達は解散する事にした。
召喚大会に向けての勉強で
知識 バカの中ではまし(Fクラス上位級) →できない方(Eクラス級)
日付が飛んで完二が仲間に入ります。時期的に雄二達が抜けるのは難しいだろうと思い今回は参加せず、遠くで死に掛けていますが……
明久がいなかったから一巻時のお弁当がなかったので雄二にとってもこれが初です。
さて、次回かその次くらいには当日になると思います。
では次回もよろしくお願いします。