バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第六十一話

「酷い目にあった……」

まさかこんなところで知り合いに会うとは思わなかったよ……

僕は姫路さんと一緒にFクラスの教室に戻る。

「おう、戻ったか、明久」

雄二と陽介も含め、試合に出てるみんなはもう戻ってきていた。今回は顔を誤魔化そうとしたりでちょっと時間かかったしなあ。

「あの妨害した3年生二人はどうなったの?」

雄二と完二で追いかけていたはずだけど。

「すんません、オレと坂本先輩で一発づつは叩き込んだんスけど逃がしちまいました」

「俺の試合時間になってしまってな。完二単独で追いかけさせると後々問題になったら困るしな」

僕の時は問題になっても良いからと行動させる雄二も後輩には気を使うようだ。

「まあ、それはともかくいつまでお前はその格好でいるんだ?」

「あ、着替えるの忘れてたよ」

「お前その格好で試合に出たのかよ……」

「さすが吉井くんだよね……」

陽介と里中さんに呆れられる。

「と、とりあえず着替えてくるね」

「まあ、待て明久」

着替えに行こうとした僕を雄二が捕まえる。

「僕、早く着替えたいんだけど……」

「たかが女装でそこまで気にする必要もないじゃろ」

「秀吉は女の子だからわからないかもしれないけど、男がこんな格好でうろつくのは恥ずかしいんだからね!」

「演劇の衣装で着慣れてるだけで、ワシはおと……」

「それで、雄二、引き止めた理由は何?」

一刻も早く着替えたいので雄二に理由を問うことにする。

「ああ、この店の売上のために手を打とうと思ってな」

そう言って雄二が取り出したのはチャイナドレス。

「なるほど、これを秀吉が着るんだね?」

「ああ、これを明久と秀吉が着る」

「ちょっと待って!? 僕の着替えを止めた理由ってそっちに着替えさせるため!?」

メイド服に続いてチャイナドレスを着て歩いたら僕はもうこの学校に戻ってくることができない。

「なんで女子がいるのにわざわざ男のチャイナドレス見ないといけねえんだよ……」

陽介が呆れたように言う。

「そうだよ、姫路さんとか里中さんがいるのになんで僕が着替える必要あるのさ!」

「ちょっと、アキ、なんでウチをスルーするのよ!」

「痛い、痛いよ!? 美波、僕の首は180度回転するようには出来てないよ!?」

「なら今日から360度回転するようにしてあげるわよ!」

なんで美波がこんなに怒ってるの!?

「明久っていうのは冗談だったんだが……」

「もう聞こえてなさそうっスね……」

「ワシは冗談じゃないんじゃな……」

意識が消えゆく中で思う。秀吉が着ないという選択肢はないだろうと……

 

 

「へえ、三人とも似合うじゃん」

美波に姫路さん、秀吉の3人がチャイナドレスを着て戻って来た。

パシャパシャパシャ

ムッツリーニが指が擦り切れる勢いで写真を撮っている。

「わあ、すごい、菜々子も着てみたい」

「はい、葉月も欲しいです!」

菜々子ちゃんと葉月ちゃんも似合いそうだよね。

「といっても三着しかないからな……サイズの問題もあるし」

雄二はこの状況も見越してクラスメイト3人分は用意してたみたいだけど。

「…………俺に任せろ」

「ムッツリーニ? なんでそんなすご勢いで裁縫を!?」

「…………里中のも含めて3人分……さすがに厳しいか……」

「え? いつの間にかあたしも着る流れになってる?」

こいつは三人分の服をこの場で作るつもりなの!? ……っていうか菜々子ちゃんまで守備範囲なのか、コイツは……

僕はムッツリーニの凄さに戦慄する。

「あの……オレでよかったら手伝いますけど……」

完二が控えめに口を出す。

「…………できるのか?」

「一応うちが染物屋なんで……」

完二は裁縫が趣味ということを隠していたはずだ。こうして積極的になれるのは良いことだと思う。

「ということは女の子三人分のチャイナドレスが追加ということか」

「ムッツリーニだけでは時間がかかるとこを新戦力があれば……」

「がんばれ、巽! 俺たちは応援しているぞ!」

Fクラスの奴らは裁縫ができる男子の否定より自分の欲望しか目に入ってないけど……

「……オレの趣味が否定されないのは嬉しいんだけど……なんか素直に喜べねえな……うお、ムッツリーニ先輩すげえ……」

「…………お前も充分な腕だ」

エロが絡むと妥協しないムッツリーニが認める完二の実力が本物だとわかる。

「ムッツリーニ、次の試合までに里中の分できるか?」

「…………任せろ」

「まあ、せっかくだから着てみるのも良いけど……まさか試合でも着て行けって言うの?」

「ああ、そのほうが宣伝になるしな、明久も嬉しそうだぞ」

「そ、そんなことないよ!?」

「じゃあ、チャイナドレスは嫌いか?」

「大好きだ!」

しまった!? 雄二に釣られた!?

「今のは誘導尋問だよ!」

「いや、勝手に誘導されただけだろ……」

陽介は今だに雄二の悪辣さが理解できてないのか!

「ま、明久より次の試合は俺たちが気合入れないといけないぞ、陽介」

「へ? 次の対戦相手ってそんなに強いのか?」

対戦表によると僕たちの相手は美波と里中さん、決して油断できない相手なのにそれ以上なのかな?

「ああ、次の対戦相手はさっきから妨害してくる3年生のうちのモヒカンの方だ」

 




ちょっと短めですけどここで一旦切ってます。
常夏コンビもバラけたんで片方は雄二と陽介に戦ってもらいます。
ムッツリーニがいれば完二の悩みは薄れますよね、エロのために裁縫をやるのに比べたら完二はまともなんですから……
では次回もよろしくお願いします。
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