「おかえりなさい。アキくん」
僕の姉、吉井玲、この人の恐ろしさに比べたら最近の少し優しくなった美波の攻撃など微々たるものだ。
「た、ただいま、姉さん……」
「…………身内か」
ムッツリーニがいつの間に手にした凶器をしまいつつ言う。
「い、いつの間に日本に帰ってきたの?」
姉さんは確かアメリカの大学に留学していたはず……
「大学は昨年に教育課程を修了しました。それに家を無人にするわけにいかないので帰国したんですよ」
「ん? 明久、お前の姉貴、外国の大学行っていたのか?」
「あ、うん、アメリカの……どこだっけ?」
「ボストンですよ」
「ちょっと待て!? まさかそれってハーバード……」
雄二には心当たりがあったみたいで驚いた顔をする。うちの姉さんは常識がない割に頭良いからなあ……
「よくご存知ですね。その通りです」
「「「「ええ!?」」」」
「嘘だろ、明久の姉貴が?」
文月のメンバーだけでなく八十高のメンバーまでも驚いた顔をする。
「あたしですら知ってる学校だよ!?」
へえ、里中さんまで知ってるくらい有名な学校なんだ。
「先輩の姉貴ってすごいんスね」
「なるほど、知能をすべて姉貴に取られたんだな」
「雄二、それってどういう意味?」
バカにする視線じゃなく憐れみで見られているのが腹立たしい。
「それよりアキくん、いつまでお客様を玄関に立たせておくのですか? どうぞ皆さん、中にお入りください」
あれ? 思ったより怒ってないのかな? 姉さんがみんなを家に招き入れる。
「あとアキくん、このお客さん方についてあとでボッキリお話があります」
……姉さんの視線は女性陣に注がれている。
うん、僕は今日で死ぬかもしれない。
みんなを中に招き入れて自己紹介をする。
「明久の身内は二人共ワシを男として見てくれているのになぜお主だけがワシを男と見ないんじゃろうな」
自己紹介が終わったあと秀吉が僕を呆れた目で見ているが菜々子ちゃんは純粋だし、姉さんは天然だから秀吉の性別を勘違いしているだけなんだけどな。
「へえ、お兄ちゃんってお姉ちゃんがいたんだ」
菜々子ちゃんが羨ましそうに見てくるけど……
「菜々子ちゃんも今は僕をお兄ちゃんと呼んでくれるし同じだよ」
僕は菜々子ちゃんを本当の妹のように思っているし。
「そうですよ、私のこともお義姉ちゃんと呼んでいいんですよ」
「ちょっと待って、姉さん今ちょっとニュアンスおかしくなかった!?」
「何を言ってるんですかアキくん、私はアキくんの姉です。そしてアキくんは菜々子ちゃんのお兄ちゃんなのでしょう?」
「うん、そこは間違ってないね」
姉さんの言葉に僕は頷く。
「なら菜々子ちゃんは私にとっても
おかしい、言ってることは間違ってないはずなのにすごく間違ってる気がする。
「それではせっかくのお客さんです。今日は姉さんが料理をしま……」
「さて、みんなお腹減ったよね、今日は約束通り僕が料理を作るからね」
姉さんの言葉を指摘する前にやらねばいけないことがある。
命は何より大事だからね……
「あ、それなら吉井くん、私がお手伝いを……」
「よし、俺も手伝おう、台所はどこだ」
「…………三人いれば十分」
姫路さんがなにか言おうとするのを雄二とムッツリーニが遮る。
「女子の手料理は惜しいけど、ま、それは林間学校の楽しみにしておくか」
陽介は軽く言うが姉さんを止めたことで君の命を救ったんだよ。
「花村、お主の学校の林間学校では女子が料理をするんじゃな?」
「まあな」
「ワシは文月にそれがないことを感謝するぞい」
「……雄二とクラス違うから同じ班になれないし、なくて良い」
「あはは、坂本くんが他の女子の手料理を食べるとかは許せないだろうしね」
「そもそも、うちらFクラスは女子が3人しかいないからうちらが全員分作るの?」
「待つのじゃ、島田、Fクラスの女子は二人じゃろ!?」
みんなは話で盛り上がっているようだ。
「林間学校がなくてよかったと心から思う、二重の意味で命が危ない」
「…………Fクラスで大量の死人が出る」
雄二は霧島さんの嫉妬としてもFクラスの死人というのは奪い合いが起こるってことかな? 僕は転校して平和な学園生活だけど文月は相変わらず毎日が危険だなあ。
今日は僕の得意料理のパエリアを振舞った。
「あ、明久くんって料理上手なんですね」
「い、意外……去年同じクラスだったときアキはお弁当作ってきたこと一度もなかったのに……」
姫路さんと美波がなぜかショックを受けているみたいだ。
人数が多いから予備のテーブルも運んで食事にしようとするけど……
「ちょっと待ってください。アキくん、人数が多いんですし席順なんですが……」
「なに? 姉さん」
席順なんて誰がどこに座っても大した変わらないと思うけど……
「アキくんが私の膝の上に座りその上に菜々子ちゃんが座るということにしましょう」
「なんでそうなるのさ!?」
「昔はいつもそうやって食べていたじゃないですか」
「いつの話してるの!? やめてよ、僕がシスコンと思われるじゃないの!」
困ったことにみんなの目が引き気味だ。
「……雄二も私の膝の上で食べて良い」
「やめろ、翔子! 俺を巻き込むな!!」
「……私が雄二の膝の上でも良い」
「どっちもやらないって言ってるだろ!?」
あそこの夫婦はいつものことだとして僕はそんな体勢で食事をする気はない。
「菜々子一人で食べれるよ」
僕が困っているのを見て菜々子ちゃんが姉さんに言ってくれる。
「そうですか、仕方ありませんね」
菜々子ちゃんに言われて姉さんも諦めてくれたみたいだ。
「あの……あっちの方は良いんスか?」
完二が雄二達の方を見て言うけど……
「いつものことだから放っておけば良いよ」
天城さんがきっぱりと言う。
「雄二、食事中に騒ぐのは行儀悪いよ」
「お前ら、翔子の態度に慣れすぎだろ!?」
この二人のはいつものことだし、騒ぐことではない。
そのあと、隣で食事するということで霧島さんが妥協してみんなで食事を始めた。
「ところでアキくん、転校して結構経ちましたが成績の方はどうですか?」
和やかな食事の場で姉さんが嫌なことを聞いてくる。
「一応少しは上がってるよ」
菜々子ちゃんにみっともないところを見せたくないという気持ちと天城さんに勉強を見てもらえていることで前よりは勉強をしている。
僕は今回の試験召喚大会のために受けた文月のテストの結果を姉さんに渡す。
「おや、アキくんはわざわざ文月でテストを受けたんですか。これなら結果がわかりやすいですね」
姉さんは僕のテスト結果に目を通す。
「あれ? 前のテストの結果と比べないんですか?」
里中さんが疑問の声を上げるが……
「問題ありません。アキくんに関することは全て覚えてますので」
「ど、どれは姉さんの記憶力がいいからだよね!? 深い意味はないよね!?」
この姉は油断するととんでもないことを言い出すのでここは確認しておきたい。
「愛する人のことを記憶しておくのは当然でしょう」
「ははは、明久、大事にされてるな」
雄二のバカは気楽に笑っているがそういうレベルではないんだ。
「は、あはは、そうだよね、家族愛って大事だよね」
僕は家族の部分を強調して言う。
「何を言っているんですかアキくん。姉さんは家族としてはもちろんそれ以上に異性としてアキくんを愛していますよ」
「台無しだ!? それを聞きたくなかったから家族を強調したのに!?」
「言わなければみんなスルーしてたのにな」
「明久らしく墓穴を掘っておるの」
陽介と秀吉が僕の言葉言う、そうか余計なことを言わなければよかったのか……
「アキ、姉弟同士って犯罪なのよ」
「どうですよ、明久くん、姉弟とか同性とかはいけないと思います」
「美波、僕はそんな気はないからね! あと姫路さん、同性に関しては話題にすら出てないよ!?」
さっき陽介と秀吉は沈黙も手だと言ってたけど、このメンバーでは沈黙していては泥沼化するような気がする。
「あはは、だよね、姉弟とかはないよね」
里中さんが僕の味方に回ってくれる。こういう時は常識のある八十高の方がありがたく……
「あ、でもイザナギって妹を妻にしてるんだよね」
「「「ブハッ」」」」
なかったーーー!? 天城さんが爆弾を落とす。食事中の会話だったことが災いして僕のペルソナがイザナギと知っているメンバーが吹き出す。
「…………神話では近親婚は珍しいことではない」
「うむ、演劇の題目で神話を扱ったことがあるがわりとあることじゃな」
事情を知らないムッツリーニと秀吉が気楽に言うが……
「アキ、まさか……」
「いやいや、ありえないから!?」
思わず心の中からイザナギを消しそうになってしまった……
「そ、そうだよな、心当たりがあるからってそれが現実を指すとは限らないだろう!」
なぜか雄二が僕に助け舟を出す。
「俺も他人事じゃねえからな……」
僕の表情をみて雄二がアイコンタクトで言う。そうか、ペルソナの関係で言うと雄二と霧島さんも他人事ではいられないんだ……
「アキくん、確かに成績上がっていますね」
異性として愛してる発言でかき回しておいて後はマイペースに僕の成績を見ていた姉さんが僕に向けていう。
「今それどころじゃないからね!?」
でも僕は今はそれどころじゃ……
「そうですか、成績が上がったご褒美として姉さんと約束した『不純異性交遊禁止』を破ったことを許そうかと思いましたが、それならばしっかりと罰を……」
「ごめんなさい。成績が上がったので許してください」
僕は即座に土下座して姉さんに許しを請う。
イザナギに関する疑惑で殺されることはないけどこっちは命がかかっているんだ。
「明久……お前も家族で苦労してたんだな……」
なんか今夜の雄二はやけに優しい……
「アキくん、この調子なら安心できます、期末テストも期待していますよ」
『我は汝……汝は我
汝新たな絆を見出したり……
絆はすなわちまことを知る一歩なり……
汝、女帝のペルソナを使いしとき
我ら、更なる力の祝福を与えん』
なんかコミュニティできちゃった……僕は今までいくつものコミュニティを築いてきたけど初めて絆を深めることに躊躇いを覚えた……
ということで玲さんコミュ発生。アルカナは女帝です。
意味としては母性や成熟した女性などの意味を多く含めています。
いろいろ歪んだ愛情も示しますがそれでも彼女は明久を見守る女性ではあると思うのでそのような立場を取らせていただきました。
ということですごく遅くなりましたがアルカナクイズの清涼祭編で発生するコミュ第一弾は吉井玲でアルカナは女帝でした。感想欄での募集じゃないので回答者が少なかったのもあり正解者は0でした。
あ、ちなみに玲さんはイザナミとは無関係ですので……このネタで明久を弄りたかっただけです。
では次回もよろしくお願いします。