バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第六話

「では今日のところはこれまで。明日から通常授業が始まるからな」

初日だから授業がないとはいえ諸岡先生の無駄に長い話は疲れたなあ。

クラスメートも解放されて帰り支度を始めた。けど……

『先生方にお知らせします。ただいまより、緊急職員会議を行いますので至急、職員室までお戻りください。また全校生徒は各自教室に戻り、指示があるまで下校しないでください」

校内放送がかかる。さすがに初日から無視して帰るわけにいかないよね。

「うーむ、いいか? 指示があるまで教室から出るなよ」

諸岡先生もそう言って職員室に行く。

でもどうしようかな、今日転校してきたからまだ友達もいないし……

「よう、吉井、朝はありがとな」

考え事をしていると後ろの席の花村くんが話しかけてきてくれた。

「あはは、別に大したことしてないよ」

「しかしさっきの放送なんだろうな、放課後生徒全員残すとかあんまりないだろ」

「そうだよね、せっかく授業なくて早く終わったのに」

「だよな、俺これからバイトあるのに」

話をしていると外からパトカーのサイレンが聞こえてくる。

「何かの事件か?」

そういえば叔父さんが朝早くから出て行ってたような気もする。

『全校生徒にお知らせします。学区内で事件が発生しました。通学路に警察官が動員されています。できるだけ保護者の方と連絡を取り、落ち着いて、速やかに下校してください。警察官の邪魔をせず、寄り道などしないようにしてください。繰り返し、お知らせします……』

「事件!?」

「なになに、どういうこと?」

「ね、見に行こうよ」

放送が流れて教室がざわめき出す。

「これ、放送逆効果だよな。大人しく帰るどころか野次馬増やしてそうだ」

「こういうの聞くと逆に気になるかもね」

「あれ? 花村って吉井くんと知り合いなの?」

帰り支度しながら花村くんと話していると僕の隣の女の子が話に割り込んできた。一緒に赤いカーディガンを着た黒髪の女の子もいる。

「さ、里中、ああ、朝ちょっと会ってな」

花村くんが何故か焦った様子で返答する。

「ま、良いけど、ね、吉井くん、よかったら一緒に帰らない?」

「うん、別に良いよ」

転校初日の僕に気を使ってくれてるのかな。

「あー、あたし里中千枝ね、隣の席なのは知ってるでしょ?」

「うん、いくら僕でもそんなすぐに人の顔は忘れないよ」

「んじゃ、ヨロシク」

「うん、よろしくね、里中さん」

「で、こっちが天城雪子ね」

「あ、はじめまして、なんか急でごめんね……」

「のぁ、謝んないでよ、あたし失礼な人みたいじゃない。ちょっと話を聞きたいなーってそれだけだってば」

「僕は助かったよ、まだ友達少ないから声をかけてくれるのは嬉しいし」

「あ……えーと、里中……さん」

「ん、花村も一緒に帰る?」

「いや、そうじゃなくて……これ」

そういって何かを差し出す……まさかラブレター!?それなら僕は花村くんと友達になるのを考え直すべきか!?

「……申し訳ない! 事故なんだ! バイト代入るまで待って!」

そう思ったら差し出したのはDVD?里中さんが受け取ると花村くんは即座に

「じゃ!」

逃げ帰ろうとする。

「まて、貸したDVDに何をした!」

即座に追いかけて花村くんに蹴りを入れる。スカートでそんなことしたら!?

某友人が見たら写真を撮っていただろうである見事な蹴りで花村くんは吹き飛び机にぶつかる。

「なんで!? 信じらんない! ヒビ入ってんじゃん……あたしの成龍伝説がぁぁ……」

「俺のも割れそう……つ、机の角が直に……」

文月学園では直接的な暴力は日常だけど……男の急所への攻撃は滅多に見られないんだよね。

「だ、大丈夫?」

ボクと天城さんが声をかけてみる。

「だ、大丈夫……ま、まあ、DVDヒビ入れたのは俺だし、仕方ねえよ……」

「いいよ、雪子、吉井くん、花村なんか放っておいて帰ろ」

女の子にはわからない痛みだからか里中さんと天城さんはそのまま花村くんを放置する。

まあ、花村くんも大丈夫そうだし、僕も一緒に帰ることにした。

 

 

「雨止んだみたいだね」

「最近雨が降ると霧も出るからね」

3人で話しながら校門を出るとなんか他の学校の制服を着た男の子が近づいてきた。

「キミさ、雪子だよね。こ、これからどっか、遊びに行かない?」

あれ? 知り合いかな?

「え……だ、誰?」

天城さんは知らないみたい。ということはナンパ!?

こんな学校の前でナンパなんて命がいらないんだろうか!?

「なに、あいつ、どこの学校?」

「よりによって天城狙いかよ、普通一人の時狙うだろ」

と思ったら僕の想像と違う。おかしいな、文月学園でこんなことしたら下手したら周りの男子全員からカッターが飛んでくるのに……

「吉井くん、どうかした?」

カバンの中に手を入れて戦闘準備態勢だった僕に里中さんが声をかける。ここではそういう習慣ないんだ、なら僕も今日のところは我慢しよう。

「あ、あのさ、行くの? 行かないの? どっち?」

男が突然切れたように言い出す。

「い、行かない……」

「……ならいい!」

こ、これは僕でもダメなナンパだと思う。断られて切れてるのは見ててもみっともない。

彼はそのまま走り去っていく。

「あ、あの人、なんの用だったんだろ」

「なんの用って……デートのお誘いでしょ、どうみても」

「え、そうなの?」

天城さんはなぜ彼が声をかけてきたのかもわからなかったみたい。

そうして話していると花村くんが自転車を押してくる。

「よう天城、また悩める男子をフッたのか? まったく罪作りだなあ、おれも去年バッサリ斬られたもんなあ」

花村くんは天城さんに告白したの!?

「どうして吉井はそんな睨むように俺を見ているんだ?」

「花村くん、短い友情だったね」

「え? なんの話?」

女の子に告白した人には制裁するのが僕らの掟……

「なんか、殺気出てんだけど……」

……落ち着け、僕、ここは文月じゃないんだ。告白しても失敗してるなら花村くんの罪は軽い。ここは笑って受け流す寛容さも必要だ。

「いや、なんでもないよ、忘れて」

「そ、そうか? まあ、おまえら、あんま転校生をいじめんなよ」

「話聞くだけだってば」

それだけ話して花村くんは用事があるのか自転車で坂を下っていった。

そのまま僕たちは3人で帰ることにした。




下校まで書けなかった……なかなか話が進まないです。
ちなみにすでに友人となっている陽介が一緒に帰らないのはこの日はジュネスでバイトという設定です。
アドバイスを頂きましたのでプロローグ以外の今までの話に日付が変わった日に天気と日にちを入れました。
感想やご意見には色々助けられているので皆さんありがとうございます。
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