バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第七十一話

「ご苦労だったね、ジャリども」

決勝が終わり、表彰式も終わったあと、みんなが片づけをしているとき僕と雄二はババア長のところに来ていた。

「教室の修繕さえしてくれえばそれは良い。それよりさっきの明久の召喚獣、あれはどういうことだ?」

雄二の興味はさっきの僕の召喚獣がペルソナのような状態になったことに移っているようだ。

「あれはシステムの不具合だよ」

「システムの不具合?」

それだけで済むような状態じゃないと思う。

「あんたらバカの代表に説明して理解できないだろうがね」

ババア長は余計な前置きをして語り始める。

「そもそも試験召喚獣はオカルトと科学の融合というのは知っているね?」

「ああ」

「うん、一応」

僕でもそれくらいは覚えている。

「そもそもオカルト、未知の分野として召喚主の精神と召喚獣のリンクというものがある。これがあるから召喚獣は召喚主が思った通りに動くのさ」

こういうところは技術者なんだろう。ババア長は徐々に語りに熱が入ってくる。

「その中でもそこのバカは観察処分者ということで召喚獣と精神だけでなく肉体をもリンクさせていた。今回はフィードバックや物理干渉などは切っていたけど、大会では残っていたその観察処分者用の召喚獣を使用していたのさ」

だんだん何を言っているのかわからなくなってきた。

「これはこっちの方でも調査したいところだけど、さらにそこのバカによる強い精神干渉が召喚獣の方にも起こった」

聞いていて飽きてきた。

(雄二、何言ってるか分かる?)

(なんとなく伝わっては来るが専門的なことが俺に分かるわけがないだろう)

退屈なので聞き流しているがそれあらしばらくの間ババアの語りは終わらない。これだから年寄りの長話は嫌いなんだ。

「って自分たちの方から質問しておきながらあんたら聞いてないね」

ババアが僕たちの方を睨んでくるが

「すみません、年寄りがボケて同じ話をし続けるので聞き流してしまいました」

「人をボケ老人扱いするのはやめるさね!」

間違ってないと思う。

「専門的なことはわからないからとりあえず結論だけ聞かせてくれ」

雄二もあっさり返す。

「専門的なことなんて言ってないさ。これは公開されている情報に今回の要素を少し話しただけさね。まあ、バカに説明しても無駄だろうから今の仕様だけ教えてやることにしようか」

最初からそうしてくれれば良いのに……

「まず物理干渉、あんたの召喚獣はもう常時物理干渉が可能な仕様さね」

もう観察処分者じゃないんだからそういう余計な能力はいらない。どうせ雑用に使われるだけだし。

「ま、教師の立会がないと呼べないのは変わらないから悪用はできないよ。そして次にフィードバックだがこれはあんたと召喚獣が強く結びついたせいでもう切ることはできないね」

「ちょっと待ってください!? なんで観察処分者じゃないのにフィードバックを受けないといけないんですか!?」

「だから結び付きが強くて切れないのさ、そのうえ今までよりフィードバック率は上がってる。」

二度とフィードバックが無くならない上に今までよりダメージが大きいとか良いとこがない。

「あとはあんたの精神の具現なのかね。装備はこちらからは弄れないし妙な技も点数消費で使えるようだね」

姿がイザナギに似ているのは今の僕の心にはイザナギが呼び出せる状態になってるからかも。でもイザナギでよかった……見た目が危険なペルソナになってたら大変なことになっていたところだ。

「まあ、今はあんたはうちの生徒じゃないし、大した問題はないね、あたしとしてはじっくり研究したいところだたけど」

「嫌ですよ、ババアにじっくり研究されるなんて、セクハラで訴えますよ」

「この場合学園長の権力もあるからパワハラかもな」

僕の言葉に雄二が返す。

「ふん、バカどもと話していると頭が痛くなるだけさね、用事が済んだならさっさと帰りな」

「ああ、ついでに確認したいことがある」

雄二はまだやることがあるようだ。僕としてはもう用事はないんだけど……

「賞品の白金の腕輪はどうする?」

「そうだね、今回は吉井の召喚獣に軽いトラブルが起きたから相棒の姫路の方も調査したいので一時預かるとするかね」

そう言ってババアはニヤリと笑い雄二も同時に笑みを浮かべる。

「さて、そういうことだ。盗聴しても無駄だぞ、常夏コンビ!」

「え? どういうこと?」

この学校にムッツリーニの他に盗聴とかする人なんているの!?

「ああ、なんであいつらが俺とババアが組んだことを知っているのか疑問だったんだが盗聴していると考えると納得できる。今日一日あいつらがおとなしかったのも下手に動かず逆転のチャンスを狙っていたんだろうな」

こいつ前より頭切れるようになってないか、事件の調査をすることで普段から犯人側の心理を考えているのかもしれない。

「まあ、そうは言っても自首してくるほど殊勝じゃないだろうさ。ところで坂本、うちの学校の生徒がFクラスで他校の生徒に絡んだそうじゃないか」

ババアが突然関係のない話を雄二に振る。けど雄二はいつものようになにか企んでる顔で

「そういえばそうだな。向こう側がそのことを訴えてきたらどうなるんだ?」

「対外的には処分しないわけにいかないだろうね。不本意ながら停学、最悪退学処分もありえるさね」

えっと、他校の生徒に絡んだっていうのは僕たちのことだよね。でもその場合トラブルを起こしたことでこちらも処分を受ける可能性もあるけど……

「まあ、問題児である僕が処分を受けたところで大した変わらないしね」

観察処分者という肩書きを持ち、成績も底辺に近い僕と一応はAクラスで推薦を求める常夏コンビじゃ処分に対するプレッシャーは差があるだろう。

「ま、待ってくれ、教頭の情報を話す、だから……」

常夏コンビが許しを請うために教頭を売り学園長室に来るのは時間の問題だった。

 

 

「よ、お疲れ」

「陽介たちもお疲れ様、もう片付け終わったんだ」

僕たちが戻ると片付けも終わりみんながのんびりしていた。

「あのさ、坂本くんと美波ちゃん、ちょっとお話よろしいですか?」

姫路さんが雄二と美波に話しかけている。

「そういえば明久、如月ハイランドのチケットどうするんだ?」

陽介が僕に尋ねてくる。

「あれ? 陽介知らなかったの? このプレオープンの日って僕たちは林間学校だよ」

「花村気付かなかったんだ。だからあたしと美波が優勝しても翔子達にあげるつもりだったし」

「へえ、じゃあ美波も誘いたい人はいなかったのかな」

「いや、誘いたい人はいたんだろうけど……ね」

「まあ、里中から行かない理由聞いてたらそうなるよな」

ああ、相棒である里中さんに遠慮してってことかな。

「じゃ、チケットは姫路が持ってるのか?」

「いや、それが姫路さんも誘う人いないからってことで僕がもらったんだけど……」

持ってても行けないんだよね。だからと言って金券として売るのも気が引けるし……そうだ。

「そういうことならふさわしい人が持つべきだよね」

僕は思いついたのでAクラスの方に向かうことにした。

「あ、明久、ちょっと待……ああ、いっちまった、雄二、すまん。諦めて幸せになってくれ」

 

 

「霧島さん、ちょっと良い?」

「……吉井?」

そこには霧島さんと天城さんが話をしていた。

「……どうかしたの?」

「あ、うん、霧島さんにこれをあげようと思って」

「……これ……良いの?」

僕が差し出したのは当然如月ハイランドのプレオープンチケット。

「うん、だってその日は僕達林間学校で行けないし」

「あ、そう言えばそうだったっけ」

天城さんは忘れていたみたい……どちらにしろ霧島さんに譲るつもりだったみたいだから問題ないんだろうけど。

「でも意外だね。吉井くんは坂本くんが恋人作るのは反対してると思ったんだけど」

「うん、確かに雄二が霧島さんとイチャついてるとか許せないからそれはそれで処刑するけど……友達である霧島さんには幸せになって欲しいからね」

雄二は放っておいたら照れて何もしないしね。

「それって坂本くんは許さないから攻撃するけど翔子は応援するってこと?」

「うん、そうだけど?」

霧島さんみたいな純粋な想いは応援するのは友達として当然だし、雄二の幸せを妨害するのも当然だろう。

「ぷっ……あはは、矛盾しているけど、吉井くんらしい」

何がおかしいのか天城さんは笑い出す。

「……吉井、ありがとう」

 

 

『我は汝……汝は我

汝新たな絆を見出したり……

 

絆はすなわちまことを知る一歩なり……

 

汝、死神のペルソナを使いしとき

我ら、更なる力の祝福を与えん』

 

 

「それじゃ、僕はFクラスの方に戻るね」

「そろそろ帰る時間だし、私も吉井くんと一緒に行くね。それじゃ、またね、翔子、デート頑張ってね」

「……うん、雪子もありがとう」

僕は天城さんと一緒にFクラスの方に戻ることにした。

 

 

「おう、明久、戻ったか」

戻るとなぜかニヤニヤしている雄二と複雑そうな顔をしている美波がいた。

「うん、雄二達の方も姫路さんとの話は終わったの?」

でも周囲に姫路さんの姿は見当たらない。

「姫路なら両親と話し合いに行ったぞ」

「そっか、帰る前に声くらいかけようと思ってたんだけど」

「え? アキ、もう帰るの?」

美波の言うとおり高校生の僕たちなら帰るにはちょっと早い時間かもしれないけど

「菜々子ちゃんもいるしね。あまり夜遅くまでいるわけにいかないよ」

あまり遅くなると叔父さんが心配する。事件のせいで色々心配してるしね。

「そうだな、事件の件もあるし心配かけないために早めに帰ったほうがいいだろう」

こうして二日間の清涼祭は終わり、僕たちは稲羽に帰ることになった。

 

 

6/14 火 雨

 

 

「いやー、向こうの文化祭が終わったばかりなのに今週の週末は林間学校、こうイベントが続くとテンション上がってくるよな」

清涼祭が終わって数日、朝のホームルーム前に陽介のテンションは高いまま僕たちに話しかけてくる。

「林間学校なんてそんな良いもんじゃないよ」

里中さんはあまり気乗りしないみたいだけど……

「僕も楽しみだよ。文月だと勉強漬けの強化合宿はあったけど林間学校なかったしね」

数日間鉄人の監視で勉強するのに比べたら林間学校なんて天国に思える。

「あ、そっか、二人共転校生だから知らないんだ。うちの林間学校って……」

里中さんが説明をしようとするけど……

「お前ら、席に付け!」

「あ、モロキンが来た。話は後でね」

「不本意だがまた転校生だ」

「うそ……」

「マジかよ……」

そしてモロキンの後ろについてきたのは……

「文月学園から来た姫路瑞希です。みなさん、よろしくお願いします」

「席は……あそこ、里中の後ろが空いてるな。そこにでも座ってろ」

里中さんの後ろつまり僕にとって斜め後ろの席ということだ。

そして姫路さんは僕たちの方に歩いてきて

「これからよろしくお願いしますね。明久くん」

 

 

『我は汝……汝は我

汝新たな絆を見出したり……

 

絆はすなわちまことを知る一歩なり……

 

汝、月のペルソナを使いしとき

我ら、更なる力の祝福を与えん』

 

 




ようやく清涼祭編完結です。次回からまたペルソナ側に戻ります。
まずペルソナを知らない学園長ではできないペルソナを交えた召喚獣の補足説明をさせていただきます。
まず変化の理由としては元から召喚獣とペルソナ、割と共通点も多いですが明久の観察処分者仕様の場合、フィードバックなどさらに共通点は増えます。そのような状態だったところにペルソナ使いである明久が「他人のために戦う」という彼が最も熱くなる状況で試験召喚システムのオカルト部分にバグを与えた状態です。
もとが存在しない技術なので強引ですが納得していただけると幸いです。
そして現在の仕様ですが
①物理干渉可能 OFFにできない
②フィードバック OFFにできない 元と比べて増
③外見はデフォルメした明久をベースに服装、装備等は明久の装備ペルソナに準ずる(ただし明久が人型に遠いペルソナを装備している場合はイザナギになる)
④物理スキルは装備ペルソナの物を使用できる。魔法系・常時発動型スキルは使用不可

まあ、色々書きましたが基本的には原作のオカルト召喚獣に近い仕様です。ですから人型に近くて羽の生えてるペルソナとかにもなりますが飛べない。魔法も使えないです。
文月だと女性ペルソナの格好になっても受け入れられそうですね……

さて、次は瑞希の転校についてですがこれは初期段階から決まっていたことです。でも瑞希の転校話が出た時点でこの展開を予想していた方がいて驚きましたね。
そしてせっかくの林間学校なので彼女にも参加してもらいたくて時間的に無理がある気もしますが超スピードの転校となりました。特別捜査隊への加入はもう少し後になります。
そして今回ようやく翔子のコミュ発生、そして完全新規の枠として瑞希コミュは仲間になる前に発生しました。
アルカナは月、個人的に姫路瑞希というキャラに対しての意味としては不安。不満。不信感。恋愛に対しても同じような意味を持ち、また第三者がいる。隠された敵がいる。等の意味を持ちます。月のカードは正位置のままでは悪い方向への暗示となります。これが逆位置になれるかは今後の彼女次第。

しかし私はバカテスレギュラーキャラのアルカナ、正位置だと悪い方向に示してばかりですね。雄二の刑死者、翔子の死神、美波の塔、そして瑞希の月、玲さんは別としてもレギュラーでまともなのは今のところ秀吉の太陽だけですね。ムッツリーニも皆さん予想通りのアレなのでまともなんですが……
良い方向に変化させたいという私の無意識の願望なんでしょうかね(笑)

ではあとがきまで長くなりましたが次回から林間学校編に入ります。
では次回もよろしくお願いします。
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