夜、結局僕達は夕飯抜きで片づけをし、テントに入った。
「あー、クソ、ハラ減った」
陽介が辛そうに言う。
「仕方ないなあ、ここで僕が取って置きの」
「マジ!? なにか食いモンあるの!?」
僕がこっそりと他の調理班から取ってきたものを取り出す。
「塩と水、これがあれば一週間は楽勝だよ!」
「それで凌げるのはお前だけだろ!」
何故か陽介ががっかりしたように言う。
「僕はよくこれだけで済ませたけどなあ」
陽介が文句を言ってきたので仕方なく僕一人で舐める事にする。
「いや、明久先輩、それはオレも無理があると思うっスよ」
何故か僕たちにテントにいる完二までもがそう言う。
「つか、なんでお前ここにいるの?」
陽介も気になったのか完二に訊ねる。
「前も言ったけどバックれたら進級させねえって言われたんスよ。それに一年のテント葬式みてーに静かだし」
「まあ、お前がいたらそうなるわな」
未だに一年では恐れられている完二だ。居心地が悪いのも仕方ないだろう。
「ここ、先輩らだけなんスか?」
「うん、他の人はサボりみたいだからね」
完二の言葉に僕は答える。
「ならオレ、ここにいても良いっスよね?」
「どうせ僕と陽介しかいないし、良いよ」
「マジかよ、明久、俺はなんか嫌な予感するんだが……」
僕は答えるが陽介は何かいやそうだ。
「明久先輩は器でかいっスね。迷惑はかけないようにするっスよ。騒がなきゃバレねえし」
「仕方ねえなあ……」
完二の言葉に陽介も渋々認める。
「じゃあ、お前寝る場所あそこな」
そう言って陽介が示した場所は
「おぁ、すっげえ岩あるじゃねースか。寝れねえよ、これ。痛くて」
完二の言うとおり岩で出っ張っていて寝づらそうだ。
「うるせーな。騒がねえんじゃなかったのか?」
「陽介、お腹が減ってるからって完二に当たるのは酷いと思うよ」
「さっきから食事抜きって……なにがあったんスか?」
「訊かないで……思い出したくない」
「……だな、ただ一つ言えることは里中、天城、姫路、あいつらに二度と料理させたくねえってことだ……」
あのときのことを思い出すだけで恐ろしくなる。
「はぁ……ところで、先輩らの担任、モロキンとかって奴でしたっけ?」
「うん……惜しく無い奴を亡くしたよね」
「いや、死んではいねえだろ、で、モロキンがどうかしたのか?」
「あ、いや、前に捕まったときに知りもしねーのに中学時代がどうのとか文句言ってきたんスけど、今日はなんか虚ろな目でオレの前通り過ぎてなにも言ってこなかったんで。それでなにかあったかと思ったんスけど……」
「それが……料理の威力だよ」
「今日だけはアイツに同情する」
「い、一体どんな料理だったんスか!?」
完二の言葉に僕と陽介は遠い目をする。食べたらあの世に行きかける料理なんて知らない方が幸せだよね。
「ま、まあ、でもモロキンの野郎、殺された二人にも色々言ってたらしいっスよ。家出とか不倫するやつは殺されて当然だとか……」
「ま、あいつなら言いそうだよな。俺も去年転校してきたとき色々言われたし」
「うん、僕もいきなり落ち武者とか言われたしね。成績悪くて転校してきただけなのに」
「いや、お前の場合はそれを否定できなかったんだろ」
そう言えばそうだった気も……
「まあ、それでもムカつくぜ。てめえ仮にもセンコーだろっつの」
「あんな奴、ムカつくだけ損だぜ(もぐもぐ)」
「今日その報いとして重すぎるくらいの罰受けてるんだしね」
なぜか僕と陽介も罰を受けた気がするけど。
「ま、そうっスね……ってなに食ってんだよ、おい!」
言われて陽介に目を向ければ
「おっとっ○」
陽介が完二の持ってきたお菓子を食べていた。
「みりゃわかんだよ! オレのだろうが! クッソ、今日こそ潜水艦探そうと思ってたのによ」
完二は隠しキャラを探すためにお菓子を持ってきていたようだ。
「まあまあ、完二、僕の塩を分けてあげるから……」
「そんなん代わりにならねーよ!」
「あー、やっぱ菓子だけじゃ腹ふくらまねえ……」
僕と完二のやり取りをスルーして陽介が贅沢を言う。
「人のもの勝手に食っておいてそれかよ……」
「そうだよ、陽介、カロリーあるだけで十分なのに」
「ま、言っても仕方ねえしな、もう寝ようぜ」
「ま……良いけどよ……」
完二もそこまで怒ってないようなので僕達は寝ることにした。
「完二、お前もっとあっち行けよ」
「あそこじゃエビゾリになるんスよ」
僕たちのテントの建てられた場所は片側は崖になっていて下手したらずり落ちる、片方が岩があって寝辛いという最悪な立地だ。
「だれがこんなとこにテント立てたんだろうね……」
完二は体が大きいし陽介と僕も人並みはあるので少し狭いくらいだ。
「あの……さあ」
「なんスか?」
陽介が躊躇いがちに声を出す。
「この際だから……その、正直に言って欲しいんだけど」
「……はぁ」
「お前ってやっぱアッチ系なの?」
陽介がとんでもない事を完二に質問をした。
「ちょっと、陽介、その勘違いは完二が可哀想だよ!」
その気が無いのにそう言われることの辛さは僕もわかる。
「アッチ?」
完二はまだ質問の意図がわかって無いみたいだけど。
「いや、明久、ここはハッキリさせておかねえと不安だろ……俺ら、いま貞操の危機かもしれねーんだぜ」
「のぁ!?」
陽介の言ってる事を理解した完二が奇声をあげる。
「なななな何言ってんだじゃ、コラァ! そ、そんなんじゃねつってんだろうが!」
「ちょ、ちょっと待て、なんで豪快にキョドンるんだよ!? なおさらホンモノっぽいじゃねえかよ!?」
「んなわけねえだろうが!!」
「だ、大丈夫だよ、陽介、そもそも僕の家に泊まったとき何もなかったし」
清涼祭のときも僕の家で一泊したけどなにもなかった。今回も大丈夫なはずだ。
「あの時は雄二もいたからこいつが腕力で来ても抑えられたが、今こいつに力で来られたら俺と明久じゃ勝てねーだろ!」
確かに、完二相手になら僕と陽介が二人でかかっても勝ち目は無い。
「今はもう女なんか平気っスよ!」
「証明できんのかよ!?」
「しょ、証明だ?」
「じゃなきゃ俺ら一晩ビクビクして過ごす事になんだろうが!」
「いや、僕は完二を信じてるけど……」
誤解したままの方が完二が可哀想だと思うし……けど僕の言葉を聴かずに二人はヒートアップしていく。
「ケッ、もう良いっスよ。んならオレ女子のテントに行って来るっスよ」
女子のテント!? 里中さんや天城さん。姫路さんの寝ているテントに!?
「え? ちょ、そりゃまずいって! いちいち極端なんだよ! バレたら停学だって、明久、お前もこのバカ止めろよ」
バレたら……か。幸い今一番危険人物のモロキンは瀕死だ。ここは……
「完二、ちょっと待って」
僕は慌てて完二に声をかける。
「僕も一緒に行くよ!」
「バカがもう一人いやがった!?」
完二だけに美味しい思いをさせるわけにいかないよね。
「おうよ、行きましょうぜ、先輩! 巽完二なめんなコラァ!」
「ちょ、お前ら、待てって!」
そして僕と完二は女子のテントに向けて走り出した。
そこで僕の記憶は途切れている。気が付けば次の朝、自分のテントで寝ていた……
明久と完二がドーン☆されました。
しかし原作でも思いましたがテレビの中でなく現実世界で不意打ちだったんでしょうが完二を倒すとか、千枝すごいです。
さて、明久視点なので詳しく描写しませんが一人残った陽介もきっと大変だったことでしょう。
モロキンがボロボロで見回りがな方だけマシ……
では次回もよろしくお願いします。