第七十八話
6/19 日 曇
前の相談でターゲットが『テレビで報道された人物』という事になったので、僕はあれ以来きちんとニュースで確認するようにしていた。
今日も夕食時に叔父さんと菜々子ちゃんと一緒にテレビを見て確認をしていた。
『……以上。当プロ、久慈川りせの休業に関する本人のコメントでした』
久慈川りせ、りせちーか。さすがに芸能人はテレビに出るのが当たり前だしなあ。関係は無いと思うけど……
その後記者からの質問タイムが始まる。
けどりせちーが休業はちょっと残念だなあ。わりと好きなんだけど。
そんなことを考えてぼんやり見ていると
『休業後は親族の家で静養との事ですが、稲羽市ですよね? 連続殺人の!』
へー、連続殺人の稲羽市か。ゆっくり休んで復帰すると良いけど……
「って稲羽市!?」
「そうしたのお兄ちゃん?」
「あ、いや、りせちーがこっちに来るのかと思ってちょっと驚いたんだよ」
「お兄ちゃんもりせちゃん好きなの? 菜々子もりせちゃん好き!」
「ほう、お前もそういうのに興味あるんだな」
僕の発言に菜々子ちゃんと叔父さんが反応する。
けど稲羽に来るのは良いけど殺人事件を強調しなくて良いと思うんだけどなあ……悪いところに行くみたいに聞こえるし。
その後も無神経な発言で記者会見の場はあまり雰囲気がよくない。
「しかしこうなると野次馬が増えそうだな」
「テレビで稲羽に来るって騒いでるしね」
しかも実家が豆腐屋という事までばらしてたし。
「しかし何も無いのが取り柄の様だったような田舎町が今年はエラく騒がしいな……」
叔父さんはそう言うけど僕は今年のこの町しか知らないしなあ……
6/20 月 曇
「うーす」
昼休み、教室で陽介たちと話をしていると一年の教室から完二がやってきた。幸い姫路さんは転校してきたばかりなので手続きがあるのか今職員室に行ってる。
「お、来た。最近真面目に来てるじゃん。どしたん?」
「出席日数って面倒なモンがあるんで」
そう言えば完二は僕達と会う前はサボりまくってたんだっけ。
「学校はきちんと来ないとダメだよ。出席さえしてればお情けで進級させてくれる事もあるしね」
「はは、確かに明久は遅刻とかはあんましないな。授業中よく寝てるけど」
「これでも授業中に寝ることは減ってるんだよ! 今は半分以上起きてるし!」
「それより先輩ら、ニュース見たっスか?」
完二が話題を変えてくる、ニュースって言うと
「久慈川りせの休業のやつ?」
「あれね、今ブレイク中なのになんで休業するんだろ」
僕の言葉に里中さんが続ける。
「アイドルってのも大変だよなー、うん」
「陽介もりせちー好きなの?」
「もって事はお前もか? まだデビューして間もないけどこのままじゃ時期トップアイドルだぜ。俺結構好きなんだよ、なんたってキャワイイ」
僕と同じように陽介もりせちーのファンらしい。僕も陽介の言葉に頷いて同意する。
「へー、吉井くんの好みってああいうタイプ?」
「え? いや、恋愛対象と言うかアイドルだしね」
天城さんの質問に僕は答える。好きなアイドルと恋愛対象は別だしね。
「花村……キャワイイって、おっさんかよ」
里中さんが呆れたように陽介に突っ込む。
「まあ、でもこの町出身で小さい頃まで住んでいたらしいしファンも多いんじゃん?」
「ニュースだと彼女お祖母さんの豆腐屋さんに行くんでしょ? それ、もしかしてマル久さんのことかな?」
「マル久って商店街の豆腐屋さん?」
あそこなら僕も豆腐を買いに行った事がある。
「そうなの?」
陽介はジュネスで買うだろうし知らないみたいだ。
「うん、あそこの豆腐は美味しいんだ」
「そう言えば朝なんか騒がしかったっスね」
近所に住んでいる完二が答える。
「え? じゃああの豆腐屋に行ったらりせに会えんのかな!?」
「よし、それじゃあ行ってみようよ!」
陽介の言葉に僕は同意する。
「ちょっと、重要な点から逸れてない? そういうのに張り切ってると美波に教えちゃうよ」
「そうだね、野次馬はいけないよ」
里中さんに言われて僕は前言を撤回する。命に賭けるほどのものではない。いざとなったらあとで陽介と二人で行けばいいし。
「それで重要な点って?」
「事件の話よ。テレビ繋がりって話でしょ! 狙われるかもよ、彼女」
「そんな、りせは昨日今日テレビに出たわけじゃないじゃん。大体りせと事件って関係あるわけ?」
里中さんの言葉を陽介が否定する。
「それ、気になって調べてみたの。りせちゃんとアナウンサーの山野さんは、繋がりは自体ほとんど無いみたい。同じ番組に1、2度出た事があるくらい」
そして天城さんが調べてくれた事を教えてくれる。
「それじゃ、坂本くんにも意見聞いてみない?」
里中さんがそう言う。確かに、こういうときに雄二の意見は参考になる。
僕は雄二に電話して意見を訊ねる。
『ふむ……現時点で話題の人というのは気になるところだな。本人がそこに住んでいると言うのも重要だ。念のため調べた方が良いかもしれないな』
事情を話すと雄二は即座にそういう結論を出す。
「そうだな、もしこれでりせが狙われたら犯人の狙いさらに絞れるしな」
陽介が雄二の言葉に同意する。
「どういう事っスか?」
完二が訊ねる。僕もりせちーを調べる事で狙いを絞ると言うのは意味がわからない。
『絞るって言うより推理の裏付けだな。テレビで報道された人間が狙われているのかを確認するという意味がある』
雄二が説明してくれる。なるほど、推理の確認って言う意味なのか。
「つまりりせちーを見に行く理由が出来たっていう事だよね?」
『そういう事だ。俺も理由があれば翔子も文句は言わないしな』
確かに雄二が事件という理由なしに行けば霧島さんに殺されても不思議じゃない。
「うしっ! 張り切って行こうぜ!」
「『おう!」』
「3人ともテンション高いな……」
里中さんが呆れたようにいう。
「でも発表が昨日ってことはまだ引っ越してきて無いんじゃない?」
『そうだな、とりあえず予報ではもうすぐ雨だろ? 引き続きマヨナカテレビの監視を頼む』
しばらくは久慈川りせの動向を注意するという事で話は決まった。
明久の場合普通にアイドルにも興味があるだろうと思い雄二もろともりせには興味あるっていう事になりました。
ということで新章突入、色々回り道したせいで久しぶりに事件ですね。
では次回もよろしくお願いします。