クマが突撃した光が収まり、白く染まった視界が回復する。
「クマ、無事?」
僕たちはクマの方に駆け寄る。
「バカが、無茶しやがって」
そこには薄くペラペラになり倒れるクマがいた。
「クマ、みんなの役に立てたクマか?」
「立ったどころじゃねー、命の恩人だよ」
「ああ、あの状況じゃ俺達には打つ手がなかった」
クマの問いに陽介と雄二が答える。
「そか……よかった……一人ぼっちは嫌だから」
「クマくん……」
そっか、クマは僕たちのために無茶してくれたんだな……
「う、ク、クマ」
クマは立ち上がろうとする。
「な……なんじゃこりゃー!?」
そこでようやく自分の状態に気づいたらしく声を上げる。
「おおお……クマの自慢の毛並みが……おおぉぉぉ」
「体の状態より毛の状態かよ」
雄二が呆れたように声を出す。
「……とりあえず死にそうにはないな」
「アキや坂本以上に丈夫ね、このクマ」
陽介と美波もあきれたように声を出す。
「……久慈川りせは」
霧島さんに言われて僕たちはりせの方に駆け寄る。
「りせちゃん」
「ん、ここって……」
天城さんに声をかけられてりせは起き上がる。
「ごめん……なさい、わたしのせいで」
僕たちに向かって謝罪をしてくるけど
「大丈夫、気にしないでいいよ」
シャドウが暴れだすのは仕方ないこと、彼女のせいじゃない。
「ほんと……よかった……」
僕の言葉に安心したように言う。
「起きて」
そしてクマの力で元に戻った自分の影に向き直る。
「ごめん……いままで辛かったね。私の一部なのに、ずっと私に否定されて……私、どの顔が本当の自分か考えてた。けど、それは違うね。そんな風に探してちゃ……本当の自分なんてどこにもない」
彼女はもう自分を受け入れられるようだ。
「……本当の自分なんて……ない?」
後ろでクマが考えるように声を出す。
「あなたも……私も……テレビの中のりせちーだって私から生まれた。全部……私」
その言葉にシャドウは頷く。
そしてシャドウはペルソナに変化する。
そしてそのままふらつく。
「うわ、りせちゃん、大丈夫?」
僕は慌てそれを支える。
「りせでいいから、確かお店に来てくれた人だよね?」
「ああ、そうだな」
陽介がそれに答える。
「えっと、同じ学校の……先輩なのかな?」
「あ、うん、完二以外はみんな二年」
「助けてくれてありがとう……」
「あとで全部説明するから、今は」
そういって疲れた表情を見せるりせに里中さんが声をかけるが……
「おい!」
突然雄二に声をかけられる。
「クマの様子が」
言われてクマの方を振り向くと
「本当の自分なんて……いない?」
「お、おい、クマ」
完二がクマに声をかけるが……
「ダメ、下がって!」
りせが僕たちに警告の声をかける。
「あの子の中から……なにか!?」
『本当……自分? ククク、実に愚かだ』
「この声……クマ?」
クマの声なんだけどいつものクマとは雰囲気が違う。
そしてクマの後ろから不気味な雰囲気のクマが出てくる。
「な、なんだよ、あいつ!?」
「クマの影か!?」
陽介の言葉に雄二が答える。
「たぶん、そう、でも何かの強い干渉を受けてる」
そしてそれに対してりせが答える。
「な、なにがどーしたクマ?」
クマは状況を把握していないようで驚いた声を出して影の方を振り向く。
「お、おわあ!?」
『真実など得ることは不可能だ。真実は常に霧に隠されている。手を伸ばし何かを掴んでも、それが真実だと確かめる手段は決してない。なら……真実を掴むことに何の意味がある? 目を閉じ、己を騙し、楽に生きていく。その方がずっと賢いじゃないか』
「ち、ちょっと待て、お前何を知ってるんだ!」
クマの影の言葉に雄二が驚いたような声を出す。
「どうしたのさ、雄二」
「こいつなにかの干渉を受けているといったな? 明らかに他の影と比べて様子がおかしい。事件のことを何か知っているのか!」
しかし影は僕たちの方を無視しクマと会話をする。
「何を言っているクマか! お前の言っていることぜ~んぜんわからんクマ。クマと明久があまり賢くないからってわざと難しく言っているクマね!」
「ちょっとまって、ここで僕の賢さは関係ないよね!?」
確かに僕もこいつが何を言っているのかわからないけど。
「失礼しちゃうクマ、これでもクマは明久と違って一生懸命考えてるクマよ」
「まるで僕は考えてないみたいに言わないでよ!?」
「考えてるの?」
美波の問いに僕は答えない。否定できないからだけど。
『それが無駄だと言っているのさ……お前は初めからからっぽなのだから』
「!?」
からっぽの言葉にクマは動揺したよな表情をする。
『お前は心の底では気付いている……でも認められず、別の自分を作ろうとしているだけさ……失われた記憶などお前には初めからない。何かを忘れているとすればそれはそのこと自体に過ぎない』
「そ、そんなの……ウソクマ……」
『なら、言ってやろうか。お前の正体はどうせただの……』
クマの正体? ただのクマではないだろうけど……
「やめろって言ってるクマー」
しかしクマはその言葉を遮ろうと飛び掛かる。
が、あっさりと弾き飛ばされる。
「クマさん!!」
『お前たちも同じだ、真実など探すから辛い目に遭う……そもそも、この深い霧に包まれた世界……正体すらわからないものをこの中からどうやって見つけるつもりだ?』
「それを考えるのは雄二に任せた!」
頭脳労働は僕の役割ではない。
「お前は情けないことを堂々と言うな……だが俺たちのやってることは的外れではなさそうだな。少なくても何者かがクマに干渉してなにか手を出してきているみたいだしな」
「どういうこと?」
「少なくても何かがクマを通して俺たちに対して行動を起こしている。最初に比べれば進んではいるってことだ」
なるほど、つまり犯人かどうかはわからないけど僕たちの行動に対して他の人間が絡んできているっていうのは状況が進んでいるってことか。
「ま、意図も何もわからない状態だけどな」
そう最後に付け加えてやれやれとポーズをとる。
『ククク、愚か者は見ていて面白いな』
「ふん、それは同感だな。明久を見ていると飽きないからな」
「その返し、いらないよね!?」
なんでクマと雄二はこんなに僕をバカ扱いするんだろう。
『では真実をひとつ教えてやろう……お前たちはここで死ぬ。知ろうとした故に、なにも知りえぬままにな』
クマは自分を否定していないのにシャドウに変化する!?
「くそ……クマもいないうえに俺たちはボロボロだってのに……」
その言葉に陽介が苦しげに声を出す。
「ふん、ならお前らは休んでろ、久慈川のシャドウと戦わなかった分ここは明久が働いてくれるそうだ」
「雄二も同じだよね!? 僕だけに働かせようとしないでよ!!」
陽介や里中さん、天城さん、完二、美波、霧島さん、ムッツリーニはダメージが大きいけど僕と雄二は目潰しで苦しんでいて後方にいた分ダメージがほとんどない。
「やれやれ、仕方ない、俺もやってやるか、ムッツリーニ、サポートはできるか?」
「…………男の能力は読めない」
「大丈夫、サポートは私がする」
ムッツリーニがその問いに否定するがりせが僕たちに声をかけてくれる。
「ちょっと、りせちゃんも疲れてるでしょ? その体で戦う気?」
「平気……私はたぶん倒れているその子の代わりができるから」
里中さんが声をかけるがりせは一緒に戦ってくれるみたいだ。
「わかった、サポートは任せる、行くぞ、明久」
「足引っ張んないでよ、雄二!」
次回、クマシャドウ戦。
りせシャドウと戦わせなかった分次は雄二と明久の二人で戦闘です。
ゲームだとここでなぜか全快しますけど状況的には全員ボロボロのはずなんですよね。なのでりせと戦ったメンバーはここでは戦闘不能レベルにダメージを受けています。