テレビから出てきた僕はりせを送るのを女子たちに任せて雄二やムッツリーニと駅に向かっていた。
「雄二、霧島さんを待たなくて良いの?」
一緒に帰らなければ後で報復を受けるのは雄二だし。
「はっ、冗談じゃねえ、せっかくあいつの方から別行動をとったんだ。わざわざ一緒にいられるかよ」
相変わらず素直じゃないやつだ。
「それにムッツリーニと一緒に帰る機会はもうないかもしれないんだしな」
そういえばムッツリーニの目的はりせのヌード。それが果たされない今、もうテレビに入る理由がない。
「…………そのことなんだが、俺も事件捜査に協力しようと思う」
「ええ!? でももうエロのチャンスがあるとは限らないよ?」
今回のストリップや天城さんの逆ナンなどがあったけどその間にあったのは完二のサウナだ。エロどころか身の危険すら感じたくらいだ。
「ああ、エロが絡まないのにムッツリーニが無償で協力するなんて……目的はなんだ?」
雄二もムッツリーニの真意がつかめないようだ。
「…………お前ら、俺を何だと思っている?」
「「エロ」」
ムッツリーニの言葉に僕と雄二は即答する。
「…………エロなどに興味ない」
ムッツリーニがいつものウソをつく。
「まあ、それは冗談として一体どういうことだ?」
僕は本気で言ってたんだけど……
「…………雄二は見ているはずだが、俺の未来の召喚獣、それは新聞記者だった。政治面を扱っているようだったがそれは道の一つ」
ムッツリーニが珍しく長く話す。
「…………もし俺が新聞記者の道を目指すとしたら……俺には真実を知る義務がある」
つまり現在のマスコミ、テレビで報道されているような最低の態度じゃなくて真摯な態度で事件に向き合いたいってことかな。
「でもいいの? ムッツリーニはエロカメラマンになりたいんだよね?」
「…………もちろんその夢は捨てない。だが他の可能性を今の時点で捨てないほうが良いと考えた。だから俺もクマと同じように自分を知るためにもこの事件解決に協力しようと思う」
そっか、ムッツリーニも自分と向き合っていろいろ考えることもあったんだね。
「そういうことならこれからもよろしくね、ムッツリーニ」
「ああ、よろしく頼む」
『我は汝……汝は我
汝新たな絆を見出したり……
絆はすなわちまことを知る一歩なり……
汝、隠者のペルソナを使いしとき
我ら、更なる力の祝福を与えん』
「…………それはそうと明久、今回撮った写真、一枚500円でどうだ?」
「10枚買おう」
「お前ら、結局そこは変わらねえんだな……まあ、それはともかく向こうで撮った写真がまともに撮れているのかは俺も気になるな。どうなんだ?」
雄二の問いにムッツリーニがデジカメのデータを調べる。
「…………なん……だと!?」
そしてムッツリーニ驚きの声を上げる。
「どうしたの?」
「…………真っ白だ……」
「え!?」
「…………濃い霧に阻まれて何も映っていない……」
「あー……クマメガネのおかげで俺たちは見えているだけでそういえばあそこ霧で覆われてたんだっけ」
そういえばすっかり忘れていた。向こうはまともに見えないくらいの霧で覆われているんだった。
結局写真が撮れているのかどうかすら確認できずに終わってしまった。
「あ、帰ってきた」
その夜、雄二たちと別れて家に帰った僕は奈々子ちゃんと二人でテレビを見ていると叔父さんが帰ってくる音が聞こえた。
「ああ、ホラ、堂島さん、足元危ないですよ」
「あれ? この声、足立さん?」
今日も叔父さんと一緒にきたのかな?
「いって! ったく誰だ、こんなところに段を作ったやつぁ!」
「大工ですよ、ほら家にツッコんでないで、ほら」
何か様子がおかしいな。どうかしたのかな?
そしてそのまま足立さんに肩を借りて叔父さんが帰ってくる。
「おおー、奈々子、ただいまぁ、かえったぞぉ」
明らかに酔っ払っているみたいだ。顔も赤いし足元もふらついている。
「お、おかえり」
「おかえりなさい」
奈々子ちゃんがちょっと引いている。叔父さんが酔って帰ってくるなんて珍しいな。
「ああ、奈々子ちゃん、悪いんだけど布団敷いてきてくれるかな?」
一緒にいる足立さんはあまり酔ってないみたいだ。
足立さんの言葉に奈々子ちゃんが頷いて部屋に戻る。
「足立さん、わざわざありがとうございます」
僕も足立さんに手を貸して叔父さんをソファに座らせる。
「ああ、うん、まったく、いくらなんでも飲みすぎだよ」
「これが……ヒック! 飲まずにやってられるかってんだ! ったくあのガキ、偉そうに」
「えっと、なにがあったんですか?」
僕は足立さんに尋ねる。
「うん、実は県警から特別捜査協力員っていうのが送り込まれ来たんだよ。ほら、4月からの連続殺人にあまり進展ないからさ……はは」
と言っても仕方ないだろう。テレビの中の世界なんて警察に判るワケないんだし。
「で、その協力員っていうのが名の知れた探偵事務所のエースらしいんだけどさ。会ってビックリ、君くらいの年の子供なんだよ! 頭は切れるって話だけどさ」
「へえ、高校生探偵って本当にいるんですね」
「だよね、僕もそういうのはマンガの世界だけだと思ってたよ」
僕の言葉に足立さんも答える。リアルな高校生探偵か、ちょっと会ってみたいかも。
「ただのガキだろ、あんなの。役に立つわけねーよ、あんなの!」
堂島さんはよほど気に入らないのか、そう言い放つ。でも悪いけど僕もそう思う。どれだけ頭が切れてもあの世界のことは想像できるはずない。
「……その彼、難事件を解く力になれれば報酬はいらない、なんて言っちゃっててさ。おかげで上もすっかり気にいっちゃって僕らも断れなくて……」
「足立!」
足立さんがいろいろ教えてくれていたところに叔父さんがどなる。
「ああ、スンマセン、僕またなんか言っちゃいました?」
考えてみればこれは捜査にかかわる話、あんまり部外者に話しちゃいけなかったのかも。
「ったく、楽しそうにペラペラ喋りやがって。元はといや、おめぇがあの覗き男を早合点で引っ張ってきたからだろうが!」
「あ、いや、はは……」
足立さんが笑ってごまかす。う~ん、僕も事件のことだから興味深く聞いちゃったしあの覗いてた男も事件の関係だと勘違いさせたのも僕たちにも原因があるかも……足立さんに悪いことしたかなあ……
「それと、お前!」
「え? 僕?」
「お前も悪ィんだぞ。何かと現場ぁチョロチョロしやがって……ヒック、成績悪いんだからそんな事してねェで勉強してろ」
う……こちらにもまで説教が来ちゃった。
そうして怒らせそうなところで奈々子ちゃんが戻ってくる。
「お布団、敷いた」
「ほら、堂島さん立ってください。奈々子ちゃん、布団敷いてくれましたよ」
「そうそう、今日はもう寝たほうが良いよ」
僕と足立さんは目で合図をしてこれ以上怒られないようにと叔父さんを連れていく。
「んー……ぷふー」
叔父さんが大人しく運ばれてくれたので二人がかりで連れていく。
「これ以上怒られずに済みましたね」
「そうだね……」
ということでムッツリーニも自称特別捜査隊に正式加入。彼の場合は調査パートで活躍してくれそうですね。明久は番長と違ってそういうのも苦手そうですし。知恵は雄二に、情報収集はムッツリーニに。万能な番長と違って色々な面で協力してくれる人脈があるのが明久の強みなんでしょう。
ということで劇場編終了、次回から日常編にはいります。年末もあまり休めなそうだし年内にあと一回更新できるかどうかってくらいになると思います。それでも忘年会や新年会もありそうだし……
では次回もよろしくお願いします。