バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

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第九十一話

「ふぅ……危ないところだった」

僕は姫路さんのお弁当から逃げてきて屋上に上がってきていた。

「あ、でも今日はバスケ部に行くんだっけ」

姫路さんから逃げることだけを考えていてつい上の方に来てしまった。

「吉井?」

「え? 一条くん?」

そこにいたのは一条くんだった。

「あれ? 今日部活だったよね?」

バスケが好きで部活を楽しみにしている一条くんがこの時間にここにいるのはちょっとおかしい。

「ん……ああ、今日は部活に出る気がしなくて、サボる」

「え!?」

部活をしているときの一条くんは本当に楽しそうだ。それが部活に出る気しないというのは何があったんだろう。

「どうした? 俺に気にせず部活に出て来いよ」

「いや、僕も部活に出る気しないからここでサボるよ」

そう言って僕も一条くんの隣に座る。

そうしてしばらく無言で過ごす。

「あのさ……バスケが好きかわかんなくなった」

「どういうこと?」

僕の問いかけに一条くんは沈んだ顔のまま答える。

「好きにしろって言われたんだ。バスケやんの、あんだけ反対していた家の人が……急にバスケでも何でも好きにしろって」

「それは良いことなんじゃないの?」

今まで反対されてたのが認められたってことじゃないんだろうか。

「そうじゃないんだ……俺さ、妹がいるんだ。まだ小さいけどすっごく可愛いの……でさ、俺、養子だから、これで一条家を継ぐっていう俺の役割がなくなったわけ」

今までは跡継ぎだから行動が制限されてたってことかな?

「ならそれを喜んでバスケに打ち込めばいいんじゃないの?」

「うん、そうするべきなんだろうけど……今朝一人で練習してたんだけど、何も思わないんだよな……楽しいとも思わないし、悔しいとも思わない。それで部活サボってたらお前来るんだもんな」

「僕が来たのも偶然なんだけどね」

偶然でもこんな状況の一条くんを一人にしないで済んでよかったと思う。何の力にもなれないかもしれないけど一人でいるよりは吐き出したほうが良いはずだ。

「次の部活はちゃんと出るよ。だけど今日はもう少しここにいる」

「そっか、なら僕ももう少しここにいようかな」

そのあと、会話らしい会話がないまま一条くんと過ごした。

 

 

次の部活の日、一条くんが気になった僕は部活に出ることにした。

言っていた通り一条くんは部活には来ていたがずっとボーっとしていて練習に身が入ってないようだった。

「うーっす、帰りメシ食っていかね?」

そこに来たのは長瀬くん。

「あれ? もう部活終わり?」

「俺んとこ? あと整備だけ」

「いや、そっちじゃなくてバスケ部」

「もう練習は終わりだよ」

数少ないほかの部員はもう全員帰っちゃっている。

「そっか、気付かなかった、俺も帰るよ……」

そう言って長瀬くんの食事の誘いも断って帰って行く。

「なあ、吉井、あいつ、何かあったのか?」

本当はあまり言いふらすことではない気がする。でも長瀬くんは一条くんの親友だ。

僕は長瀬くんに事情を話し、相談することにした。

「バスケ反対されなくなったら喜ぶんじゃないか、フツー」

「うん、僕もそう思うんだけどなんか色々複雑みたい……」

「うがー、俺頭悪いからわかんねー!」

「頭悪いのは僕も同じだよ! だから長瀬くんに相談したんだ!」

バカ二人が頭を抱えてどうしようか悩む。

「わかった、あれだよ、あいつバスケが好きかわからなくなったんだろ? だたら好きってことを実感させてやればいいんじゃないか?」

そうしてしばらく悩んだ後に長瀬くんが思いついたようにそう言う。

「なるほど! で、どうやって?」

「えーと……あれだ。試合やろうぜ! スポーツ選手が一番燃えるのはやっぱ試合だろ!」

さすがは長瀬くんもサッカーをやっているだけはある。良いアイディアだ。

「なあ、吉井、お前前の学校でのバスケ部とかと試合組めないか?」

「バスケ部はちょっと難しいかなあ……友達とかはいないし」

僕の仲の良い友人で部活をやっているのは演劇部の秀吉くらいだ。

「だよなあ、そもそもこっちは経験者が吉井と一条だけだし」

「え? 他のバスケ部のメンバーは?」

「あいつらはやる気ないから駄目だ。どうせ試合やるならやる気あるやつらと組んで試合楽しまねえと!」

確かに長瀬くんの言うことは一理ある。今のバスケ部のメンバーだと試合と言っても面倒だと言われそうだし。

「となるとメンバーはどうするの?」

「えっと……バスケって何人だっけ?」

「5人だよ!? そこからなの!?」

まずい、そもそも長瀬くんがバスケのルールを全く知らない。

「えっと、俺と一条と吉井で3人、他に心当たりねえか?」

それなら陽介や完二に声をかければ何とかなりそうだ。

「となると対戦相手もバスケ部じゃないほうが良いかもね」

実際のバスケ部が一条くんと滅多に練習に出ない僕だ。これで相手が全員バスケ部だと試合にすらならない。

「となると一応話してみるかな」

雄二に秀吉、ムッツリーニ、あと二人足りないけど何とかなるかもしれない。

「わかった、ならそっちは吉井に任せる、それなら俺は体育館の使用許可を取っておく」

そういうことで試合を行うことが決まった。

他の部が使用するということで試合は夏休み、それまでにメンバーに声をかけないと。

 

 

そのあと休みの日に遊びに来た雄二と陽介、完二に僕はバスケ部の試合のことを話していた。

「オレは別にいいっスよ」

「ああ、面白そうだしな」

完二と陽介は二つ返事で引き受けてくれる。

「雄二は?」

「試合に出るのは構わないしムッツリーニと秀吉も乗ってくれるとは思うが問題が二つ」

「二つ?」

「まず一つはメンバー不足」

「Fクラスのメンバーに適当に声をかければ良いんじゃない?」

「考えてみろ、試合をするということは間違いなく翔子にばれるしそうなると特別捜査隊の女子が応援に来るだろう」

間違いなく霧島さんは雄二の応援に来るだろうし里中さんや天城さんも来そうだ。そうなると美波も来るだろう。

「しかし女子の応援は翔子は俺、島田は明久、里中や天城も自分たちの学校側を応援するだろう」

美波が僕を応援するかどうかは疑問だけどそうなるような気はする。

「その時のFクラスメンバーの行動を思い浮かべてみろ」

「乱闘かな?」

「バスケが好きだと実感させる試合でそれはまずいだろう」

確かに、乱闘騒ぎになってバスケが好きだと思うくらいなら格闘技にでも行ったほうが良い。

「ならFクラス以外の人は?」

「うちのクラスは試召戦争のせいで他のクラスにはあまり良い印象持たれてないからな……」

雄二は浮かない顔だ。

「ま、それは置いておいて二つ目の問題ってのは?」

「ん、ああ、単純な戦力差だ。八十神側は明久とその一条のバスケ部員が二人いるのにこっちは遊びでやってる程度、それで満足させられるのかてことだ」

確かに、雄二達は運動神経は良いけど本格的にはやっていない。

「なら明久先輩が文月チームに加わればいいんじゃないスか?」

そこで完二が名案だとばかりに発言をする。確かにそうすれば文月側のメンバーが一人増えるしバスケ部員の差もなくなる。

「あのなあ、そんなことしたらこっちのメンバーが足りなくなるだろうが」

陽介が完二にそう言う。

「へへ、オレにメンバーの心当たりあるんすよ、スポーツですっきりさせれば変なわだかまりなくなるかもしれねえし花村先輩、例の問題も解決っスよ」

「げ……完二、まさか、お前」

「よくわからんが明久がこっち側の来るというならやりやすいな、あと一人足りないが夏休みまではまだ時間あるし何とかなるだろう」

こうして夏休みに八十神高校対文月学園のメンバーによるバスケの試合が決まった。




ということで剛毅コミュです。でも実際にやるのは次の事件の後、試合を書くかは……私自身バスケの知識はマンガのみなので書ける自信がないので試合は途中を少し書いて大幅にカットすることになると思います。
では次回もよろしくお願いします。
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