バカと田舎とペルソナ   作:ヒーホー

96 / 101
第九十五話

7/11 月 曇

 

 

昨日はドタバタして終わったから今日も集まることにはなっている。

しかしそれはそれとしてモロキンが殺されたから今日から担任が変わるはずだ。

「せっかくだからテストもなくなればいいのにな……」

「無理でしょ。テストだけはやると思うよ」

教室で陽介と里中さんが話す。

「だよね……そんな甘くはないよね」

せめてモロキンが受け持っていた倫理のテストだけでもなくなればいいのに……

「おっはよぉ」

そうしていると先生が教室に入ってくる。あの先生はだれだろう、僕は知らないなあ……

化粧の濃い女の先生……どことなく文月学園の船越先生を思い出させる。

「今日からあなた達の担任になった柏木典子でぇす」

「ねえ、あの先生ってどんな先生?」

僕は隣の席の里中さんに小声で尋ねる。

「えっと……なんていうかモロキン並に濃い先生……かな」

この学校の先生は変な人が多い気がする……

そのあとモロキンに黙祷をし、柏木先生が正式な担任になった。

モロキンほど規律に厳しくはなさそうけど……大丈夫なんだろうか。

ちなみに試験はちゃんとやるようだ。すっかり忘れていたけどもう来週期末なんだよね……

 

 

「明久くん、今日空いてますか? 良ければ一緒に勉強とか……」

放課後、掃除当番だったので陽介たちには先にジュネスに行ってもらって遅れてジュネスに行こうとする僕に姫路さんが話しかけてくる。

「あ、ごめん姫路さん。今日は用事があるんだ」

事件に姫路さんを巻き込むわけにいかないので僕は断りを入れる。

「センパーイ、なにしてるの、早く行こうよ」

そこで僕を迎えに来たのかりせが教室の外から声をかけてくる。

「え? 吉井くんの用事てもしかして……そもそもいつの間に知り合いになったんですか?」

姫路さんが疑問の声を上げる。やばい、何とか誤魔化さないと……

「うん、実はちょっと前に知り合ってさ。それで今日はちょっと大事な話が……」

大事な話と言っておけば控えめな姫路さんだ。あまり突っ込んでこないだろう。

「ええ!? 大事な話!? それってまさか……」

「それじゃ、姫路さん、また明日!」

これ以上突っ込まれる前にと僕はりせの手を掴んでその場から逃げ出す。

「え!? 先輩? どうしたの、突然」

そしてそのままジュネスに向かった。

 

 

「もう、先輩突然手を掴んで走り出すなんてどうしたの?」

「あ、ごめん」

さすがにアイドルの手を掴んで走って逃げるのは非常識だったかも。

「楽しかったから良いけど」

そう言ってりせはあっさり許してくれる。よかった。ここが稲羽で、もし文月だったら色んな意味で僕の命が危ないところだった。

「それじゃ、お詫びに今度この町の遊び場所教えてね。私転校してきたばっかりでここら辺あまり知らないから」

「うん、それでお詫びになるなら喜んで」

 

『我は汝……汝は我

汝新たな絆を見出したり……

 

絆はすなわちまことを知る一歩なり……

 

汝、恋愛のペルソナを使いしとき

我ら、更なる力の祝福を与えん』

 

 

 

 

「おう、明久、来たか」

僕とりせがジュネスに来ると雄二たちはもう来ていた。

「りせも掃除だったのか? ま、全員揃ったし事件の話にしようぜ、今回のモロキンの件、どう思う?」

陽介が説明してくれていたのか僕が遅れたことには言及されなかった。僕達が来たことで全員揃ったので事件の話をする。

「マヨナカテレビに映らなかったよね」

陽介の言葉に僕が答える。

「もしテレビの中に入ったらクマがわかるはずだよ、前より鼻効かなくなったけど、それくらいはわかるクマよ」

確かにクマは場所はわからなくても入ってきてることはわかっていたはず。

「けど死体見つかったの、また霧の日だったんでしょ? 現場の様子も山野アナや小西先輩と同じだったってニュースで言ってたし」

里中さんがそう意見を言う。

「いや、俺たちの視線で言うと同じとは思えないな」

雄二が発言する。

「どういうことさ?」

意味が分からず僕は雄二に訊ねる。

「ちょっとは自分で考えたか?」

「全然」

「よし、ちょっと頭を出せ、殴ってやる」

正直に答えたのになぜか雄二が怒る。

「あの、坂本くん、私もどう違うのかがよくわからないんだけど」

天城さんが雄二に疑問を投げかける。

「ああ、ちょっとしたことなんだがな、前の二人は電柱と民家のテレビのアンテナ、そして諸岡はアパートの屋上の柱。一見似たようなものだがここでテレビの世界という要素を加えて考えてみろ」

……どうしよう。さっぱりわからない

「俺達が向こうの世界に出入りするのにテレビを使うことやマヨナカテレビの存在も考えるとだ。死んだあともそういうアンテナとか電柱などから出ることはそこまで不自然には感じない。だが諸岡の死体があったのは全く関係ない所だ」

「なるほど。テレビの世界を知っているあたし達しか気付かないってこともあるわけか」

里中さんが感心したような声を上げる。

「だからと言ってあの世界のことがわからないと絶対とは言えないけどな」

「じゃあ、動機の方は? どうして諸岡先生が狙われたんだろう?」

今度は天城さんが疑問を上げる。

「恨みってんならモロキン恨んでる奴なんて数え切れねえ」

「でも確かテレビで話題になった人が狙われるんじゃなかった? テレビ見て狙い決めるなら被害者と面識のない犯人ってイメージだけど。そういうタイプは動機なんて考えても意味なさそう」

その言葉に完二が答えりせが続ける。

「……愉快犯だと犯行すること自体が動機」

霧島さんがりせの言葉に続ける。

「でもモロキンはテレビに出てないし……」

僕はそれに対して疑問を上げる。

「普通のテレビにもマヨナカテレビにも出てなかったのよね?」

美波の確認に僕たちは頷く。

「あ~、もう、全然わからん」

そして里中さんがそう言う。僕も普段より考えてるけど全然予想がつかない。

「しっかしうちの学校から連続して二人か、警察うちの学校に目星つけて目ぇ、光らしてるんだろうな」

「そうなると一番怪しいのは事件の前に突然現れたやつだな」

完二の言葉に陽介がそう続ける。

「え? そんな怪しい奴いるの?」

それは僕でも怪しく思う。もしかして犯人なんじゃ……

「で、それって誰?」

「いや、気付かねーのかよ……」

そう言って陽介が指差すのは……僕!?

「あ、そういえば事件起きたのって吉井くんが転校してすぐだっけ」

「でもアキの場合は計画的犯行ができる知恵ないから怪しくはないわね」

「…………そもそも明久に隠し事はできない」

いつの間にか僕をバカにする流れに!?

「それはともかくさ、モロキンも殺されるほどの人じゃないんだからこれからどうするか考えないと!」

僕は必死になって話題を逸らそうとそう提案をしようとする。

「その必要はありません」

そこで突然横から声をかけられる。

「オ、オメエ……」

声をかけてきたのは……白鐘くん?

「諸岡さんの調査についてはもう必要ありません」

白鐘くんは僕たちのところにいてそう言う。

「な、なんでよ?」

里中さんが白鐘くんに問いかける。

「容疑者が固まったからです。ここからは警察に任せるべきでしょう」

「「「え!?」」」

白鐘くんの言葉に僕たちは驚きの声を上げる。

「なんで、んなことお前が……」

「僕が県警本部の要請で来ている特別捜査協力員の探偵だからです」

昨日聞いていたから白鐘くんが警察の事情を知っているのは不思議じゃない。

「ほう、それで、犯人は誰だったんだ?」

僕達の疑問を雄二が白鐘くんに訊く。

「あなたはあまり驚いてないようですね……容疑者は高校生の少年ですから情報は僕も教えてもらっていませんけどね。メディアにはまだ伏せられていますが皆さんとは別の学校のようです。もちろん坂本さんたちとも別です」

「でもなんでそのことを僕らに?」

「皆さんの遊びも間もなく終わりになるかもしれない……それだけは伝えておいたほうが良いと思ったので」

僕の問いに白鐘くんがそう言い放つ。

「は、これで終わりならそのほうが良いんだがな」

雄二がそう返す。どういうことだろう。まるでこれで終わらないみたいな言い方だ。

「関わったことは否定しないんですか?」

「否定したって信じねーだろうしな」

「まあ、良いでしょう。これ以上は僕もどうこう言うつもりはありません」

結局二人は何が言いたかったんだろう……

「遊び? 遊びはそっちじゃないの?」

でもりせは白鐘くんが僕たちの行動を遊び呼ばわりしたのが気に入らなかったのか言葉を返す。

「探偵だか何だか知らないけど貴方はただ謎を解いてるだけでしょ? 私たちの何を分かっているの? そっちの方が全然遊びよ」

「こっちゃ大事な人を殺されてるんだ。遊びでできるかよ!」

りせの言葉に陽介も続ける。

「遊び……か。確かにそうかもしれませんね……」

その言葉に白鐘くんは反論せずにそう寂しそうに言う。

「ま、まあ、良いじゃないの事件が解決するならさ」

険悪になりそうだったので僕が止めに入る。

「ま、事件が解決に向かってるのに俺たちのところに来るくらい暇なんだしな」

けど陽介がそう言い放つ。

「探偵はもともと逮捕には関わりませんから。ただ……必要な時にしか興味を持たれないのは確かに寂しいことですね。もう慣れましたけど」

寂しげにそう言う。

「謎の多い事件でしたけどあっけない幕切れでしたね……じゃあ、もう行きます」

そう言って白鐘くんは去っていく。

「なんなの……言いたいことだけ言って……容疑者上がったって本当にこのまま解決なのかな?」

白鐘くんが去った後里中さんがそう疑問の声を出す。

「とりあえずマヨナカテレビの確認は続けてくれ、今できることはそれくらいだ……これで解決ならそれで良いんだがな……」

そして雄二のその言葉で釈然としないまま解散となった。

 




お待たせしました。十日ほど空いてしまいましたが95話です。
職場でインフルエンザで休みが出たので忙しくて疲れて書けませんでした。割と体調不良者が多かったのに幸い私は健康そのものですが。
忙しいときは今回みたいにちょっと間が空きますがそこら辺はご勘弁を。
では次回もよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。