~組織構成~
●西浦篤余市警備府司令官
「漂着事件からほぼひと月後、彼女たちの受け入れ組織を構築することを考えておりました。すでに、本省からの派遣幕僚チームにそのたたき台を作成するように指示を出していましたので、案外早い段階でその議論ができました。」
●新見政三統合軍幕僚長
「要は先の反乱事件のような事態は避けねばなりません。なので、彼女たちは一括して管理することを骨子としてまとめました。問題はその新規鎮守府をどこに置くかで議論が分かれました。」
●中園海軍幕僚長
「問題になったのは、どこに鎮守府を置くかです。検討チームの中で、海軍の基地がない北海道か、それとも沖縄で揉めました。ですが、当時北方水域が手薄になっていたこと、さらには沖縄では内地の艦娘の作戦行動範囲に入っているので、接触する危険性が大きいこと。北海道ですと大湊しか接触する鎮守府がなく、大湊鎮守府は例の反乱事件で本省のコントロールが効きやすいことを考慮して、北海道に設置することになりました。」
●西浦篤余市警備府司令官
「立地ですが、これは問題ありませんでした。道都札幌に近くかつ、地形に恵まれている余市町に設置することになりました。この計画は、国防省内の限られたチームで策定され、内閣に挙げられました。その説明のため、私は東京に戻ることになりました。」
●緒方竹志内閣官房長官
「国防省から挙がってきた計画を内閣官房の限られたチームに検討させた結果、妥当であると判断しました。ただ、問題はその司令官及び司令部にだれを持ってくるか、それが問題になりました。先のような反乱事件があっては元も子もありません。国防省からの報告では、漂着した艦娘はこれまでの艦娘よりも比較にならない強力な武装を持っているとの報告を受けていましたので、万が一反乱などという事態になれば大問題になります。」
●西新蔵余市警備府総務部首席事務官
「確かに内閣の懸念はもっともです。武力は、それを持つものの自制心がまず必要です。更に、武力を持つ本人以外の管理つまり
●西浦篤余市警備府司令官
「羽田空港に着くと私はそのまま官邸に直行しました。官邸には、総理・官房長官・国防相・外相・蔵相・通産相・運輸相・国家公安委員会委員長の安全保障会議のメンバーがそろっており、彼らは私に、北海道で発生していること、今後の受け入れ組織について詳細な質問をぶつけてきました。私は包み隠さず報告しました。まず、難民申請及び認定はおよそそれまでの速さではありえないほどすぐに済んだこと。現在のところ、ホテルに滞在し水面には出していないこと。とりあえず状況は落ち着いていること、などです。彼らは安心した表情を浮かべていました。」
●天海武夫国防相
「西浦君の報告を聞いて、安全保障委員会のメンバーは安心したようでした。私は、肝心の問題に関して口火を切りました。「中将、現状は分かった。問題は今後どうするかだ。今の艦娘よりもはるかに強力な武装を持つ艦娘がおよそ500名北海道に漂着した。彼女たちは現在、難民となっており事実難民である。ただし、その所属はまことに非科学的であるのだが、今とは違う世界らしい。今後、彼女たちを如何に保護するべきかそれが問題である。先に国防省が挙げた計画案を精査した結果、これが妥当であると判断し、その計画を進めることに決定している。ついてはその司令部の構成は、現在現地にて対応に当たっている担当官を軸として任命するべきであると考える。これは、彼女たちに接触している人間を限りなく狭めるという意味もある。」」
●西浦篤余市警備府司令官
「それは内閣の決定ですか?」
●天海武夫国防相
「そう彼が尋ねたので、私はその通りだと答えました。彼は自分の病気を理由にそれを辞退しようとしていましたが、北海道庁との良好な関係を築いていることも理由に挙げて、私はそれを押し切りました。津軽海峡の安全を確保できない状況に関して、政府としては北海道に対して負い目がありました。」
●西浦篤余市警備府司令官
「内閣に対して現状を説明する資料を北海道庁で作成していた際に、町村知事から要請がありました。「基地を作るのは結構だ。これで安全が確保できるかもしれない。ただし、道民は津軽海峡すら安全を確保できない状況に憤りを感じているし、見捨てられたのではないかとの感情を抱いている。そこで、何点か政府に対して要望、いやこれは条件ですね、それを提示したい。まず、北海道周辺水域つまり200海里の安全確保。当然これには津軽海峡を含めること。第二に、これまでのことを考えて、振興予算を十分に確保すること。第三に、道民の生命・財産の保全に今後政府の名のもとに保障すること。」この条件には私も賛成でした。ただ、問題は第二の条件に対して、大蔵省が何というかわからないことでした。
●佐藤大作大蔵大臣
「北海道の示した条件について、私はもっともだと思っていました。ですが、深海棲艦との戦争における戦費や被害を受けた沿岸部の復興などに予算が必要なことは分かっていましたし、新たな基地を建設することによって、さらに軍事費が増大することに対して、懸念があったことは事実です。そこで私は、新規基地建設費用、これがそのまま基地の運営コストになるわけですが、その費用を北海道振興予算に紛れ込ませて、予算を確保しようと考えました。実はすでに省内で検討作業に入っており。翌年の予算にそれを入れることで国防省とは折り合いを付けつつありました。多少の増額は範囲内だったのです。」
●西浦篤余市警備府司令官
「佐藤大蔵大臣の説明を受けて、私は町村知事もその線であれば納得すると思っていましたし、事実納得しました。戦後、あの時の西浦さんの判断は良かった。軍事費と振興予算をリンクすることで、政府部内では北海道の安全確保費用として認識でき、道内では振興予算の増額ということで説明できた。一般に公開できない以上、何らかの形で対処するしかなかった。と話をしました。」
●山根基世NKHアナウンサー
「今回の取材を通じて明らかになったのは、あの北海道で活躍した艦娘の出身が隠されていたこと。更には、彼女たちの母港であった余市警備府の予算が巧妙に北海道振興予算に紛れ込まされていたという事実です。当時、一般的には北海道振興予算の倍増として認識されていましたが、今回のNKHの取材ではその増額のほぼ25%が余市警備府の費用とのことでした。」
●西浦篤余市警備府司令官
「その日のうちに札幌に引き返した私は、内閣の決定を町村知事に伝えました。知事は、条件すべてが受け入れられたことに関して、満面の笑みを浮かべていました。私はさらに、自分が新規に設立される北海道における海軍基地の司令官に就任すること。同時に、北海道における防衛体制を変更し、当時の陸軍北部方面総監部と空軍の北部方面航空軍を統合して北部方面統合総監部を設置すること。無論、その中には海軍の組織も編入されるわけですが。司令部の編成については変更がないこと。ただし航空部隊の作戦指揮に関しては、海上部隊司令官が一元的に指揮し、現在の司令官はその運用を補佐することが決まったと伝えました。知事は、軍の人事がほとんど変更ないことに安どしているようでした。艦娘の大量漂着事件を通じて、軍と道庁には太い連絡網ができましたし、それについては政府も変更する気はありませんでした。」
●アーレイ・バーグ級駆逐艦娘“ニッツェ”
「吉田大佐から今後の方針が決まったことは、私たちにとって安心材料になりました。この一か月で、私たち500名は互いに親交を深めていましたし、それはロシア艦であろうが沿岸警備隊のカッター娘であろうが変わりませんでした。余市という、私たちが最初に漂着した場所に基地を建設するとの話を受けて、私は自分たちで基地を建設したいと申し出ました。すでに、輸送艦娘や作戦支援母艦娘に大量の重機が搭載されていることは確認していましたし、建設するのであれば、自分たちにとってより良いものでありたいと考えるのは、自然なことでした。」
●武井大余市警備府後方支援部長
「彼女たちからの申し出はありがたい物でした。建設をどうするか、つまり少人数の人間しか接触させないという方針の元、どう基地を建設するかは頭の痛い問題でしたので、自分たちでやるという意見に反対する理由はありません。西浦中将にその件を報告すると、土地収用の問題があるのでひと月は待ってほしい。その間に図面を引いて設計を行っておいてほしいとの指示を受けたので、私が中心になってチームを編成し、作業にかかりました。」
●吉田英二海軍大佐
「その頃には、彼女たちの支援チームには法務省と厚生省の担当官が抜け、国防省と警察の関係者が増えていました。もっとも、法務省の担当者はその後、警備府の法務担当者として戻ってきましたし、厚生省の担当者は衛生担当として戻ってきました。確か、当時の支援チームの人数は200名程度だったと思います。警備府司令部にはその全員が移籍することになりました。この段階で、警備府司令部ができたといっても過言ではないでしょう。」
●ジョージ・ハリオット・モリソン米海軍大学校教授
「近代の軍事機構の中で、司令部が自然発生的に誕生していたというのは驚くべきことです。時の政権は、組織の軍閥化を如何に防ぐかで苦心してきましたがこの場合は、機密事項があまりに多岐にわたるため、機密の拡散を防ぐことを優先したのだと思います。」
余市町・建設現場
私は、基地建設現場に来ていた。そこには、見たこともないような重機が数多く動いており、さながら豊臣秀吉の墨俣一夜城を彷彿とさせる光景であった。
「ホープ、あとどれぐらいで完成しそうかね?」
私は、隣で建設作業の説明をしていたボブ・ホープ級車両貨物輸送艦“ボブ・ホープ”に聞いた。
「妖精さんの不思議パワーでも、きちんとした基地の建設には時間がかかります。およそ半月といったところでしょうか?
「半月?!」
さすがに驚いた。アメリカのアナポリス海軍兵学校をモデルにした建物群、艤装修繕工場、入渠ドッグなどの多くの建物がわずか半月でできるというのだ。
「すごいな!さすが、年単位で破損した艤装を、わずか数時間で修理する妖精さんだな!」
私は、その建設現場にただただ圧倒されていた。
●ニミッツ級航空母艦娘“カール・ヴィンソン”
「同時に私たちが行ったことが、その後の第三次世界大戦を戦い抜くために大きな影響を与えました。つまり、地上基地航空隊の編成です。当時の軍は、千歳に司令部を置き稚内・函館・釧路に支援基地を置いていました。そこで私たちは、それらの基地に陸上機ならびにヘリを配備することにしました。この際にも、妖精さんの不思議パワーが効力を発揮し、それら航空隊の生成に成功しました。その計画に作成には、妹の“ジョン・C・ステニツ”や“ニッツェ”、キティ姉さんが中心となってタスクフォースを編成して対応していました。
●衣笠幸雄北部方面統合総監部航空部隊司令官
「さすがにその人事を受けたときにはいい気持ちはしませんでした。作戦指揮を取り上げられたのですから。ただ、実際には対深海棲艦との戦闘のみでしたし、実機での作戦指揮は我々が持ったまま、つまり対深海棲艦との戦闘では空母艦載機と地上発進の航空機との連携が必要である。その作戦指揮を海上部隊が持つ、ということになります。これには私も納得しました。」
●ベルナップ級ミサイル巡洋艦娘“ベルナップ”
「基地の完成は予想通り2週間かかりました。私達でもその速度はとても速いと感じましたし、実際に建物の中に入ってみると、超促成とは考えられないほどしっかりしていました。相当量の資源を私たちの部隊編成に使用した、私たちの最初の任務は、ロシア、まぁ当時はソ連でしたが、そこからの物資の輸送になりそうだとの話を笑いながら受けました。実際、最初の作戦はその輸送任務になりました。施設の完成と、余市警備府の開所式は簡素なものになりました。その際に使われたのが、あの“Avanti”です。」
●西浦篤余市警備府司令官
「開所式のことは、今でも鮮明に覚えています。「みなさん、私たちは現在の科学では説明できない不可思議な現象によって、ここに来ました。みなさんは祖国、元の世界に帰りたいという希望を持っていることでしょう。私はその思いに答えたいのですが、その術がありません。更に、この世界は深海棲艦の活動により崩壊の危機に瀕しています。その危機を少しでも超えられるように協力してほしいとの私たちのお願いに、みなさんはyesと答えてくれました。そのことに、まず感謝します。そして、みなさんが一人もかけることなく元の世界に戻れるように、私たちも努力します。みなさん、"Live long and prosper"」と言って私は、人指し指と中指そして薬指と小指をくっ付け、中指と薬指の間と親指を開いて、相手に掌を見せました。その言葉に、何人もの艦娘がはっとした表情を浮かべました。アメリカ艦娘は全員驚愕していましたよ。そう、その言葉は1962年当時にはあり得ないものだからです。」
●山根基世NKHアナウンサー
「今回の取材を通じて明らかになったのは、それまでの艦娘の装備と比べて、はるかに強力な武装を持つ艦娘の大量漂着という前代未聞の事態。そのことを利用して、勢力拡大を図る軍の一派の存在。対応に苦慮した北海道庁と積極的に意思疎通をしていた陸軍という、これまで明らかになっていなかった事実です。激動の時代はこれからです。」
艦娘の世紀 第一集「物語の始まり」
終
長いですね。本当に長い。
かいている本人も長いな、と感じるぐらい長いです。
同時並行で進めている”アバンティ”シリーズの本編に当たります。
なんでウェイティングバーがあるのか、その話をすることになるでしょう。
第一集と第二集は、たぶんオリジナル艦娘しか登場しないでしょうし、戦闘シーンもないでしょう。
ウィンストン・チャーチルもこう言っています。
「戦争からきらめきと魔術的な美がついに奪い取られてしまった。
アレキサンダー や、シーザー や、ナポレオン が兵士達と共に危険を分かち合い、馬で戦場を駆け巡り、帝国の運命を決する。そんなことはもう、なくなった。
これからの英雄は、安全で静かで、物憂い事務室にいて、書記官達に取り囲まれて座る。
一方何千という兵士達が、電話一本で機械の力によって殺され、息の根を止められる。
これから先に起こる戦争は、女性や、子供や、一般市民全体を殺すことになるだろう。
やがてそれぞれの国には、大規模で、限界のない、一度発動されたら制御不可能となるような破壊のためのシステムを生み出すことになる。
人類ははじめて自分たちを絶滅させることのできる道具を手に入れた。
これこそが人類の栄光と苦労のすべてが最後の到達した運命である」
(著作・世界の危機より。ウィキペディアより転載)
戦闘があったとしても、そのシーンは淡々とオペレーターが状況を報告するだけになるでしょうし、提督と艦娘のきゃっきゃうふふもありません。
本作品は、淡々と当時の関係者が証言していく形式をとっていきます。