本当に申し訳ありません!
第9話 つまり、彼は働き者である。
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数日後、先日の葉山の依頼は比企谷君によって解決されていたようだ。
ここ数日、俺は職場体験の件で出張が多く奉仕部に顔を出すことができなかった。
この依頼のこともさっき雪ノ下に聞いて初めて知ったまである。
まぁ、何もなかったならよかったんだが…
「じゃー次はゆきのんが問題出す番ね!」
「では、国語から出題。次の慣用句の続きを述べよ。『風が吹けば…』」
「ん〜…京葉線がとまる?」
「残念。」
「由比ヶ浜、最近は止まらずに徐行運転の方が多いぞ。」
「そうなんだ!?…ってゆきのん、なんだったっけ?」
「風が吹けばよ。」
「あ、そっか。」
「T.○.Revolutionごっこが出来る。」
「先生、真面目にやってください。」
ここは駅前の喫茶店、勉強会をすると聞いたので何か助けになるかもしれないと思い参加したわけだ。
「じゃあ、オケ屋が儲かる。」
「正解です。では、その意味を述べよ。」
「風が吹くとT.○.Revolutionが歌いたくなってカラオケに行くかr」
「違います。…先生本当に教師ですか?教員免許持ってるんですか?」
「持ってるぞほら」
ペラッっと俺は教員免許を取り出すと雪ノ下は驚愕する。
「…常備してるんですか?」
「よく職質されるからな、運転免許より効くんだなこれが。」
「そうですか…では、気を取り直して次は地理より出題、千葉の名産を二つ答えよ。」
「えーと、味噌ピーと、茹でピー?」
「落花生しか無いのかよこの県には…」
由比ヶ浜の要領を得ない答えにすかさずツッコミを入れる比企谷君。
「うわ…なんだヒッキーか、いきなり変な人に話しかけられたかと思った。」
「八幡も勉強会に呼ばれたんだね!」
「よかったじゃん比企谷君、もうぼっちじゃないんじゃないか?」
でも、なんで由比ヶ浜氏はあんなに引きつった顔をしているのだろうか?
そこで雪ノ下が口を開く。
「比企谷君は勉強会に呼んでいないのだけれど、何か用?」
「人を傷つけることだけを目的にした事実確認はやめてもらえる?」
「呼ばれてないとなるとお察しだが…比企谷君は何してるんだ?」
「ああ、夏期講習の資料集めっすよ。」
「意外、ヒッキーもう受験勉強?」
「他の連中も進学きぼうならもうはじめてんじゃねぇの?」
「……………………………………。」
言えねえ…。センター2ヶ月前から勉強し始めたなんて…口が裂けても言えねえ…。
それもそのはずだ。俺の通っていた高校は県でも最下位を争う底辺校。国立合格者も俺だけだった。対して総武高は県トップからは外れるもののかなりの進学校だ。2年の頭から受験を意識したっておかしくはない。
「それに俺はスカラシップも狙ってるしな。」
「スクラップ?」
「それはお前の頭ン中だアホヶ浜。」
「アホってなんだし!?アホじゃないもん!!」
「はぁ…スカラシップよ。由比ヶ浜さん。」
「最近の予備校は成績が良い生徒の学費を免除してんだよ。それ取ってさらに親から学費をもらえば、まるまる俺の金になる。」
「詐欺じゃん。」
「性質が悪いわね。これは学年主任として見逃せませんね?烏飼先生?」
「……あ、あぁ…。」
言えねえ…中学の頃同じ方法で塾の月謝をパチンコにつぎ込んでたなんて…。
「誰も損してねぇからいいだろ?」
「あれ?お兄ちゃん!」
比企谷君が驚いたように振り返り口を開く。
「…小町?ここで何してんの?」
「ちょっと相談事頼まれちゃって…」
「比企谷君、妹いたのか?」
「え、ええまあ…」
ふーん、こいつの妹なのにあんな可愛いわけ?世界終わってんな。
「で、相談事ってなんだ?」
比企谷君の妹、小町ちゃんの話によると同級生の姉、2年F組の川崎の素行についてだった。
俺は煙草をプカプカやりながら一部始終を聞いている。
「烏飼先生…ここは禁煙席ですよ。」
「かてーこというなって!ナシ聞くときは煙草くらい吸いたいだろ?あ…店員来た…」
俺は店を追い出され、話の続きを店から出てきた比企谷君たちに聞くことになった。
とりあえず、川崎本人に当たってみることにした。
しかし、奉仕部も葉山も先輩も惨敗したらしい。
かく言う俺も出張が度重なりほとんど学校にいることがなかった。
次に、川崎の自宅に電話をかけてきたというエンジェルなんとかという店を探すことになった。
市内で深夜までの営業をしている該当店は2件、これならそう時間はかからなさそうだな。
材木座、戸塚も加わり、メンバーはやたら多くなった。
「……で、その一件めがここか?」
「そぉのとぉ〜り!烏飼師範!!ここは我!材木座義輝イチオシの店でぇあります!!」
一件目の店はメイド喫茶だった。
それも、なかなか本格的な…。
そういえば修学旅行とかでみんなでふざけて行ったことがあったな。
「メイド喫茶なんて…女性には入りにくい場所ではないのかしら?」
「でもゆきのん、女性も大歓迎って書いてあるよ!」
「たまには女の子くらい来ないと店員もやってられないんだろ。」
材木座が常連なくらいだからな。
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「おかえりなさいませ!ご主人様!」
「えーと、6人で、喫煙席は…え?ないの?…しょーがないな。」
とりあえず席に案内され、雪ノ下と由比ヶ浜はメイド体験とかで店の奥に消えて行った。
「で…どうするんすか?」
比企谷君が言う。
「とりあえずなんか頼むか。」
「そうだね!部活の後で喉も渇いちゃったし…」
「時に戸塚、部活の方はどうだ?」
俺はこのあいだの騒動のあとのことがふと気になった。
「先生ぶかつの時間増やしてくれましたよ!烏飼先生ありがとうございます!」
「うむうむ、ならよかった。」
生徒に感謝されるのは嬉しいものだ。
特に戸塚はな、なんか水がうまい。
その後、川崎のバイト先はこのメイド喫茶ではないことが判明し、もう一軒の方へ向かうこととなった。
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「あ、俺今日バイトだからもう抜けるわ。あとはよろしく頼むわ。」
「公務員がバイトしていいのかよ…」
比企谷君がすかさずツッコミを入れる。
「先生、少し見損ないました…そんなにお金に困っているようには見えませんが…?」
雪ノ下も溜息をつく。
「あー、まぁいろいろあんのよいろいろ。じゃな!」
俺はそう言うと、みんなと別れた。
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とある用事で金が必要な俺は仕事が終わった後などにバイトをしている。
今日はビルの窓拭きだ。
「んでっすねー?その生徒がすっげー可笑しいんすよー」
「おお、そうかー教師も大変なんだな!」
こうやってベテランのおっさんと与太話はしながらのビルの窓拭きはとても楽しい。
時刻は22時30分を回った頃。そろそろ勤務明けか…。
そのとき、ビルの中に見覚えのある顔ぶれが居た。
奉仕部メンバーと後ろ姿しか見えないが恐らく川崎である。
オイオイオイ…エンジェルなんとかってここだったのかよ…。
俺は中の比企谷君たちに気づいてもらう為に、てを大きく振ったり顔を窓に張り付けたりしている。
あ、気づいたっぽい。川崎もこちらに顔を向けぎょっとしていた。
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「いやー、まさか俺のバイトの現場が川崎のバイト先だったなんてなぁ!」
「驚きましたよ…幽霊か何かと思ったぞ…」
「全く…」
「先生の顔面白かったー!」
比企谷君と雪ノ下は溜息をつき、由比ヶ浜はケラケラ笑っている。
「注文は?」
「牛乳、ジョッキで」
「酒じゃないのかよ…」
「マジで飲めないのよ俺、それに作業着でカクテルとか飲んでたらダセーだろ?」
「作業着でこの店にいる時点でどうかと思うのですが…。」
雪ノ下は今日何回目かわからない溜息をついた。
「さて…ここからは真面目な話をしよう。川崎、お前は何故年齢まで偽ってバイトをしている?時給がいいからか?」
「それもありますけど…そこのと違って遊ぶ金欲しさだけにやっているわけではありません。」
「そこのって俺かよ…」
「専業主夫とか馬鹿こいているやつにはわかんないでしょうね。」
わかんないでしょうねのとこで某議員の記者会見が頭に浮かんだがそっとしまっておこうと思った。
「…とりあえず、理由があってのことなんだな?」
「はい」
「言っちゃなんだがお前の今の出席日数じゃ進級は厳しいぞ。」
「えっ…!」
もちろん、真っ赤な嘘だ。結構遅刻はしているが、まだ進級に関わるほどではない。
「学生の本業は”学校,,で勉強し、うまい人間関係を構築することだ。勉強だけなら今の時代パソコンとネット環境さえあればできる。けどな、学校でしか学べないこともある。学校の勉強だけで足りないのなら俺らは補習も喜んで引き受ける。相談だって受ける。その為に教師がいるんだ、気楽に使ってくれ。塾だって今はスカラシップって便利なもんまである。」
そういったところで川崎の顔つきが変わった。恐らく、塾の費用を稼いでいたのだろう。川崎の家族構成からして学費は悩むところだろうと踏んでいたのだ。
「まぁ、俺が言うのもなんだが、気楽に行こうぜ?川崎。」
川崎は俯いていた。
「…はい」
あとはこいつらがなんとかしてくれるだろ。
「帰るぞお前ら、お代は俺持ちでいいから。」
俺は今日の日給全額机に置いてその場を後にした。
続く
読んでくださった方ありがとうございます!
だいぶ下手くそになりましたね…