「うーん!!今日も良い朝やな~!!」
私、八神はやてはいつもより少し早く起きると、ようやく自由に歩けるようになった足でキッチンへと向こうた。
ソファーには座ったままのシグナムと、その側にあるテーブルの近くに横になっとる大型犬(ホンマは狼やけど)のザフィーラが仲よう眠っとる。
私はそれを見て小さく笑みを浮かべると、キッチンに立って包丁を持つと、いつものように朝御飯の支度を始めた。いつもはご飯やけど、偶にはトーストでも良いと思い、今日のメニューはサラダとベーコンエッグ、そしてオニオンスープという、ごく普通のものやった。
「おはようございます、主はやて」
「ん、おはようシグナム。起こしてもうたか?」
ベーコンを切る音で目を覚ましたのか、シグナムとザフィーラはこちらを見ている。
「いえ、ですが主にしては些か早く起きておりますゆえ……せっかくの休日ですのでゆっくりしても……」
「そうは言うけど、シグナムもヴィータもあまり料理得意や無いやん。リインは小さすぎるし、ザフィーラは狼だし……シャマルは論外やからな。それに私がゆっくりしてたら家のなかごちゃごちゃになってまうやろ?」
そう、我が家の住人はさほどというか全くというか、少しずぼらなところが多い。シグナムは剣術の稽古やらで偶に庭に出てはいろんなものを斬り倒すし、ヴィータはヴィータでゲームが好きだからといって目を離せば色々なソフトや機械が散乱してと、片付ける身にもなってほしいという状況になることが多々ある。
「そ、それは……」
事実、シグナムは自覚があるために視線をかなり泳がせとる。だが自覚があるぶんまだ良い方や。
一番問題なのはシャマルやった。彼女は同居人の中で一番のずぼらであり、また同時にかなりの天然が入ってた。実際、時偶にシャマルの部屋に入ると何着も買った洋服や、仕事のものがまるでゴミ屋敷同然の状態で置いてある事が極偶にある。それを見ては家内全員で呆れ、シャマルが縮こまって反省してる事が風景化してる状態だった。
「それに皆は今日も仕事やからな。せやから私が好きでやってるんやで。あ、シグナム、ザフィーラ、もうすぐできるからヴィータとシャマルを起こしたって」
「はい、我が主」
シグナムはそう返事をしてそそくさとシャマルの部屋へと向かい、ザフィーラはうちの部屋で未だに寝とるヴィータを起こしに向かった。
~食事風景の為割愛~
「う~ん……せやけどどうしようかなぁ~」
あの後、家族全員との朝食を終え、私は少し暇な時間を過ごしていた。というのも今日に限ってシグナムやヴィータ達は仕事のために全員外出しており、だだっ広い家の中で我が家の末娘、リインと一緒に留守番をしていた。
「今日に限ってなのはちゃんもフェイトちゃんもお仕事やしなぁ~。リイン、どうする?」
何の気なしにリインに話しかけてみると、まだお昼を少し過ぎたばかりというのに既に昼寝をしている彼女の姿があった。
「ん~、仕方ない。暇やしあれでもやるかな」
そういって私は部屋に戻ると、引き出しの中から小さな箱を取り出した。そしてその中には大量に収められたカードの姿があった。
「最近新しいストラクチャーが出たし、思いきって新しいデッキでも作ってみるかな~」
遊戯王……暫く前からのマイブームであり、家族内でも時おりやっているそれは私にとってある意味暇潰し解消アイテムだった。
「う~ん……最近出たペンデュラムデッキにするか……エクシーズ主体のデッキにするか……でもな~」
そんなこんなをしてるうちに夕方まで時間が過ぎてしまったが、それでも納得のいくデッキを作り上げる事ができた。
「よし!!今はとりあえずここまでにして、夕飯の買い出しに行かんと」
そう思って私は新しく作ったデッキをケースに容れると座っていた椅子から立ち上がろうとした。が、その時、
「!!なんや!!」
突如として近くにおかしな力を感じ取り、急いで窓の外を見渡した。
「今のは転移魔法……けどそれにしては魔力が全然感じとれんかったし……」
魔法文化のないこの世界に転移してきた……それの意味する事は大きく分けて三つある。
一つはシグナムやなのはちゃん達みたいな『魔道師』が戻ってきたということ。これについてはあまり問題ない。
二つ目は他世界からの観光などで大多数の人間が来ること。これも特殊な事が無い限りは大丈夫や。
そして三つ目、これが一番厄介なのだが、何らかの目的を持った『魔道師』が来たということ。困ったことに今回の魔法は魔力がほとんど感じなかった。転移魔法はそれ自体が莫大な魔力を消費するが、それがなかったということは力を隠してる、もしくは魔力を使わない何らかの方法で来たということになる。
「幸いここからあんまり離れてないし……なのはちゃん達が来るまでの時間も惜しいし……しゃあない、リイン!!」
「はいです~!!」
私が呼ぶとすぐにリインは文字通り飛んできた。そして
「せっかくの休暇やけど、そうも言ってられへん。ちゃっちゃと終わらせるで」
「了解なのです!!」
そして私はリインとユニゾンすると、
一目散に現場へと急行する。
そこにいたのは一人の青年だった。だが思った通りというか、明らかに日本の服装とは違い、ユーノ君とは違うどこかの民族衣装を思わせる姿やった。
「こちら時空管理局の嘱託魔道師の八神はやてです。そちらのお名前を教えて欲しいのですが」
「…………『Ccapac Apu』」
彼は何かを呟いたかと思うと、いきなり空が暗転し始める。何事かと周りを見回すと、青年のすぐ後ろに巨大な物が浮かび上がっていた。
そしてそれは、私自身も知っているものやった。
「じ、『地縛神』やと!?」
地縛神……それは遊戯王の中で強力な効果を持ったモンスターや。しかしそれ以上に、遊戯王のカードを現実に召喚することに驚愕した。
「い、いったい何者や!!アンタ!!」
「……貴様に名乗る名などない。私の役目は貴様を……夜天の主をある世界へと飛ばすこと」
「なんやと!!」
明らかに私を目的として行動してる……つまりは、
「……時間も惜しいからな悪いが大人しくしてくれ……『デモンズ・チェーン』」
男の最後の言葉をなんとか聞き取れた私はすぐにその場を離れようとした。が、一瞬遅く緑がかった鎖に足を掴まれてもうた。それと同時にユニゾンを解除され、騎士甲冑が解除されてしもうた。
「い、一体何が目的や!!アンタは……こんな力を!!」
「……それだけは教えてやろう。我が究極の目的は…………アカデミアを潰すこと」
「ア、アカデミアやと!!まるでアニメの……ARC-Ⅴの世界やあるまいし!!」
「知っているなら話は早い。貴様のような少女に頼むとは申し訳ないがこちらも状況が状況なんでな……」
私はデバイスを発動しようとするが、何の反応も起こらない。
「無駄だ、その鎖が何なのか、貴様には分かるはずだ」
「ぐ!!」
確かに知っている、知っているからこそこの状況がとてつもなく腹立たしい。
「無理を承知で頼む……アカデミアを潰してほしい」
「頼む……やと!?」
「……チ、もう時間が無いのか……」
男のそれを聞くと、今度は懐から何かを取り出す。いや、何かではない、それは私にとって見覚えのあるものやった。
「私のデッキ!!」
「悪いが強制転移させてもらった。流石に彼方の世界でデッキも無しでは話にならんしな」
男はそう言うと懐からある機械を取り出して私の左手に嵌め込んだ。
それは夜天の書と同じ色をしたデュエルディスクやった。しかも私のデッキを既に嵌めてあるものだった。
「………………なんのつもりや?」
「私の我が儘で転移させる詫びのつもりだ」
「…………とりあえず、そっちの我が儘言うなら、せめて名前くらい教えてもらえんか?」
「何故だ?」
「あっちに着いて見つけたら容赦なく魔法撃ち込むためや」
「それは無理だな。そのデュエルディスクには特殊な細工をしてある。今の貴様にはラグナロクどころかブラッディダガーすら撃てないだろう」
「用意周到なことで……」
ここまで準備してると、逆に私は呆れて物も言えん。するといつの間にか後ろに黒い渦が……ZEXALでⅣとかが使ってた転移する渦が浮かんでいた。
「まぁせっかくだ。名前くらい教えておいてやる」
「そらありがたいことで」
「リフィール……それが私の名だ」
それを聞いた途端、私の体は渦に飲み込まれ、意識を飛ばしてしもうた。