「なんか……最近デュエルしたら毎回毎回気絶しとる気がするんやけど」
私は紙パックのオレンジジュースを飲みながらそう呟く。
「まぁまぁそう言わずに、りんご食べますか?」
「ありがとな~リインフォース」
リインフォースが剥いたりんごを楊子に刺して口に入れる。
「しっかし……なんでこんな広い病室に私は居るんやろ?」
私はため息をつきながらそう呟いた。というのもあの沢渡とのデュエルから一夜明け、私が目を覚ました時には、この広い病院の個室に寝かせられていたのだ。驚かない方が無理な話や。
「なんでもLDSのトップの方が迷惑をかけたとか何とかでの謝礼の一つらしいです。あと……」
「ん?」
「ユートと隼が遊勝塾の教師になったので報告しま…………」
「ちょっと待てぇい!!」
私は凍傷で痛む身体で突っ込む。
「なんでや!!どういう紆余曲折を経てそうなったんや!?」
「お、落ち着いてください!!ここ個室とはいえ病室ですから!!」
「……失礼する」
その時、私の耳にこの世界で始め初めての声を聞いた。ふと振り向くと、そこには眼鏡とマフラーをかけた青年……赤馬零児が手に鞄とフルーツの入ったバスケットを持ってそこにいた。
「どうも、今回はお世話になりました」
「気にする必要はない。こちらの生徒の不手際で起こした事だ。LDS含めレオ・コーポレーション代表として謝罪する」
鉄仮面のようにほとんど表情を変えずに彼はそう言った。
「それで、本題はなんや?」
「ほう?どうしてそう思う?」
「代表さんが自ら、態々一生徒の起こした事件に謝りにくる訳ない。詰まる所何かしら用事があるから足運んでまで来たんやろ?」
「……お見通しか」
今まで表情を変えなかった彼が少しだけ笑みの表情を浮かべる。
「用件と言うのは、君が沢渡とのデュエルと目撃した融合モンスターについてだ」
彼はそう切り出すと、手持ちの鞄から紙の資料を取り出した。
「これは?」
「本来は機密なんだがな。これはこの街で発生しているデュエル反応をマッピングしたものだ」
そう言われて私は資料を手にとって確認する。
「それには昨日の夜、君が倒れていた場所で確認されたものだ。最初の2ターンまでは普通のそれだったが、3ターン目にそれなりに強力なエクシーズ召喚の反応がした後、次のターンにはそれ以上の融合召喚の反応が検知された」
零児はそこまで言うと眼鏡に手を当ててこちらを睨む。
「はっきり聞く、あのデュエルの中で不可解な現象は起きなかったか?」
「……例えば?」
「そうだな……上げるとすればアクションデュエルでもないのにダメージが実体化する、もしくはカードが起こした現象が現実になったなどだな」
零児が言うことに私は少し驚く。実際に見ていないはずなのにここまで高度な予想をしてくるとは思わなかったからだ。
「…………話す前に、一つお願いがあります」
「なんだ」
「……隼とユートを連れてきて貰っても良いですか?これは二人にも関係する話かもしれませんし……なにより」
「相手が融合次元の可能性があるからか?」
私の言葉を聞いた彼は間髪入れずそう言った。
「……なんでその事を……」
「隼という彼を見ただけでは分からなかったが、あのユートという少年を見たときに確信した。恐らく彼は『エクシーズ次元の榊遊矢の同一存在』なんだろ?」
「ええ……まぁ……」
なんで彼がそんなことを知ってるのか疑問に思ったが、とりあえず口にせず曖昧に頷いた。
「まぁ良いだろう、私も彼らに用があったところだ」
零児はそう言うとベットの横にあった車イスを持ち出す。私はそれを見て少しだけ懐かしく感じつつも、ゆっくりとそれに乗るのだった。
「はやて!!大丈夫なのか!?」
リインフォースに押され病院のエントランスに来た私を最初に襲ったのは、珍しく慌てた表情で迫ってきた隼の顔と大声だった。その後ろにはユートに遊矢、柚子に権現坂、素良と岩丸さんが居た
「隼、ここは病院なんだ、少しは他の人の事を考えろ」
ユートは呆れながらそう言う。かなり大きな病院であるここは休日ともあって診察を待つ患者さんやお見舞いに来る家族などが多く、その中から隼はかなり目立っていた。
「…………すまん」
「いや構わへんよ、私的には隼の慌てた顔を見れただけでも儲けもんやし」
「全く、相変わらず悪趣味な性格してんなはやて」
岩丸さんは苦笑を浮かべつつそう言った。
「その……大丈夫なのかはやて?」
遊矢が心配そうな表情でこちらに聞いてくる。
「大丈夫やって遊矢、私これでも遊矢より強いんやからw」
「…………無理してるだろ」
遊矢はまるで見透かすようにそう言った。
「……どうしてそう思うんや?」
「今のはやての顔……あの時の俺と同じような気がしたから……」
遊矢がいうあの時……それは遊矢の父である榊遊勝が消えたときのことなのだと悟る。
「俺にははやてが何に悩んで、何を思ってるのかは分からない……けど、無理だけはしないでくれ」
そう言うと遊矢はエントランスから去っていく。少ししてそのあとを柚子と権現坂、素良の三人が追っていく。
「……分かっとるよ。ただな遊矢、この世の中は無理をしてでも遠さなあかん物事だってあるんやで」
私がぼそりと放ったその言葉はエントランスの人達の声に消えていく。少しずつ、だが確実に、私と遊矢の道が別れていくような、そんな感じがして仕方なかった。
遊矢side
「はやて……」
病院から出たあと、俺は一人で歩いていた。
「俺は……あの日から進んでないのかな」
あの日……父さんが失踪したあの日から、俺は数々の罵倒を浴びてきた。『勝手人の息子』、『グズ』……上げていたらキリがない。
そんな俺を権現坂や柚子は庇ってくれた。けど俺は二人に何もしてやれなかった。二人から勇気を貰ったのに、俺は何もあげられなかった。
「俺は…………強くなりたい」
「…………なら力を貸しましょうか?」
急に声をかけられ、俺は振り替える。そこには黒ずくめのフードを被った少女が立っていて、俺とそいつ以外の人間は誰も居なかった。
「なんだ、お前は!!」
「あなたに力を与えてもいいと思ってる偽善者です」
そう言うと女性は懐から三枚のカードを取り出す。
「このカードを手に取れば力を得られます。君を馬鹿にした連中にも仕返しできます。君の父を侮辱した連中をも圧倒できる力を、です」
「力…………」
取ってはいけない、俺の心はそう警鈴を鳴らした。が、同時に女性が言った言葉を受け入れたいとも思う。
「孤独に打ち拉がれる日々が無くなる……これを手にすれば、あなたを否定する者は居なくなる」
「俺を……否定しない?」
「そうです。あなたは否定され続けた、父親が失踪してから、あなた自身の存在を始め、今まで仲の良かった筈の人間からの裏切り、罵倒、そして残った友人からも知らず知らずのうちに傷つけられた自身のプライド」
「違……俺は……」
俺は言葉にできなかった。目の前が暗く重いものに変わり、心の底から昔言われ続けた言葉が濁流のように押し寄せる。
「ですがこのカードによって全ては変わります。あなたを否定する者はいない、今まで失ってきたものを取り戻す事ができます」
少女の言葉がまるで天使の救済のように聞こえる。自然と右手がカードに伸びる。そしてそれを掴んだ途端、俺は意識を失った。
「……あれ?」
気づいたとき、少女は既に居なかった。俺は気のせいかと思ったが、右手には少女から貰ったカード三枚がちゃんと握られていた。
「夢じゃなかった……」
俺の心はどこか清々しさを感じていた。そしてそのカードを見たとき、不思議な感覚が身体を纏う。
「手に入れたんだ……否定されない力を……俺は!!」
自然と笑いが込み上げた。高揚とした気持ちが熱を帯び、自然と目付きが鋭くなる。
その時の俺は気付かなかった。この力がまやかしでしかないということに、そして、彼女と戦うことになるということにも…………。
???side
「…………目標に例のものを渡すことに成功しました」
「…………そうか」
「ふ~ん、そういえばボクがこの間渡した奴はどうなったの?」
「どうやら当代の夜天の小鴉にヤられたようだ。だがそれでも我らの目的には支障は無いがな」
「では?」
「うむ、お前は目標と小鴉が戦うことになるようにしろ。それくらいお前には簡単だろ…………殲滅者?」
「分かりました…………闇すべる王」
「えぇ~!!またボクは待ちぼうけなの!!」
「まぁ待て、貴様の出番は別にあるからそれまでは待て、襲撃者」
「ちぇ~~」
闇は広がる。今再び破壊の時来る。
最後のキャラ……いったい誰なんでしょうね~~(すっとぼけ
というわけで、彼女たちも参戦決定です。彼女達のデッキはまだ決まってませんが、早いうちにデュエルすることができるようにしたいです。