「では、話を始めよう」
零児の言葉に部屋に戻った私やリインフォース、隼とユートが頷く。
「まず一つ聞きたいが、君たちはアカデミアについてどこまでの情報を手に入れてる」
「私はアカデミアのトップが零児の父親である赤馬零王っていう事と、その人が何やら力を手に入れようとしてる……ってことぐらいやな」
「俺達はアカデミアについてはあまり、だがアカデミアが使っていたモンスターは『古代機械』、『シャドール』、『剣闘獣』みたいな融合召喚のカテゴリーだった」
「しかもどいつもこいつも猟犬やらなんやらと動物の名を関してる物が多かったと記憶してる」
私たちがそう言うと零児は眼鏡に手を当てる。
「なるほど……では聞くが、今回の沢渡シンゴの件、アカデミアが一枚噛んでると思うかね」
「あり得ないな」
零児の言葉に隼は真っ向から否定する。
「即答か、理由は?」
「アカデミアの連中は基本的に自尊心が高い連中ばかりだ。それに奴等は多対一などのデュエルは良くやるが必ず自分達の手で戦う。そんな連中が今回の……いわば搦め手のような事をするとは考えられん」
隼は当然のように答える。それに対してユートも認めたくなさそうだが、首を縦に振る。
「では誰があんなことをすると思う?現在解析中だが、沢渡シンゴが使っていたモンスターは十中八九間違いなくLDSのカードではない」
「…………一つ良いですか」
と、今まで聞いてただけだったリインフォースが口を開く。
「主は確かデュエル前にシュベルトクロイツの……デバイスの録画機能を使っていた筈です」
「?確かにしてたけど、それがどないしたん?」
「もしかしたらその映像を見れば何かが分かるのではないか、と」
「ん、分かったで」
私はそう言うとシュベルトクロイツからホロディスプレイを展開させてデュエルの映像を映し出す。
『現れろレベル10!!『凍氷覇帝メビウス・ゼロ』!!』
「!!主はやて、停めてください!!」
そして沢渡が例のモンスターを召喚した辺りでリインフォースの目が鋭くなり声をあげる。
「これは……いえ、そんなバカな事が……」
「なんや、なんか分かったんか?」
ぶつぶつと何かを呟いているリインフォースに私は問いかける。
「……恐らくですが、これは『闇の欠片』が産み出したカードなのだと思います」
「闇の欠片?なんだそれは」
零児は首を傾げながらそう聞く。
「主はやては当然知ってますでしょうが、私やナハトが存在した『闇の書』は元々別の魔導書を歴代の主が改編したものです」
「うん。元々の名前は『夜天の書』いう、魔法を知識として記憶するものやったんやろ?」
私は覚えてる限りの情報を口にする。
「そうです。確かに『闇の書』のベースとなった魔導書……それが『夜天の書』です。ですがそれだけではないのです。知識として記録する『夜天の書』と得た知識を具現化する別の魔導書『紫天の書』、その二つを組み合わせて誕生したのが『闇の書』の原点です」
そういってリインフォースは自分からホロディスプレイを展開する。そこには青いカバーの本と、紫色のカバーの本が映し出されていた。
「ですが確立した魔導書を融合させるのは簡単ではありません。どちらも『第一級ロストロギア』クラスの品なら尚のこと、下手をすれば世界一つを軽く消滅させることになりますから」
「ならそれはどうやって完成させた?」
ユートは当然のように聞き返す。
「二つの魔導書を組み合わせた方法、それは『エグザミア』と呼ばれる魔力結晶……いえ、永遠結晶を用いた事です」
「永遠結晶?それって前になのはちゃんが話してた『ジュエルシード』みたいなものなんか?」
私は前に映像でみた青い結晶体を思い浮かべる。
「確かに主はやてが思い浮かべているロストロギア『ジュエルシード』も魔力結晶の一つです。ですがエグザミアはそれを遥かに凌駕します」
「ジュエルシード?なんだそれは?」
零児やユート、隼が訳が分からず首を傾げる。
「私らが居た世界の魔法道具の一つでな、その結晶になんか願うとそれを叶える力があるんよ」
「ほう?そんなものが実在するのか……」
「ならばそれを使って瑠璃やカード化された仲間達を元に戻すことも」
「そんな良いものではない。確かにジュエルシードは願望を叶える事ができるが、それは形としては歪なもので、もし使おうものなら暴走する危険性もある」
「前になのはちゃん達から聞いた話やと、人だけでなくて植物や動物、はたまた水みたいな無機物なんてものまでジュエルシードの力で暴走したらしいんよ」
私達二人がデメリットを話すと、少し興奮していた隼ががっくりと項垂れる。
「それで、その『エグザミア』っちゅうもんはどんな力を持ってるんや?」
「私もそこまではよく知らないのですが……ただそれは例え粉々に砕かれても、闇の書同様に時間さえかければ完全に修復する事ができるものらしいです」
「しかし、それと闇の欠片がどう繋がる。その物質がカードを産み出すとでも言うのか?」
零児は言葉鋭く詰問する。
「闇の欠片は闇の書が……ひいては『エグザミア』が砕かれた事によって発生した特殊な物質です。その欠片に触れた者の闇の部分を蒐集し、一つの形に具現化する。今回はそれがカードとしてなったということだと思う」
「てことは何や、私達が闇の書を壊してもうたから、こんな風になったんか?」
私の言葉は少し震えていた。仕方なかったとはいえ私達が起こしたことが巡り巡ってこんな事になるとは思ってもみなかった。
「――そうとは言いきれませんよ、夜天の主」
突如として別の声が掛けられる。私達が少し離れた所に居た、その声の主を見つけると、私とリインフォースは驚愕した。茶色のショートカットに、ダークブルーの瞳、私と同じくらいの身長。そして何よりも驚いたのはその服装だった。赤紫と黒を基調としたそれは、色こそは真逆だが、それでも私の親友であり魔法の師匠、高町なのはのそれと酷似していた。
「誰や……アンタ」
「そうですね、こういうときは自己紹介をするべきですか……」
そう言うと少女はこちらに近づき、軽く会釈をする。
「はじめまして、私は紫天の書の管理プログラムの一つ、闇の書の高町なのはの情報より生まれたマテリアル、星光の襲撃者、またの名をシュテル・ザ・デストラクターと申します」