「どうすれば……どうすれば……」
私はリビングでおろおろと歩き回っていた。主が居なくなり、魔力探知さえ全く反応しない。
「落ち着けリインフォース、お前がそんなんでどうするんだ」
「ですが……」
「ただいま……ってどうした、いったい?」
ユートに宥められていると、さっきまで出掛けていた隼が帰ってくる。
「あぁ隼、実はかくかくしかじかでな…………」
「何!!はやてがどこかへ消えただと!!」
「ってお前もか!!」
事情を聞いた隼もおろおろと慌てている。流石のこれにはユートを驚く。
「ど、どうするんだ!!リインフォースなんとかならないのか」
「なんとかって何ですか!!」
「なんとかはなんとかだ!!」
「会話が成立してないぞ!!」
「いい加減にしろ!!」
わーわーぎゃーぎゃーと喧々囂々に騒ぐ私と隼にユートは頭を押さえて怒鳴りつける。
「そもそも、なんでこんな状況になったのかを思い出せ!!バカ二人!!」
「「う……」」
ユートの叱責に私達二人は身が小さくなる思いで聞く。
「はやては恐らく自分自身が弱いことに耐えきれずに家を出たんだろう。確かにはやてはコンボや引きたいカードをドローできる特別な運を持ってる……が、例えそれでも圧倒的な力を持った相手には敵わない」
ユートは淡々とそう言う。
「さらにいえば、そもそもの話、はやての性格を見てもエクシーズ召喚は向いていない」
「ど、どういうことだユート」
「はやてはエクシーズ次元から来た俺たちをこうやって保護してくれるほど器が大きい人間だ。だがそれと同じではやては何かを切り捨てるということを極力避けたがる人間でもある」
ユートはそういうと三枚のカードを取り出す。それはエクシーズ、シンクロ、融合とそれぞれのモンスターが描かれている。
「これは俺の持論だが、エクシーズ、シンクロ、融合はそれぞれ人の性格を表したものでもあるとも言える」
「人の性格だと?」
「そうだ。エクシーズモンスターは特性上『他のモンスターの上に成り立つモンスター』であり『他のモンスターの犠牲の上に成り立つ』モンスターだ。つまりエクシーズ召喚を使う人間は、目的のために他を切り捨てる覚悟がある奴だということだ」
だが、とユートは続ける。
「はやてはそうじゃない。はやては過去に両親を失い、数年前までずっと一人で生活していた。さらに魔法の影響で両足が動かず、学校にも行けなかったはやては毎日を孤独に生きてきた。お前もよく知ってるだろ、リインフォース」
「……ええ。間接的とはいえ、主はやてがそうなった原因は私にもありますから」
「そして数年前にはやては『闇の書』の守護騎士……『ヴォルケンリッター』だったか?そいつらが現れた事によって孤独では無くなった、が、それと同時に恐らく『誰も失いたくない』と思うようになったんだと思う」
ユートはそういうとエクシーズのカードをしまう。
「はやてはいつも独りだったから、家族と呼べる存在を誰一人として犠牲にしたくなかったんだろう。そしてこの世界に来てはやては再び独りになった。だからこそ、同じ独り同士の俺たちと家族として一緒に暮らしたんだと思う」
だからこそ、とユートは拳を握る。
「はやてにはエクシーズ召喚は向いていない。エクシーズモンスターは他者を犠牲にして力を発揮するが、それと同時に力を使えば使うほどにそれは独りになっていくからだ」
「ですが……主はやてはそんなことを思ってはいないと……」
私は小さな声でそういうと、ユートはアタッシュケースを取り出して私へ投げ渡す。
「これは?」
「はやてのカードが入ったケースだ。リインフォース、お前がはやてを支えるんだ、俺や隼では出来ない、唯一はやてのことを知っているお前だからこそだ」
「私が……主を支える……」
私はそう聞かされケースに目を向ける。するとユートはリビングから出ていこうとする。
「どこにいくユート」
「俺の部屋だ。マテリアルや『闇の欠片』の使い手は強い、下手をすれば俺でも倒される危険性があるからな、アカデミアを倒すために躓く訳にはいかない」
そう言ってさっさと出ていく。
「……主はやて」
「……俺には何もいうことが出来ん、お前が自分で探すんだ」
そう言って隼もリビングから颯爽と消えていく。いつしか雨は疎らになっていき、空から雨雲が少しだけ消えかけていた。
ユートside
(『ルシフェリア・シュタルク・ドラゴン』……マテリアルのシュテルはかなりの強さだった)
俺は自分の机にカードを並べて一枚一枚確認していく。
(今の俺のデッキでは、相討ちが限界……だがそれではダメだ)
俺はエクストラから『反逆の龍』のカードを取り出す。
(『ダークリベリオン』、俺はみんなを守りたい、エクシーズ次元のみんなを、共に戦った仲間達を、そして、この次元で俺を家族と呼んでくれた女の子のためにも)
俺は心の中でそう誓うと、『反逆の龍』の雄叫びが聞こえたような気がした。
隼side
(はやてにはエクシーズ召喚は向いていない、か……)
俺はベットに横たわりながらそんなことを考えていた。
(ユートの言う通りかもしれんな。はやてはやさしい、いや優しすぎるのかもしれない。だからこそ、彼女にはエクシーズ召喚という存在が向いていないのかもしれない)
俺はふと机に乗せられた写真立てに目を向ける。
(だがユート、お前の言うことは裏を返せば『エクシーズモンスターは周りのモンスターから慕われ、その者の為に自らを犠牲にしてでも守り抜く』という、王としての資質の持ち主でもある)
「……もしそうなら」
俺はそう呟いて写真に写る彼女を見つめる。
「はやては……本当の意味での『夜天の王』になるんだろうな」
そこに写るはやては、ようやく雲が晴れた夜の星空のように、どこか輝いているようにみえた。