「は~」
「なのは、少しは機嫌を戻して、ね」
私、高町なのはは今現在、最近ようやく営業再開した両親が経営する喫茶店『翠屋』の奥の席のテーブルで親友のフェイトちゃんと一緒にケーキを食べていた。
「そうは言うけど、はやてちゃんが消えてからもう1ヶ月近く経つんだよ?なのに余り進展が無いから」
「ユーノやクロノ達が頑張ってるんだから、少しは……」
「そうだけどさ~」
私はブータレながらオレンジジュースをストローで飲みほす。
「……そういえばなのは」
「ん?どうしたのフェイトちゃん」
「やっぱり、海鳴市で魔力反応が多くなってない」
「あぁ~」
フェイトちゃんがそう言うと私はそれに同意する。
1週間前、ようやくすずかちゃんやアリサちゃん達が退院した頃から、二人からほんの少しだけど魔力の気配を感じた。
不思議に思ってリンディさんにお願いしてもらったところ、海鳴市全体で細々とだが魔力保持者が検出された。しかも日を過ぎる事に徐々に増えているらしい。
「実際お兄ちゃんやお姉ちゃんからも少し魔力感じるし、アリサちゃんもすずかちゃんも私の念話が聞こえたみたいだからね」
「そうだね。ユーノに聞いてみたけど、後天的に魔力に目覚めるなんてあり得ないって言ってたけど、多分」
「あの『地縛神』のせいなの」
みんなが倒れたあの日、海鳴市に遊戯王のモンスター『地縛神 Ccapac Apu』が現れた。恐らく、あのモンスターによって人や周辺に漂っていた魔力が一気に奪われ、そして枯渇した魔力を回復するために使っていなかったリンカーコアが胎動を始めたんだと思う。
「でもアリサやすずかは魔力が使えるようになってある意味喜んでたけどね」
「二人とも調子いいよね。あんなことに巻き込まれたのに」
私はそう言いながらショートケーキのイチゴを口に入れる。しかしその顔は少し笑っている。
「でもアリサちゃんがいきなり『私達にも専用のデバイス作って渡しなさい』って言ったときは大変だったよね」
「すずかもそれに悪のりしてたからね。いつもは止める側なのに」
「結局ユーノ君に無理言って頼んじゃったしね~、はぁ、今度シュークリームとか差し入れしとこう」
「あはは……」
私はそう言ってるとレイジングハートとバルディッシュがいきなり光る。
『何かが転移してきます!!』
「ホント、レイジングハート!!」
『場所は恐らく近くの公園の上空です』
「わかった、バルディッシュ!!」
私たちは急いで立ち上がると、お母さんに食器を任せてお店から走り出す。公園までは近いけどさすがに真っ昼間に空を飛ぶわけにもいかない。運動や走ったりはだいぶ苦手だけど文句を言ってる時間もない。
『クロノ君!!今すぐ公園周辺とその上空に時限結界を張って!!』
『こちらでも確認している。現在近くにいるアルフがそっちに向かってる』
『アルフ、どのくらいで到着する?』
『あと2分もしないで到着するよ。しかしなんでまたこの街に来るかね』
『ボヤいてる暇は無さそうだぞ。転移体は人形、上空1000メートルを現在進行形で落下中、しかもそれには魔力反応は全くない』
『うそ!!』
私は走るスピードを少し上げる。フェイトちゃんもクロノ君の言葉を聞いてスカートなのを気にしないで陸上選手もかくやというスピードで走り抜ける。
『なのは、フェイト、こっちは到着したからすぐに結界を張るよ!!』
『ありがとうアルフさん』
『ありがとうアルフ』
私たちがそう言うと、瞬時に時限結界が周囲に張られ私達以外の人間を遮断する。
「レイジングハート!!」
「バルディッシュ!!」
「「セットアップ!!」」
私達は走りながらデバイスを起動させてバリアジャケットを身に纏う。そして空中に飛び出すと、目標の落下体を視界に捉える。
黒髪のツインテールに、蒼と黒を基調としたジャケットコートを身に纏っていた中学生くらいの女の子で、右手には何やら機械のような物を身に付けてる。
「フェイトちゃん!!」
私がそう叫ぶと、フェイトちゃんは最速のソニックフォームへと転換して一瞬にして彼女に追いつき体を押さえる。気絶していた為抵抗はしなかったが、やはり体格的な面でキツいのか少しふらついていた。私が追いつく頃にはフェイトちゃんの顔には疲労が見てとれる。
「大丈夫フェイトちゃん!!」
「うん。けど一人で運ぶのはちょっとキツいかな……なのは、私が左側で担ぐから右側お願い」
「わかった!!」
私は気絶してる彼女の右側につくと、彼女の腕を肩に回し、フェイトちゃんも逆側から支える。と、その時、
「フェイト~!!なのは~!!」
「あ、アルフ」
「アルフさん!!」
今まで結界を張っていたアルフさんが私達の側に飛んでくる。
「二人ともお疲れ。私が変わろうかい?」
「え、でも……」
アルフさんの提案にフェイトちゃんは少し戸惑う。
「二人とも走って飛んでで大変だったんだ、ただ結界張ってた私の方が疲れてないし、何より運ぶの大変だろ?」
「う~ん、じゃあお願いしても良い?」
「任された!!」
そう言って私達は彼女をアルフさんに引き渡すと、アルフさんは軽々と背中に乗せる。
元々、狼の使い魔のアルフさんにとってこれくらいは軽いものなのだろう。
「それでどこに運ぶんだい?ここからだと翠屋も家にもちょっと遠いからね」
『だったらこっちに運べば良い』
アルフさんがそう聞いた時、まるで伺ってたようにクロノ君がオープンで回線を開く。回線にはどういうわけかユーノ君も映っている。
「アースラに運ぶって、でもこの子」
『あぁ、こっちでも再度計測したが魔力の反応が無い。だが魔力を使わない転移方法があるのならこちらも聞く必要がある』
「つまりはアレかい。アースラに連れてって尋問しようって腹積もりなんかい?」
『そうじゃないよ。ただ、もしかしたらはやての件と関係があるかもしれないからね。特に、その子の左手の機械は、ね』
ユーノ君のその指摘に私達三人は一斉に左手を確認する。コートと同じように蒼と黒を基調としたカラーリングの機械は、テレビのような液晶画面が着いており、なぜか脇の金属フレームには溝のような物が彫られている。
「なんだい?二人ともこれを知ってるのかい」
『僕らどころか、恐らくなのはもフェイトも、恐らくはやても見たことがあるはずだ』
ユーノ君がそう前置きすると、クロノ君はあるものを取り出す。それは一枚のカードであり、私もフェイトちゃんも良く知っていた。
「それって、遊戯王のカードだよね?」
『そうだ。そして恐らくその機械は
『遊戯王ARC-Ⅴ』の世界のデュエルディスクと同じ物体だ』