遊戯王ARC-Ⅴ 夜天の来訪者   作:ドロイデン

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Episode29 夜天の闇

「はぁ…………」

 私は現在、凛さんの屋敷に来ていた。というのもスタジアムには一応シャワー等の設備はあるけど、やはりというか着替えというものは置いていない。ずっと騎士服でも良いけど、流石に下着までは変えられないから凄く、もの凄く不快に感じる。

 それに気づいた凛さんが、何度か自分の屋敷に連れてきてはそういったものを拝借しとるというわけや。で、現在私は凛さんが沸かしてくれた浴場で一人ゆっくりとお湯に浸かってる。

「私……強くなっとるのかな~」

 私は再びため息を一つ吐きながらそんなことを思い更ける。

 実際、デッキはほぼ完成されたといってもいいほどに調整され、デッキの回り方も文句はない。けど、肝心の私の戦略が身に付いてるのかが、さっぱり分からなかった。

 スタジアムで何度もデュエルしてきたが、その度に最後は似たような形で終わることが多い。基本的に『トライヴェール』や『デルタテロス』、『ナハトヴァール』を中心としたエクシーズモンスターによるフィールド消去と、特殊召喚を中心としたものばかりだ。

(戦った人たちはみんな確かに凄い強かった。けど、みんなシュテルみたいに高速展開のデッキと違って、パワー重視ばっかやった)

「何悩み事してんだ?」

 ふと隣から声が聞こえたかと思うと、隣には精霊化したナハトが隣で湯槽に浸かっておった。

「……なんか……私って強く成っとるんかなって思ってな~」

「強く、か。テメェは贔屓目抜きで強いと思うけどな」

「けど私は、なのはちゃんやシュテルみたいにカードの引きはそこまで良くないし、フェイトちゃんみたいな戦術は立てらんない」

「まぁなのはやシュテルについては何も言えねぇけど、フェイトぐらいの戦術ならはやても出来るだろ?」

「全然ちゃうよ。フェイトちゃんはエクストラデッキも、高火力モンスターも使わない『ローコストデッキ』でなのはちゃんや私と対等に戦っとる。私はエクストラを使ってやっとフェイトちゃんと同等クラスなんや」

 実際、なのはちゃんやシュテルが使う『ジャンクドッペルシンクロ』を渡されても私には複雑すぎて扱いきれない。逆になのはちゃんは前に私の『テラナイト』デッキを使わせてみたら、後攻2ターン目に『トライヴェール』と『デルタテロス』を揃って並べて1ターンキルを余裕でしてしまう程やった。使いなれてる私でも両方をフィールドに並べられる事はそこまで多くない。十回やって一回できれば上出来なほうだ。

「たく、そこまで強くなきゃいけねぇのか?」

「……別に私自身強いとは思っとらへんよ。私は結局、誰かに頼らなきゃ何もできへんから。けど……」

「ん?」

「分からないんよ。皆とおんなじになれる力があっても、どこかで蔑んでるんやって思っとるかもしれない、そのうちみんな離れていってまうかもしれないって……ときどき思ってまうんよ」

 それは私の本音やった。

 私は主として物心つく前から『闇の書』と一緒やった。両親も知らぬ間に居なくなってて、私には目の前で甘えられる人間が居らんかった。

 車椅子の生活になってからは、学校にも通えず、回りの同年代くらいの子達から奇異の視線を浴びせられ、酷いときには暴言の数々を受けてきた。けど、私にはそれを話せる人は誰も居らんかった。

 そのせいか私は一人で抱え込む事が多くなった。さらにアニメやゲームなどにのめり込んだ。アニメは二次元やから誰も私に対して悪口は言わんし、ゲームも同じくやった。

 闇の書が覚醒してシグナムやヴィータ達ヴォルケンリッターの皆が同居人になってからはそこまでのめり込んでやることやなくなった、が、私は皆の主として振る舞ってけど、私と闇の書との繋がりが、私のためを思ってとはいえ、彼女達を苦しめた。そして『闇の書事件』へと発展させてしまった。

 そしてシュテルとのデュエル、結局私は何も出来ず、彼女から苦言を呈され、それに私はどこか『ほっとしていた』のだ。

「たぶん私は、誰かに突き放される事をどこかで望んでいたんかもしれないんや。みんな私の事を心配して優しくしてくれたけど、ホンマは怒られたりしたいって思う気持ちの方が大きいんや」

「……主よ、そりゃ少し考えすぎなんじゃねぇか?」

 ナハトのその言葉に私は首を横に振るう。

「考えすぎなんかじゃあらへん、私はずっと……誰かに助けられてばっかりだったんや。それが一番、心の底から嫌やった、厳しく突き放して欲しいって何度も思った」

「主…………」

「おかしいやろ?普通の子供は叱られたりするの嫌いやのに、むしろ私はそれを望んどる。まるでドMの鏡みたいや」

「…………」

 ナハトは何も言わんかった。私の目には何時からか涙の粒が落ち始めていた。

「私やって……ホンマは!!お母さんの料理を食べてみたかった!!お父さんと一緒に遊びたかった!!三人で一緒に笑ってみたかった!!甘えてみたかった!!怒られてみたかった!!けど……私にはどれもこれもできんかった……叶わなかった……ずっと独りで居ることしか……!!」

 その時、ナハトが自然と私の事を抱き締めた。顔に当たるその胸は、どこか慈愛のようにも感じれた。

「もうよせ……お前はもう……独りじゃないんだから」

「せやけど……せやけど!!」

「ここには私もいる……少し離れているがユートも、隼も、リインフォースも、シグナムも、ヴィータも、シャマルも、ザフィーラもいる。それにツヴァイも」

「…………!!」

「泣いてもいい、叫んでもいい、今だけは……自分に素直になればいいさ…………」

「う、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 私は泣いた。顔がぐしゃぐしゃに目が赤くなるほど盛大に泣いた。まるで今まで溜め込んだ全てを吐き出すように、大声で泣いた。ただその声だけが、この大きな部屋に響き渡った。

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