映像が切り替わると、そこにはだいぶ背の伸びた茜と流が中学の制服らしきものを身に付けていた。場所はどうやら教室の中で、窓の外は雪が舞い、冬の夕方のようだった。
流の制服はいわゆる黒の学ランで、どうやら眼鏡を掛けている。茜のそれは、黒の制服にスカートと、伸ばしたらしい茶髪のストレートヘアーが印象的だった。そして茜の体は特に発育が良いのか、制服の上からでもだいぶ膨らんで見える。
「………………」
「小鴉、お主はこれからだろうが」
無言で私は自身の胸に手を当てていると、ディアーチェからジトリとした呆れ声を掛けられる。
『茜、またここの数式間違ってるぞ。あとここの証明問題も』
『う~、数学嫌い~!!ながちゃんもっと分かりやすく教えてよ~!!』
『だからながちゃんって…………もういいや。そういうけど、お前国語と英語以外赤点ギリギリだろうが、特に数学と社会』
『数学は計算面倒だし、社会は覚えるの苦手なんだもん!!』
『…………『蒼眼の銀龍』の効果は?』
『?召喚時に次のターンの終わりまで自分フィールドのドラゴン族は効果対象にもならなくて効果では破壊されなくするのと、1ターンに1度墓地の通常モンスターを特殊召喚やろ?』
『『聖刻』効果モンスターの共通効果は?』
『リリースされたらデッキ、墓地、手札からドラゴン族を攻撃力と守備力を0にして特殊召喚』
『『ヴェルズ・ヘリオローブ』のテキストに書かれた文言を逆さ読みで?』
『純粋にて邪悪なる我らの魂、インヴェルズの崇高なる邪念、破壊、破滅、終焉を求める…………だったはず』
そこまで聞いた流は額にピキッと皺が入る。
『それを覚えられて勉強を覚えられないなんて言わせてたまるかぁ!!』
『痛い痛い!!やめてやめてやめてぇ!!お願いやからアイアンクローは堪忍してぇ!!』
『そんなこと言ってるから、模試でD判定なんだろうがこのおバカ!!そんなんじゃ俺と同じ高校なんて無理だぞ!!』
『せやから、ながちゃんに勉強を教えて貰っとるんやん~!!てか、ホンマに痛いって~!!』
茜は悪びれもなくそう言ってるが、二人ともどこか表情は笑っていた。
『二人とも、何をじゃれあってるんだイ?』
その時、誰かが教室に入ってくる。かなりの高慎重に日本人とは違う外見、見た感じヨーロッパ系の青年が入ってきた。
「あれ?この声って…………」
私は聞き覚えのある声音に少し首を傾ける。
『お、
『たまたまだヨ。それにしても二人とも、ホントに仲良いよネ。それでカップルになってないんだから、不思議だヨ』
『『カップルじゃないし!!ただの幼馴染みなだけだ!!ハモるな!!』』
『ハハハ、やっぱり息ピッタリだネ』
ギル……恐らく後の私の後見人になってくれた『ギル・グレアム』のその言葉に両親は口を揃えて抗議するが、それを見て彼は軽く笑い始める。
『それより、やっぱり茜は勉強?』
『そ、受験まであと1ヶ月切ってるからな。俺は一期選抜で合格したから大丈夫だけど、こいつは私立の併願すら落ちてるし』
『うわ…………僕、私立落ちた人って見たことないよ』
『二人して酷い!!』
『事実だろうが。なんで文字式になったとたんに簡単な足し算や掛け算まで出来なくなるってどういうことだよ』
『うぐ』グサッ!!
『歴史の問題で偉人の所を別の用語になってたしな。地理なんて都道府県全部書けてなかったし』
『あぐ!!』グサグサッ!!
『理科は二つよりはマシだけど、どうしても赤点のボーダーラインを行ったり来たりで波があるしな』
『…………』ドーン!!
『やめテ!!茜のlifeはもうゼロだヨ!!』
流の言葉で茜の体に矢や槍が突き刺さったように見え、彼女自身バタリと机に突っ伏した。
「お母さん…………」
余りの惨状に私は引きつった笑みを浮かべる他なかった。
『う~!!そんなこと言うなら、ながちゃんにバレンタインチョコあげないからね!!』
『お願いです勘弁してください、後生ですからキッチンに立たないでください』
『そこまで言うこと!?逆にびっくりや!?』
彼女の一言に流は体を震わせながらフェイトちゃんも真っ青なスピードで土下座し、茜は驚いていた。
「…………お母さん、料理下手やったんやな…………」
「むしろ小鴉、お前の父親の方が料理は得意のようだな」
知りたくなかった事実に、私は少しだけ虚空を見るようになってしまった。あの時ナハトに『母親の料理を食べてみたい』と言ってしまったが、今思うならすぐにでも取り消してしまいたかった。
「ていうか、グレアムおじさんって、ちゃんとお父さん達の知り合いやったんか……」
まぁあの人は確か地球生まれのイギリス人だったはずなので、海外留学などで日本に来れないわけは無いので余り疑問には思わなかったが。
「む、映像が切り替わるぞ」
ディアーチェのいう通り、映像は紅葉が舞う秋の山中に変わっていた。今度はグレアムさんは居ないが、少し成長した私服姿の二人がそこに居た。
『絶好の紅葉狩り日和だね、ながちゃん』
『そうだな。まさかここまで絶好の気象条件になるとは思いもしなかった』
『ふふふ、そうだね』
茜の笑みに流はどこか顔が紅くなっている。
『それで、一番良い眺めって場所は?』
『うん!!確かもうすぐ……あ、こっちこっち!!』
『お、おい!!』
茜は見つけるや否や颯爽と走っていき、流もそれを追いかける。彼が追い付くと、そこには紅や黄に染まる紅葉や銀杏などの木々に覆われた山々を一望できる場所だった。
『…………綺麗やね』
『…………そうだな』
茜の言葉に、彼は素直に返す。
『…………お弁当にせぇへん』
『お前を少しでも信じようと思った俺がバカだったよ』
『酷い!!』
そう言いながらも、二人は近くにビニールシートを轢くとそこに座り、流特製のお弁当を取り出した。
『やっぱり、紅葉狩りしながら食べるお弁当は格別やな~』
『良く言うよ、花より団子なくせに』
『失礼な、私は花も団子も、やで』
『そうだな……昔からそうだったよな』
流は思い返すようにそう呟く。茜は良い笑顔でお弁当の卵焼きをパクついており、なんとも幸福そうな顔だった。
『…………茜』
『ん?どうかした?』
『俺と…………付き合ってくれないか』
彼のいきなりの言葉に、茜の顔は驚愕の表情を浮かべ、箸でつかんでいた唐揚げがポロリとこぼれる。
『……どうして、このタイミングなんや?』
『別に今じゃなくても良かったんだけどよ……茜ってほら……高校になってからモテるようになったろ?』
流の言葉に聞いていた私たちは納得する。茜の顔はいわゆる美人に入るうえ、性格だって優しく、周りからモテても当然な部類だった。
『そしたらどういうわけかモヤモヤしてさ、こうやって二人っきりで遊びに行くことも無くなって……ギルに相談して漸く気づけたんだ』
『そっか…………ギルくんはなんて言ってた?』
『『漸く気付いたんだね、この女泣かせの鈍感流』って言われたよ』
『ハハハ…………』
彼女は渇いた笑いで応じる。
『……こんな鈍感男で良かったら……俺と付き合ってくれ!!お願いします!!』
『…………そんなん、聞く必要無いやろ?』
『え……』
流が顔を上げた途端、茜は彼の体に思いっきり抱きつき、そして
『ッ!?』
『……ホント、気付くの遅すぎや……けど、そんな
『茜……』
彼女の目には涙が滴っていた。それは哀しみではなく、怒りなどでもなく、嬉しさを物語っていた。
『流……私からお願いする。こんななんの取り柄も無い私やけど、貰ってくれるか?』
『……あぁ。けど』
『?』
『言葉だけじゃ伝わらないからさ……』
そういうと、二人は再び互いの唇を重ね合わせる。秋の紅葉にも負けない、真っ赤で、それでいて互いに忘れられないその日は、奇しくも後の二人の結婚記念日となるのは、数年後だった。
ちょっくらアンケートを実施したいと思います。テーマは『リリカルなのはSts以降のキャラクター登場について』です。
というのもGODネタをぶっ込んだということで、リリカル未来枠ということでキャラクターを登場させたいと思うのですが、GODそのままでは面白くない、ということで『Sts以降の主人公及びそのパートナーキャラクター』の中で選んで欲しいということにしたいと思います。
詳細は活動報告にてアンケートという形で発表しましたので、ご覧いただければ幸いです。