「ぐぁぁぁぁ!!」
不良 LIFE0
路地裏、俺は無理矢理にデュエルし、負けた不良に近づくと一枚のカードを取り出した。するとカードから闇を纏ったモンスターが現れ、不良に馬乗りの形で牙を向ける
「…………」
「な、やめ、うぁぁぁぁぁ!!」
不良はその断末魔と共に闇に呑まれ、その場には不良が使っていたデュエルディスクだけが残った。
『………………』
「…………もっとなのか?最近多いな……」
モンスターは無言でこちらを睨み、俺はやれやれと目を下ろす。
最初の頃はあまり餌に困ることは無かったが、最近は力を欲するように強く要求してくる。
『………………』
「分かってる。分かってるさ…………俺ももっと食べたいと思ってたしな……」
俺はモンスターを諭すと、不良のデュエルディスクからデッキを抜き取り、中身を確認する。が、あまりレアなカードは存在せず、俺のデッキにシナジーするカードもなかった。
「………………ちっ」
俺はため息と舌打ちを着くと、持っていたそのカードをばら蒔いた。すると、モンスターは待っていたかのように大きく息を吸い込み、そのカードたちを吸い込み、そして喰らった。
それでもモンスターは納得しないのか、闇の衣は不機嫌に揺れている。
「…………次に行くぞ。もっと満足したいしな……」
『………………グルァァァァァァ!!』
俺の言葉に、モンスターは咆哮をあげ、また俺のカードへと戻っていく。
「……何を……やっている」
「!!」
突然声を掛けられ、俺は驚き振り替える。そこには黒いコートに、黒い特徴的な髪型、睨むようなつり目は何度か見たことがあった。
「…………ユート」
「……こんなところで何をやっている、
ユート視点
「はい、八神です」
事の次第は一時間ほど前、家に掛かってきた電話だった。はやてと隼が料理をしていて、リインフォースが風呂に入っていて暇だったから俺が出たのが始まりだった。
『あ、ユートくんじゃない!!久し振りね~!!』
「遊矢のお母さんですか、いったいどうしたんですか?」
相手は一応所属となっている塾のメンバー、榊遊矢の母からだった。
『いやね、遊矢の奴ちょっと出掛けてくるとか言って帰ってこないからね、もしかしたら知り合いの家に居るかも~って!!』
「遊矢が?いえ、此方には来てないですね」
放浪癖でもあるのかと思ったが、流石にそれはないと切り捨てる。
『でもね~、もう二時間近く出掛けたままだから一応心配でね。ディスクに通信入れてるんだけど全然音沙汰無くて』
「二時間もですか!?」
俺は驚いた。まだ夕方と夜の間という微妙な時間帯だが、他次元から来て同い年なのに廃工場などで寝食していた自分の事を棚に上げるようだが、まだ中高生の遊矢がこんな時間まで外にいるというのはおかしい。
『一応これから権現坂君にも電話して聞いてみるから、何か分かったら連絡してちょうだいね~』
「ええ、力になれずすみません」
『良いの良いの。寧ろいままで夜に出掛けることなんて無かった遊矢がここ最近、夜に出掛けてくれて少しだけ嬉しいって思ってたところもあったからね~』
「ここ最近……ですか?」
思わぬ情報に聞き返してみる。
『ええ、なんでも少し用事があるとかなんとか、帰ってきたとき怪我とか汚れとかは無かったからいじめにあってるってわけではないみたいだけどね~』
「そう……ですか…………」
それだけ言うと遊矢の母からの電話は切れた。俺は受話器を置くと、自分の部屋からいつものコートを取り出した。
「おろ?ユート、どこか行くの?」
玄関まで来ると、エプロンにお玉を持ったはやてが気付いてやって来る。
「遊矢がどこかに行って帰ってないらしい。……最近、少し気になる事もあったからその事も調べてくる」
「待て、だったら俺たちも」
「いや隼、ここではやてやお前まで出ていったら余計に大変なことになる。ここは俺に任せてくれ」
俺は隼とはやてにそういうと、自分の靴紐を縛り直す。
「そっか……でも、絶対に帰ってくるんやで?」
「分かってる。俺の帰るところは、今はここだからな」
俺はそう言って、手持ちのカードから『幻影翼』を使い、飛ぶように跳躍して家を出る。
(最近、街で頻繁に発生してるデュエリストの失踪事件……被害者はデュエルディスクだけを残して、本人は愚かデッキすら消えてしまうという謎の事件……)
ニュースでやっていたそれは、はやてが修行のために出ていったあの頃から始まった。それと同時期、遊矢はどういうわけか融合、エクシーズ召喚をマスターしたという話をLDSの三人が話していたという。
(もしこの二つと、今の遊矢の状況が繋がっているとしたら…………)
その時だった。デッキの『ダークリベリオン』が咆哮をあげた。
(『ダークリベリオン』が反応した?……こっちか……!!)
俺はカードが示す方向へとフリーランニングを続け、辿り着いたのは表通りから少し離れた裏路地だった。
(こんなところに何が「うぁぁぁぁ!!」ッ!!)
俺は声の方向へ走り出す。そして曲がりかけたそこで身を隠した。そこにいたのは、
(ドラゴン…………だと!?)
闇に覆われてはっきりとは確認できないが、そのモンスターは確かに巨大で、禍々しい姿をしたドラゴンだった。
俺は鳥肌がたった。まるで蛇ににらまれた蛙とはこの事ではないのかと思うほどに、異様な寒気を体を襲った。それはモンスターが消えるまでずっと続き、そして
「……何を……やっている」
「!!……ユート」
「……こんなところで……何をやっている?榊遊矢」
俺は息絶え絶えに奴にそう聞いた。正直、立っているのがやっとなほどの恐怖感だった。
「ユート…………見てたんだね」
「遊矢……お前、いったい何を……」
「何って、餌やりだよ。俺のモンスターへの」
遊矢は平然とそう言った。まるで当たり前でも言うかのように。
「餌…………だと?」
「そう、俺が力を得るための大切な餌……こいつが満足すれば、俺はもっと強くなる」
遊矢はそう言うと、再びそのモンスターをこの場に出現させた。
「く……!!なんだ、そのモンスターは!!」
「このモンスターが、俺の事を肯定してくれる力……誰にも否定されない、俺だけの力なんだ!!」
その言葉と共に、遊矢の体からモンスターと同じように黒い闇が現れる。まるで怨念とでもいうかのように奴の体を回り、その目は破壊を尽くすような紅く濁った目をしていた。
「く、遊矢!!」
「ユート……俺はお前を倒してもっと強くなる……食いたくて喰いたくて堪らない!!」
『グルァァァァァァァァァァ!!』
遊矢はデュエルディスクを構える。しかしその目は濁りきったままだった。
(遊矢…………お前にいったい何が…………)
俺は震える体に鞭を打ち、デュエルディスクを展開する。
「遊矢……俺が、お前を元に戻す!!」
「「デュエル!!」」
ユート LIFE4000
闇遊矢 LIFE4000