遊戯王ARC-Ⅴ 夜天の来訪者   作:ドロイデン

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Episode64 デュエルサバイバル ~それぞれの前夜~

「さて、ジュニアユースの全員が勝ち抜いた事をまず喜ぼうや」

 私は遊矢宅で隼と遊矢ママ、柚子と一緒に作った大量のご馳走と共に並び立つ皆にそう挨拶する。

「ジュニアクラスは、残念やけどLDSの子が優勝してもうたけど、ともかく、今日はお祝いや!!皆でぱぁっと騒ごうや!!」

 乾杯と、私が叫ぶと皆も乾杯と叫びグラスを上げる。

 そこからはもう大喧騒、素良が骨付きチキンを隼と一緒に取り合ったり、ユートが権ちゃんとデュエルについて語っていたり、今作で漸くまともに登場した塾長こと柊修三さんが遊矢ママとお酒を嗜んでいたり、私は私で、柚子ちゃんと清く正しいスキンシップをしたり(リインに引きずられる形で止められたけど)と、まさしくパーティーにふさわしい喧騒だった。

「あの……私たちも呼んでくれて良かったんですか?」

 と、声を掛けてきたのは本来の姿らしく、小学生ぐらいの身長の少女、高町ヴィヴィオだ。隣には同じく元の姿をしたアインハルトも控えめにグラスを持って立っている。

「かまへんかまへん。なのはちゃんの娘でその親友の子なら、私にとっても大事な子なんや」

「そうですか……。そういえば遊矢さんは?」

「あー……」

 アインハルトの言葉に、思わず冷や汗を浮かべる。

 遊矢は今、自分のデッキを可能な限り最強にする、といってパーティーが始まる前からずっと自室に籠ってるのだ。

(よっぽどユートやナハトに負けたことを根に持ってるんやろうな)

 あとで夜食でも届けようと、私は少なからず思った。

 

 

 

 

遊矢視点

 

「…………」

 俺は机に乗せたカードを見て頭を抱える。

 

『オッドアイズ・P・ドラゴン』

『オッドアイズ・ディザスター・ドラゴン』

『オッドアイズ・ディストピア・ドラグーン』

『オッドアイズ・ファントム・ドラゴン』

 

 四種類の自分のエースモンスター、それぞれが強力な効果を持っては居るものの、どれもユートやナハトといった、実力が上のデュエリストの前には無力だった。

(まだ足りない……もっと力を……)

 イメージは何度もした。はやての『テラナイト』、素良の『デストーイ』、権現坂の『超重武者』、柚子の『幻想』、LDSの沢渡や北斗といったそれなりの強者とのシュミレーションはできる限りやった。けど、それでも勝率はそこまで高くならなかった。

(俺は強くならないといけないんだ……俺や、父さんをバカにした奴等を見返すためにも、絶対的に、誰にも負けない強さを……)

 

 

 

 

柚子視点

 

「遊矢……」

 私はパーティーの中、皆が受かれてるなかで少しも楽しめないでいた。

「遊矢の事を思っているのか?」

「権現坂……」

 と、ジュースの入ったコップを持って友人がやって来る。

「……柚子、俺は今すぐにでも遊矢とデュエルをしたいと思っている」

「……でも」

「恐らく遊矢は、俺達が守ろうとした故に誰にも自分を晒すことができなくなってしまったのだろう。それゆえに力を求めた。だとしたら俺はあいつと正面からぶつからなければならないと思う」

 はっきりとそう言うが、その顔はどこか苦しんでるようにも見えてしまう。

「柚子、お前は遊矢の事をどう思っている?」

「私は……」

「俺は今のアイツは中途半端、ストロング石島と戦った時の方がまだ強いと思っている」

 権現坂の言葉に私は驚く。

「あのときの遊矢は、自分のできる事から最善の方法を自分なりに見つける事が出来ていた。それは遊矢自身が自分の事を認めることが出来ていたからだ。

 しかし今のアイツは、自分が何をしたいのかが見定まっていない。力を欲するという意味では定まっているのだろうが、問題はその方向性だ」

「……」

「アイツは他人を捩じ伏せる為の強さを求める。それは昔、遊矢自身と父親を長く侮辱されていたからこその事。だからこそ、俺たちには遊矢と正面からぶつからなければならないんだ」

 そう言うと、権現坂はジュースを取りに再びパーティーの中へと戻っていく。

(私は……怖かったのかな)

 変わってしまった遊矢を認めること、その遊矢と正面から対峙することを、心のどこかで怖がってしまった。

(私は……)

 

 

 

 

ユート視点

「…………それで、僕に聞きたい事ってなんなのかな?」

 目の前の少年、紫雲院素良は珍しくキャンディを持たずにそう聞いてきた。俺のとなりには隼も居て、その顔は少し睨んでいた。

「…………お前は」

「融合次元の手先か……その答えならイエスだよ。僕は確かにこの次元……スタンダード次元を調査するようにプロフェッサーから言いつけられた」

 少年は何事も無いように言ってのけるが、その体は少なからず揺れていた。

「…………貴様らアカデミアのせいで、俺達エクシーズ次元がどうなったのか、貴様も知っているだろ」

「当然、……けど僕は、今どうしたいのか分からないんだ」

「分からない……だと?」

 まるで怯えるように言ったその言葉に、俺は少しだけ疑問に思う。

「僕は……今までプロフェッサーの命令こそが至高の事だと思ってきた。それがアカデミアのルールのようなものだったから。けど、今は本当にそうなのかが分からない……」

「…………」

「遊矢とのデュエルで、僕は初めてデュエルを本気で楽しいって思えた。向こうでは考えられなかった事さ。向こうでは他人は蹴落とすって感じで、友情なんて必要ないものだって思ってた」

「…………だからといって、貴様達が俺達にしてきたことの償いになるなど……」

 隼が絞り出すように言ったその言葉に、素良はしかたないというように肩を竦めた。

「そうだろうね……けど、一つだけ僕にもやりたいことが出来た」

「…………なんだ?」

「遊矢達と、こんなしがらみ抜きで自由に、一緒にデュエルをしたい。生活をしたい、刺激的じゃなくても、平凡でも構わないから、ただ単純に、アカデミアのスパイとしてじゃなくて、一人の人間性、紫雲院素良としてね」

「…………良いんじゃないのか」

 俺がそう呟くと、隼も納得するように顔を緩める。

「……僕を許さないんじゃないの?」

「別にお前自身を恨む理由はない。ただ俺達にも、この世界でしたいという思いがあるからな」

「……今の貴様には、腐ったアカデミアの連中にはない、鉄の意志と鋼の強さを持った心がある。それならば認めない理由はない」

 俺も隼も、アカデミアには恨みも色々あるが、それでも今は、自分が本当に成すべきだと思ったことをしなければならない、そう思うのだ。

「……だったらさ、今度僕のデッキにも相性が良いエクシーズモンスターを紹介してよ。融合だけで勝っていけると思うほど、僕は慢心してないし」

「ふ、ならばこちらも融合を……といいたいが残念なことにエクシーズモンスターに融合は噛み合いづらいからな。融合デッキの回しかたでも教えてもらおうか」

 本来ならあるはずでないだろうこの光景を、俺達は守りたいと、そう思った。

 

 

 

 

シュテル視点

「……王様、奴等は明日にでも動き出しそうです」

「そうか……」

 王……ディアーチェは自分の魔導書をパラパラと捲りながら淡々と呟く。

「……レヴィはどうした?」

「レヴィなら彼女のオリジナルのオリジナルと先に準備を始めています」

「……なら良い」

 ディアーチェはそう言うと魔導書をしまって部屋の奥へと行ってしまった。

「…………八神はやて」

 私は明日起こるであろうアレを思い、少しだけ目をつぶる。

「私はプログラム……紫天の書が生み出した理のマテリアル……故に私は……」

 自分の切り札のカード『ルシフェリア・シュタルク・ドラゴン』を取りだし、誰もいない一人の部屋に呟く言葉は、寂しいものだった。

 

 

 

 

 それぞれの思惑が回り始める。世界を、次元を超えたこの戦いを、後にスタンダード次元の人間はこう語る。

 

 

『ジュニアユースの惨劇』と

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