「…………」
私、八神はやては今色んな意味で言葉を喪っていた。目の前には妙に黒いオーラを放出してるリインと、その側の今影でガタガタ震えて泣き出してるヴィヴィオ、さらにはその近くに山のように積み上がるオベリスクフォース…………カオスやった。というかこれをカオス言わないなら何て言うねん……。
「あー、一体なんやねんこれ?」
「は、はやてさ~ん!!」
私がポツリと呟いた途端、ヴィヴィオが飛び付くように抱きついてきた。
「おーよしよし、ヴィヴィオ、いったい何があったんや?」
「……クリスティア……シムルグ……恐い」
「リイン、あとでギルティや」
「そんな主!!」
リインが驚いてるが、当然やろ!!というかこれで怒らなかったら人としてあかんやろ!!
「んで、そこのオベリスクフォースは……」
「「「魔封じ…………ブルー……イミワカンナイ」」」
「リイン、ギルティ二倍な」
「主ぃぃぃ!?」
じゃかましい!!ただでさえ外道ロックビートなのに何を『Bloo-d』なんて出しとんねん!!アホか?アホちゃうんか!!
閑話休題
さて、合流したは良いものの、戦力としては少し厳しい。シュテルや王様達が動いてるからなんとかなっとるけど、総力戦になったらと思うと……
「アリシアはどう思う?」
「う~ん、はっきり言って良いなら、今のこの次元の実力ならはやて、リイン、零児、ユート、隼、あとあのゲス顔キャンディーと(無理だろうけど)ナハト、そして私達ぐらいしか」
ゲス顔キャンディーって……あのデッキかなり強力なんやけどな……
「へー、こんなところに居たんだね」
「「!?」」
突然聞こえてきた声に私とアリシアは飛び退く。まるでまとわりつくような甘ったるい声、そして口調、その主は……
「アカデミアの……ユーリ!!」
私の言葉を聞いてか否かは解らへんけど、奴……紫キャベツを思わせる髪型にイラっとする顔、間違いなくユーリやった。
「へぇ、スタンダードの癖に僕の事を知ってるんだ~?」
「よう知っとるよ。人を小馬鹿にすることに関しては天下一品、デュエルも見下すようなプレイをしながらも確実な強さを持っとる、アカデミアで最も警戒しなあかんデュエリストやって」
「ふーん、どこの誰が言ったのかは別にいいけど、なんか尺に障るね……」
ユーリはめんどくさそうに言っとるけど、内心、自分のデッキとユーリのデッキの相性を考えると厳しいものがある。
「ま、いいや。それにボクの目的は君に用があったのさ」
「私にやって?」
「そ、君にね。といっても用があるのは僕じゃない、
そう言ってユーリが一歩下がると、その後ろから目元だけ覆う仮面をつけた、私と同い年ぐらいの茶髪少女が現れる。それと同時に、私の胸にチクリと刺さるような感覚を襲った。
「…………」
(なんや……この変な感覚は……)
私はポーカーフェイスを決め込むと、少女は言葉を発することなくデュエルディスクを構える。
「なんや、デュエルがご所望か……というか、言葉を」
「あー、ゴメンね、彼女喋れなくて、デュエルも機械音声だけど、気にしないでね」
(喋れないデュエリスト?……珍しいって言えば珍しいな……)
デュエルに……そもそもカードゲームにおいて言葉は戦略の一つであると同時にコミュニケーションのツールや、別に喋れないから筆談でというテーブルデュエリストは少ないが何人か居るらしいが、まさかこういった次元に居るとは思っても見なかった。
『ハジメマシテ、八神ハヤテ、私ノ名ハ、ラキリデス』
「……そんで、ラキリさんは私とデュエルをご所望って訳やな?」
『ソノ通リデス、別ニカードニスルツモリハナイノデ安心シテクダサイネ。勿論、ソコノ腐レ外道気違イニモ手ハダサセマセン』
「……ねぇ、そこまでボロクソ言われるとムカつくんだけど?何?君ボクに怨みでもあるの?」
『ヒトヲ勝手ニ連レテ来テ勝手ニ手駒ニシタノハドコノダレデシタッケ?』
「そうだね、分かったからそのふざけた台詞やめてよ。そそっちゃうじゃないか」
「『ドS
異口同音にそう言うと、寧ろユーリにはご褒美のように恍惚な表情を浮かべ始める。ダメや、こいつなんとかせぇへんと……
「ま、そんなことはおいといて、君が彼女とデュエルしてもらえないと、僕としても色々と大変なんだよね」
「……まだ、私は彼女とデュエルするとは言ってないで?」
「ふーん、まぁ実力が未知数の相手と戦うのは厳しいだろうね。なら、こうしよう、今回のデュエル、受けてくれるなら彼女の言う通り、君達……この場でデュエルしてる人間ををカードにしない。正確には、これからカードになる人間を、だけどね」
その言葉に、私は驚いた。確かにユーリはオベリスクフォースを従えれる程の実力者やし、私自身、勝てるかは微妙や。けど……
「なんや、アンタの鶴の一声でそっちのプロフェッサーの目的を中断してエエんか?」
「別に、プロフェッサーからもそこの彼女の実力を知るためなら、何を交渉の素材にしても良いって言われてるからね。あ、でもセレナと……柚子だっけ?彼女達は連れていかせて貰うけどね」
「カード化しないだけで人拐いはするやって?そんなことさせへん!!絶対に!!」
堪忍袋がキレた私はデュエルディスクを展開し、目の前の彼女に向き合う。
「私が勝ったら、人拐いも行わんでさっさと目の前で帰って貰うで!!」
「……ま、別に良いよ。すぐにもう一回この次元に来れば良いだけだしね」
『……私ヌキデ勝手ニ話ヲ進メナイデ貰エマセンカ?』
ラキリと名乗った少女は苦笑染みた機械声でそう答える。
「『デュエル!!』」
はやて LIFE4000
ラキリ LIFE4000
「私のターン!!……私は『星因士 ベガ』を通常召喚!!」
『星因士 ベガ』 ☆4 A 1200
「『ベガ』が召喚、特殊召喚、反転召喚に成功した時、手札から『星因士 デネブ』を特殊召喚!!」
『星因士 デネブ』 ☆4 D 1600
「『デネブ』の効果で、デッキから『星因士 アルタイル』を手札に加える。そして私はレベル4の『ベガ』と『デネブ』でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ、『H.C.エクスカリバー』!!」
『H.C. エクスカリバー』 ★4 A 2000
『『エクスカリバー』……テラナイトデハ無イノデスネ』
「初手に下手動かれてもあかんしな。私は『エクスカリバー』の効果で、ORUを二つ使い、攻撃力を相手ターン終了まで二倍にする!!」
『エクスカリバー』 A 2000 → 4000
「私はカードを一枚伏せて、ターンエンド!!」
はやて LIFE4000 手札三枚
フィールド
『エクスカリバー』 A 4000
伏せカード一枚
『私ノターン……私ハフィールド魔法『ブラック・ガーデン』ヲ発動シマス』
(『ブラック・ガーデン』?……融合軸にしては珍しいカードやな)
『ブラック・ガーデン』はシンクロが生まれた時代のカードであり、かつ、その効果ゆえに超重武者などと組み合わせたデッキが有名で、融合と組み合わせる例はあまり見たことがなかった。
『サラニ私ハ、手札カラ『ローンファイア・ブロッサム』ヲ通常召喚』
『ローンファイア・ブロッサム』 ☆3 A 500
『『ブラック・ガーデン』ノ効果ニヨリ、『ローンファイア・ブロッサム』ノ攻撃力ガ半分ニナリ、相手フィールドニ『ローズ・トークン』ヲ特殊召喚スル』
『ローズ・トークン』 A 800
『サラニ私ハ『ローンファイア・ブロッサム』ノ効果デ、コノカードヲリリースシ『シードオブ・フレイム』ヲデッキカラ特殊召喚スル。ソシテハヤテノフィールドニ『ローズ・トークン』二体目ヲ特殊召喚』
『シードオブ・フレイム』 A 1600 → 800
(フィールドの植物族の攻撃力は2400……これは)
『私ハ『おろかな埋葬』ヲ発動シ、デッキカラ『魔天使ローズ・ソーサラー』ヲ墓地ヘ送リ、『ブラック・ガーデン』ノ二ツ目ノ効果、コノカードトフィールドノ植物族全テヲ破壊シ、墓地カラ破壊シタ攻撃力の合計ト同ジ数値ノ植物族ヲ特殊召喚スル。『ローズ・ソーサラー』ヲ特殊召喚スル』
『魔天使ローズ・ソーサラー』 ☆7 A 2400
「攻撃力2400……(けど、フィールドには攻撃力4000の『エクスカリバー』、このターンの攻撃は不可能や)」
『サラニ、私ハコノ効果デ破壊シタ『シードオブ・フレイム』ノ効果ニヨリ、墓地ノ『ローンファイア・ブロッサム』ト『シード・トークン』ヲ守備表示デ特殊召喚。サラニ手札カラ魔法カード『トレード・イン』ヲ発動、手札ノ『椿姫ティタニアル』ヲリリースシ、二枚ドロー』
「(ティタニアルを墓地ヘ?……いったい何をやりたいんや?)」
『……来タ、コノカードハ相手モンスター一体ヲリリーススルコトデ、相手フィールドニ特殊召喚デキル。私ハ『エクスカリバー』ヲリリース!!』
「な!!なんやて!?」
私は慌ててフィールドを見ると、『エクスカリバー』が光の粒子に変わっていき、巨大な怪獣に変貌していた。
『現レナサイ『多次元壊獣ラディアン』』
『多次元壊獣ラディアン』 ☆8 A 28*00
この瞬間、私は大きな勘違いをしていた。確かに融合次元は融合モンスターが発達した次元、だが、それと同時にアドバンス召喚と儀式召喚にも精通していたのだ。そして何より、このデッキのカテゴリー……
「か、【壊獣】やと!?なんやそれは!?」
そう、少なくとも私はそんなカテゴリーひ持ってないし、聞いたことすらなかった。完全に初見ミスだ。
『ソウ、コレガ私ノ【植物壊獣】デッキ、ソシテ相手フィールドニ『壊獣』ガ存在スルトキ、手札カラ『壊星壊獣ジズキエル』ヲフィールドニ特殊召喚』
『壊星壊獣ジズキエル』 ☆8 3300
『サラニ、『ローンファイア・ブロッサム』ノ効果、フィールドノ『シード・トークン』ヲリリースシ、デッキカラ『桜姫タレイア』ヲ特殊召喚!!『タレイア』ノ攻撃力ハ、フィールドノ植物族一体ニツキ100アップスル』
『桜姫タレイア』 ☆8 A 3000
『バトル、『ジズキエル』デ『ラディアン』ヲ攻撃シマス。メテオ・ブレイザー!!』
「ヌァァァァ!?」
はやて LIFE 4000 → 3500
流石は最強クラスの壊獣モンスターというべきか、攻撃力以上の破壊力によって回りに巨大なクレーターが生まれる。
『続ケテ『タレイア』デダイレクトアタック』
「リバースカードオープン!!罠カード『リビングデッドの呼び声』!!墓地から『星因士 ベガ』を特殊召喚!!その効果で手札の『アルタイル』を特殊召喚し、さらに墓地から『デネブ』を復活!!」
『アルタイル』 ☆4 D 1300
『デネブ』 ☆4 D 1600
「そして『デネブ』の効果で、デッキから二枚目の『アルタイル』を手札に加える」
『……ナラバ、『タレイア』デ『ベガ』ヲ、『ローズ・ソーサラー』デ『アルタイル』ヲ攻撃』
「ぐぅっ!!」
はやて LIFE 3500 → 1600
『……私ハカードヲ一枚伏セテ、ターンエンド』
ラキリ LIFE4000 手札0
フィールド
『壊星壊獣ジズキエル』 A 3300
『魔天使ローズ・ソーサラー』 A 2400
『桜姫タレイア』 A 3100
『ローンファイア・ブロッサム』 D 800
「私のターン、ドロー!!」
勢いよく引いたは良いものの、はっきり言って挽回できるようなカードはあまりない、『サイクロン』も『羽簿』も手札に無い今、特殊召喚封じや『神の』シリーズのカードが出てこられたら一発でアウトや。けと、
「(ここで退くわけにもいかへん!!)……私は『アルタイル』を召喚!!そして効果発動!!」
ここが分かれ目、もし防がれたら……そう考えただけで心臓がバクバクする。
――そして下された審判は
『――発動カードハアリマセン』
通った。つまり、この場ですぐに敗北ではなくなった。
「……私はこれにより、墓地の『ベガ』を特殊召喚!!けど、『ベガ』の効果は発動しない」
『……ナルホド、既ニフィールドニハテラナイトガ3体……ツマリ』
彼女の電子音声が確かめるように聞いてくる。
「私はレベル4のテラナイト3体でオーバーレイ!!エクシーズ召喚!!現れろ『星輝士 トライヴェール』!!」
『星輝士 トライヴェール』 ★4 A 2100
「『トライヴェール』の効果発動!!このカードがエクシーズ召喚に成功したとき、フィールドのこのカード以外を手札に戻す」
『簡単ニハ通サナイ、速攻魔法『月の書』。これにより、『トライヴェール』ハ裏側守備表示ヘト変更スル』
「ぐ、それでもそのけったいなモンスターには退場願うで!!」
これにより、フィールドには私の『トライヴェール』が裏守備で一体だけ、壁と言うには弱い気がするが、それでも何もないよりはマシだろう。
「私はカードを二枚伏せて、ターンエンド!!」
はやて LIFE1600 手札二枚
フィールド
裏守備モンスター(トライヴェール) D 2500
伏せカード二枚
『私ノターン……私ハ手札カラ二枚目ノ『トレード・イン』ヲ発動、手札ノ☆8『桜姫タレイア』ヲ墓地ヘ送リ、二枚ドロー!!』
(ここでドロー加速……本格的に不味いか……)
「……私ハソノ守備表示モンスターヲリリースシ、相手フィールドニ、『海亀壊獣ガメシエル』ヲ特殊召喚!!」
『海亀壊獣ガメシエル』 ☆8 A 2200
『サラニ、二度『壊星壊獣ジズキエル』ヲ特殊召喚、ソシテ『ローンファイア・ブロッサム』ヲ通常召喚――』
「罠カードオープン!!『激流葬』!!お互いのモンスター全てを破壊する!!」
『ナント!?』
私のカードに、彼女はあり得ないと驚く。
『……マサカ、コノ場面デソンナカードヲ手札ニ加エテタトハ思イマセンデシタ』
「これでなんとかフィールドは五分と五分、次のターンでなんとか……」
『残念デスガソレハアリエマセン、最後ノ手札『死者蘇生』ヲ発動!!墓地カラ『ジズキエル』を復活!!』
「そんな!?」
まさかのカードに、私は絶望する。攻撃力3300、その巨大な体から発せられる攻撃は、恐らくもう誰にも止められない。
「(最後の伏せカードはブラフの『貪欲な瓶』、つまり……)」
『トドメ、『ジズキエル』デダイレクトアタック、メテオ・ブレイザー!!』
「ウワァァァァァァァ!!」
はやて LIFE 1600 → -1700
「そんな……手も足も出えへんやなんて」
デュエルが終わった直後に呟いたのはそんな言葉だった。決して油断してた訳じゃない、それでも良くて引き分けから辛勝だろうとは覚悟していた。あのユーリが手駒にするほどと思って警戒もしていた。
それがどうだ、圧倒的に高かった攻撃力は一瞬で崩れ去り、足掻いても足掻いても、結局1ダメージたりとも攻撃を与えられなかった。これを完敗と言わずに何と言うのか……。
「ふーん、試しにやらせてみたけど、ここまで化けるなんてね。これは想定外だね」
「なん……やて……」
やらせてみた?想定外?つまりなんや?ユーリは彼女の実力を知らなかった?しかもほぼ初心者やて。ありえへん、ありえへん!!
「さて、と……プロフェッサーからは彼女のテストと君を連れてくるように言われてるんだけど……面倒だし、ま、いっか」
『ソウデスネ、ソレニ一度シタ約束ヲ反故ニスルナド、今度ハ貴女ガ彼女ノ二ノ舞ニナリマスヨ?』
「それは嫌だね。君のデッキと僕のデッキ、相性最悪だからね。そういうことだ、運が良かったね、夜天の王さまw」
ユーリはそう嘲笑し、彼女はペコリとお辞儀をして立ち去っていく。私とアリシア、リインとヴィヴィオはそれをただ呆然と見送るしか出来なかった。