遊戯王ARC-Ⅴ 夜天の来訪者   作:ドロイデン

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Episode8 夜天と夜鳥

「今日も楽しかった~」

 遊勝塾からの帰り道、私はいつものように電車に乗っていた。日は既に夕暮れ時で、空は紅く輝いている。

 そして岩丸家のある駅に着いて降りると、どこか不自然な感じがした。

(あれ?いつもこの時間ってこんな人少なかったかいな?)

 そう、何時もなら塾帰りの学生が多数居てもおかしくない筈の時間帯なのに、今日に限ってそれが疎らだった。

「おい」

「!!」

 後ろからいきなり声を掛けられ、慌てて飛び退いて振り替えると、そこには青い服に季節外れのマフラーを着た青年が立っていた。

「貴様、LDSの生徒か?」

「……違うで」

「そうか……すまない……」

 そういうと青年は後ろを振り返ってしまう。と、私は不意に、

「……もしかして、エクシーズ次元の人か?」

「!!!?」

 私の言葉を聞いて驚いたのか、青年は振り返って私の顔を凝視する。

「貴様……どこでそれを」

「図星かいな……とりあえず話したいから場所を変えようや?ここじゃ誰が見てるか分からんし」

「……良いだろう」

 そういうと私たちは手頃な喫茶店の中に入って窓から遠い席に座る。

「ここでええか?」

「別に構わない、が、ここの方が逆に誰かに聞かれる可能性があると思うが?」

「逆や。喫茶店とか飲食店は人の数が多いから自然と話し声が多いんや。つまり窓から遠い席に行けば読唇術も意味無いし、中から直接聞こうにも人の声が多すぎて断片的にも聞こえへんのや」

 事実私らが座っているのはレジからも窓からも遠いスペースで、店内も満員ではないがそれなりに人数が多い。

「なるほど、それは確かにだ」

「んじゃまず名前を教えてや。あ、私の名前は八神はやていうんや」

「……黒咲隼、お前のいう通りエクシーズ次元から来た人間だ」

 自己紹介が終ったとき、店員さんが頼んでいたコーヒー2つとチーズケーキを持ってくる。

「……それで貴様、どうして俺がエクシーズ次元の人間だと分かった?この事は誰にも教えていないはずだ」

「私も何となくや。何せ私はどっかの阿呆召喚師のせいでこの世界に連れてこられたからな~、お陰でやりたくもない事やらなあかんのよ」

「召喚師?なんだそれは?」

「あぁ、まず私がいた世界に着いて話さなあかんようやな」

 そういうと、私がいた世界の事を軽く話す。時々驚いていたが、話終える頃にはどこか納得しておった。

「つまり、貴様が居た世界では魔法という文化があって、貴様はそのリフィートとかいうふざけた奴のせいでこの世界に連れてこられた……そういうことか?」

「そうや。なんならここで小さな魔法の玉でも作ってみよか?」

「……別に構わん。それで、貴様はアカデミアを倒すためにこの世界で暮らしてるというわけだな?」

「そういうこと。ちなみに私が持っとる情報はアカデミアのトップが『赤馬零王』っていう、この次元のLDSの上位グループ、『レオコーポレーション』っていうところの社長の父親で、その息子さん……赤馬零児はアカデミアを打倒したいってことくらいや」

「つまり、LDSとアカデミアには直接的な関係は全くないということだな?」

「そうや」

「…………」

 隼は少し口を閉ざすと、何かを考えるように目を閉じる。

「あと、これは個人的な質問なんやけど」

「…………なんだ?」

「九十九遊馬、って人を知っとる?」

「!!」

 聞いた途端に隼は目を開いて睨み付ける。

「な、なんや!?」

「貴様、どうしてあの人の名前を知っている!!」

「い、いや、私が居た世界では九十九遊馬っちゅう人は色んな意味で有名になっとるんや。何せカードの絵柄にも書かれた事があるくらいやし……」

「……そうか」

 隼は不承不承ながら勢いを納めると、コーヒーに口を着ける。

「……九十九遊馬さんは、俺と、この世界にいるもう一人の仲間の師匠であり、エクシーズ次元の英雄だ」

「……なら、神代凌牙と天城カイトって人は?」

「その二人も知っている。九十九遊馬さんの友人であり、ライバルだった人だからな……」

「だった?どうして過去形なんや?」

「遊馬さんはアカデミアが襲来する二年前に姿を消したんだ。まるで神隠しにでもあったようにな。後の二人は今、アカデミアの残党狩りを蹴散らすためにレジスタンスを作ってる、そのお陰で難民キャンプは基本的に平和が続いている」

「そうか……」

 私はばつが悪く顔をしかめると、隼は少しだけ微笑む。

「別に貴様が悪いわけではない。悪いのはアカデミアの連中だ、いったい何を目的に進攻して来たんだ……」

「…………それについては少しだけやけど、心当たりがある」

「何?」

 隼は再び眉間にシワを寄せると、コーヒーを口に含む。

「隼も知っとるみたいやけど、この世界には4つの次元がある」

「融合、シンクロ、エクシーズ、そしてこのスタンダードだな」

「そうや。前にリフィートはこう言ってた、『赤馬零王の目的は四人の英雄の力を手に入れて、自身が神になること』やって」

「四人の英雄だと?それと4つの次元がどう関係……っ!!」

 隼は気付いたのかはやての目を鋭く睨む。

「おそらく奴はエクシーズ次元の英雄、九十九遊馬の力を手に入れようとしてたんや。けど、肝心の本人が居なかった……」

「だが奴は俺の妹を……瑠璃を連れ去った!!他の人間はカードにされるなか、妹だけがだぞ」

「それはまだ分からん、けど赤馬零王にとってはその瑠璃っていう娘が、何かのパーツの一つなんやと思う」

「く!!」

 隼は怒りそのままに立ち上がる。

「どこに行くんや!?」

「もう一人の仲間と合流する。悪いが……「なら私にも合わせてな」なんだと!?」

「私の直感が正しかったら、多分その仲間の人にも、そしてこの世界の英雄にも関係するんや。だから…………」

「…………少し確認する」

 そういって隼はデュエルディスクを通話モードにすると、何やら話始めた。そして、

「…………了承を貰った。来るなら着いてこい」

「ならOKや。早速行こうか」

 そういって私たちは夕暮れの街を飛び出した。

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