賞金稼ぎという職業は楽ではない。厳しい環境で賞金首を追い詰めて殺す。殺すだけならまだ簡単だ。だが、たまに生け捕りにしないといけない賞金首もいる。この場合、下手に無力化できないため自らの命を失う可能性も高い。だが今荒野で行われている追走劇は「生死問わず」の賞金首を殺すためのものだった。
追う男は、ビル・ホランダーという賞金稼ぎ。狙った賞金首は絶対に逃さない男として『ハンター』と呼ばれていた。逆に追われる男は、グレン・クーパーという悪党。各地における殺人や強盗で1000ドルの賞金がかかっていた。
1000ドルという金額は大金である。数多くの賞金稼ぎがクーパーを探し、殺そうとしている。実際にクーパーと対峙した賞金稼ぎもいるのだが、生きて帰ってこれたのは1人しかいない。その1人も帰った翌日には死んでしまった。それほどまでに腕の立つ賞金首を追うホランダーには、確実に殺せる自信があった。彼は早撃ちの名手として同業者には有名だったのだ。ビリー・ザ・キッドやワイルド・ビル・ヒコックにも劣らないと言われたこともある。だが、その早撃ちを披露するにはまだクーパーと距離が離れすぎていた。
ホランダーは、200メートルほど先にいるクーパーを馬で追っていた。馬を走らせながら撃っても腕が良かろうがこの距離では当たるとは思えない。リボルバーというものは近距離でこそ強さを発揮する。ライフルを使うという手もあるが、今から取り出すのは時間のロスだ。そんなこと考えているうちに、目の前に荒野を横切る線路が見えた。運の悪いことに、汽車がこちらに近づいていた。
「くそ、ついてないな」
そう呟いて馬の速度を速めた。しかし、クーパーが後ろを振り向き、薄気味悪い笑みを浮かべて線路を通り過ぎた瞬間、汽車がホランダーの行く手を遮った。彼は線路の目の前で汽車が通り過ぎるのを待ったが、汽車の過ぎた後にはクーパーの乗っていた馬だけが線路の反対側に取り残されていた。
「ここまで来たんだ、逃がしてたまるか」
汽車の行く方向に馬を走らせようとした瞬間、その方向に矢印の付いた看板を見つけた。その看板には、かすれた文字で『パクストン 平和で穏やかな町はあちら』と書いてあった。
「町か。奴のことだ、確実にパクストンとやらに寄って何かしでかすだろう」
そう毒づきながら、先にあっちの保安官に捕まえられても困るしな、と思いつつ彼は馬を汽車の走る方向にある町、パクストンに向けて走らせた。