ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、庵パンです。
予防接種を受けたのにインフルエンザに罹ってしまいました。
大分長い事、放ってた気がするから不思議なものです。

そして、この章もそろそろ終わりが見えてくる頃でしょうか。
中々栗林が目立ってくれないので、ダラダラ続けている感じですが栗林が活躍するのは多分これからです。
敵の本拠地に乗り込んでから鬼神の如き活躍をしてくれるハズです。
というか、下手に続けていると本編より長くなり兼ねない……。

今回、人物紹介を入れれば記念すべき100回目ということで、少し長くなっています。
いや、本編最終話も同じくらいかも……?


第二十七話 トッツキ♂

サガルマタの城門が見えてきたのは、その日の夕刻だった。

もう数刻もすれば陽射しは完全に山々の間に没する頃合いだ。山脈に住んでいるリーリエの推考は正確と言える。

城門やその周りの城壁、或はその上の城壁上に人影は見えない。

「ハンゾっ、メンポじゃ」

「あれ、サリさんに返したでしょ」

軍列の中衛から前に出て指図するサリメルに火威は返す。

「あぁ、そうじゃった。“こーき”の中にある筈じゃ」

高機動車と96式装輪装甲車、そして貨物には自衛官や帝国騎士団が使用する装備を満載し、火威やサリメル、そしてリーリエが分けて一両ずつ物体浮遊の魔法で運搬してきた。

体力のオバケの火威や亜神のサリメルはともかく、リーリエに運ばせるのは要人に重労働を強いるのと同等なので憚れるところだが、本人の強い希望がある。

こんなことなら以前の解告を受けた時に、もう二~三言付け加えて、行軍中は全面的に任せてもらうのだったと火威は後悔する。

高機動車からメンポを取ってきたサリメルから、魔法具を受け取った火威は濃紺のマスクを顔に当て、光の精霊を使役して望遠レンズを作る。

「ってかコレ、サリさんが使っても良いんじゃ?」

「鎧の色合い的にハンゾウの方が似合うぞ」

せやろか?……と、考える火威に南雲の声が入る。

「お前も大概“空飛ぶ多目的装甲車”だよな」

炎龍に対すの日本でのアダ名のような呼び方に、火威は先日ゴム強化してた時のジゼルの言葉を思い出す。

――アカン、イレギュラー化してたわ俺――

そんなことを考えながら、火威はメンポに魔導を通して稼働させた。

 

 

*  *                            *  *

 

 

分厚い城壁の内側に見えたのは、焼け野原と閑散とした広場だった。

「なんだこりゃ、人っ子一人いねぇや」

火威は見える内部の情報を呟きながら、サガルマタ市内を見渡す。サリメルが作った魔法具だが透視して見えるのは壁一枚に限られる。

人間を見ると臓器が輪郭を持って複数透視できた。そのことは以前に栗林たちを探索した時に知ったのだが、この事でサリメルという使徒に対して一種の敬意に近い感情を感じつつある。

それはメンポに暗視機能が付いているからだ。

サリメルが壁越しの覗き用に作ったかと思っていた火威だが、医術者でもあるサリメルは医療用にこのメンポを作ったのかも知れない。

患部を直接見れるということは、医療分野では革命的なことだろう。一定以上の霊格を持った者にしか使えないので、量産しても使用者は極少数に限られるのが難点だが。

「建物が邪魔でこれ以上はよく見えんなぁ……」

当然なのだが城壁内部の全体が広場ということはあり得ない。そこらかしこに焼けた建造物が存在している。これ以上は直接入って調べるしかないのだ。

「移動して調べるにしても上空には上がるなよ?」

「御意です」

南雲は某・新怪獣王のような機能を持った敵がいることを警戒した。即ちレーダーとしての感覚器を持った敵性生物である。

火威もそれを警戒して来た道の脇にある丘に走り、そこから再度サガルマタ市内を偵察する。

すると練兵場のような場所に蠢く一団を見つけた。

「ありゃあ、二本足の蟲獣みたいなヤツらですね」

特戦と合流したその日の内に、火威は飛び道具を持った蟲獣の一種の説明を既に終えている。曰く「目標の体内に向けて蛋を産み付け、産み付けられた場合の蛋は間を置かず羽化し、幼虫が犠牲者の肉を食い荒らす」だ。

武器情報を得る為に生かして「遊ばせた」ケネジュの数体は、飛び道具の射程は50mから80m。そして運動性は極めて鈍い。

更に、防御力は無いに等しい貧弱な生き物である。蟲獣の世界でも飛び道具があるから生存競争に勝ち残れて来れたのだろうが、群れを成す生態であるから油断は出来ない。

接敵に防戦一方だった薔薇騎士団にも同じ情報を、特地の単位に直して伝えたが、特戦と共に武器の射程に関しては倍の距離から警戒するように伝えている。

視線を巡らせると、今度は朱い龍が見えた。翼の他に二本の腕が見える。巨大化させた翼竜では無くて龍種の中でも亜龍や飛龍、或は古代龍と呼ばれる種類の生物だ。

「ちょいとデカめのドラゴン発見。腕があって赤い」

それが、幾重にも鎖で拘束されて体格に見合った巨大な厩舎から数人の男によって引き出されてきた。龍を引き出した内の一人は、それだけの力を持ったオーク、ないしオーガ―と思われる怪異だが、その他はヒトと思われる人間だ。

翼竜ならヒトが飼い馴らすことも出来ようが、この大きさは明らかに翼竜ではないし飛龍よりも巨大である。以前に帝都の悪所事務所に出入りしていたことがあったが、その時に見た炎龍の頭部よりも一回り大きい頭を持っている。

「南雲二佐、いつでもLAMを使えるよう戦闘準備を」

「解った。お前はこのまま監視して続報を寄越せ」

火威が見ている前で、龍を拘束していたオーガ―と思われる一人が迂闊にも龍の鼻先を横切ろうとして炎を吐きかけられ、燃えながら転げのたうち回る。

「何やってんだアイツら」

のみならず、龍は拘束を解こうと暴れ出す。

以前に氷雪山脈に来る前に捕らえた賊はゾルザル派帝国軍が軍閥か賊になり果てた者だった。火威が見る人間の素性もゾルザル派帝国軍の兵士崩れで怪異使いという推測も出来るが、巨大な龍は一般的な巨大怪異とは違う飛龍以上の存在だ。

ヒトが簡単に操れるものではない。

やがて束縛から解き放たれた龍は、その対となる翼を広げた。

戦闘準備は未だ出来ていない。LAMを貨物から使用者分取りだしたにしても、龍に攻撃力を作る為のブローブも伸ばせてないし発射時の安全も確保できてないのだ。

無反動砲はこれほどまでに使い難い武器だったかと文句を言いたいところである。LAMは発射時に後方にカウンターマスという金属粉を拡散させる。10mは離れるか脇に避けるかしないと非常に危険な代物だ。

「大型の龍! 来ます!」

特戦や栗林が薔薇騎士団やノスリの連中に注意喚起しているが、ノスリの連中は目の前に脅威が無いのに何が危険なのか解っていないらしい。近くに龍がいるというのに、なぜ退かなければならないのかと騒がしい。

案の定の反応だが、最悪の場合は彼らをカウンターマスに巻き込んでもLAMを撃つことも考えなくてはならない。

頑丈なので死なないハズ。

城壁の遥か上空の高度まで龍は飛び上がったが、夜目の効く種族なら見える範囲だ。

「あれは炎龍では無いか?」

火威から仮面を返されたサリメルが嘯く。

光の精霊を使役して作った望遠でジゼルが見ても、あの龍は雄の炎龍だという。

「ったく、なんで炎龍がこんな寒い場所に……!」

「ロゼナクランツとかいう連中を怨めって」

未だにもたついているノスリの連中に、自衛官の後方ではなく脇に避けるよう言いに行ってから火威は剣崎からLAMを受け取る。それでもノスリの動きは愚鈍なのだから、遠慮なくブっ放ざるを得ない。

ところが龍は、サガルマタ近くにいる自衛官や帝国の戦力には目もくれず、火威し達が来た方向に飛び去って行く。

龍が、火威ら近付いた集団に気付かなかった訳ではない。阿呆のように騒がしいノスリの喧騒は龍の聴覚器にも入っていただろう。

暗雲の中に入った炎龍の姿をメンポを使って見たサリメルは気付く。

「彼奴め! マリエスに行くぞ!」

「二佐! サリさん! と、アルどん! こっち頼みます!」

サリメルが見る龍は天高くまで昇ったかと思うと、そこから滑空という形でマリエスが所在する南西へ向かっている。

火威の動きは速かった。防衛魔法を展開すると即座に飛び上がり、炎龍を追撃する。

火威達は75Km程の距離を三日の日程を掛けて来た。雪中行軍に慣れていない者が多数いたから時間が掛かってしまったが、空を征く龍には一時間足らずの距離だ。

マリエスに着くのは日没後。完全に夜襲となるだろう。

「その前にブッ潰す!!」

飛龍が空を駆けるスピードは時速にして約140km程度。この龍はそれより遅い80~100km程で飛んでいる。それに対して火威は本人の精神状態にもよるが、100kmから200kmほどの速さで飛ぶことが出来る。

右腕に新たに装備したのは、モーターから賜った浪漫武器。それは神鉄製の杭を打ち込み、体内に爆轟を封じた釘を残す射出式ブレード。

俗に言う「パイルバンカー」である。

「死ねよやァ!」

現在火威が出せる最高時速で炎龍の後頭部を凹むほどブン殴り、大穴を作る。直後、爆発。

ぐらりと揺れて、地上に落下するかと思われた炎龍だが突然現れた敵に驚き、動きが鈍っただけだった。

「ぐっ……!」

なんだコイツ、と思わず呟きそうになる火威であるが、その理由は今の一撃で理解した。

1960年代にイギリスで開発された複合装甲、チョバム・アーマーに似た鱗を持っていたのだ。火威が現在携行する携帯対戦車弾に対し、高い防御性能を発揮する装甲である。

本来なら有る筈の無いものである。それで着膨れていたから、この龍は大型に見えたのだろう。

だが、火威は難しく考えない。鱗の断面を見ればダメージが通らない理由が解るし、解ったとしてやるべきことは変わらない。

言うなれば、象と鼠のプロレスはこうして始まったのである。

 

 

*  *                             *  *

 

 

槍田の放ったLAMが城門に大穴を開け、続けて放たれた爆轟が枠になり果てた門を粉微塵に粉砕した。

暗視鏡を付けた南雲、忍野、的射、剣崎が雪崩込むと彼らの頭の上を淡い光球が通り過ぎる。

サリメルが作った眠りの精霊の魔法だ。それがサガルマタで龍を運び出していたヒト種の集団の中で破裂し、一言の声を漏らす隙も許さず全員を眠らせる。

「ナグモ、“あかばえ”の連中は左手の練兵場におる」

サリメルにハンドサインを使えと言っても無理なので、声を静めて喋る。サリメルも某ヘッズなのでハンドサインを憶えることに至極協力的なのだが、変態でも天才と言えるサリメルとはいえ数分で憶えられるものでもない。

M197ガドリングをバックドアから顔出させた高機動車を、物体浮遊の魔法で乗り入れさせる。そしてその車両は練兵場の前に砲身を向けて停車した。

ドライバーは栗林だ。倉田ほど運転技術が長けているわけではないが、この場では彼女は数少なく貴重な遠距離攻撃手段可能な戦力である。

仮に高機動車のエンジン音を聞かれても、“赤蝿”とコードネームを付けられた蟲獣に正体を気取られる危険性は低い。知っている可能性が大きいのは、敵方に組みしていたヒト種。ゾルザル派帝国軍の残党兵である。

「この扉の向う、300レン程の距離に“あかばえ”は屯しておる」

サリメルの知らせを受け、剣崎はLAMを構えた。放たれた砲弾は軽く木製の扉を撃ち破り、爆砕する。

剣崎が場を開けると10m離れた場所から三身のガドリングが火を噴く。繰り広げられるられたのはイタリカ防衛戦の再現だった。

いや、それよりも酷い。人間であるヒト種の盗賊団はキツい打撃でも人体が残る程度ではあったが、今回は生命力の強い蟲獣である。全てミンチにしてペーストになるまで攻撃が加えられた。

更にはサリメルの攻撃魔法が人間ではない生物を襲う。本来、魔法の射程は長いものではないが、サリメルが長年練り上げた精霊魔法は蟲獣の肉を焼き、焦がし尽くした。

 

 

*  *                               *  *

 

 

「ブルァァァ!!」

腐臭を放つ肉に纏わる小蝿のように、龍の周囲を高速で飛び回る火威は確実に、少しずつではあるが炎龍の鱗を砕き、肉を抉って弱らせてきた。

龍も自身の死期を感じ取ったか、思い切った手段に出て来た。どうせ殺られるなら一蓮托生。そんな事を考えたのかは不明だが、空中にいる火威に体当たりを敢行しそのままサマーソルトで自身の尻尾を武器に使う。

炎龍にとって無念なのは、その尻尾に特段攻撃力が無かったことだろう。仮に毒針が仕込まれていたとしても相手は使徒の眷属である。当りはしなかったが、防御魔法に魔導障壁を重ね掛けている火威に“当たったところでどうということはない”のである。

だが目障りではあった。

フルグランの背に爆轟を封じ、それを構える。それとは別の魔法「ANENO・IGEN」の爆発を煙幕代わりに使い、龍の背後を取った。

「眠くなる程にのろいぞッ! このモンキー野郎がァ!!」

爆轟を発動させてロケットの如く勢いで振り下ろされたフルグランは、一撃で龍の尻尾を根元から断ち斬った。部位破壊成功である。

リアルなので追加報酬はないが。

気力の減らないままに光の精霊で大量に虚像を生み出し、自身は龍の脳天に再度フルスイング。一撃で足らないと見るや二発、三発と杭を打ち込んで龍の頭蓋を砕く。

絶対に破られない防御など、この世には無いのだ。

既にこの場に於いての象と鼠の配役は明白である。

息絶えて落下する大きな鼠の脳天に向けて連環円錐を作り、爆轟で吹き飛ばす。敵性生物が地面に落ち、死亡を確認した火威は今来た空を戻って行った。

ちなみに、ファルマートでは「猿」と言える生物も亜人も確認されていない。

 

 

*  *                            *  *

 

 

龍を駆除した火威はサガルマタに戻り、攻城戦に臨む気でいた。

だがサガルマタに存在したロゼナ・クランツ側の主戦力は既に掃討・或は逮捕され、現在は市内の隅まで余すこと無いよう掃討戦に入っている。

隊の装備を特戦が戦えば理解出来るのだが、サガルマタでは予想してなかったことも起きていた。

「ヒオドシ殿、二本足蟲獣の射程、320レン(200m)程ありました」

「なんと……」

他の蟲獣と共に異世界から招いたのだろうが、サガルマタの赤蝿はその中の上位種なのかも知れない。

或はラウアというロゼナ・クランツの魔導士に改造された生物ということも考えられる。

火威はスィッセスからの知らせに、思考を巡らせた。

「狭い空間で連中と相対する時は、防衛魔法か障壁作れる魔導士で行かんとな」

サガルマタ制圧時の様子を聞くと、槍田がLAMで城門を爆破。

一気になだれ込んだ自衛官らに敵方のヒト種は眠りの精霊で眠らされて何ら抵抗出来ずに降伏。

練兵場にいた二本足蟲獣……赤蠅とコードネームを付けられ、火威の報告より戦闘能力が高かった連中は火威がAH-1コブラから拝借したM197ガドリングでミンチとなった。

現在、特戦と神々、そしてノスリの集団は2班に分かれて市内に残存する敵勢力と生存者を捜索している。

ごっそり群がミンチにされてる最中に放たれた数発だから、死にもの狂いの一撃だったのかも知れない。だが、滅多に顕在しない潜在能力だとしても脅威には違いないのだ。

城門前を立哨し、異常事態を警戒する二名の薔薇騎士団員にはノスリ二人を随伴させ、市内中央の広場を歩哨する団員にも一人のノスリを付かせる。

薔薇騎士団は美人揃いだが、一足先にエティになったナサギが見張っているのでセクハラもできない。エロショタノスリと異常事態、二つのことを一度に見張るナサギには頭が上がらない。

 

内戦時に、ゾルザル派帝国軍は味方の遺体から死因である銃弾を取りだしたことで、64式小銃の弾が通らない眼鏡犬(スコープドック)を戦場に立たせた。

自分の方が強いと解れば怪異使いでも制御できない兵器としては失格の生体兵器であったが、自衛隊や正統派帝国軍には()()()()に被害もあったのだ。

今回の炎龍もロゼナ・クランツ側の怪異を焼いたりしてたが、自軍の被害を考えて兵器開発するロゼナ・クランツとも思えない。平気で非戦闘員に被害を(もたら)す連中に人権意識があるとは思えない。

龍の死体を放置してしまったら、調べて更に隙のない生体兵器を作りだすかも知れないのだ。

サリメルに頼んでアルヌスへのゲートを開き、龍の死体を移送する。

夜なのでロゥリァには殆ど人がいなかったが、ロゥリィの魂を座標にしているので当然ロゥリィには見つかった。

「あんた何処まで人間離れする気なのよぉ」という言葉を賜ったが、ロゼナ・クランツの反則が著しいので勘弁してもらいたい。この任務が終わったら大人しくしますから。

 

サガルマタに戻った火威は、サリメルが付いてない方の一班に加わって廃墟となった都市の中に潜む残存勢力を捜索する。

火威はユエルやグランハムと同じ班になったが、接近戦用武器しか持っていない別の神の眷属が今にも諸刃剣突撃しそうな気がして気が気でない。

第二班である火威達は、兵舎の北側の一室まで辿り着いた。元来、陸上自衛隊では構えてすぐに発砲するようなことは無いが、一品物のメンポはサリメルが使用している。

だが既に陽が沈んで久しい。早く仕事を終わらせなければならない。そうでなければ周辺への警戒をすることも出来ないのだ。城門前にいた薔薇騎士団員は城内に退らせ、城門も閉じられている。

味方に出るかも知れない被害を考えれば、怪しければ射殺し、その後に敵味方の識別を調べるしかないのだ。

だが火威は現在のファルマートでも高い力を持った魔導士である。自身に使う防御魔法ではなく魔導障壁を使えば敵の攻撃は抑えられる。

しかし、火威には今一自信が無かった。一般的にヒト種が使う魔法より、特定の種族のみが使える精霊魔法を多用し戦闘にも使ってきた。

ここで火威は考える。使うべきは発動の早い精霊魔法ではないかと……。

剣崎のハンドサインで的井が扉を開け、忍野が音響閃光弾を投げ入れる。ハンドサインが解るメンバーがもう一人欲しいところだ。3体の赤蝿を視認するや突風で壁に叩き付け、火の精霊(サラマンダー)で焼き尽くす。

「クリ……あっ!?」

暗がりに隠れていた一体の赤蝿が、別の赤ばえを潰し駆除するユエルの後ろから現れた。

「ぬぅっ!!」

発射された弾蛋がユエルの背中に突き刺さる直前、蟲獣はグランハムのフレンベルシュに両断されて息絶える。ロクでもない弾丸に被弾したのだがら、すぐに処置が必要だろう。

「サ、サリさん! すぐにアルヌスの診療所まで!」

「慌てる必要はない」

火威と一緒になってサリメルを呼ぼうとする剣崎や忍野を、ユエルとグランハムが止める。

「ふんっ……!」

何言ってんのこのオスプレイリスト……と思う自衛官の前で、ユエルが撃たれた部位に力を入れると、血液と一緒に妙な蟲の幼虫を吐き出させた。

そして眷属故にすぐに塞がる傷口。

こいつも大概人間じゃぁない。火威達自衛官はよく理解した。

「剣崎三尉、負傷者ですか?」

栗林やサリメルの班も兵舎内を最後として、敵の残存勢力と生存者の捜索は終えたようでである。

「いや、結局何もなかった」

人間じゃない芸当の御蔭でなくなりました。

「しかし面倒な真似をしてくれたのぅ……。ロゼナ・クランツの奴らめ」

ユエルの背中から吐き出された幼虫を、サリメルは超局所的サラマンダーの最高火力で焼き払ってから炭にして踏み潰す。

「もうちょっと面倒続きそうですよ」

「うわ~、それもそうじゃなぁ~」

今までに好きな事しかやって来なかったであろうサリメルが、げんなりとした表情を作る。

その時、天井を構成する柱から何かが降ってきた。それが意図してのことでは無いのは、落ちて来た影から哀愁漂う「ニギァ~」という悲鳴が発せられたことで明白である。

「どうした!?」

「敵か! 生存者かっ!?」

白い産毛に包まれたソレは、瞬く間に厳つい体格の男達から囲まれ冷たい銃口を向けられた。「ニャ」という悲鳴から、キャットピープルであることは察することが出来る。成長すれば美しいホワイトタイガーになるであろう猫ちゃんは、柔らかそうな姿態からして雌か? と、誰もが考えた。

キャットピープルに第一声を掛けたのは、げんなりしていたサリメルである。

「サ、サガルマタにオンナノコネコちゃんが……。ネコネコ可愛い生存者が見つかって妾の完全勝利じゃろこれっ!」

勿論、サリメルではなく皆の勝利である。ケモナーの倉田やカトリが知れば、彼等の精神力を試す煉獄が始めるだろう。だが……。

「雌じゃないニャっ! これでも17歳の雄ニャ!」

それを聞いたサリメルの霊格、ここに極まる。

「バ、バカな……! これでオットコノコじゃと……。どうみてもオニャノコにゃて……」

サリメルは呪文のように呟く。

「も、萌える……萌えてしまう…………。この妾が……」

これは 面倒なことになった……。 ……そう呟いてから、サリメルは部屋が崩れる程の爆発を起こした。

巻き込まれた者は誰もいなかったが、皆が異口同音である。

「ホントに面倒臭せェーよ!!」




以前にお伝えしたガンダムの二次小説ですが、18禁一本でやることに決めました。
マリーダさんや猫ガンダムの方のポンコツ姫さまとエロいことしたいのが執筆の理由です。
それを思い出した時に18禁一本に収斂されました。

どや?

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