ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、何やら久々庵パンです。
遂にGATEのセカンドシーズンが開始されますね。
そして主人公交替でしょうか? まぁ海自のターンですから江田島二佐とかに交替なんでしょうね。
っつかGATEで海自が主人公になる日が来るとは思わなんですわ。

さりとて、随分期間が空いてしまいましたが3部終盤に本編第一話の誤字訂正が……。
junq様、誤字報告ありがとう御座います。


第三十三話 窃視

凍結帝国の氷の城の中。

サリメルの首を抱えた火威は城からの脱出を急ぐ。光の精霊魔法を使用して、オーガニックステルス迷彩の二人であるが、その光景を知らぬ者が見れば猟奇殺人事件に見えるだろう。しかしサリメルはちゃんと元気に生きている。

サリメルを倒し、敵本拠地内にまで連行してきた存在が「小型のゴーレム」であることを火威はサリメル本人から聞いていた。

不意打ちとはいえ、神一柱を易々倒せるような敵がいるなら城の目前まで進攻した味方が危険だ。だが、先程グランハムと共に加茂の元に行ったノスリが隊の無事を確認していているし、火威もその知らせを受けている。

ならば、「切欠」を与えなければ稼働しないゴーレムなのだろうし、稼働時間も長くないと考えられる。一柱の神を捕らえることが出来るから、戦闘力は高いのだろうが。

「つかサリさん。あの障壁の中から何か聞こえましたか?」

エロフの地獄耳なら、ある程度離れた地点から小声で話していても聞こえたんじゃないかと思って聞いた火威であるが

「すまぬ、精霊魔法で音が壁に吸収されるようになっていて何も聞こえなんだわ」

との答えを得た。

「……あ、サリさん。前みたいに離れた所にある身体を爆発させて、首から生やせませんかね?」

「えー。何そのモリオーチョ―の変態爆弾魔みたいなの」

「なんすか。ソレ」

変態のサリメルに変態呼ばわりされるとは、ホントにヒドい変態なのだろう。そして爆弾魔と呼ばれる程なのだからロクでもない人間なのに違いない。モリオーチョーという地名は漫画か何かの世界かも知れないが。

ちなみに火威、某奇妙な冒険の守備範囲は3部までである。

 

そんな感じでサリメルの身体を探している火威とサリメルヘッドであるが、急にサリメルが呻き出した。

「えっ、ちょ…サリさん。一応潜入中なんだから静かにして」

「す、すまぬ。どうも妾の身体で…っ。何者かが遊んでおるようじゃ…っ。あん」

妙にわざとらしい喘ぎ声で、火威が萎えたのは言うまでもない。

「どうも…はんっ。近くにあるようじゃな。あんっ」

非常に業務的な喘ぎ声だが、娼婦としての癖でついつい演技してしまうのだとか。これは客も逃げる。

と、思って上階に向かったら、早速サリメルボディを犯している連中を見つけた。最低限、とりあえずは頭だけでも救出すれば良いかな……くらいに考えた火威だが、ちゃんと身体が付いて自分で歩いて貰った方が面倒ないのである。

まぁ、サリメルは頭だけでも浮遊する。しかし、サリメルヘッドが移動する時は、たいがい飛頭蛮の如く無意味に穂長耳を羽ばたかせて飛ぶから非常に気味悪い。なので助かった。

「ヌシらァ!!」

サリメルが一喝すると、頭のない身体を犯していた者らが挙動を止め、そして一斉にサリメルと火威を見た。

「妾の身体で何をしている! 高いと知っての狼藉か!」

非常に倒錯的だが、サリメルだ。仕方ない。

サリメルの身体を弄んでいた者達は、顔を見合わせると遊びに使っていたモノを仕舞うと剣や槍など武器を取り、多勢で切り掛かって来た。

「こ、こいつらっ。言葉を忘れたか!?」

ヒト種のその者らは、眼光も鋭く肌の色も汚れ、汚く煤けて見える。返り血が乾いたのかも知れないが、とても「人間」とは言えない生き物になっていた。

「このっ、たわばァーー!」

世紀末の断末魔っぽいが、サリメルヘッドはそんな気勢と共に口から怪光弾を放ってヒト種らしき獣達を吹き飛ばす。

何魔法を使ったのか解らないが、この女とは絶対にキスしてはいけないと火威は肝に銘じる。

「サリさん、アナタ魔神か何かでしょ」

「亜神じゃけど、なにか?」

言いながら、サリメルはパイルダー・オン。眼が光ったりしないが、肘を曲げながら両腕を上げて健体ぶりをアピール。

全裸なのも含めて、ノーマルのサリメルである。

 

*  *  *                      *  *  *

 

山脈に棲む多様な精霊との交歓を終え、報告を求められたアウラは、トーデインの前にひざまづき、氷の帝都と帝城内に起きていることを話す。

「他の神と人間の軍勢が抑えられても、城内を異世界の小蝿に飛び回れるのは辛抱出来んな。ラウア、石魔兵でどうにか出来んか?」

常道なら、トーデインの言う通り最も戦闘力が期待できるそれが良いのだろう。だが、それは困る。

「異世界の敵の力は猶未知数です。石魔兵と激突すれば此の地がどうなるやも解りません」

「ほぅ、それ程の者なら捕らえ、手駒に出来れば十二神にも対抗できよう」

異世界の戦士が凍結帝国の目前に配置された蟲人の兵舎と、複数の異龍を倒したことをトーデインは知っている。

その様子を、魔法を使って山脈の氷から映し見ていたのだから。

その戦士を捕らえ、魔導で恭順させようと試みることも不可能に近い。それが分からずに言ってるトーデインではないのだから、本気でこの世界を贄にしようと考えてるのかも知れない。

世界を剪定するには、先ずこの者を倒すべきであった。ラウアは心ならずも悔やむ。

 

 

*  *  *                      *  *  *

 

マッパ!!! だったサリメルに、爆殺された獣化したヒトの敵性団体から衣服や胸甲を剥いで着用させ、火威は兜跋の腰に差すように付けている円柱状のポールを二本取りだした。

「ハンゾっ、何やっとるんじゃ?」

ポールをひっくり返して掌に3度ほど叩き付け、出て来たポールの中身の端を引き抜くと火威は言う。

「障壁を張るのに必要な木材です。サリさんは先に脱出して、1つはリーリエさんに渡してください」

木材であるが、賢者が加工した物質なら魔導士のリーリエに使えるのである。

「俺のは左腰に残ってますんで」

その言葉は、この時点からサリメルと火威が別行動という意味であることを意味している。サリメルには受け入れられない提案だった。

「いやな、ハンゾウ。妾を倒した、なんぞゴツゴツしたヤツが何処にいるか分からんからな。入り組んだマップで別行動は全滅フラグだと思うんよ」

サリメルを倒したのはゴーレムの一種だと言うが、それが魔導を使ったなどということは信じられない。だが特地には未だ不明なことが多数ある。事実の情報として受け取り、イレギュラーに備えるべきだ。

妻になる栗林が魔導を使えるようになった感じ……と、説明すれば簡単だろうが、それがどれ程恐ろしいことかも火威は良く判っている。

そんな感じに脳を使う火威だから、サリメルが某ウィザードリィめいたことを口にしても気にならない。

「うぅむ、考えたくねェ」

「?」

「まぁともかく、上階も見て、リッテラやリドラの両親とか周辺の村から拉致された村人も探さないといけないし、サリさんには早く本隊と合流してもらいたいんですわ」

「じゃあメンポで見たらどうじゃ?」

サリえもんの秘密道具は、今現在火威が持っている。

「透かせるの壁1枚だけじゃないすか?」

「いや、起動式を組めば何枚でもな……」

というので、火威は早速魔導の起動式を建て始めた。

『法理』を開豁して『陣』を敷設。『偽氣』と『法理』の揺らめきによる空気の振動は髪が髪をそよがせる演出を入れたいが、彼にはその演出するのに絶対に必要な演出装置がない。

さっとメンポを被って上階を見ると、天井や幾つもの壁を透かして遥か向うの空まで見える。

「す、すげぇ。何枚でも透けて見える!?」

悪用厳禁である。特地に於いては、そんな法律も条令も無さそうだからサリメルは悪用し放題だっただろうが。

「どうじゃ。居た?」

「…………いや、おらんですわ」

「あー、それじゃ一度……」

ジゼルがベルナーゴに召された魂を見てきたが、魂自体の量は膨大だったにも関わらず亜人の魂は少なかった。エムロイの元に行った可能性もあるが、リッテラとリドラの両親はまで生きている可能性があるのだ。

上階だけではなく、今いる3階や下階もくまなく見回すと、一組の女性エルフとヒトが見えた。

「あれ? エルフとヒトの女性がいる。拉致された人かもし……」

「ハンゾウそこどけ!!」

なぜ怒った!? 瞬き思うほど激しい言葉と共にサリメルは火威を突き飛ばす。

「げっ!何をサリさっ……!?」

思いっ切り叱られたかと思った火威だが、そうでないことがサリメルに飛び込む光弾で解る。

サリメルに命中した殺意の塊は、彼女を貫くと爆発して女の四肢を吹き飛ばす。

「サリさん!」

亜神は死なない。とは言え、知っている女が吹き飛ばされ、凄惨な有様になるのは見ていて気分の良いものではない。火威は直ちに光弾が飛んできた方向……下手人を探す。

すると、そこには人間大のゴーレム……薔薇騎士団の平均身長、165cmほどの石の兵が居た。

小型ではあるが、隊への危険性は今まで遭ったどの敵性個体より高い。

「潰す!」

防御魔法を張る前に、物体移動と光と水の精霊魔法、それに火威本人の運動能力で複数の虚像を作りだし、瞬時にゴーレムに肉薄する。

防御魔法が有効であればサリメルは負けなかっただろうし、反撃することも出来たはずだ。火威は『最初からクライマックス』でゴーレムを潰しにいったのである。

火威を掠める光弾は氷の城壁を爆破し、床を崩す。

高速バックしながら火威に光弾を放つ石の兵に、火威は閉口した。魔法を使う時は、足を止めるなり移動が制限される前提があるからだ。

魔導を習い初めて2ヶ月足らずで簡単な魔法を覚えた火威も、その制限から逃れることはできない。

追撃し、64式小銃を発砲するが、当然のことながら石の兵は左右に軌道をずらして当回避する。そればかりか、少ないながらも命中した弾丸は防御魔法に阻まれて大したダメージを与えれていない。

「癪な」

足を止め、アルペジオが編み出した魔法の強化版を撃ち込むことも考えたが、それでは射程外に逃げられてしまう。ならば自衛隊装備による弾幕で圧倒するしかない。

本来ならば64(ロクヨン)も11mm拳銃も片手撃ちする銃ではないが、反動でブレないよう腰を据えて肘を極め、敵を追いながら発砲する。

気分は某白い閃光よろしく蒼い閃光といったところか。神の眷属でなければ肘を痛めて暫く再起不能にされただろうが、栗林を結婚する為に鍛えてきた筋肉に神の眷属となったことでそれを可能とした。

火威の持論は「完全な防御はない」ことと「殺られる前に殺れ」である。その二つが両立した今、狂暴な殺意が彼を突き動かしていた。

氷の城の裏手に飛び出ると、そこは言わば「氷の庭園」とでも言うべき場所だ。高速で退きながら光弾を火威に向けて発射する敵は強敵である。それでも、早く斃してサリメルの元に戻らねばならない。

64(ロクヨン)は連射すると銃身が過熱するので短連射するしかない。しかし11mm拳銃がその隙を埋め、直に一発の弾丸が石の兵に突き刺さる。

「ッシャ!」

短連射で放たれた弾丸が胴体に突き刺さると、石の兵は空中で激しくバランスを崩す。そのまま氷山に体当たりで押し付けると、右腕を掲げようとしたので此れを抑え、左腕ンはパイルバンカーで粉砕した。

先程、サリメルの魔法を見て逡巡したが、残された手はもはや此れしかない。

「……ッカァーーーーーー!!!」

火威の気声が、氷雪山脈に轟いたのであった。

 

*  *                             *  *

 

敵を破壊し、一時の安堵を得た火威は直ぐに…若干ながら後悔した。

どこぞの禿頭野菜人のように口から怪光線したせいで、少しばかりお気に入りの赤い長マフラーが無惨に破け裂けてしまった。長いから無傷の部分を巻き直せば良いが、明らかに短くなっている。

そして現実的な問題は、舌など口の中がヒリヒリ痛むことだ。眷属だから直ぐに痛みは退くが、普通の人間の時にやっていたら舌が吹き飛んでいたかもしれない。

さておき、敵は倒したが、また何時再起動するか解らないし、破片を粉砕して留めを刺さなければ安心出来ない。火威は背に担いだ大剣で、虱潰しに石の兵の破片を粉砕する。

「おーい、ハンゾウ」

石で出来た敵の欠片を、フルグランで地道に砕いていると遅れて……いや、戦闘中の移動距離を考えれば凄く早いであろうが、サリメルがやてきた。マッパ!!!の小脇に自分の頭を抱えて、明らかに「人間じゃないです」アピールのスタイルだ。

今は火威しかいないが、他の人が居る前ではホント辞めてほしい。まぁ、爆散されても自力で元に戻れるのは非常に心強いのだが。

「ハンゾウ。ヌシは凄いな。あれ程の短時間で防御魔法を完成させるとは」

「いや最初から最後まで攻撃一辺倒でしたが」

「なっ……!?」

なんという勇気……とか抜かすサリメルに詳しい事を聞くと、先程と最初は「うっかり防御魔法を忘れていた」のだという。

「なんとまぁ…………」

サリメルの舐めプに言葉も出ない。格ゲーだったら指二本しか使わないレベルだ。

「ところでハンゾウ」

「なんスよ?」

「襟巻、短くなってね?」

「戦闘で一部、喪失しました」

敵との戦闘中に一部が喪失したのである。まだ普通の人間である火威が口から怪光線など、例え魔導の形が変わったものだとしても出して良いものではない。

このことは、門の日本側であれば特定機密に指定すべき機密事項なのだ。




前書きでセカンドシーズンと伊丹が主人公交替とかかきましたがね、
飢狼の16話で火威出し過ぎて、ちょっと切腹したいくらいのアレです……。
この先、飢狼さんと火威が関わることは無いです。無いと思います。有ってもまぁセクロスとかは無いです。

ところでアニメの3期ってまだですかね?(すっ呆け

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