ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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3部の最終話です。
前回を中途半端に終わらせてしまったので、3部で一番短いです。
っていうか魔導で一番短い。

しかも最後の方までシリアスだったのに、なんでこういう終わらせ方になっちゃったんだか……。
まぁ3部終わりです。
次の回から4部ってことになります。


第四十一話 終局

ジゼルが連れてきた龍の大群が氷雪山脈を離れる前から、火威は風の精霊を使役して上空に巨大な雷の玉を作り練り上げてきた。

火威は核技術に関して門外漢ではあるが、原子炉等の核融合の着火には「億」という単位の温度を要するらしいことを以前に見聞きしたことがある。

そしてその温度に届くのがプラズマだ。

先程、金属製のゴーレムを斃せたのも、風の精霊を使役して練り上げた雷玉を叩き付けたである。

目論み通り、神鉄か神銀で象られたゴーレムは固型から液体になった。今頃は冷えて金属製の板になっているだろう。

ゴーレムのゴーレムたる仮初めの命を吹き込んだ呪刻さえ消えてくれればそれで良かったのだが、想像以上の結果に火威は驚き、自分の業の1つとした。

これなら漫画家のT山明氏が作り出した最強敵のM人Bウも倒せるかも知れない。

今の氷雪山脈にいるのは火威だけではない。

今回の事件の片棒とも言えるアウラもいる。

彼女はロゥリィに断罪されず、放逐されたようだ。

主神が放逐したのだから、保護対象であるリーリエの始祖とは言え火威も関わろうとは思わない。

これからやることに巻き込むだろうが、敢えてそれを受け入れるのも彼女が選んだ道なのだろう。

だが、一言くらいは警告してやっても良いかも知れない。

「おい!」

上空に生み出した雷球に神経を注ぎながら、火威はエルフの女に声を掛ける。

「なんだ」

「お前は逃げなくて良いのか?」

すると、アウラは言う。

「お前が気に掛けることではない。トーデインに力を貸した私だ。結果を見届ける責任がある」

少し前からの行動と栗林達攻撃隊の証言を聞けば、トーデインに従っていたのが不本意だったということは解る。

彼女の魔導のレベルを見れば不可抗力だったのだろうが、この責任感の高さは子孫へと受け継がれていると見てよい。

或は、昇神した者の矜持とも考えられる。

「良し。なら解った!」

言う火威が、繰り返し重ね掛けした防御魔法に最後の一枚を掛けてから氷雪山脈全域が見える程の高さまで上昇していく。

空気が薄くなって苦しさを感じるが、こういう時の為にも鍛えて来たのだ。自衛隊の訓練は体力以上に心を鍛える訓練と言ってよい。

前近代的と思われるが、最後にものを言うのは気合と根性である。彼等は限界の先に行く為に日夜努力しているのである。

全ての灰色の災厄が見えた時、火威は召喚した風の精霊に命じる。

「汚物はッ!」

そして最後の呪文を唱え、実行に移した。

「消毒だァ!」

雷玉は蠢き、火威の意志を離れて地上へと向かって行く。

地表に到達した巨大な電離気体は最初に灰色の大地を焦がして焼き払い、そして山脈の大地ごと蒸発させた。

 

*  *                               *  *

 

天から放たれた雷撃の球を見ながら、アウラは嘗ての戦いを思い出す。

身体の一部を失いながら、復讐とその時の仲間達の命を懸けた魔導を練り上げた時のことを。

あれがパラパンに認められ、アウラは亜神に昇神した。そしてそれが煉獄の始まりだったことを思い出す。

神になりながらも、トーデインの暴走する欲望を止める術が自分には無かった。

同志であった男は、神である筈のアウラの魔導を大きく凌駕する力を持っていた。それを用いてあの男は、百年以上ものあいだ、神に断罪されるべき所業を働き続けてきた。

トーデインと自分によって命を絶たれた者達へ瞑目し、アウラはありのままを受け入る。

膨大な熱の塊の端が大地に着くと、周辺の粘菌を焼き払い、次第に周辺の地形を砕いて溶かし、そして蒸発させていく。

勿論、同じことはアウラにも起きた。

特戦群に撃たれ、穴が穿っても再生してたのは攻撃が間隔を置いていたからだ。

毛髪も皮膚も一瞬にして焼かれ、肉は削がれて骨も砕かれると塵々となり、気体となって細胞の一欠片も残さず消え失せる。

 

 

戦略級の破壊魔法は大陸の形を大きく変える。

防御魔法の重ね掛けで自分自身だけは守ることが出来た火威は、今の精霊魔法の用法を今後一切禁じることを自分に課す

先程までは山の中にあり、粘菌のような存在が広がっていた大きな湖を見て、火威はそう心に決めた。

個人が持っていて良い力ではない。他の者に知られたら、不自由なことになるのは予感できる。

そしてやはり、アウラのことは吹き飛ばしてしまったようだ。

もっと違う会い方だったらアルヌスに招待できかも知れない。

真面目なエルフのようだから、廃座されるようなことがなければ多くの信徒にも恵まれていただろう。

これはサリメルに欲しい部分だ。

今は栗林一択だが、彼女のような人間は好ましい。

いや、廃座されたとは言え神だったのだから人間とは呼べない可能性もある。

「終わったか」

火威の他に生きてる者がいるのか……と思ったら、湖の中からアウラが出てきた。

産まれたままの姿で。

「生きとったんかい。ワレェ」

後にアルヌスで知る事になるのだが、亜神は「何が」あっても「どんな」事に遭っても死なない。

切断した部位をくっ付ければ元通りになるし、溶滅しようが挫滅しようが何もない空間から再生する。

それが正神の恩恵であり、また呪いでもあった。

もちろん、焼かれた服まで戻るほど都合の良いものではない。

一糸纏わぬ姿のまま、手か何かで隠すでもなく平然とアウラは言葉を反す。

「一度昇神した者の不死性は失われん。だが、聖下には罰を下して欲しかった」

今はアルヌスにいるロゥリィのことを言われても、火威にはどうしようもない。

「そして凌辱して欲しかった……」

「オイ、お前な……」

ここにきて、火威は理解した。

アウラとかいう目の前のエルフ出身の絶対生物は、決して真面目な生き物ではない。

ポスト・サリメルであり、敢えて関われば精神衛生が悪化するのは間違い無い。

「これ以上、コイツに関わってはいけない」

そう感じた火威は、自衛官になってからこれ以上ない程の疲労感を感じたのであった。




シリアスが終わったので、アウラはこれからポンコツ絶対生物的な奴になります。
でも4部で出てくることはありません。
5部があったらポンコツのまま出てくる……と思います。

で、鬼太郎を5,5期くらいの雰囲気でやろうと画策してましたが
6期が凄く面白くてキャラが良い按配なので6期基準でやりますかも。
いやに攻めてくる6期なので、当方の方でも鬼太郎とうしとらをイメージして書きます。
いや、まぁね、決してニチアサでは放送できないくらいの話を目指しますかも。
要はR-15です。水木先生は「ヒワイこそ最高のミキリ」というお言葉を遺されているので、エロもやります。
エロだけでなくグロもやります。

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