相変わらずタイトルのセンスが酷いです。
今回はエロですけど、一線越えないエロです。
しかも長いです。エロは長くないです。
氷雪山脈を解放……というか、文字通りブッ飛ばしたその日、火威はサリメルと共に居るリシュを見た鹿系亜人から挑戦を申し込まれていた。
鹿系亜人はリシュがサリメルと火威の間に出来た子供だと思ったらしい。
リシュには異種族の血を認められるような特徴は無いのだが、栗林という愛妻が居るのにサリメルが必要以上に火威に纏わりつくこと。そしてヤの付く職業も慄く火威の面構えでも、ロゼナクランツを完全討伐してアルヌスに帰還した彼にリシュが喜んで駆け寄っていったことから思い違いしたようであった。
体力徽章を持つ火威も疲れていたので後日別の機会にしたかったが、嫌な事は事前に終わらせておくことを、子供の頃から習慣付けているので400m走で挑戦を受けてやったのである。
結果は、細かいルールを決めてなかった火威が0.6秒で走るように飛んで圧倒的勝利。
それでも難癖付けてくる鹿男は、毛むくじゃらの背中から背油に塗れたディーヴァを持ちだして真剣勝負を挑んできた。
元は大祭典の時にロゥリィに喧嘩を売った新米亜神のメイベルの心臓から創り出された利剣と言われているそれは、王族や国を統べるに相応しい者以外が持つとたちまち朽ちてしまう。
更には血で養わないと朽ちていく曰く付きの神器だ。
大祭典の後にピニャ皇太女が帝都へ持って行ったが、先の作戦の会合の折に既に朽ちていると耳にしたことがある。
実際に朽ちていく様を見た者は居ないから、一夜にして砂となって消えたのだろうと思われていたが、鹿系亜人によって盗まれていたようだ。
実際、400m走ではカモシカのように身体能力が高く跳び跳ね、また牝雲鹿のハーレムを形勢出来るほど鹿にはモテるらしい。
ディーヴァが朽ちなかったのは盗賊のような軍閥になったゾルザル派帝国兵を斬ったり、生ける屍達を斬ってその血で養われていたからだ。
だが火威には速攻でディーヴァを砕かれ、拳骨落とされて大きな瘤を作って伸びていた。
民間人相手ではなく盗人相手なのと、いい加減疲れてたので遠慮なく凹ったのである。
泥棒鹿は伸びたままイタリカに向かう荷馬車で運ばれた。裁判受けるためだが、ローバッハという馬鹿貴族が代官の仕事をしないから判決が出るのは当分先だろう。
その日の火威は駐屯地にある特別図書館で某オタク自衛官から提供された○ンダムシリーズの劇場作品、○襲の○ャアのVCDを風の精霊魔法で発電して観賞していた。
自前で発電してはいるが、一度召喚したシルフが風力発電機を回し続けてくれるので楽なものだ。
精霊魔法がこれほど現代人の生活様式にマッチしたものなら、退官後の生活でも多いに役に立ってくれるだろう。
いや、退官後とは言わず日本に帰還したら直ぐにでも役立ってくれるはずだ。
光熱費は最低限で済む。
ちょっぴりドラ○もんになった気分である。まぁ志乃のことで最低でも一度はサリえもんに会う必要があるから安心できないのだが。
氷雪山脈で栗林に憑いた精霊の影響である可能性が強いと考えからなのだが、火威より精霊に詳しいテュカに聞いても筋肉の精霊というのは知らないという。
プロテスという精霊は局地にしか存在しないのが確かなようだ。
確かに、あんなケツ顎がそこら中に居て堪るかという思いはある。
サリメルにさえ会えば人生薔薇色である。
……念のために付け加えるが、ゲイ術的意味で薔薇なのではない。華やいだ意味で薔薇なのだ。いっそ百合か牡丹でも良い。
サリメルは一応神にだから、余り遊んでる暇はないハズ。C言語の専門誌を渡せば満足するハズだ。彼女も暇人じゃァない筈なのだ。
特地で唯一電機が通ってるアルヌスに住もうとするかも知るないが、それ以上は望まない筈だ。サリえもんの事だからシュワルツの森に電気を通し兼ねないが、それならそれでも良い。
それより、火威には懸念すべき事がある。
火威だけではない。現在特地に残された日本人全てにとって、最も求められているのは日本へ門が再開通することだ。
だがその為に雇った石工の一部が罷業を起こしてしまったのである。
彼等が職務を放棄したのは火威ら一部の自衛官が氷雪山脈に派遣されてる最中のことだったが、休暇に入った火威は(休めてないが)つい先日この話しを聞いたのである。
罷業に入ったのはメソンという、石や大理石の建造物にレリーフや亡くなった人の顔を刻む彫刻士の集団が主な面々で、全てがドワーフだ。
ドワーフというと頑固で融通が効かない種族と連想するが、彼等の罷業の理由が謎なのだ。
一時は雇い賃の問題かとも思われたが、最下級帝国兵の1日の給料が7ソルダ。アルヌスの傭兵はそれより高い。
雇い主であるレレイはアルヌスの傭兵の倍の金額に、今後アルヌスで行われる石工の仕事には彼等との専属契約を結ぼうとした。
石工にとって専属契約というのは喉から手が出るほど欲しいものらしい。何より食いっぱぐれ心配が無くなるのだ。
それでも彼等は罷業を止めることはなかった。
明かに金以外の物を要求しているのだろう。しかしそれは今もって分からないままだ。
呪刻自体はレレイを師と仰いで大陸各地から集まった学徒達が、蝋で下絵を描いてくれるから問題はないのだが、それを刻むメソンが動いてくれないとどうすることも出来ない。
本を借りに来る自衛官が居ないホールを見ると、一人のドワーフの少年が薄い本とわら半紙に向かい合って手を動かしてるのが見えた。
レレイが何度も頼み込んでるのに罷業を決め込むメソンの師匠達には厳しい目を向ける街の人達だが、その見習いの少年達にまで同じ態度を取ることはない。
だが一日中宿舎でムッツリしてる師匠と顔を合わせるのも精神的にキツいのだろう。
見習いの彼は、何時もこうしてわら半紙に薄い本のキャラクターを写し見て描いている。
火威も初対面の相手ではない。最初会った時はかなり動揺されたが(顔のせいで)、ツムという少年だ。彼なら罷業の理由を知っている可能性が高いが、それを彼の口から言わせる方法を持っていない。
門を再建することは特地派遣隊の一大任務なので、火威もそれとなく薄い本のキャラ絵を描く彼を誉めて接触しているのだが、先のような理由で雑談から入っているので未だ核心には触れていない。
実際、彼の絵は見習いのメソンということもあって上手い。半日掛けて〇ンダムヘッドしか描けない火威や、歪んだ果実らしきものを描いているピニャより遥かに上だ。
特別図書館を出ると、一人の陸曹が火威に声を掛ける。
何かと思えば、帝都から鸚鵡鳩通信が来たという。火威を指名して、再び帝都まで来てくれとのことだ。
「ま、またすか?」
「皇室でも地位の高い女性とのことです。講和は成立しましたが、現在は帝国からの賠償金で隊員の食費を賄っている状況ですので近日中に向かって下さい」
火威は帝国に○玉を握られている錯覚を覚えた。品が無いので皆までは言わないが。
* * * *
次の日、高機動車のハンドルを握る火威は大帝門の前に来ていた。
ここから先は勿論車道も歩道もない。驢馬が牽くような荷車の類いはあるが、歩行者が縦横無尽に動く道を高機で進まねばならないのだ。
驢馬も馬も牽かない車に人々は好奇の目を向けるが、戦争中のことを俯瞰的にしか知らない人々は現在の帝国の同盟国として見るから悪いものではない。
歩行者やそれら荷車に注意して進むと、帝城に向かう高機に二人の人間が近付いてきた。
誰かと思ってよく見りゃ……
「フォートさん!?」
やつれきった顔で、御付きの初老男に支えられたカトリ・エル・フォートが杖を突きながら火威の高機に近付いてきたのである。
「一体どうしたんス!?」
喋り馴れた特地語が微妙におかしくなってしまったが、理由は案の定過ぎるものだった。
「すごく可愛く綺麗で魅力的な女性達なんですが、なにぶん毎日夜が激しくって……」
カトリは3人のケモ愛人達に毎晩精を吸い尽くされていた。酷い時には朝・昼・晩と相手しなければならないと言う。正に魂も精も尽き果てたカトリだったのだ。
「っていうか、それ、私に言われても……」
正式に婚姻した訳ではないのだが、他人のカミさんである。どうしろと言うのか……?
「ヒオドシ卿が度々帝都に出入りしているのは存じてました。次にいらっしゃった時には是非ヒオドシ卿に代わって頂こうと」
「ちょ待ったァー! それはできんッ!」
この亭主公認のNTR願いは願いは、火威に死ねというのと同義語である。
「何故ですっ?」
主の命も掛かってるから、御付きも必死である。
「亜神クリバヤシが激昂するからっ。鬼神レベルの彼女を怒らせたら俺の命が無いからッ! ミノタウロスのように殴り殺されるからッ!」
「ミノタウロスのように…!?」
「殴り殺されるとは!!」
人型古代龍みたいに考えられていた魔導狂戦士ヒオドシだが、彼に恐れられていたのは亜神クリバヤシだった。異世界の女兵士が亜神を冠するのは悪所から出た冗談だろうと思っていたが、ピニャ・コ・ラーダ皇太女周辺から出た噂は今の話で裏付けられた。
彼女は本当に戦神ロゥリィ並みの猛者らしい。
「しかしそれではカトリ様の御命が……!」
「ヒオドシ卿、今回のことは決して外部には漏らしません。情報管理は徹底させます。ですからどうかお願いです」
火威は決して受け入れる態度を見せなかったが、カトリ達もまた譲らない。命が掛かっているのだ。譲れる訳がなかった。
「世界の神が貴方を遣わして下さったのです。これを神の意志と言わずに何と言いましょうか」
「え……鸚鵡鳩通信を飛ばしたの貴方がたではないンすか?」
「違いますよ。どうして今回帝都にいらしたのですか?」
考えてみなくてもカトリは皇室の重要人物ではない。
火威は少しばかり高機を飛ばしてフォート邸に2人を送り、急いで皇城に戻って行った。
* * * *
再びピニャの父ちゃんからの熱いラブコール的勧誘かと思ったが、火威が通された豪奢な部屋で待っていたのは2人の女性だった。
火威が肉眼で確認できるのは2人の女性だけだが、その背後の壁の向うには複数の人間の気配を感じる。恐らく武装した兵士やそれに類する者達だろう。
「初めてお目にかかります」
と、彼女達は言ったが火威には見覚えがある。
「いえ、以前アルヌスにいらっしゃいましたよね?」
大祭典の時にボーゼスの結婚式に(呼ばれたとは思えない態度だったから勝手に)来ていた帝国の般若顔貴族の女性だ。その時とは髪の色が変わっているが、確かにそのヒトである。
「あぁ、でもこうして言葉を交わすのは実際初めましてですね。火威・ロゥ・半蔵です」
特地風に自己紹介をすると、その女性は皇姪のレディ・フレ・カエサルと名乗った。
居住まいを正して礼儀正しそうにしてるが、値踏みするように見ているのは頭を下げて挨拶する火威を蔑むような眼で見ていたことから本心や本性が分かる。
恐らく今でも普段より態度を軟らかく矯正して見せてるのだろう。
「それで、私に何か用件があるとかで?」
大祭典の時は般若面だったが、今ちゃんと見れば美人と言える女性だ。
だが内に秘めた刺々しさが見え隠れしていて、全く居心地が良くない。
用事があるなら早く聞いて帰りたいのだ。
「単刀直入に申します」
「あ、面倒なことなら言わないで下さい」
今までにモルトから再三勧誘されているのだ。似たようなことを言うなら精神が疲労するだけである。
それに損得勘定を+して火威は敢えて言う。
「いえ、これだけは聴いて頂かなければなりません」
「言うのはタダだと勘違いしてる人が多いですけど、タダじゃないですからね?」
「何もしない内から金銭を要求するのですか?」
レディという女性はヒオドシという男を、ことのほか卑しい男だと思っただろう。だがこれは駆け引きである。
「飛行機……こっちじゃ空飛ぶ銀の剣でしたっけ? そういうの使わないで半日足らずでアルヌスから来るのは結構疲れるので、無料で聞いて差し上げることはできません。まぁ自分にとって面白い話しなら別ですが」
最初からレディから滲み出ている刺々しい態度から、火威にとって良い話が出るとは思えないのだ。それに加え、正直言えば賠償金から隊員達に配布される小遣い程度の金では毎日腹一杯食べることも出来ないので、貰えるものなら金も欲しかった。
条件を呑んででも話したいというのは話せば良いし、金を払う程のことではないのなら早く帰りたい。
「いいでしょう。では聞いてもらいましょう。我が皇族直属の近衛兵になりなさい」
「あ、3シンク金貨頂きますね」
面白いものではないので即答である。3シンクという額はこの世界では高額だが、景気の良さそうな皇姪だし無理ではないだろう。
火威は国家公務員という安定職だ。特別が付くので一般公務員より仕事はキツイが、それだけの力があるし最近結婚したばかりである。「何故か?」と聞くレディという貴族にそのことを伝えた。
「でも門は閉まって本国とは連絡が付かないのでしょう?」
「いえ、そのうち開きます」
その内とは明確に特定できないが近々だ。すると帝国の近衛兵になれば貴族の女性を紹介して高い給金を出すと縋るレディ。
「でも大型怪異を絞め殺したり一撃で殴り殺せる貴族女性って居ないでしょ?」
それも怪異のような女ではなく小柄で牛の様な乳を持ち、しっかりと括れもある可愛らしい女性である。それが火威の希望だ。
この最終兵器クリボーに添える応えを、レディは持っていなかった。そもそもそんな女が居るか! ……というのが彼女の本音だ。ピニャが受け取った報告書には虚実が織り交ぜられてるに違いないと思っていた。
だが真実とは彼女が信じられないものであることは、彼女自身が最近経験したこともあって知っている。彼女が帝国の頂点を目指すのもそれが故だ。
世の中の全てをレディは知ってる訳ではない。先頃氷雪山脈から発せられる強烈な光が観測されたのは事実だし、今この無礼な禿頭男が言ったことを否定する材料は何も無いのだ。
彼女には、どんな方法を使ってでもニホン人が門を開くのを妨害しなければならないという理由があった。
そして火威は3シンク頂戴して、そそくさと皇城から逃げるように退散したのである。
* * * *
高機で帝門を潜ると、そこにはフォート家の遣いの者が待っていた。
というか待ち受けていた。
そして絶対に外部に情報が漏れないことを条件に、火威がカトリに代わって愛人達の夜の相手をすることを願ったのだ。
「達って……!」
一人だけかと思ったら違った。元々カトリの亜人女性の愛人は3人居たので、予想よりは少なくなっているのは助かるのだがカトリの亜人愛人は一人増えて四人になっていた。
「好き過ぎるだろフォートさん……」
亜人女性が魅了的なのは火威にも分かる。
分かるが、カトリの亜人(女性限定)好きにも限度というものを知って欲しい。
相手は誰かと思って会って見れば、六肢族で娼婦をやっていた女性だということが分かる。蟻を先祖とする彼等は褐色とも言える黒い肌で、2対の腕を持った“如何にも”異種族という姿をしている。
氷雪山脈でロゼナクランツが異世界から呼び寄せた蟲人と同じ昆虫人間と言えなくもないが、火威が知る娼婦はそれらとは○ブリ作品初劇場映画に出て来た王○とミ○バチハッチくらいの違いがある。
六肢族の娼婦は美人で可愛く色っぽいのだ。
禁令が発布されてなければ是非とも一晩お世話になりたかったくらいである。
カトリが我慢出来ずに愛人にしてしまったのも、まぁ仕方ないんじゃァないかなぁ……くらいに思う。
取りあえずカトリは良い趣味をしている。
……と、まぁそんな感じの手のひら返しで評価が一変してしまったので、フォート家子々孫々の為に彼女達を抱くことにした火威である。
それにカトリの容態次第でフォート家の行く末が決まってしまうのだ。知ってる限りの知識で彼には健康を取り戻し、そして(絶倫という名の)力を得てもらわなければならない。
要は彼に必要なのは筋肉である。筋肉を付けるにはアミノ酸が必要だ。
ならば火威が幼少期と現在のアルヌスで常食している雑穀を使った食べ物が良い。
夜までは時間があるのだから、それまでクッキングタイムだ。
筋肉の話は以前にもした憶えがある。心臓は筋肉の塊だから、心肺機能を増強させる為には筋肉を鍛えれば良いのだ。心肺機能が増強すれば取り込む酸素の量が増える。つまり夜の生活が強くなるのだ。
まぁ色々端折ったが、要はカトリは筋肉を鍛えれば良い訳である。その為のアミノ酸が多い食事と、適切なトレーニングをしなければならないのだ。
火威はフォート家の厨房を預かる料理人に、特地でも手に入る粟や稗《ひえ》のような雑穀、それと出汁を取る為の干し魚を用意させた。料理革命が起きた後だから、出汁を取る為に必要な食材を揃えるにも知識は要らないし、手間は掛からなかった。
料理人でも何でも無かった火威だが、貧乏人として安くて美味くて健康にも良い料理を作る方法は知っている。
魚から取られた出汁で雑穀を炊く。そうして作ったお粥に塩、胡椒を眩す。この世界にはリゾットという銀座世界と同じ料理があるのだが、少し味見をしてから火威はこれで良しとした。
栄養士でもないのに下手な味付けをしたせいで、反って健康を害されては困るのだ。
カトリは大事を取って既に就寝しているので、味見はフォート家の料理人や執事、それに今晩相手する愛人達にしてもらうことにした。
「ヒオドシって料理人とかなの?」
愛人との寝所に移動した火威には、2人の亜人女性が待っていた。
六肢族の愛人は以前に悪所で知り合った髪が長く、色気のある彼女だ。既に顔見知りの筈だったが、それから色々あって火威の顔が別人のようになってしまったので改めて自己紹介が必要だった。
その中で、「全く違う顔だから気が付かなかったよぉ」と、面識があった男だと気付いてくれたのだ。
「いや、ただの貧乏人“だった”ワケだけど」
門が開通してたら今は小市民程度の経済持ちだが、今は小遣い程度の給与なので再び貧乏人である。もっとも、今日はレディから3シンクばかりせしめたので超が付く小市民小金持ちだ。
「フォートさんとの約束で夜を共にする訳だけど、今夜は娼婦の時の調子でやってね」
お互い本気になっちゃ困るのである。ましてやミノ姉さんは元が土建屋さんという家業なので、こういうことには慣れてない……と思う。
「それじゃあ、宜しくお願いします」
魅力的な女性達を抱かせて貰うのだから火威はあくまでも遜《へりくだ》る側である。
「良いとも。精々楽しませてくれよ」
ミノ姐さんからは姐御肌な印象が感じられる。正に見た目通りのミノ姐さんだ。
こうして火威は2人の魅力的な女性と閨を共にすることになったのである。
* * * *
イタリカとアルヌスの間に広がる草原に一台の荷車とそれを牽く馬が停まっていた。
アルヌスに向かう途中であり、その中の一晩を此処で過ごそうと身体を休めているのだ。
荷車の中で休む主のシロフは馬車による長旅の経験があり、飼い葉は馬や自分が飲む水の用意は怠ってない。
荷車の傍らには旅用のテントがあり、その中では帝都で乗せたエルフの女とヒト種の女が寝ている。
二人とも魅了的なミリッタの神官とその信徒なので、是非とも一晩閨を共にしたいのだが、ヒト種の方は既にミリッタの信徒としての務めを果たしたのでエルフの方しか抱けなかった。
言うまでもなくサリメルとリーリエなのだが、サリメルの方は男に抱かれる夢を見たせいか起きてしまった。
夢の中で得た感触のはずなのに、未だにその感覚が続いている。
酒精が得意ではないのに寝酒したせいだろうか。或は久方振りに男に抱かれる夢を見たせいだろうか……。
ちなみにシロフに抱かれたのは3日前である。
サリメルが起きたことに気付いたシロフが、彼女に声をかける。
「どうしました?サリメルの姐さん」
「いや、なに……。ただ軆が熱いだけじゃよ」
見れば、サリメルの顔が紅潮している。この女には珍しいことではない。何らかが原因となってまた発情してしまったらしい。
亜神というのは全く難儀な体質である。サリメル限定の体質なのかも知れないが。
「寝れないならお相手しましょうか」
「そうじゃな。シロフに抱いて貰うことにしようか」
そんな気軽に春を売って良いのか、というところだが、サリメルには今更である。
「でも金は取るぞ?」
それがサリメルの仕事にもなっているのだから、彼女は意外にも確りしていた。
「サリメルの姐さん……そこは運賃で相殺できませんかね?」
「えぇ~、どうしようかのぅ」
悪戯っぽく返しながらも、自らの衣を剥いで白い肌を露出させていくサリメルだった。
* * * *
フォート邸にて事を済ませた火威は、自分の前で肌を晒して横になる亜人女性を眺める。
2人とも非常に素晴らしい軆の持ち主だった。先日の妻との夜伽が極めて拷問的だったため、無礼とは知りつつもどうしても妻と比べてしまうのである。
だが、事が済んで冷静になるにつれ、典型的なハニートラップだったのではないかとも思い、禿げ男は嫌な汗を流さずにはいられなくなった。
これはもう、カトリを信じるしかない。信じるというのはアテに出来ないが、最早それしかないのだ。
「ヒオドシ、本当に凄かったよ」
蕩れたような顔をして、六肢族の彼女が言う。非常に性欲をそそられる表情だが、もう何回戦もして彼女の胎内には命の塊を吐き出している。
「これなら絶対に孕んだね。ねぇヒオドシ……この子が産まれたらまた来てくれるかい?」
ミノ姐さんもすっかり雌の顔だ。彼女は体格が大きいので火威も特別念入りにおっさんの経験値フル動員で責め上げた。
それはもう、獣のような喘ぎ声を出させて「もう勘弁してくれ」と懇願されるまでに。
二人分の淫肉に挟まれて、火威は依頼された全てを出し切った。
もう何もやり残したことは無い。彼女らが言う通り、数ヵ月後に2人は子供を産むことになるだろう。
本来の夫ではなく不倫相手の子供をだ。
カトリを暫く休ませる為に種付けするのを依頼されたが、3人でかなり本気になってしまったのではなかろうか?
妊娠したら娼婦なら仕事が出来なくなる上に、中絶はこの世界では命懸けだ。
中絶じゃなくても出産すること自体が命懸けの行為なのだ。それなのに、行為をするのは、相手の男に高い信頼が無ければ身を任せないのではないか?
禿げの半蔵、どうしてそのことに今まで気付かなかった!?
一生の不覚である。
案の定、火威は巨大な罪悪感と対峙することになった。それと同時にやはり栗林を孕ませたいことを再確認する。
あの幼顔の妻に自身の子供を宿らせ、産んでもらうのだ。
それが出来ない苛立ちを罪悪感と共に自分にぶつけ、アルヌスにいる彼女への愛情を再確認する。
この自分勝手な独り相撲は世の女性から非難されるべきことだが、今現在は冴えた思考の火威はそれも認証して自己嫌悪に陥ったりする。
「そ、そうですね。直ぐは無理でしょうが、子供の顔は見たいし母親になったお二人とも会いたいですからね」
後悔を悟られないように応える火威だが、その心は栗林への罪悪感で一杯だった。
二人に口付けを交わしてから高機を飛ばしてアルヌスに帰還した火威は、当直の隊員に帰還を告げてから車輛を清掃して家に帰った。
時刻は既に朝方。
新婚早々に他の女を孕ませた上に午前様である。既婚の男としては非常に拙い。
明日も仕事は休みだから、とにかく寝よう。
精も魂も尽き果てた火威は、これから昼まで寝ることにしたのである。
何だかんだ言って一線越えましたが、
肝心な所は描写してないのでまだ一線越えてません。
ゲゲゲはちょいちょいアダルトな所があると思いますが、18禁じゃないので普通の板に投稿します。
17.9禁くらいで持ち堪えます。
っていうか投稿するする詐欺状態で未だ第一話も出来てません。