ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、庵パンです。
アニメ17話のジゼルが全く噛みませんでしたね。
ホントにジゼル? 何テイク目?とすら思ってしまうほど噛みませんでした。
一気に進んで闘争編までやるみたいですが、何処までやるんだろ?

で、今回ですが、コレ書く意味あったのかなぁ……と思ってしまう部分です。
しかも遠回しのアンチとかあったりします。

さっさとゾルザルコロコロしちゃえよ、って思いますが、進まないのは庵パンのせいなのです……。
で、主人公が主人公なので終盤は緩く進みそうです。
戦闘でも結構緩く殺戮しそうです。他のキャラの部分はもうちょっと硬く行くつもりですが……。


第二十七話 明闇

自衛隊が敷設したアルヌスの診療所から見える山々は、その多くが山頂付近を雪化粧を纏って(そび)えている。

特地派遣隊が来たのは、日本では晩秋に近い秋だったが、特地は暖かく過ごし易い時節だった。

その時から見える風景は余り変わっていないので、近く見える山々は思うより遠く、高い山なのかも知れない。

航空自衛隊の偵察によると、そんな場所でも人々の生活は見てとれるという。

寒さが苦手な火威にとっての幸いは、それらの場所が現時点では、ゾルザル派の影響力が無い事だ。もしも城塞や要塞などの建造物が認められれば、体力徽章や冬季遊撃課程を修了した火威が真っ先に出されるはずだ。

冬季遊撃課程を経ていたことを、何時ぞやのテレビで見た知識で知っていた出蔵は「四代目凍結帝の帰還」等とほざいていた。

彼等が高校の時分に、部活動で自前のノートパソコンを使う事があったのだが、火威は起動開始直後や再起動中にもフリーズするという圧倒的実力で凍結帝王の四代目を襲名したのである。ちなみに彼等が活動していた部活は、出蔵の後の新入部員はおらず、火威が永年の凍結帝となっている。

ともかく、巨乳目当てで寒い地方に行ったにもかかわらず、無駄に体力があったがあまりに冬季遊撃課程に放り込まれるとは実に業腹な事だと、当時の火威は考えた。だが天罰とも言える。

特地に来て以来、炎龍に対抗する為に、更なる体力を無駄に付けた火威は、如何に疲れ果てようと3~4時間で全快……少なくとも15分寝れば、一定時間は最大能力を発揮出来るという反則スキルを得てしまっている。

そのせいか、火威だけはブラック企業も驚きの稼働率である。だからだろう、秋葉原でオークの死気を受けて体調を崩した火威は、ジゼルを連れて急いで銀座へ帰った。感冒を得て診療所でグッスリと寝る為である。

だが帰る途中に寄ったラーメン屋で呑んだ薬用酒で、かなり体調は元に戻ってしまった。しかも体調はかなりの範囲で気分に左右されるという。ジゼル猊下の巨乳を背中に押し当てられるなど、直前まで死地にあったが故に当然の事ながら思いもしなかった嬉しい事態だ。だがその影響で感冒の「か」の字も風邪の「か」の字も消え去ってしまった。

しかし火威も諦めずに診療所に向かう。体温を測る時、これ以上無い程の気合いを出して人為的に熱を出して仕事をサボる事に成功した。

ただ、緊急入院のような形で隔離されるとは思わなかったが。

「……看護師さん、そろそろ退院しても良いですかね?」

個室で甲斐甲斐しく火威の世話を焼いてくれる二等陸尉に尋ねる。

「今は平熱ですが、昨日は43℃も熱が出ていたんですよ? 今日一杯は経過観察です」

火威とジゼルが東京に行ってた日の夕方に、アルヌスの丘では和平講和の締結とその儀礼式典がなされていた。和平講和の締結に、儀礼式典というのは火威の世界では見られる事はない。後に火威が聞いた話では、式典の重要な役処を直属の上官(だと思う)健軍一佐と薔薇騎士団のヴィフィータ・エ・カティが演じたと言う。

珍しいものを見れなかった事を悔やむ火威は、後に「誰かビデオ撮ってねぇかな?」と僚友に聞きまくったと言う。

 

「中国、韓国、台湾、東南アジア諸国は特地の扱いを国連に委託するよう……ってザッケンなオラッ!」

朝の早い時間帯。

退院前に診療所前のベンチで、秋葉原に向かう道すがら買った産業経済の新聞を読んだ火威が吠える。

サボりはしたが、まさかここまでツケを払わぬ事になるとは思わなかったのだ。そこに、自身の逆鱗に少しばかり触れるような記事を発見したのだ。

「つか台湾ッ! おメぇ国連入ってねぇだろッ! ヲ・ノーレ国民党めがァッ!」

台湾たる中華民国は、中国たる中華人民共和国が国連に入って以降、多くの国が国際承認を共産党の中国に切り替え、国連での議席も中華人民共和国に奪われる形となっているので、今現在は国連に入っていない。

だから中国寄り国民党が、台湾を中国の意向機関にしたとしか思えないのである。

火威の大学時代、母親が台湾人という学友が居た。彼から聞いた台湾人の日本に対する評価は頗る良いものだったし、彼の台湾への評価もとても良いものだった。それに戦前に嘉義農林の野球部が甲子園で準優勝した話や、八田與一の烏山頭ダムの話も暫しテレビで見聞きする事も多い。

無論、火威も自身が興味を持った国については調べもする。その中で霧社事件のような痛ましい出来事も存在するが、長い目で見れば台湾の日本統治時代は元々現地に住んでいた年寄りからは高評価されている……と言った話を学友から聞いている。

だから火威も、何時か新婚旅行なり何かの旅行で台湾に行ってみようか…ぐらいには考えていたのだ。それも自衛官になってからは、難しくなってしまったが。

「なんかメチャ怒ってますね」

声がした駐屯地の方を見ると、出蔵と白エプロンを付けたジゼルが歩いてくる。

「いや、怒ってないよ」

「すげぇ怒ってたじゃねぇか」

「ですよねー」

出蔵もジゼルも同意見のようだ。しかし火威自身はこの程度では怒った事に入らないらしい。

「猊下がご存じないのは当然として、出蔵も知らんと思うがな……俺、ホント腹立てると一言も喋らなくなるから」

「ナニソレ怖い」

筋肉質の九割禿げが黙ったまま怒りを湛える姿を想像し、出蔵が戦慄する。

亜神であるジゼルは当然そうは思わないのだが、火威が三日も診療所に居なくてはならない理由が自身にあると思い込んでるのか気が咎めているらしい。

「ともかくヒオドシがここで暴れると大変だから、ちゃんとアルヌスの外で暴れてもらわねぇと」

出蔵が何か言ったのか、過去にオークと交戦記録のある火威が予想より上の戦闘力を持っていると判断したのかは判らないが、借金を返す当てが無くなっては大変なジゼルが宣う。

「いや怒ってませんて。 よもや怒ってもそんな事しませんて。 って言うか出蔵や、何を言いに来たんよ? 大体お前らの第一戦闘団はテルタに向かってる最中だろ」

「あぁ、そうでした。実は昨日の内にですね……」

曰く、昨日の内に第五戦闘団を始めとする特地派遣隊の複合部隊が、アルヌスから帝都に向けて進撃を開始したのだと言う。報告では六機のファントムの支援爆撃を皮切りに、特化部隊の榴弾砲撃の後、七四式戦車を先頭にした機甲部隊が進撃。ゾルザル派帝国軍も翼竜騎手が空から槍の束や、火の付いた油や岩を投下するという戦法を取っていたが、以前にも説明した通りに殆ど被害は無く、偶に運悪く高機動車のボンネットに直撃して行動不能にすることがあったが、戦略的には無意味に等しかった。

で、その高機動車に搭乗していて運悪く負傷したのが、火威が着任していた秋田駐屯地と戦力調査隊で僚友だった内田 仁二等陸曹だ。

「ぅおい!? 大丈夫かよ内田っ!」

今日、診療所から出奔するかの如く出ていく自身と入れ違うようにして運ばれて来ていた内田を個室の中で見つけた火威が驚く。出蔵は一緒に来たが、ジゼルはまだまだ借金ががあるので食堂の仕事に戻っている。

「いやぁ、やられちゃいましたよ三尉。両手の骨粉砕です。スッゲェ痛かったッスよ」

「そ、それ大丈夫なのかよ」

内田が言うには、世話を焼いてくれる人が居なければ着替えどころか食事も儘ならないそうだ。最初は亜人のメイドさんに頼もうかとも考えたのだが、彼女達もそれぞれの仕事で忙しい。アルヌスの街も最初からは考えられない程に大きくなったが、近頃になっても帝国領内で新難民が発生し、此れを受け入れる宿舎が足りないことから、その建設をドワーフ等の大工に頼んで街の規模は拡大し続ける一方だという。

診療所に居る看護師も多くはないから、両手が使えない内田は苦労するだろう。そう覚悟していた。だが

「丸山二曹が作業療法士の資格持ってましてね、俺の世話を焼いてくれるって言ってるんですよ」

「なッ……!?」

特地戦力調査隊で僚友だった男前WACが技術曹にもなれる特殊技能持ちだった事を知り、火威は考えを巡らす。作業療法士という技能を持っているなら、最初から技術曹として入隊した方が当然の事ながら給料も高い。

にもかかわらず、丸山は一般入隊で曹官まで上り詰め、特地派遣隊に赴任した。前にワーウルフの集落では、彼女が同性にやたらモテるという話は聞いたが、異性に関しての話は聞いていない。

仮に、異性が嫌いという事なら男所帯の自衛隊に入る事は考え難い。ならば、特地への門が開くとは思って居なかったであろうが、有事の時に持っている技能をアピール出来るのでは……。一瞬、内田を介護する深いスリットのナース服の丸山の姿が過ぎる。

「内田、腕が治ったら……いや、治る前でも良いんだけどさ、試しに丸山をお茶に誘ってやれよ」

「えっ、アッハイ。 ……でも」

「ん、なんだ?」

「丸山二曹はモテますからねぇ。俺なんかが相手されるか……」

「今現在相手にされてンだろうがっ。良いから誘ってみれ!」

そこまで話したところで、火威の背後の個室のドアが開いて二人が振り返った。見れば、今し方話しに上がっていた丸山が朝食の膳を持って部屋に入ってくる。流石に火威の脳裏を過ったようなナース服ではなかったが、妙に肌艶の具合が良い。恋をする女は綺麗になると言うが、あるいは……。

丸山は「内田さぁん、朝ごはんですよー」なぞと猫撫で声でほざいて個室に入ってきたが、火威と出蔵の姿を見るや「ちょっと三尉、何やってんですっ」と、若干ではあるが怒りの色を見せる。

これは、二人だけのパーソナルスペースを侵されたことへの怒り……。出蔵もその事に気付いたらしい。三尉の二人は特に悪い事をした訳でもないのに、取り敢えず謝っておいた。

「じゃあ俺はここで……」

言いながら部屋を出ようとする出蔵に火威が続く。しかし個室を出る前に、一抹の不安を感じた火威が「丸山、見られて問題になるような事はすンなよ?」と念を押す。

「解ってますよ、そんな事。何すると思ってんですか」という抗議を背中に受けて、火威と出蔵はアルヌスの街へと赴いた。

 

 

*  *                            *  *

 

 

(全くどいつもこいつも……)

朝食を取ろうとアルヌスの食堂に向かう道すがら、女性自衛官の一尉に呼び止められ、そこで指示された通りに狭間陸将のもとに出向し、予想通り第四戦闘団ではなく第一戦闘団の支援に向かうよう言い渡された火威は昼前になって漸く朝食を取る事ができた。

午後からチヌークに搭乗し、自衛隊把握領域内の北東にあるマーレスやベッサで第一戦闘団の戦闘支援をしなくてはならない。大型機のチヌークを使うのは、負傷者の収容も兼ねているからだ。

火威は、早々に飯を食べて出撃準備に入らなくてはならないのだが、よりにもよって出蔵とアリメルの昼食にかち合ってしまった。

と言うのも、出撃中の第一戦闘団に居る筈の出蔵も一昨日、アルヌスを出撃して直ぐに怪異との遭遇戦で負傷し、鎖骨を折っていた。今まで気付かなかったのは、目立つギプスではなく服の下に目立たないバンドを装着していたからである。

とは言え、出蔵が自身の腕を使って飯を喰うのは無理がある。従ってアリメルが食べさせる事になるのだ。

「出撃して早速とはだらしねぇ」とは思った火威だが、食堂まできた新難民が出蔵に重ねて礼をしていたので、彼らを救出する為の止むを得ない負傷である事が判ったので、仲間の行為を誇りはすれど批判はできない。

とは言え、鎖骨が折れて腕が使えなくなった出蔵が、アリメルに飯を食べさせてもらっている姿を見せつけられるのは、これから戦いに行く火威には堪えるものがある。内田と丸山の二連続だから、好い面の皮だ。

(もうナニも言えねェ……)

世の無常というか無情を感じながら、猛然と飯をかき込む。その様子を見ていたジゼルが火威に、ニヤついて声を掛けた。

「ヒオドシ、オレが喰わせてやろうか?」

綺麗な女性に飯を喰わせてもらうのは、悪い気がしない。だが今はゆっくりしている時間もない。

「いや、イイっすわ。時間も無いですし」

「ん、そうか。残念だな」

続けて出されるジゼルの言葉は、火威には予想は出来るものだが、繰り返されると彼女が本気で言ってるのでは無いかとも思えてくる。

「礼に踏んでもらおうと思ったんだが」

「猊下、アウトですよそれ」

 

 

 




お気に入り指定が遂に170個を越えました!
皆様、本当に有難う御座います!
しかし最近、妙に書くスピードが遅くなってしまい、今まで水曜と土曜に定期的投稿してましたが
心苦しいのですが、これからは遅筆になった上に不定期投稿になりそうです。

出来るだけ水曜か土曜に投稿出来るようにしますが、投稿スピードは遅くなりそうです。

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