やはり土曜投稿とは行かなんですよ。
それも最近、忍殺ネタが無いので無理にでもぶっ込んだせいかと思われます。
さて、ジゼル猊下の再登場と魅力が出るのは総撃編ですから、最早アニメでは無理でしょうか。
アニメで放送されても猊下の噛み噛みは省略される可能性が大きいですからね。
もういっそのこと劇場版で……。
で、今回は短いですかも。
マーレスに向かうチヌークの機内、兜跋を着込んだ火威は思う。
伊丹二尉は何週間か前、日本で行われた何らかの実験中に事故に遭い、自衛隊中央病院に入院、隔離されていると聞いてる。
最終決戦を前に病院で隔離とは、今朝まで火威も似たような状況だっただけに他人事とは思えない。
伊丹二尉も業腹な事であろうと、そんな事を朝食の時に(既に昼食時だが)言ったら、三偵の笹川・戸塚・東が妙な顔をしたり苦笑していた。ジェネレーションギャップというヤツなのだろうかと思うが、彼らの笑いのツボがサッパリだ。
……と言うのが火威の考えだが、言うまでも無く、彼らとはそれほど歳も離れてないので世代間での価値観の違いなどあるワケがない。
今のチヌークの中は火威一人なので、火威としては自身のサボりが原因で、余計にヘリを稼働させてるんじゃないかと心配になりもする。
実際には帰りのヘリの機内は、負傷した隊員で混み合う事になるし、火威がサボらなかった場合はマーレスやベッサへの支援には向かわされず、他の第四戦闘団の隊員と同じようにイタリカから正統政府軍と自衛隊の合同軍の一員として進発できたのである。
にもかかわらず、火威は診療所に篭った。しかも二日目にして診療所の医官に退院は未だかと聞き、三日の朝には吠えている。
「今までちょっと無理させちゃったけど、こりゃあもう全回復だろ」そんな風に思ったかどうかは知らないが、魔導隊員の運用方法を決め兼ねていた狭間含む上位の幹部達は、再び火威に多めに働いてもらう事にしたのである。
早い話が、サボったが故に通常よりも多くの任務を課されたのだ。
今回、火威が課された任務はマーレスに展開している第一戦闘団の一部隊を支援し、敵を掃討。その後、速やかにベッサに移動して第一戦闘団の主力を援護。敵を排除する事である。
だがゾルザル派の帝国軍や大型怪異が健在だとチヌークの安全が確保出来ない。だからベッサの敵勢力も速やかに排除しなければならない。
今回の任務は兎に角、速度が重視される。火威個人が移動に使える自衛隊の装備は落下傘だけなので、マーレスから距離が離せているベッサには魔導グラインダーを使って移動する必要がある。
先日、タンスカから脱出する際にチヌーク内でテュカから聞いた話では、自然風を左右出来ない中で、魔導グラインダーを使っての移動は危険ということだ。
タンスカよりも遥に氷雪山脈に近いマーレスでは、吹き降ろす風がかなり吹くものと思われる。可能な限り向かい風を受けないように低空飛行する予定だが、森が広がっている地形なので低空を維持するにも限界がある。
「間もなくマーレス上空」
チヌークのコ・パイロットの二等陸尉が告げる。
高度を100フィート如何に抑えるチヌークの中で、火威は時計を合わせた。
ゾルザル派帝国兵の投擲武器では怪異の力を以てしても、現在のチヌークの高度までは届かない。だが見上げれば、木々の間からチヌークの姿は見えるだろう。火威の降下を極力隠匿する為に、ヘリのローター音は火威自身の精霊魔法で抑えている。
「マーレス上空に到着!」
よし!と、全身に気合いを漲らせた火威が、開くハッチから空を見る。
* * * *
特地派遣隊から第一戦闘団の隷下に戻った日下部 洋輔二等陸曹は、傷付いた味方を庇いながら、ゆっくりとではあるが確実に後退していた。
彼らは複数の眼鏡犬の存在に気付き、隊員の数名が擲弾を引っ張り出す作業に気を取られていたところ、前後左右から敵の痛撃に遭ったのだ。
隊員の一人がターゲットサーチャーを持っていた事が幸いし、辛うじて後方と左右の敵は斃すことが出来たが、彼らの中隊の殆どの隊員が負傷している。
そこに、前方から数体の眼鏡犬が巨大な棍棒を振りかざして隊員に接近してきた。
眼鏡犬の足は速くはないが、傷付いた味方を庇って後退する自衛官らの歩みも決して早くは無い。日下部と同じように特地派遣隊に所属していた伏見 基弘陸曹長が最も近くの眼鏡犬に擲弾を命中させる。
その時、空を切り裂く音と共に矢が飛来した矢が伏見の太腿を刺した。間髪容れずに反撃の銃火が浴びせられる。すると木の上から敵兵が落ちてくる。
「焦るな! 確実に後退しろ!」
中隊副隊長の三尉の言葉を聞きながら、足を負傷した伏見に肩を貸した日下部が、未だに健在の眼鏡犬に銃を向ける。肉厚なオーク程度の怪異なら一撃で倒せる64式小銃とは言え、今相対する眼鏡犬の唯一の露出部分である下顎を銃撃しても、効果は薄いように思える。
その証拠に、銃撃を受けた眼鏡犬は怒り狂って迷いなく日下部へ向かってくる。
「やべっ!」
今の状況を曲りなりにも改善させようとしたことだが、却って自らを危機的状況へ追いやってしまった。伏見の日下部も、携行していた擲弾はとっくに使い果たしている。
その時、向かってくる眼鏡犬の首が消えた。いや、削がれたと言った方が良い。見れば、一直線上の木に眼鏡犬の中身のオーガ―の物であろう血がべったりと付いている。
「食い残しが多いぞ!」
山岳地帯の戦場を強襲した火威が真っ先に目にした獲物に、精霊魔法に通常の魔法を組み合わせて作った波動砲をぶつけたのである。
「ははっ、三尉の分も残しておきましたよ」
言ってのける日下部に
「多過ぎる前菜は困るんだわ」
答える火威が、言う間にも森の中に潜む帝国兵を射殺する。上空のOH-1ヘリの支援で、発見した敵兵の数と場所は逐一火威に伝えられるという、即席のマスターサーヴァントシステムの御蔭だった。
この場の眼鏡犬の最後の一体を爆轟で粉砕したあと、無謀にも斬り掛かってきた帝国兵の剣を
「よし、この場は終了。次の支援に向かう」
宣言するかのように言う火威がOH-1からの通信を聞き、次なる戦場に向かう為に森の中に消えていった。
* * * *
チヌークから降り立った火威が、先ず最初に聞いたのは
『カラミティ、聞こえるか? こちらヤタガラス。これより貴官の誘導支援を開始する』
「アイエー! ニンジャ! ニンジャ! ナンデ!」
『…………貴官の戦果を期待する』
返す言葉に若干の時間を要した理由は、敢えて語るまい。
OH-1のコ・パイの言葉を聞き終える前に、既に火威は一人の怪異使いをM95ライフルで射殺していた。
対物ライフルなどで撃たれた人間の死は凄惨だ。腹から両分になった怪異使いの脇から、口径の小さな小銃で頭の悪い眼鏡犬を背後から撃つ事で、敵部隊の統制を乱す事に成功する。
本来なら同士討ちを避ける為、敵を挟んでの挟撃は極力避けたいところではあるが、火威の部隊は火威独りの編成の上に、火威は極力魔法での戦闘をする為に同士討ちになり難いメリットがある。
『ヤタガラスからカラミティ、前方で戦闘している白井小銃小隊が苦戦している。支援頼む』
ぇえっ、折角ヒト独り真っ二つにしたのになぁ……という文句は言わないまでも、迂回しながらではあるが、即座に爆轟で眼鏡犬を屠ると山中に向かう。
急いで対象の味方を発見すると、確かに皆負傷して苦戦している状態だ。傷の無い隊員は居ないのではないのかと思ってしまう。
その中で、怒り狂った眼鏡犬が棍棒を振り上げて一直線に進んでいくのが見えた。即座に、先日会得した波動砲を撃つべく光輪を作る。
「……死ぬが良い」
何となく悪役っぽくなってしまった独白しつつ、放った波動砲は期待通りに眼鏡犬の頭部を消し飛ばして向うの木まで血飛沫を飛ばした。
「火威三尉!」
呼ぶ声のする方向を見ると、先日まで同じ部隊に居た男が居る。
「ははっ、三尉の分も残しておきましたよ」
急いでるというのに……男の言葉に苛つきつつも「食ってる暇無い」とは作戦上言えない。
「多過ぎる前菜は困るんだわ」
素直な感想だが、雑談しに来た訳ではない火威は上空のOH-1から知らされた帝国兵を射殺する。そして直ぐに光輪を展開し、伝えられるまでも無く目に入る眼鏡犬を爆轟で吹き飛ばした。
「フッ、阿保めが」
爆轟を使った直後が隙と見たのか、斬り掛かってくる敵兵の斬撃を64式小銃で去なして顔面に肘を衝き刺す。
『ヤタガラスからカラミティ、そいつで敵勢力は最後だ。速やかにベッサに向かってくれ』
「よし、この場は終了。次の支援に向かう」
魔導グライダーを展開すべく、火威は開けた場所を探すべく森の中に姿を消していった。
書いてる時に思うのは「こいつも大概チートだなぁ」という事です。
ヒロインを決定する以前から栗林ヒロインを仮定してた為ですが、
主人公を強化していく度に栗林も鬼のように強く設定しなくてはなりませんかも……。
( ´_ゝ`)
早くヒロインとして再登場させたいです。
それはそうと、
遂にお気に入り指定が180個!!
皆様、本当に有難う御座います!
次回は土曜くらいに投稿出来れば良いなぁ……。