ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、また庵パンです。
時間が経ってしまいましたが、まだ続くんですよ。


エピローグ ロンデルへ

髪の毛は二度と生えなかった。

 

 

どうしたら良いか判らないので

 

 

火威は考えるのを止めた。

 

 

 

 

 

既に閉門騒動から一ヶ月が経っている。

蟲獣を排除した後、少し時間が経過してから強い地震が起きたが、それまでに深淵を這い出て来る蟲獣は少なく、余り蟲甲を傷付けることなく駆除できた。

狭間陸将とアルヌスの住民から慕われる伊丹二尉の指導の(もと)、麓の街まで被害を受けたアルヌスの街は、既に元の姿に戻りつつある。

始めの内はアルヌスの復興資金に困るかとも考えられたが、蟲甲の他にも火威が剥ぎ取った恐獣の牙を売った金で賄えている。

更にはイタリカから火威に払われた多額の謝礼金の殆どは、アルヌス生活協同組合に寄附されているので、これまで以上に街を拡げることも出来る。

新難民の中にはダーを使った怪異テロにより、親や子などの身寄りを失った子供や老人も居たが、身寄りを亡くした者同士で生活してもらうことで、余剰分の資金の節約も叶った。

それにより、通常よりも多人数の大工を雇い、街の復興は予想よりも早く進み、既に街の住民の大半は元の生活に戻っている。

自衛官の中にはダンゴムシに似た蟲獣の甲皮と雲鹿の毛皮で、武具を作ることを考える者も居て、新しくアルヌスで雇われた傭兵に売れている。

 

負傷者ながら蟲獣と戦った出蔵の鎖骨は完全にポッキリ折れてしまったが、特地で医療の神の信徒になる事で既に完治している。

なので、出蔵には妙なミドルネームが付いて、その事を他の自衛官に冷やかされていたりもするのだが、彼は特地の神の御利益の強さを熱心に語っている。

「しかし先輩も太っ腹っすねぇ。イタリカからの謝礼金の殆どを寄付しちゃうだなんて」

言う出蔵の見る先には黒い羽毛の乗用鳥類…いわゆるチョコボに乗った火威がいる。

「まぁ何も無いとつまらないしな。使う所も無いし」

日本と繋がった状態なら、真っ先に日本円に換金して車を買ったり口座の残高を増やしていただろう。それは不可能になったのでアルヌス生活協同組合に寄付した資金以外には兜跋を修理に出したり、ベルナーゴ神殿で魔法の触媒に使う鉱石の購入に使うつもりでいる。

ちなみに彼は禿げたままだが、眉毛は既に生え変わっている。一ヵ月もあれば生え揃うのである。

「ふむふむ、そんで先輩もリア充の仲間入りっすな。まさかジゼルさんから好かれていたとは」

火威も美人の女神から愛されるのは嬉しいし光栄だと思う。だがそれ以上に嬉しかったのは栗林が日本に帰らずに特地に残ったことだった。

「ヒオドシさん、準備出来ましたよ」

白い羽毛のチョコボに乗って現れたのはロンデルの基礎を築いた神の名のミドルネームを持つティトだ。彼と火威はこれから自衛隊の任務でロンデルに向かうのである。本来は火威一人で済む任務なのだが、兼ねてからロンデルに興味のあったティトも同行することになった。

彼等がチョコボに乗っているのは、人間と同じ物を食べられるという点から選ばれた。余り荷物は持てないが、速度は馬と大して変わらない。

「はて、鳥の足で何日くらいかな……と」

紙に描かれた特地の地図を見ながら火威が呟く。

火威とティトは見送る人々に手を振ると、ロンデルに向かう道をチョコボに駆け歩かせて行った。




※言い訳めいたあとがき

去年の11月から続いた 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり がようやく本編終了です。
最後の方は詰め込み過ぎた感がありますが、二次創作の特権でシャンディーとスィッセスどころかテュ―レも生かして終わらせることが出来ました。(その分、主人公が人間離れしましたが)

フォルマル邸内に当小説で勝手にオロビエンコという広間を増設しましたが、
貴族とか広間とかのワードでググると出てくるカタカナを適当に言い換えて作りました。
そんなディアボも驚きの小物力を発揮したところですが、当小説はまだまだ続きます。
龍玉に対する龍玉Z程では無いですが、暫く続かせて下さい。ダメって言われても続けちゃいます。
あと外伝は主人公にもリア充成分を加味しまくります。多分。
いや、実際これからが書きたいところなんで……!

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