ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、庵パンです。
今更ですが、この外伝Ⅰは原作の外伝Ⅰより結構前の時系列という設定です。
そして、庵パン小説に出てくる外伝のオリキャラは
原作の雰囲気とかブチ壊しかねないキャラ設定です。

いや、既に主人公からしてオカシイんですが、今までは原作の雰囲気を大事にしていました(そのつもりです)
でも今度出てくるオリキャラはちょっとアレがアレなんで…… (;´д`)

で、今回はまた二部構成です。
構成が下手過ぎて、一回にまとめる事が出来なんですよ。

そして、お気に入り指定数が260を突破!!
皆様、本当に有難う御座います!


第二話 72時間耐久グルメレース(上)

ベルナーゴ神殿からアルヌスに帰る途中に泊まった宿で金を盗まれた火威とティトは、腹が減っても食糧を買う金も無いので当然のように帰還の足も鈍くなる。

防御魔法と浮遊の魔法をミモザ老師から教わった火威であるが、生体に浮遊の魔法を使うのは大変危険なので、飛んで帰るという選択肢は絶たれた。

ちなみにティトもミモザから簡単な魔法を教わりはしたが、彼が使うと精霊魔法になってしまうので使えずにいる。それでも彼の母親の精霊種エルフは、このロンデルで賢者号を所得し、博物学の中の生態学の専門らしいが、窮理(物理)も得意としていた。だから、その息子であるティトも諦めてはいない。

この心穏やかなダークエルフはシュワルツの森のダークエルフの部族の中でも、変わり者として認識されていたらしいが、彼の両親もかなりの変わり者だったらしい。

一般的にダークエルフとエルフの仲は悪いとされるらしいが、彼の父親の変わり者ダークエルフは、変わり者の精霊種エルフに一目惚れして、二度も子種を儲けたそうだ。

その子種の一つが育って出来たティトが、変わり者でない訳が無い。ロンデルの学徒として生活するフラット・エル・コーダという、これまた変わり者のエルフの研究成果を熱心に聞いて羊皮紙に書き留めていた。

エルフという寿命の長い種族は、音楽や武芸にしても、気が向いた時や暇な時に手慰みに嗜む程度でも、百年や二百年続けていれば玄人の域に達してしまう。

その中でティトやフラットのような者は知的好奇心が刺激され、自ら進んで新しい領域をその目で見ようとする者が出てきたのだろう。

閑話休題……、

兜跋を持ってきていたなら、竜甲の鎧を浮遊させてティトを肩車して帰れただろう。

しかし、その兜跋はウロビエンコの戦いで破損したので、アルヌスの職人に仕事を与える為にも修理に出してる。

人間の方は空腹を紛らわす為に水を飲んでごまかせたが、二人を乗せるチョコボらは、水だけという訳にはいかない。

火威を乗せる黒いチョコボの方から倒れてしまったのは、この一年の間に急激に筋力を付けた火威を乗せていたので当然とも言える。

こうなってしまうと、採るべきは一つ。火威達に出来たのは、黒チョコボを食べることだった。

半ば、情が移っていた旅の仲間を解体して食べるのは、火威の心情的に難しい……かと思いきや、ティトがさっさと黒チョコボを〆て解体してしまった。

犬猫どころか修学旅行で見た牛にさえ愛情を抱いてしまう火威より、シュワルツの森で牛馬や鳥を家畜として育ててきたティトの方が動きが速かったのだ。

 

そんな事もあって、火威の休暇二日目からはアルヌスの丘で「もしもの時の非常食」作りが始まった。

ファルマートに於ける一般的な非常食というと、多くの一般民衆に問うと干し肉や干した果物という答えが多い。実際その通りなのだが、これだと盗まれる可能性がある…と考えるのが火威である。

一から作るとしても、出来れば容易に材料を用意し、誰にも盗まれない物が良かった。

そこで思い立ったのが、一応は非常食として認識されている味痢召を丹念に調理するという事だ。

本当なら第三偵察隊の陸士長で、元板前の肩書を持つ古田陸士長に「味痢召を貴族の晩餐に出せるレベルに昇華」させるというムチャ振りを計画していたが、彼は日本に帰ってしまったので不可能である。

仕方ないから自分で昇華させるしかないのだが、火威が思うに、味痢召の不味さは味とか、匂いとか、歯が立たない歯応えとか、その辺りにあると思う。

早い話が全部なので火威が思わなくても明確なのだが、これを1つずつ打ち消していかなくてはならない。

火威は歯が立たない歯応えの原因である白細豆から攻略しようと考えた。

まず火が通り易いよう白細豆に穴を空けるところから始める。しかし火を通しても石のように堅い白細豆だ。火が通り易いように穴を空けようにも、趣味の為に隊からゴボウ剣を借りる訳にもいかないので、栗林からコンバットナイフを借りた。

だがそれでも刃が立たない。刃が欠けると申し訳ないので、白細豆に穴を空けるのは断念せざるを得ない。

手段を変え、圧力鍋を使うことにした。

自衛隊の食堂から圧力鍋を借りるのは不可能なので、商店で買った鍋に蓋をして、決して蒸気が漏れないように重しをする他なかった。

アルヌスの街から離れ、ジゼルが割譲してもらった神殿建立予定地に近い場所で仮設の竃を拵えて、そこで圧力鍋(仮)を据えて焚く。

そこまですると、白細豆が柔らかくなるまでにも時間が掛かるだろうから、昨日に引き続きジゼルの手伝いをしに行く。

実はこの日、火威含む少なくない自衛官が丘周辺の町で黒妖犬の群れが確認されたことから、徹夜で警備に当たっていたのだ。

本来は休暇の筈の火威だが、一時返上して後日の任意の日に回したのである。同じ事を考えたのは、出蔵と栗林も同じだ。若い自衛官が一日程度の徹夜で参る程の体力ではない。

そしてこの日、ジゼルを手伝う者は火威と出蔵しか居ない。栗林は門が開いている時、アルヌスに作られた「錬武館」という純和風の道場で、アルヌスの傭兵の何人からお突き合いを申し込まれている。

傭兵だから武芸の心得もある者ばかりだが、火威が見たところ栗林が圧倒している。若干、心配した火威だったが、栗林はまだ全然本気を出していない。安心すると共に、何時か越えなくてはならない壁の高さを実感した。

壁の高さを再認識しながらも、富田二曹への横恋慕が収まったのかと安堵する火威は知るまいが、横恋慕中の最中に複数人の傭兵の誘いが煩わしいから、拳で判らせてやろうと思い立った栗林なのである。

ティトはカトーに師事をしていたし、アリメルは昨日に引き続きヤオと共に傭兵の仕事だ。

一人の遺体から金品を回収し、再葬し終えたところで出蔵は火威に訊ねた。

「先輩、一つ伺いたいことがあるんですけど……」

なんだぁ……と、返答だけを返した火威に出蔵は言う。

「エルフが成長する速さって、やっぱ遅いんですかね?」

出蔵の疑問は、火威も感じたことのある疑問だった。とは言え「彼女に聞けよ」思う内容である。実際、そう答えたのだが出蔵は駄々を捏ねる子供のように返してきた。

「いや、だって怖いでしょ。アリメルとの子供の成人時に俺が過去の人っていうのは」

どーしてそういうことを交際する前に考えないのか。そう考える火威であるが、後輩の近い将来に大きく関わりそうなことなので「相談」という形でロンデルで見知った知識を披露することにした。

「ロンデルで会ったエルフが言うには、彼が16の時には故郷の森をうろつける程度だったから、青年期が長いだけなんじゃないかなぁ……」

力の弱い幼児期が長いのは、生物として不利な条件にしかならない。そう思って導き出した希望的推論なのだが、特地に於いては日本がある世界の常識など通用しないことが多い。

特地派遣隊の自衛官でこそ、やっとこの世界の常識やルールが判ってきたのだが、以前は映画やゲームの中にのみ出てくるようなゾンビの報告まであった。ロゥリィ聖下やジゼル猊下が言うには「ゾンビ」など生ける屍の類は滅多に見ないし、反魂の呪文を使った魔導士も使徒に首を落とされるから、通常は発生しない存在らしい。

それにロンデルでミモザ老師がロゥリィ聖下と旅をしていた時の話を聞くと、どうしても「ゴーレム」と思いたくなるような存在も有ったりする。

だが、そのようなイレギュラーな事態が存在するのが特地である。

「まぁ、ティトとかあれで150歳越えてるけど……。でも栗林も25であの背丈だろ? 個人差だよ」

「……栗林二曹、25歳だったんすね」

出蔵は胡乱げな目で火威を見る。その目には、どうして知ってんだワレ……と、ストーカーを非難する色合いが読み取れた。

「丸山から聞いたんだよ。まぁ聞いた時は24だったけど」

「あぁ、丸山二曹からね……」

そういえばこの先輩は戦争中に背の高い女性自衛官から背の低い女性自衛官の攻略法とか、その他云々聞いていたなと、思い出した。

そして、背の高い方の女性自衛官からの言伝も思い出し、伝えた。

「えー? 俺が? そんなことするワケないじゃん」

アンタだから心配したんだよ、と思う出蔵である。とりあえず火威が栗林に交際を申し込む際に、土下座で頼み込むようなことはするなという忠告を伝えることが出来た。

今の火威なら髪の毛がすっきりと(無くなって)していて、二ヶ月前のような落ち武者めいた頭ではない。

これなら容姿の良い栗林に告白しても不釣り合いになることは無い。

「まぁ土下座するとしたら俺に後暗いことがあった時だな」

してしまうんかい、と出蔵は目を瞬かせた。

そんな会話をしてから作業を続け、最中に昼飯を食べ、それからまたハーディの神殿を建立するために金品の回収と再葬を繰り返す。

本日20体目の遺体を再葬し終えた時には、陽が暮れ始めていた。

「あぁ、今日はそろそろ終わるか。ヒオドシもデクラも疲れたろ? ご苦労さん」

何時の間にか他人を労うという事を覚えたジゼルが、二人を慰労する。最初にアルヌスに来た頃から、随分と変わったもんだと思う出蔵だが、火威にとってはそこまで変わった気がしない。

期せずして秋葉原デートした時から中々良い女だとは思っていたが、神様相手に恋愛感情を持つのは、火威の中では虚しいことだと考えていた。それに亜神は子供を産めないという話は既に知っているので、実に残念に思っている。

なので、一線以上の交際する気は始めから無いのだから、余り思わせぶりをしないように気を付けているつもりであった。

だが「じゃあ、また明日に」と、閉門時の借りを返すつもりの言葉でも、ジゼルにとっては睦言にも等しい期待感を与えてしまうのである。

円匙を担いで商店まで足を進めると、向こうからドワーフが走ってくる。兜跋の修理を依頼した武具商で働いている職人だ。

走るのが大変そうなので火威からも小走りに歩み寄ると、修理が完了したと言う。助かることに、つい先日ロンデルで手に入れた特殊加工した木材や、ベルナーゴで購入した鉱石も指定の部位に嵌め込み済みだそうだ。

「宝石が触媒なのは判るとして、あの木はなんですかい?」

「あぁ、俺もロンデルで知ったんですけど、障壁……防御用の壁を張る魔法が使えるんですよ。今度は無肢竜と戦いますからね」

軽く驚いてみせるドワーフは「アルヌスの魔導士はドラゴンスレイヤーか」とレレイの炎龍退治を引き合いに出した。

とは言っても、レレイは炎龍を倒したのはテュカだと言っている。

「大賢者カトーの弟子、レレイ・ラ・レレーナ」という物語り(という名の報告書)には悪質な歪曲がなされているとも言っていたそうだ。

引き渡された兜跋の篭手を着用し、新たに取り付けたウィンチ・ギミックのワイヤーを浮遊の魔法を応用して伸ばしてみせる。

その火威に、ドワーフは言った。

「そういやヒオドシの旦那」

「はい?」

「朝に買ってた鍋で何、作ったんですかい?」

「……………………あ゛ッ!」

完全に忘れていた。

そう思ったが早いが飛ぶようにジゼルの神殿予定地前まで向かう。

そこで火威は、圧力に耐えきれずに吹き飛んだ即席圧力鍋を見るのだった。




なんかまぁ……あんまり進んでないです。
次回のグルメレース(下)ではエルベ藩国に出発させたいのですが、問題は庵パンの構成の下手さ加減です。

そして、ゆっくりと進めていく予定なので、一週間に一回の投稿が精々になるかも知れません。
なので次回はちょっと遅くなるかも?
漫画版の更新が月二回に戻ったら庵パンも頑張りまs(ry

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