まさかの痴女三部作です。次が終わってもサリメルの痴女っぷりは続きますが、
エルベの森の痴女(特上)とかはやらかしません。
そして物語の進みがとってもスロゥリィな事に戻ってしまいました。
はて、これは……なんでだろ?
ロンデルで見たミモザ老師の研究室のように、物が雑多に散らばって足の踏み場にも困るような場所を想像していたが、通されたサリメルの研究室は思いのほか整頓され、寝るにも飯を食べるにも場所に困るという事が無いように見える。
「おぉ、エルフの賢者ってスゲェ……」
アルペジオにプロポーズしたらしいフラットも、老師になったら同じように研究室を片付けるのか……? そんな思考を読まれたのかサリメルが口を開く。
「ハンゾウはロンデルに行った事があるのかえ? あそこの研究窟の老師方の部屋は酷いモノよな。ロンデル自体がごちゃごちゃしてる街故、些か苦手じゃったよ」
そのせいで野原で寝てたら、死体と間違えられて衛士を呼ばれたり、獣欲を持った者に襲われそうになったという。
ちゃんと手順を踏めば抱かせんでもないのに……と宣うサリメルを見て火威は思い出した。サリメルのミドルネームは子育て等の神のミリッタを主神にしている信徒のものだ。その神官は娼婦を兼ねるという。
手順を踏めば…ということは、金を払えば、ということだと気付いたのだ。
「勿論、ハンゾウは妾から誘ったのだから寄進もお布施も要らぬよ」
再び火威の思考を読んだサリメルが、言いながら身を摺り寄せる。後退った火威だが、背が背後の扉に付いてしまった。
「い、いや、サリメル様……俺は任務で来ていますんで……。任務中に美女……というか女性と(女性じゃなくても)アレしちゃうと問題なんで……!!」
後ろが無い火威は両腕を開き、可能な限りサリメルから離れようとするが、その様子は知らない者が見れば禿頭が美女を抱こうとしているようにも見える。
その間にもサリメルの胸の先端が火威の身体に付きそうになる。
「そもそも初めてお会いした方とこういうことは…ッ!」
「ぬぬ? 忘れておるのか。妾とヌシは前にも会っているぞ」
「えっ、どゆことス?」
「帝国の内戦の最後にフォルマルの土地で会ったろうが。そこで見知って誘ったじゃろう」
少し前の帝国内戦の最後に、会った人物の事を思い出す火威。記憶に残る決戦時に遭った変な笑い方のバカだった豚型ハリョを始め、ウロビエンコで遠慮無くブチ殺がした連中や、救出する事に成功したバラ騎士団の二人の騎士を取り除いて起こしてみる。
鈍くなっている頭でも、考えてみればピニャとグレイとマミーナら戦闘メイド達と剣軍を除いては、シロフという荷馬車の男とニカブを被った他種族の女しかいない。
そして他種族の女がサリメルだった。
確かに彼女は、また時間が有る時に同衾でも……そんな事を言っていた憶えがある。
その時は確かに、暫定で美女のエルフの女を抱きたいと思いはした火威だが、アルヌスに帰ってみると想いを寄せている栗林が日本に帰らず残っている。
その栗林の心を射止める為にも、下手な事は出来ない。
精霊種エルフらしからぬ、ムチムチした肢体を持つサリメルの脇を俊足で潜り抜けて背後を取る。このような芸当が出来るのも、サリメルに負けないムチムチした身体を持った栗林が近くに居るお陰だ。
実際には一部分を除けば栗林の肢体はムキムキなのだが、今の火威が知るワケが無い。
「思い出しましたが、あれは社交辞令か何かだと思ってました」
「社交辞令で自らの身体を売るヤツが居るかっ。あの時は本当にヌシになら代貨無しで抱かれて良いと思えたんじゃよ」
今だって目にも止まらぬ速さで妾の背を取ったしな……。そう続けるサリメルに火威は言う。
「ま、まぁエルベに居る時は常に任務中ですから、任務中に異性と交際して同衾はダメですね……」
「寝る時や飯を食う時も任務か?」
「や……まぁ体力の回復を図る意味で言うと任務に入りますかねぇ」
ぐぬぬ、と呻くサリメルは何か思い付いたような表情を作ったと思うと、再度火威に迫った。
「アルヌスに帰ったら休暇もあるじゃろっ?」
「えっ? そりゃまぁそうですねぇ。通常は定時になったら課業は終わりです」
ここに来て、サリメルにアルヌスに来る動機を与えてしまったことに火威は不安と期待が入り交ざった感情を得た。この上なく好みのタイプの美女エルフが、自分との同衾を求めてくるんじゃないかという期待と、他に女が居たら確実に栗林の心は得れないという不安だ。火威はそう思う。
「それじゃハンゾウ、今回はヌシと同衾するのは諦めるからニホン語を教えてもらえぬか?」
「やっ、すみませんサリメル様。以前ゾルザル派だった連中が方々で軍閥化していて、隊全体の安全性を考えると外では教えられないんです」
「ぐぬぬ、そうか。それなら仕方ないのぅ」
何度も美女の願いを拒否して申し訳なく思う余りに、火威は付け足して言ってしまった。
「アルヌスの食堂とかPXの店員には日本語教本が配られるんですけどね。それに最近、建てられた舎屋では読み書きと計算も教えています。中には日本語もあったかな……?」
まぁ、アルヌスの子供向けなんですけど。そんなことも言い足すと、サリメルは笑みを含んだ。
「ほぉ、童子か。妾は童子も大好物じゃ」
おねショタっすか――っ。よもや食料的な意味は有るまいと思うが、明日になってティトが来る事に注意を示すべき一言だった。
* * * *
火威と別れて宿舎に入った男女の自衛官は、背嚢を降ろして上位の者からの指示を待つ。と、言っても、通常ならば既に課業が終わっている時間帯なので、場所柄無肢竜の襲撃でもなければ出動するような事は考え難い。
宿の中は本当に人が居ない。無肢竜が出没する地域ともなれば当然の事なのだが、客が入った事が無いのか従業員の掃除が行き届いてる事を感じさせる。
「出蔵三尉、エルベ藩国の賢者は精霊種のエルフって聞いてましたが……」
「あぁ、俺らの知ってるテュカとは別種のエルフに見えたな。碧髪であそこまで肉感的なのはダークエルフでも中々居ないぞ」
言いつつも、出蔵は「仕事でラブホに泊まるならアリメルが良かったなぁ」と思うところだ。
「っていうか火威三尉は大丈夫なんですかね!? あんなスタイルの良いエルフに迫られたら、普通は受け入れちゃうんじゃないですか?」
「あぁ、確かに女に飢えてる先輩なら不安なところだが――」
飢えてたんですかっ? そう発せられた栗林の声は聞き流して、出蔵は離れた場所での展開を予想する。
火威という男は一点に目標を決めたら、多少の障害は突き抜ける意力を持っている。だから目の前の女性自衛官の為なら、他の女には目もくれずに精進し続けるだろう。
だが出蔵は思う。
「……なんですか?」
「いや、ちょっと今回は大変かもな、と」
あのサリメルという肉感のあるエルフのセックスアピールは、出蔵が見ているというのに、積極的に火威に当てられていた。しかもその姿は火威のどストライク。
こりゃあちょっと拙いかも知れない。そんな事を考えながら、腕を組んで思案する出蔵の額を一筋の汗が流れた。
「おーい、栗林と出蔵、居るかー。居るよなー」
宿の扉を開いて、火威が二人の部下を呼ぶ声がした。一気にアレな事に成らなかった事実に安心した出蔵と栗林は返答しながら急いで姿を現す。
返事を聞き、二人の姿を確認した火威は
「今日な、夕飯はサリメル様んところで出してくれるんだって。だからレーションを用意する必要は無し」
「大丈夫なんすか? あのヒト……ではなくエルフですけど、エルベ藩側の意向を承けて飯に毒とか入れられたりしたら……」
不安なら俺が真っ先に食うけど、長命種のエルフがヒトの悪巧みに乗ったりしないだろ。
そう言う火威の言葉に、出蔵も栗林もエルベ藩国の軍人達が、サリメルに対しては
帝国ですら、最近になって漸く他種族の貴族が現れてきたところなのだ。自衛官への対応は、サリメルが望む方針に沿って進む可能性が高い。
* * * *
ミリッタの信徒となって学問の都に戻ったサリメルは、学業の傍ら、資金が足りなくなると身体を売り、学問の都が始まって以来の売女として知られるようになった。
妊娠し難いが故に、希少なエルフと知られる精霊種のエルフであるが、流石に数をこなせばそれだけ子供も増える。
最初こそ客に責任を取らせていたが、産まれてきた子供の種族的特徴が薄かったり、特徴が濃くても容疑者が複数居た場合のトラブルもあったので、サリメルが身体を売るのは多額の代貨を貰った時のみとなる。
当時のサリメルが専攻する分野は金が掛からないものだったが、孤児を拾ったり自らで産んだりで数多くなった子供たちを育てるのには金が掛かる。
パトロネを申し出てくる者も数多くいたが、それらの大半が別の都で財を成していることから、サリメルの噂を聞きつけた狒々親爺の愛妾になる事を意味していた。
悪い場合には面と向かって「愛妾として侍ろ」と言ってくる者すら居た。
身体を売って得る金を高くしたことで、予想通りに客は減ったものの、一客あたりの単価が高くなって彼女の経済事情は潤う効果を
だが美女エルフの娼婦の噂を聞きつけ、わざわざ遠くの都市から学問の街までやってきた脂ぎっしゅなエロ親爺を呼ぶことにもなってしまった。
あくまでもミリッタの信徒でしかないサリメルのお務めは、改宗直後のワーウルフで済んでいるので断る事が出来る。痴女や売女で知られるサリメルとは言え、金を貰うとしても番う相手くらいは選びたいのだ。
断った客の中には金に飽かせて報復を考える者も居たが、精霊種エルフで
容赦無く依頼人を脅し、報復を撤回させている。
彼女は最初に夫とした少年のような子供に近い男と、ミリッタの信徒になった直後に獣欲に任せて自身を抱いたワーウルフのような、筋骨隆々の男を好んだ。
そんな者が居れば、代価無しで抱かれる事もある。むしろ抱いてくださいというレベルだ。
そして全員がサリメルの産んだ子供ではないものの、三桁もの子供を育て、全員を立派に成人させて甲斐性が付くのを見届けた時、彼女の下にベルナーゴ神殿から招請状が届いた。
この時には精霊の使役以外にも、ヒトらが使う魔法を使う事が出来るようになったサリメルである。お蔭で手っ取り早く導師号への挑戦が出来ると喜んでいたサリメルであったが、この時には学都に来てから百年以上もの時間が経っている。
そんな長い間、学問に励んでいたサリメルは思いのほか簡単に導師になることが出来た。
そのせいだろうか、ベルナーゴから招請状が届いた事にも特に疑問は持たず、ファルマートに来た種族の中でも初期に来た精霊種エルフで、賢者の智慧を借りようというのだろうと考えてしまった。
特に言う事無いぜェ――!!
と言うのもあんまりなんで、普通に後書きます。
最近登場してるサリメルというオリキャラは、暫定で千歳超えてます。
あぁ、あと、一応このエルフのサブヒロインの予定です。ハイ。 (;´д`)
そんなワケで
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