ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、庵パンです。
今回はめっちゃ時間が掛かりました(;
時間を掛けても良いものが出来ないので、ホント救いようがないです……。
で、今回のサブタイに意味は有りません。電波か毒電波を受けて、思い浮かんだ単語です。

そして5月1日にゲートのイベントがありますね。
総撃編や冥門編の制作発表があるとすれば、その時でしょうかッ!?
出来れば4クールくらい使って全編やり切って欲しい処です。
あと炎龍編と動乱編も1クールづつ使って作りn(ry


第八話 ベトレオン

その日の朝はサリメルが思っていたより、遥かに早くに来た。

今一歩の所まで迫った相手である火威が何故か急に寝てしまったので、従業員用の個室で寝ていたジョバンニに頼んで彼の力で寝所まで運んで貰う。

それから茶を飲んで一息吐き、無肢竜が潜む洞穴や洞窟、或は出没する地域とその対策に思いを巡らす。

今、解っている事は全て火威達ジエイカンとエルベの者に伝えているが、彼等はロマの森に来る前にも無肢竜と戦い、此れを掃討したと言う話をしていた。

曰く、それらの無肢竜は卵から孵ったばかりの幼体や、成体でも大蛇程度だったという。

だが、本当は違うのだ。

一辺では正しいが、ヒトやエルフにも個体差があるように、無肢竜にもある。

しかもそれは人間の個体差より遥かに激しく、既に数個の村や町を潰滅させたニァミニアは石造りの塔すら倒壊させる力を持っている。

エルベの軍人達は無肢竜の特性をジエイカンよりは知っている。

無肢竜の特性をジエイカンらに伝えるのはサリメルの役割だったのだが、ロマが死んでから一人になったサリメルの元に数十年ぶりの客が来たり、数百年振りの恋心が成就されるかも知れないとあって浮かれていたのだ。

他種族に対しても此処まで好意を持ち、尚且つ数百人の子供を成人させたからこそミリッタの声を聞いたのかも知れない。サリメルは時折、そんな風に考える事があった。

明日こそはちゃんと伝えよう……それだけを心に固く決め、自らを慰めてから寝床に入る。明日からはヴォーリアバニーのルフレが帰って来るから、その前に火威と寝れなかった事を無念に思いつつ、サリメルは目を瞑った。

 

 

*  *                            *  *

 

 

サリメルが布団に就いてから寝入るまで、数刻の時間を要した。

近頃は(すこぶ)る塩梅が良い。

去年は帝国の内戦終盤に、帝都でフェイトランの媚薬とニホンの絵草子や、魔法具で人物や風景の映像が填め込まれた書籍を買った帰りに覆面の男と出会う。

素顔は判らなかったが久しく見る豪傑。しかも人当たりは悪くないし、これまでのサリメルの経験からすると女好きの男と判る。やや堅物だが、少なくとも嫌いでは無いだろう。

また、異国で暮らしていた長女のミリエム夫婦はロマの森に帰って来てるし、近場には熱水が湧き出る。

不純物を含んでいるのか浸かるには適さないが、それだってロンデルで長年に渡って研究を続けていたサリメルの知識を以ってすれば快適な水質に変える事は容易だった。

娘婿のジョバンニに頼んで売春宿(ポンパル)兼神殿を建てて貰った頃、炎龍に続いて無肢竜が出て来るなどの困った事はあるが、アルヌスに陣取るニホンの軍から示された方策は半ばサリメルが拵えた道筋をなぞる物だった。

しかし、ニホンにはサリメルが考えた以上の温泉文化があり、ニホン軍の構成員数人がサリメルの元まで来て彼の国の妙策を伝えに来てくれるという。

炎龍を斃した人員の中にはニホン軍の士官が居たというが、無肢竜も個体によっては油断は出来ない相手である。

帝国の内戦終盤に会った男もニホン軍の構成員らしい。名も聞いたから、エルベの諸侯らには彼の名を指名して来て貰おうと考えた。

そして来た彼は、まさか禿頭とは思わなかった。想像通りと堅めの男だったが、服の上からでも抱き付いてみるとやはり逞しい身体を持っている。

部下の女は背丈が小さいが、驚くほど大きな乳を持っている。男の方は……信徒の時でも客ならば受けない事も無い程度の男である。

自衛官とエルベ藩国の者達は明日から無肢竜退治だが、それが済んだら炎龍を斃した者のことや、日本の絵草子の字の方だけでも教えて貰おう。

そんな遠足前の小学生に似た、楽しみを待つ心持ちで布団に入ったのだから、中々寝就く事が出来ない。

布団の上で何度か寝返ってから暫く経ち、ようやく寝る事が出来た。

だが小屋の扉を叩く音で起こされたのは、寝付いてから余り時間が経って無いように感じる。あたりが真っ暗闇の時だった。

 

 

淫猥な夢を見ていた火威の上に、何か柔らかい物が覆い被さった。

火威の目が醒めたのはその時だったが、出蔵が起こしに来たなら声を掛けて来るハズ、という推理をしながらも、寝呆けた感覚のまま柔らかいナニカを堪能する。

今度は顔の上に覆い隠い被さってきたソレの感触を楽しみつつも、息が出来ないので押し退けようとする。

「ひゃん♥」

甘ったるい声に驚き、眼を開いくとサリメルが抱き着いていた。

「ちょっ!サリメルさっ!ナニやってン!?」

「起こしに来たんじゃよ。やはりハンゾウも好きモノじゃな」

火威の顔に押し当てられていたのは、よりにもよってサリメルの胸だった。

何故こんな所で寝てるのかと、理解するまでに一瞬の時を要したが、記憶がはっきりして来ると狼の巣の中で寝てしまったことを自省する。

「うぅむ……」

呻く火威の前からサリメルが退こうとするが、火威は咄嗟に止めた。

我が睡眠を邪魔したエロフ相手なら構わんだろう……そんな事を思ったのかどうかは知らないが、火威はサリメルに手を延ばした。

「む、ハンゾウ……?」

徐に延ばされた火威の両手はサリメルの耳を触る。のみならず、揉んでその柔らかさを堪能し始めた。

「や、やはり、俺の仮説は正しかった……!!」

「…………ハンゾウ、どうせならもっと下の方を揉んで貰えぬか」

 

 

それから時系列は暫し進む。

先程ギサに示された、賊に堕ちた元村人の一団の根城がある洞窟を地図に記すと、ロマの森からそう離れていない。

土地の者からパベルと名付けられた丘の麓に、その洞窟は存在した。

当然のことながら無肢竜の活動範囲内なので、賊が居付く前は竜の巣だった可能性がある。無肢竜の詳しい生態は判らないが、万が一戻ってくるような事があれば人質の救出は急がなければならない。

「そんなにサリメルさんの世話になるのが嫌なんスかねぇ」

出蔵は呟くが、火威からしてみれば毎晩毎晩あの露出度で迫られるのは困る。栗林に懸想しているとは言え、高過ぎる壁を越える事を諦め、いつか進行方向を変えてしまうかも知れないらだ。

だから賊化した者の気持ちが判らないでも無い。

仮に、栗林が日本に帰還していたら、昨夜の内にサリメルをアルヌスに誘っていただろう。一応、そのくらいには火威の好意を得る事は成功していた。成功の要因は主に巨乳である。

まぁ、実際は成功してないが。

 

アルヌス駐屯地との通信の後、自衛官らとサリメルはアリメルと合流した。

「アリメルとサリメルさんって名前似てますね」

「今更だな」

呟く栗林に火威が返す。

二人が出会った時の事を、少し離れた場所でエギーユらに作戦概要を伝えていた自衛官らは思い起こす。

アリメルは薄絹を着たサリメルの前に出た時「ご無沙汰しておりました」と火威達にも判るくらいの声で仰々しく傅いていた。

それに対してサリメルも何か言っていたようだが、エロフの地獄耳を持たないヒト種には聞き取ることは出来ない。

 

作戦の内容は、何ら難しい事も無い。

光の精霊魔法で不視化した火威と、出蔵から時刻を針で示す腕時計を借りたサリメルが堂々と賊が根城としている洞窟内を見分し、敵の人数とシエラの居所を明らかにする。侵入して長い針が十五回転する前にシエラを見つけ、二十回転する前に脱出する目安にする為だ。

賊の中には女子供も居るし、妙に生活感がある。と言うより、妙に所帯染みている。

火威がそう思ったのは、うらぶれた感のある男の働き様を、その妻らしい女が罵倒した時だ。

サリメルの元に身を寄せない決断をしたのは、妻達の判断かも知れない。

そういう事なら、火威も判らんでもない。エロフの誘惑を断固として跳ね退けれたのは、栗林への想いと自衛隊の諸訓練で鍛えられた根性のお陰である。

一般の大学を出たばかりの自分や、その他多くの諸兄なら後先考えずにサリメルを孕ませようとするかもしれない。

それはさておき、意外にも賊の数が多い。どの程度が戦闘員になるのか判らないのが、武装化した民間人の厄介な所だ。

どう見ても小学生以下、という者を除いても、戦力になりそうな者は総勢で二百人は居る。そんな中、時計が十五回転する前にシエラが入れられた牢を見つけることに成功した。

不自由はしてないワケが無いが、見た目では弱った様子もない。賊から出されたであろう昼食を食べた後には、香草を煮出したお茶なぞを見張りに言いつけて持って来させている。

 

「あなた方、(エルベ)が無肢竜とシーミストに掛かり切りとは言え、我が家の私兵やレオネ子爵家の兵が何もせずにいる筈がありません。事が(おおやけ)になればエルベも兵を動かさざるを得ないのです!」

牢前の見張りにシエラがそんな事を言っていたから、最大の想定外であるヤラセや自演の類では無いらしい。

「まぁ、相手は農民に毛が生えた程度だが、油断はすんなよ」

とは言え、作戦は全編でサリメルが使える眠りの精霊魔法で済むので、相手を射程内に入れて詠唱する時間が有れば簡単に終わる。

出蔵と火威は、洞窟前で歩哨する賊を陽動し、洞窟内の賊の絶対数を減らす事にある。

「つーか、日中の屋外でフラッシュバンなんて余り意味ないでしょっ」

「効かなくても良いんだよ。賊を誘き寄せるのが目的なんだし」

「ナゼニッ?」

その問いに対し、火威は「栗林とサリメルと、あとヴォーリアバニーの人の侵入を支援する為」と答える。彼らが会ったヴォーリアバニーのルフレは、純白の髪と体毛を持つ美しいヴォーリアバニーだった。

このルフレ、実はファルマートを最初に地震が襲い、その後にゾルザルが半殺しにされた時に栗林と会っているテューレなのだが、その時は互いに顔を良く見ていない。

そのお陰で両者とも初対面と思い込んでいるか、少なくとも現時点では気付いていない。

彼女達は既に光の精霊魔法で不視化されており、周囲で簡単に入手出来る木の枝等で互いの存在を明らかにしている。

火威達の陽動を賊に仕掛けた後、様子を見てから洞窟内に進入する手筈になっている。

そして火威達の周囲には、シエラの生家である豪商の私兵や、見合い相手の貴族であるレオネ子爵家の兵士、更には少数ながらエギーユらエルベ藩国の将兵が捕手として控えている。

帝国の内戦以後は、ヒト種以外の種族が手柄を立てれば論功行賞で報いなければならないが、他国……それも異世界の自衛官に手柄を取られると悔恨の念しか残らない。

内戦中は多くの部分で自衛隊に頼る事になったエルベ藩国だが、最近の敵は人が十分に斃せる無肢竜で、しかも今回の敵は同じヒトである。

そこにサリメルに「生きたまま全員捕縛」という難題をふっ掛けられ、少々苦慮したエルベの将兵だったが、エギーユが火威の示した案を了承したのである。

しかし、洞窟内に侵入してシエラを救出する役割を、火威からサリメルにする案も提案している。異世界の人間より、エルベ藩国内に住む他種族の者に手柄を取らせようと思ったのかは判らない。兎にも角にも

「まったく合理的だぜェ……」

と思ったのは、精霊魔法の威力を知る火威である。サリメルなら洞窟内の勢力を、あらかた眠りの精霊で寝かし付けてシエラを救出する事も出来るだろう。

「じゃ、行くか」

味方の準備が終わった事を確認した火威が、潜んでいた草むらから腰を上げる。

 




改めて展開襲いなぁ……と思う今日この頃。

何やらここに来て投稿速度が遅くなってまいりました。
全て庵パンの調子が上向かないのが原因であります。
って、言うか……一からの新作って難しいですねぇ……。
世界観とキャラはほぼ借り物ですが、自衛隊の装備とか調べると多分に時間が掛かる……。
これで間違っていたら目も当てられないですが、実際間違ってたら見なかった事にして下さい。(合掌土下座)

という事で、ご意見ご感想、その他にも誤字脱字など御座いましたら、忌憚なく申し付け下さい。

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