ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、庵パンです。
ここしばらく風邪引いてました……。季節の変わり目でしょうか。
お陰様でプロット的な物が明確になってきました。
というか終わらせ方ですね。

ところで、漫画の方では亜神クリバヤシという単語が出ているってことは
ゾルザル=女にボコボコにされたヤツ……って事になったんですかね?
テューレがボウロ使って広めてそうな気がします。

で、今回も一説目がサリメルの過去回です。


第十三話 竜の窟

一応は使徒であるものの、不老不死でもないサリメルが、帝国と屍兵の集団から逃げなかったのは、氷雪山脈麓の集落で会ったエティの影響だったかも知れない。

当時、氷雪山脈の麓に有るサガルマタという集落の住民は、片手の指で数えるばかりのエティの他は殆どが獣人で、そのリーダー格の竜人女性が務めていた。

その一方で帝国先兵だった主席百人隊長は、灰色の髪の固太りしていたヒト種の男だ。職務に愚直な朴念仁で部下からの信頼も厚い。

怜悧(れいり)な男でもあり、後続で来た諸侯の命令にも縦に首を振らず、その指示を論破するというという器量も持ち合わせていた。

その命令と言うのが、反魂呪文で仮の生を与えられた死体を斃す為の手法なり、武器なり手立てをサガルマタから奪って来いという物だ。

それもそうだろう、サガルマタにはヒト種には勝てない怪異のような種族のエティが居る。彼らを篭絡するには、些か遅すぎた。そして彼らは余りにも無欲であった。

そんな者達の中から、情報を盗って来るのは自殺にも等しい。

 

だが帝国の者達は知る由も無いが、屍兵を斃す方法は余り難しくない。

今でも余り知られてない事だが、仮の生を与えられた屍兵も生きている人間と同じで、背骨や頭部を破壊したり、身体から首を切り落とす事で斃すことが出来る。

少し後で、屍兵を斃すその方法を百人隊長は得る事が出来るのだが、職務だけではなく何事にも愚直で朴念仁な彼は、サガルマタの勢力と屍兵の交戦を伏せて傍観するという奸智には実に疎く、サガルマタの長である竜人女性に頭を下げたのだ。

 

 

*  *                             *  *

 

 

二種類の精霊魔法を駆使してニァミニアの背後から爆轟を撃ったところで、早詠唱で組み立てた魔法の威力はたかが知れていた。

しかしニァミニアを驚かせ、混乱させることには成功したので、その隙に出蔵、栗林、アリメルは1層に退避できたし、光の精霊魔法による幻影を見せることによって火威も退避出来ている。

1層と2層を繋ぐ通路は到底ニァミニアが通れる大きさでは無かったが、極太の長虫は無理やり通ろうとしたり炎を吐きかけようとする。

これに火威も防護障壁を張るから、無肢竜が吐いた炎は自身にしか被害を及ぼさない。しかし、それで諦めて退いていくニァミニアでは無かった。

相応に知能があるのか、障壁が解除されるのを待って、その場に居座ってしまったのである。

巨大さも含めて、無肢竜が火を噴くようなこともジゼルからは聞いて居ない。過去に不正規戦で無肢竜と交戦、駆除した隊員も居るが、彼らが遭遇した無肢竜も特別な事はなかった。

「参っちゃったなぁ。今回LAM持って来てたっけ?」

「いえ、火威三尉の魔導で十分に代用可能と判断されたので、携行していません」

自分でもエルベまで携行してくる荷物の内用は確認してたが、ひょっとしたら……という薄い希望も栗林の返答で打ち砕かれた。

「そんじゃぁさ、すぐにアルヌスに連絡入れて津金一尉に直ぐに救援に来るよう伝えてよ。そんでその時にLAMも多めに……六本くらい持って来てもらって」

「先輩は高機まで行かないんですか?」

「魔導士の喧嘩の時に周囲を護るのに使う障壁で、一回張ればそれで良いんだけど、弱くもなるからな。ニァミニアを見張る意味でも俺はここに残るわ」

一応、臭くなってはいるがレーションもある。そんなことを言い足して、火威はこうも言う。

「宿とシュワルツの森まではイフリに乗せてもらえよ。かなり定員オーバーだけど、今日はご馳走をたらふく食べた筈だから機嫌も良いはず。あ、でも乗せて貰うんだから礼儀は弁えろよ」

 

 

*  *                            *  *

 

火威の言った通り、イフリは非常に嫌そうな顔をしていたが、どうにか説得してアリメル、栗林、そしてイフリが咥えたロープに繋がれた出蔵はサリメルの宿に辿り着いた。

ちなみに、イフリの説得には先々で退治した無肢竜肉を約束をしている。

宿に着くと即座に出蔵が停車していた高機からアルヌスに通信を入れた。以前に伊丹二尉がロンデルの郊外からアルヌスまでの連絡する際、通信状況が良くなかった事もあってゾルザル派帝国軍との戦争中に無線の中継基地局が設置されている。

自衛官達は直ちにアルヌスへと連絡を取った。

 

 

*  *                            *  *

 

 

ニァミニアと睨み合う事、早四時間。

火威は案の定というか、何時通りというか、睡魔とも戦っていた。

まさか緊張感窮まるこの場で眠く……とは火威も思っていたが、自分の救いようの無さを憂いた。

任務が終わったら任務中に寝ない方々を下位の者に聴きまくらなくては。

下位の者限定なのは、同格か上位の者だと任務中央に寝た事を疑われて雷でも落とされる可能性を考えたのだ。

眠いのに、こういった悪知恵ばかりは良く回る。

そんな感じで火威の注意力は拡散していたから、背後から近付て来る気配にも気付かない。そしてその気配の主は、火威に一気に抱き着いた。

「フォアアッ!?」

睡魔も何もかも吹き飛んで、抱き付いてきた何かも振り払おうと前方に大きく跳びながら、背中の大剣を抜いて振り払った何かに剣先を向ける。

すると其処に居たのは、火威が強引に振り払われて突っ伏しているエロフだ。

「ってサリメルさん」

慌てて駆け寄り、サリメルが起きる手助けしながらも質問をぶつける。

「どうしてここが解ったんですか?」

「イフリに聞いたんじゃよ」

ジゼルが言うには、飛龍は人間程に賢いらしい。だから長年生きるエルフで、尚且つ賢者ともなれば飛龍とも意思の疎通は可能なのだろうと推測した。

しかし竜人でも使徒でも無い者が余計に働かそうとすれば、相応に見合った対価を要求されるのも当然なのだ。

「ひょっとしてイフリに乗って来ました?」

「いや、妾が一人徒歩で来た」

火威はイフリに要求される対価が無いことや、まだ危険なレベルの無肢竜が居るかも知れない森の中をサリメルが突っ切って来たことに対して、若干の安堵感や沈痛の意味で嘆息した。

「ところでハンゾウや、ニァミニアが居るのはこの通路の向こうかの?」

「えぇ、出蔵と栗林がアルヌスまで救援要請してますから、味方が到着したらLAMで吹っ飛ばします」

「……“らむ”とな?」

「あぁ、こっちじゃ鉄のイチモツって名前の方が知れ渡ってますかね」

「プっ、なんじゃそりゃ。可笑しな名前を付ける者がおるのぅ」

アンタが言うのか、とは思ったが、これには火威も少なからず違和感を覚える。

LAMたる“鉄のイチモツ”の名がこの世界で広まったのは、自衛隊が特地に来て間も無くのことだ。第三偵察隊がコダ村住民の避難をしている際、炎龍から襲撃を受けたのである。

その際、炎龍の左腕を吹き飛ばしたのが鉄のイチモツだった。そして緑の人と共に鉄のイチモツという名はファルマート中に轟いた。

特定の人間によって限られた範囲にのみではなく、噂と言う形で縦横無尽に広まったのだから、帝国内だけでは無く国外も含まれる。それも炎龍はエルベ藩国内に山の中に巣を作っていたのだ。鉄のイチモツを知らない者は赤ん坊くらいだろう。

それに“鉄のイチモツ”なぞというネーミングにテンション上げないとは、日頃エロフを自認している(らしい)サリメルにしては淡泊過ぎる。まぁ面倒臭く無いから良いのだが。

「しかしハンゾウ、御ヌシには感謝してるぞ」

「へ?」

俺が何かやらかしましたかねぇ。と言う思考を読んだかセリフを用意してたのか、彼女は火威に先んじて口を開く。

「以前御ヌシに会ってからは楽しいことばかりじゃ」

「や、それ確実に俺が介入してませんて」

「いやいや、御ヌシのお陰でルフレにも会えたからのぅ」

あのテューレって人らしいウサギさんかぁ……。ゾルザルに叛意を持っていたテューレなら確かに火威にも関係はある。そして火威にサリメルは続けた。

「今はロンデルから帰る途中だと思うが、ミリエムも帰って来てくれたしの」

これは完全に火威には関係無いのだが、最後にサリメルはこう付け足した。

「これを機に妾の眷属になって貰えぬか?」

「なん……だと……」

火威の知る限り、眷属というのは親族や同族、まぁ早い話が親戚含む一族の事を現す。火威から見れば「友人だったら面白いけど結婚は勘弁な」という女性にプロポーズされたようなものである。

ホントは違うのだが。

「す、すいません。俺には好きな女が居まして……」

何言ってんのコイツ、と思うのはサリメルの番だ。でも面白そうなので根掘り葉掘り聞いてみることにした。

「うーむむ、それなら()()()は諦めるが、その女子(オナゴ)はアルヌスに居るのか? っていうか本当の意味で女子(オナゴ)?」

火威がアベさん系の人で無いことを確認したのは、彼が持っている大剣が以前にサリメルの宿でフェトランの媚薬を盛られながらもサリメルには指一本触れようとしなかった傭兵団の団長の男が持っていたフルグランと瓜二つ……というかそのものだったからだ。

火威も以前フェトランを盛られているが、同じようにサリメルに手を出す前に爆睡してしまった。だから薄々ながらもアベさん系団長と似たような嫌疑を掛けられていたのだ。

「えぇ、そりゃもう。身長は低いけど胸の大きい女の子ですよ。まぁ()と言って良い歳じゃない気もしますが、童顔だから良いでしょうね」

「…………その女子、今アルヌスにおらんじゃろ」

「ファ!?」

微妙にヒントが多すぎたのか…! と考える火威は知るまいが、栗林が同性とは言え、他人に軽く揉まれた話しなどする訳がない。ましてや異性に話す事などあり得ないので、ボディーアーマーを取った少しの時間の栗林の胸を見て「巨大」と判断したのだろうと考えた。

「アレは大きな果物……いや、野菜くらいはあるぞ。ハンゾウ、流石は御ヌシじゃ。好い相手を選んだのぅ」

アンタ、栗林のマッドドッグっぷりを知らんでしょ、とは思うが、ここまで断言されると特定されたような物である。流石は賢者、油断ならない。

「ま、まぁそんなワケですから、眷属とか家族とかは無理なんです。アルヌスも一応日本なんで、重婚とかダメなんです」

「ぬ、そうなのか、ニホンは意外とツマらん事を気にするな……」

そういう彼方は今までに何人の夫とエロいことしてきたんですかぃ、なんて問いたくなった火威に、隙を許すサリメルでは無かった。

「さて、じゃあ眷属の儀を……」

「待て待て待て待て待てェ――! 何聞いてたのアンタ!?」

半怒状態でサリメルに詰め寄る火威の胸を拳で軽く突き、彼女はチッチと空中に人差し指を振る。

「 早合点するでない。眷属と言っても魂の眷属じゃ」

「た、魂すか?」

魂ワードの魔法は聖下に断罪さる可能性が高そうなので、その旨を伝えると杞憂だと言う。

「そもそもこれは魔導とは違う」

「違うんすか?」

「まぁ便利だから試してみぃ」

詐欺師が言うような文句だったので、火威は躊躇った。この美人局的なやり取りは確実に拙い。そこで火威は記憶を巡らせて策を敷いた。

「いやぁ、でも死後は結婚相手と天国に行けるように猊下に取り計らってもらってますからねぇ。ここで今更ご好意を無碍にするワケにも……」

「ジ、ジゼル猊下か!?」

ジゼルの名を聞いた途端、血相を変えて問うサリメル。エロフではあるが、普段からのんびりした彼女からは考えられないと火威は感じる。

「えぇ、その猊下です。竜人の使徒の人です」

「竜人の人っで可笑しいじゃろ……それより既にジゼル猊下の眷属になっておるとか!?」

「いやぁ、それは無いっす。聞いてた話じゃ俺がこっち来る時に乗ってた翼竜が猊下の眷属らしいです。ペット……愛玩動物みたいなもんっすかねぇ?」

これを聞き、サリメルは思った。

ふーむむ、猊下め、焦らせてくれるわ。こんな逸材を放っておいて翼竜なぞを眷属にするとは。あ、でもホントに愛玩動物的なもの知れぬな。なら早いところ唾付けておかんと。

みたいな事を。

「あー、それではこうしよう。週が日が六日ある内の三日は魂を開放する故、三日だけヌシの魂を貰えんか」

「や、週が六日だと日本人にはちょっと判り難いので、週が日が七日ある内の四日休ませて貰えませんかねぇ?」

こんな緩くてハードルの高い会話で、火威は死後の週休四日を獲得した。給料なんて貰えるか判らない死後の世界で、週の半分以上の休みを貰ったのだから火威の大勝利である。




だいぶ書いた気がするんですが、読んでみると短いですね。
どうしてこうなっちゃったのか……?
まぁこのあと火威がサリメルに噛まれるんですが、そんくらい書けよな的な気がします。
まぁでも、体力と気力が持たんかったです。
で、屍兵とかルフレとか、思いっきりファイヤーエムブレムです。
しかも覚醒です。
でも竜人女性がチキとかノノって事は有りません。

まぁ、そんだけです。

さておき、遂にお気に入り指定が300個突破!?
皆様、ありがとう御座います!!

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