ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

59 / 120
ドーモ、庵パンです。
夏場到来で投稿速度が遅くなっております。
このスピードでやると外伝が終わる頃には来年も終わってそうな……。
そして今回は何故か脳味噌が働かず、非常に手間取りました。
サリメルの過去話が端折った感じになっていますが、外伝3のネタですので今はね……(汗
そんな感じにディアボ以上の小物力を発揮したところで投稿です。

んで、ファン小説独自の生き物とか出しちゃってます。


第十九話 ロマの森の魔女

サリメルにとっては「物見遊山ついでに指命」なのである。

それでも暫くは大陸の北西を放浪し、特に見る物が無いと解ったると、そのまま南下して本当の意味での未踏地帯である砂漠に入った。

そこでサリメルは、自身が本当の使徒では無い現実をまざまざと思い知らされる事となる。

砂漠では滅多に人間に逢わ無いが、この地に住む生き物は豊富だ。

それは以前に見たような荒野砂漠でも同じだったが、西方砂漠のような砂丘の砂漠では生き物の大きさこそ違うが絶対数こそ変わらない。

だがそれも環境に適応した生き物であって、サリメルのような人間にとってはこれ程苛酷な環境は無い。

彼女は子供達をリトに託した事は正解だったと考える。今の状況では、自分の世話だけで手一杯だ。

彼女が西方砂漠を放浪する中で、一番の障害となったのは砂の中に棲む怪異の一つで、氷雪山脈で見て対策を講じたことのある雪龍に似た生態を持った砂龍である。

現代ではその二つとも博物誌に載っているが、だが両者とも正確には龍とは違い、目は無く音を頼りにして獲物を探す蠕虫(ぜんちゅう)の一種だ。

砂龍は一般的な蠕虫と違い、他の生物に寄生できるような大きさでは無い。砂龍という蠕虫(ワーム)は他の生物を捕食できるよう進化した巨大な生き物である。

雪龍も仔犬を呑み込める程度に大きかったが、砂龍ほどの巨大さは悪意すら感じる。

龍のような硬い外皮を持たない砂龍は、灼熱の太陽が照り付ける地上では長時間活動出来ないが、油断すれば一撃で致命傷を負い兼ねない相手だ。

本来なら陽が照っている昼間は砂丘の影に居て、陽が落ちてから歩みを進めたかったが、昼間は地中に潜む奴らが一番活発に行動するのが夜だ。

仕方ないので昼間に出来るだけ砂丘の影に沿って進むが、後にサリメルはこの時が生涯で一、二を争うくらいに辛かっと回顧している。

死ぬような思いで(ようや)くオアシスに辿り着いて水分を得る事が出来たが、砂漠の中の水辺には様々な生物が命の糧を得ようと集まって来る。

それは砂龍も同じだった。

油断していたら一辺に丸呑みにされて死んでいたであろうが、サリメルも歴戦の戦士で、尚且つミリッタの神殿から信託を得た仮りにも使徒である。

それに、子供達やリトの為にも此処で死ぬ訳には行かない。

火の精霊を召喚するのは視覚的にも感覚的にも参るが、これが最も効果のある攻撃と考えて砂龍に火を放つ。

予想通り渇き切っていた砂龍の躯は燃え上がって息絶えたが、サリメルが見る砂龍は一体では無い。

触媒を使わないサリメルが魔法を使うには法理を開豁する必要がある。導師程に熟練した魔導士なら時間が掛かるものではないが、それでも攻撃魔法の射程内に敵を収めていれば隙にはなる。

二体を殺し、三体目と相対してる時に他の砂龍が彼女を囲むが、サリメルは戦い続けた。

三体、四体と敵を斃して行くが、砂漠の中に存在する水辺は砂龍の繁殖地だったらしく、斃しても斃してもその数は尽きない。此れには、さしものサリエルの精神も挫けた。

だがサリメルは砂上に光る光輪を見た。次に見たのが、光輪から放たれた風の矢が次々と砂龍を貫いている光景だ。

光輪から風の矢を放った魔導士、ロマリア・デル・ドリートとサリメルが初めて会った瞬間だった。

 

 

*  *                             *  *

 

 

サリメルの宿からエルベの山々に向かう自衛官とアリメル以外のダークエルフの部族の戦士達。

無肢竜狩りを始めてから、今のように武人が集結したのは、これで何度目の事だろか。今ではシュエワルツの森に住むダークエルフの部族の協力もあって、残りの無肢竜相当は予想より大きく進んでいる。

最も、ダークエルフ達にとっては、何処から来たか解らない害獣に森を荒らされるのを防ぐ目的もあるのだが。

今日はティトの友人らしきテュカくらいの年頃の少女のダークエルフが付いている。少女と言っても、この場に居る自衛官達の何倍もの年齢なのであろうことは確実だ。

アリメルは無肢竜の絶対数が減ったし、ミリエムが話がある…と言うので今日は来ていない。彼女は今、サリメルの宿に居るが、ミリエムとは仲の良い姉妹だから出蔵も安心して彼女に任せられる。

イフリが空中から獲物を探すなか、自衛官らはそれとは関係の無い事を考えてる者が多かった。

「導士号を持つサリメルさんがあれ程舐め回されるとは……」

と言ったのは三角。

「近くには人妻を舐め回す変態が棲んですね。これは……恐ろしい」

返す清水の声にも、事の深刻さが良く解る。

火威達ら自衛官はサリメルが用意した夕食二人前を食べた上、サリメル自身を舐め回した変態野郎が周囲の山に潜んでいるという情報を得ていた。

「そこ!私語厳禁!」

同僚二人に注意する栗林だが、そこを火威に(たしな)られる。

「いや、他人事じゃないぞ栗林。サリさんはアレでも結構素早い。そんな人を舐め回すようなヤツが居るんなら、お前も注意しなければいけない」

ニャミニアにあっさり喰われたりするし、特殊なプレイを楽しんだ可能性もあるのだが……まぁその点は言わない。

「私はあんなにスタイル良くありませんし……!」

一部に関してはサリメルと良い勝負だが、身長は明らかにサリメルが高い。だが一部の男はそれでも良いとも言うし、寧ろその方が良いという者も居る。

「待てッ、スタイルの問題じゃァーないッ!」

栗林が良いという男の一部である火威が力む言葉で続ける。サリメルが素早いのはフォル球で目にしたし、ニャニミアも内側からナイフで突き破れる程に力もある。そして普通の人間相手ならばフォルマル領でオプリーチニキを楽々吹き飛ばす程の魔法の使い手だ。

お互いの同意の上で唾液塗れになったのでないなら、サリメルを唾液塗れにする程の力量を持った者が居るという事になる。

「だいたいアルヌスの道場で“お突き合い”した時に集まった人数憶えているか!?」

「あ……」

栗林が知っているかどうかは別として、アルヌスでも火威と似たような好みの者が多数居て、徹夜での連戦しないよう火威自身に注意されている。

「まぁ、相手が人間じゃないという可能性もあるからな。栗林は火威の言う通り今回は後列で、背後を警戒してくれ」

津金の言った通り、犯人は人間じゃなくて空中を飛び回ってるイフリなのだが、そんな事を知る者は空中を飛び回っているイフリと当のサリメルしか知らない。

 

 

*  *                            *  *

 

 

アリメルは自身の胸の薄さを気にする事が間々あった。

母に付いて来陸各所を旅する幼少の頃には気にする事などなかったのだが、父に付いてシュワルツの森に落ち着いてみると、自分や弟の肌の色が皆より少し薄い事に気付く。

ダークエルフと精霊種エルフの中は良くないというのが一般的な認識だが、何故なのか父の友人達には思いのほか母の評判は良く、事あるごとにお母親似の美人なんて呼ばれたりした。

だが彼らの種族の女性陣や母と違ってアリメルの胸は非常に小さい。同性の友人らと共に森の泉に水浴びに行った時などに「アリメル、男の子みた~い」なんて言われたのが、最初に意識した時であろうか。

否、それ以前にも気にした事は多々あった。何時か自分も母のような巨乳になれるんだろうと思ってたが、二十歳になっても百歳になっても胸の大きさは一向に大きくならない。

シュワルツの森に落ち着いて百五十歳になったが、一向に大きくならない。その一方で森に来てから出来た友人の少女達は、羨ましい豊満な身体に成長していく。

なぜなのか…? 親の特徴は子供に伝わって行くものでは無いのか……?

以前、母と旅をしていた時、母がまだ単身者だった時にベルナーゴから招請が掛かった事があるなんて話を聞いた気がするが、もしかしたらそれが関係しているのかも知れない……なんて考えも少しは思ったし、母は普通の精霊種エルフとはかけ離れた生き方をしている。

氷雪山脈で別れた姉も大きな胸とは言えなかった。アリメル自身の胸も無い訳じゃ無いんだし、きっと精霊種の血が濃いんだろう……。

……そう思う事にして約百年。

母は以前、ロマの森でロマリア・デル・ドリードに師事しながらミリッタの神殿に来る男を(あさ)りつつ、大釜を使う魔女をやっていたかと思うと、氷雪山脈まで姉を迎えに行くと行って居なくなってしまった。

その間に帝国が新たな戦争を始め、炎龍が予想よりかなり早く活動し始めて父がその犠牲になるが、その後にはクロウ、メト、バン、フェン、ノッコ、コム、セィミィ、ナユの犠牲を出しながらもロゥリィ・マーキュリー聖下、そしてレレイとジエイタイのイタミ、そして母や姉と同じ精霊種エルフのテュカによって炎龍は討ち果たされている。

考えてみれば、嘗て皆がロマ様と仰いだロマリアでも魔導式の障壁を張って皆を護るのが精一杯だったのだ。そして討伐の際にはロゥリィ聖下の力と、異世界の武器を以ってしても八人の犠牲が出ている。

ロマリアの弟子である母一人に、炎龍の被害を防げというのは酷とも言える。が、母程の魔導士が居たならば、父や他の数人は助かったのではないかとアリメルは考える。

姉が言うには、母が最近まで帰って来れなかったのは嘗てサガルマタで敵対してた敵に捕らえられ、幽閉されていたからだと言う。

どうせまた男でも漁っていたのだろうと考えるアリメルには信じ難いことだ。この世界で幽閉と言うと、亜神を解体して別々の場所に封じる事である。

炎龍が活動し始める前にもティトは母が昇神したと言っていたが、肝心の本人がそれらしい事を言ってない。

母はミリッタの神官ではあるが、神に選ばれるなど信じ難いと思うのも無理は無かった。

アリメルに転機が訪れたのは、炎龍が斃された後の話しだ。

これまでも友達程度の関係で男と付き合った事は何度か有ったが、異世界から来たジエイタイの将校のデクラという男は違った。

父と弟を除いて、今まで男という男はボンテージ鎧を着用したアリメルの小さな胸を見て残念そうな顔をしてたが、デクラことナオは困ったような顔をしてジエイタイと同じメイサイフクを借りるか聞いてくれたのだ。

普段から悩んでる事を真っ先に聞いてくれた男に、好意を持たないはずが無い。

その後、少し経ってからジエイタイから仕事を貰って空飛ぶ輿に乗り、風の精霊を使役して簡単な仕事をこなして来たが、ナオの事が気になって居ても立っても居られなかった。

この辺り、母がヒオドシに夢中になる感覚も解らなくは無いかも知れない。

だがアリメルはちゃんと節操を持って想いを遂げ、ナオの子種を得ている。母……サリメルのように力押しなどしないのだ。

戦争が終わってエルベ藩国に来る際、翼竜にクリバヤシと乗ったが、密着する事となった彼女の巨乳……もとい爆乳は、服の内側に帷子の様なものを着ているのにも関わらず、暫し忘れていた劣等感を呼び起こすには十分過ぎた。

そして百数十年振りに会った姉は、どういうワケだか巨乳である。

これ以上ない程に精霊種だった姉に何があったのか……。姉妹なのにこれ程違うとは、何か秘密でもあるのか?

そういえばアルヌスに居るテュカの胸も精霊種にしては結構大きかった。

何か理由があるなら聞くべきか、聞かないでおくか……。それともナオや産まれてくる子の為にも聴いておこうか……。

「いや~、アリメルが来てくれてて助かったわぁ~」

逡巡していたアリメルの前で巨乳の姉が言う。彼女達は早朝にディジェという名の豆をぬるま湯に浸けた後、新たに建てた厩舎に畜乳を得る為の家畜を追加で運び込み、森の外の商店から様々な果実を買って来た。

畜乳に果汁を入れた物を冷やして出すという、サリメルがヒオドシから聞いた物を実践する為なのだが、時期のせいか買って来れた果物は余り多く無い。定期的に決まった量の果実が必要なら、何時かは宿直営で果樹園でもやらなければいけないかも知れない。

「その場合でもワルハレンは難しいでしょうね」

ミリエムから将来の展望を聞いたアリメルが、特殊な亜神を引き合いに出す。

「そんな実出せたら宿に客が殺到するわ」

笑いながら返すミリエム。ワルハレンとは古代から存在し続ける森が樹海となり、神々からの祝福を受けた事で昇神した亜神である。

森である以上、本来なら年に少しずつしか移動出来ないが、人型の果実を依り代にして移動する事も出来る。しかも悪い事に、この果実は美女の形をしているが、日光が浴びれないと言って服を着たがらない。

この果実は実に美味で、食べると寿命が十年延びるとか言われている。

そして面倒臭いことに、サリメルが影でライバル視してる神でもある。

正神から選ばれて昇神した訳ではないから、神としてはかなり特殊な部類だ。

「そういえばデクラさんてどんなヒト?」

実際には少し前にも会っているが、妹が連れ来た夫となる異種族の男に興味があるのだろう。

「前に帝国と戦争しててアルヌスに有った門の向こうのニホンの士官。ふざけてるように見えて結構真面目よ」

「うん、アンタと付き合って、子供まで作るくらいなんだから真面目なのは判るわ」

ミリエムは少しばかり言い難そうに続ける。

「でもその……あんたの事が女だって良く解ったわね」

「姉さん……バカにしてんの?」

アリメルが明らかな静かな怒りを湛えたので、ミリエムは平謝りに徹する。

そして素早く話題を変えた。このミリエムというエルフ、サリメルに似て中々奸智が働くところがある。

「でも驚いたわ。アリメルがヒトの子、妊娠するなんて」

そんな姉の声を聞いてアリメルは今更ながら照れた。

「ナオって言うヒトは特別子作りが上手いとか?」

続けられたミリエムの発言で、アリメルはエルフが他種族に較べて妊娠し難い事に関しての疑問と気付く。

「いや、そうじゃなくてこっち(特地)の食材を使ったのよ。ニホンにも茹でる前は似ている野菜があるらしいんだけど……」

アリメル曰く、茹でる前は日本にあるニンジンとか言う野菜に似ているファルマートの野菜を使ったらしい。

精力の作く野菜なのだが、出蔵始め日本人はその野菜に火を通した後の姿を気味悪がって食べようとしないので、かなり細かく刻んで別の料理に混ぜたのだという。

「それで回数こなしたって訳」

休みの日には、ほぼ一日中だったとか。

「そ、そうなの……」

少しばかり退き気味の返事を返したミリエムは思う。

ロマの森の痴女とは、間違い無く親子だと。

「た、助けてくれ!ニャミニアだ!」

避難民が居る従業員宿舎から叫び声が起こったと思うと、アリメルもミリエムも作業を止めて走り出していた。

ニャミニアの死体はアリメルも確認しているから、ニャミニアに対する恐怖心を持つ避難民の見間違いだろう。だが無肢竜の狩り残しが宿を襲いに来たなら、今戦えるのは自分達しかいない。

走り着いた現場には、大型の蛇を思わせる無肢竜のすぐ近くにサリメルが居た。

「かあさ…サリメル様っ、危ないから退って!」

言うが、サリメルの反応は鈍い。

「ん?ヌシらか。この程度の蚯蚓(みみず)など相手に成らぬよ」

言うサリメルだが、無肢竜は厳つい口を開いてサリメルに炎を吐き掛けた。

「むあっ、あァチチチチチちッ」

「母さん!」

聞いてる方が気が抜ける声のサリメルが炎に巻かれる。それはアリメルに親を心配させるには充分な光景だった。

すると突如、無肢竜が爆散し、肉片を飛び散らせる。

「ふぅ、これが爆轟と言うものか……」

言うサリメルの衣服は焼け落ち、身体の多くの部分が炭化していた。だがそれがみるみる再生されていく。

その様子を見ていた野次馬のオヤジは言う。

「やっ、凄い。流石は性下」

それがミリッタの神官・サリメルが昇神した時に附けられた敬称らしい。

「だーからっ。その呼び方は辞めよ!」

勿論、オヤジは特地語で言ったから聖下とは別の発音なのだが、日本語を知るサリメルが日本語訳すると、どうしても同じ発音になってしまうのである。当然ミリエムもオヤジも、何故母がこの敬称を嫌がるのかが解らない。サリメル以外に理解出来るのは、出蔵の両親に挨拶する為に日本語を勉強したことのあるアリメルだけだ。

アルヌスに居るエムロイの使徒も日本語を知っている可能性があるから、この敬称は多いにまずい。下手すれば解体・幽閉モノである。

だからサリメルがこの敬称を嫌がって、可能な限り自分が使徒である事を他人に教え無かった。

この敬称を得てから、サリメルは直ぐに大陸各地に存在するミリッタの神殿を統べる中央の神殿に継承の変更を願い出た。それと同時に、この名が大陸中に伝播しないよう頼み込んだのである。

返答はまだ返って来てない。

今回はニャミニアという脅威があったから、一方的に愛する火威を何も言わずに眷属にしたが、本当なら他人には教えたくなかったのだ。だがサリメルの城と言うべき宿(本来は神殿)で、無肢竜が狼藉を働くならば考えてる暇は無い。津金によって伝えられたアルヌスの魔導士が練り上げた強力な魔法で、吹き飛ばすしか選択肢は無い。

だが、そんなサリメルの事情など知らず、尚且つ多少は日本語を知るアリメルは百年以上にも渡る思い違いと、エルベ藩国……そしてサリメルの近くに来てから張り詰めていた緊張が解け、鼻頭に熱い物が込み上げる。

「か、母さん……っ」

火傷が治りつつある母に駆け寄り、その身体に抱き付くようにして涙を流す。

「こぉれ~。宿から親爺が見てるだろうが。妾は裸体なんだから男の眼の毒になってしまうじゃろうが」

久し振りに次女を胸に抱き、仕方の無いヤツと頭を撫でる。

サリメルの男好きが直った訳でも無いし、氷雪山脈で幽閉されてた事が決定的になった訳でも無い。

だがアリメルが母の事を赦し、思い違いを詫びるには充分な出来事だった。

 

 

*  *                               *  *

 

 

「なッ!?宿に無肢竜が!」

無肢竜が潜んでいそうな洞窟を始め、山狩りを済ませて帰還してきた自衛官と、ティトと何故か一緒に付いて来たニムエがアリメルとミリエムからの報告に驚く。

人間が多く、野性動物なら近付くのを躊躇うと思われた場所に駆除すべき害獣が出たのだ。山狩りに出た全員が悔渋しない訳が無い。

山狩りの最後に、ダークエルフ達の隊と顔を合わせ、今日発見した無肢竜の数は無しという報告を受けている。

それなのに、まさか自衛官が逗留する宿から発見報告されるとは思わない。

幸い、サリメルが早々に敵性生物を駆除したから宿には何の被害も出ていない。

それから津金の判断は早かった。

「明日から火威三尉と栗林二等陸曹は宿の警戒に就け」

栗林にとっては女性を舐め廻す変態に遭遇する確率が下がったものの、本来の害獣探査の任務から遠ざけられて釈然としないものがある。

だが上官の命令では仕方ない。

火威にしてみれば密かに心を寄せる女性隊員と近い距離で任務に臨める事を嬉しく思う半面、下手な失敗は見せられないという重圧と、常にサリメルの傍という、開けても余り嬉しい物は出て来なそうな玉手箱状態だ。

プラスからマイナスを引くとマイナスが多くなる嬉しくない命令と言える。

そしてサリメルは、二人をモノにするなら最後の機会と、ほくそ笑むのだった。

 




ちょいと漫画版9巻のネタを使わせてもらいました。
最近じゃ一番長い回なのですが、いまいち進んでる感じがしません。
民事任務とか言ってる割りに、未だに無肢竜を探索してるせいでしょうかね?
そして外伝1は次の次で終わりです。
前回も似たような事を言った気がしますが、ホントに二十話で終わらせます。


 —投稿10分後に追記—

…………と言ったが、20話となると次で終わらせないといけない事に今更気付く庵パンです。
これ、どうしよ……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。