ゲート 魔導自衛官 彼の地にて斯く戦えり   作:庵パン

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ドーモ、庵パンです。
頑張れば昨日投稿出来たかなぁ……というところでしたが、
TOKYO EXE GIRLSのエロい方で市ヶ谷さんを入手する為に弾丸集めてて遅れました。
ちなみに主力は八王子さんです。
はい、地元です。

そんなワケで今回から新章ですが、外伝2は余り長くない予定です。
っていうか戦闘が全然ありません。


外伝Ⅱ 深縹色の大祭典
第一話 笑ってはいけないウラ・ビアンカ


「くそ野郎!ぶっ殺す!」

激昂する伊丹の拳がゾルザルの頬を突き、殴り飛ばした。

今までに他人から殴られる事がなかったであろうゾルザルは「貴様!殴ったな!皇子たるこの俺を殴ったな!」と、唾を飛ばす勢いで喚きあげる。

俺にやらせてくれりゃぁ一撃で仕留めたのに……と思う火威には、見る以外に余計な事は出来ない。

オヤジにも殴られたこと無かったのに!なんて甘ったれたア○ロめいた事でも吐かすかと思ったが、その背後の取り巻き共が剣を抜いて伊丹達を包囲する。

「こやつらの国の運命は決まった。何処の蛮国かは知らぬが全てを殺し全てを焼き払ってくれる」

脅迫の言葉を並べ立て、高笑いを上げる。

「すべて貴様のせいだ。我が身の罪深さを思い苦しんで死ぬがよい!」

脅迫の言葉を並べ立て、高笑いを挙げる。

大事な事なので二度言いました。

 

デデーン  ゾルザル  あうとー

 

気の抜けた(ように聞こえる)声が謁見の間に木霊す。

瞬く間に取り巻き共は姿を消し、代わりに近衛っぽいstaff達がザルザルを抑え込んだ。

「な、なにをするっ!? 俺ではなくコヤツら取り押さえろ!殺せ! 一族郎党皆殺しにされたいか!」

いや、むしろアンタが既に死んでますやん? そんなゾルザルに罰を与えるべく登場したのは鬼人クリバヤシだ。

コンバットグローブにチェストリグ、そして胸周りの協調されるコンバットシャツを着てπ/……というか、寧ろこれでパイスラ出来るなんて、信じ難い爆乳の彼女に有難う御座います!!! と五体投地でお礼と祝福したくなる火威の前で、刑が執行された。

俗に、キックはパンチの三倍の威力があると言われる。だが鬼人栗林の鬼回し蹴り(マジ蹴り)は30倍くらいはあるんじゃぁないかと思う。

「や、やめよ娘っ! まさか皇子たるこの俺にふたt(ry」

エイリアンもプレデターも、まるっと一人で殲滅可能な証拠が広まった謁見の間に、急いできたマルクスはゾルザルだった物を見て言う。

「ミンチより酷ェや」

唾でも吐き捨てん勢いで、汚いものでも見るようにマルクスは言ったそうな。

 

 

*  *                            *  *

 

 

「……と、言う夢を見たんだよ」

アルヌスの湯でそんな話を火威から聞いた倉田は、目立った笑いどころも無いままに終わってしまった話しにどう反応して良いか解らず、取り敢えず乾いた愛想笑いをしていた。

見た夢の内容を笑い話として伝えるのは、読んだギャグ漫画の面白さを伝える以上に至難なのだが、これは火威だけを責められない。

閉門して半年以上が経とうとする中で、倉田や他の若い曹官が興味深い話は無いかと聞いてきたのだ。と言うのも、以前にエルベ藩国に津金を始め火威を含む14名の隊員が赴いて様々な経験をしてきたことが原因する。

出蔵が飛龍でエキストラクションロープしたことや、やたら長くて太い無肢竜のニャミニアの話し。更にはサリメルが所有する博物誌で見た西方砂漠に巣食うモンゴリアン・デスワームが無毒になって巨大化したようなヤツや、氷雪山脈に出没する米産のパニック映画に出て来るようなヤツの話しは特地派遣隊の自衛官の暇を多少ながらも解消させる話しだった。

中でもシュワルツの森の外れにあるロマの森に住む妖艶な魔女……もとい痴女の話しは一月ばかり真偽が疑われる程に暇を解消させたものだ。その彼女がアリメルやティトの母親であることは、彼等の名誉の為にエルベに赴いた全員と、ニムエやニムエの両親が口裏を合わせないでも秘密でいる。

だって、アレが親なのは誰だって嫌だもん。

そのせいで、どうも火威は面白い話しをする人という印象を与えてしまっていた。

もっとも、その後で伊丹二尉とピニャ・コ・ラーダ皇太女がグラス半島で遭難したので、皆暇してる場合では無かったのだが。

「そ、そっスか……」

「最近、こういう夢を見ることが多いんだがなぁ……何かのお告げというヤツか?」

「むしろホラーじゃないっスか!?」

或は最近になって前以上に栗林を強く想うせいかもしれない。火威らエルベ藩国に向かった自衛官は、アルヌスに戻ってから元の隷下の戦闘団に編成し直された。倉田のように同性でもなければアルヌスに敷設されている温泉施設で会うことは当然ない。

ちなみにこのアルヌスの湯、どこから給水しているかと言うと火威なんかが水の精霊を召還して沸かしている。ついでに言えば水質は有り難い軟水である。

自衛隊の食堂も最近になって特地の食材を使って再開しているし、曹官以下は無料に戻った。

だが相変わらず幹部は何処で飯を食っても金が掛かる。アルヌスの街の食堂の方が火威の好みに合っているし、その事は以前、栗林が居る前でも公言している。

下手に自衛隊の食堂に足繁く通って、変な顔をされたら拙い。避けられたりしたら立ち直れないかも知れない。

 

エルベ藩国から帰ってから、様々な事があった。

ニャミニアを斃す直前、火威が大樹の上で見たのは栗林が蟒蛇相手に白兵してた姿だ。

その勇猛さ。その戦いぶり。栗林に少しでも近付いたと思い込んでいた火威だが、思い上がりだった。火威が稽古・訓練している以上の効率で、栗林も鍛えているのだ。

その事が解れば火威に選べる道は限られている。アルヌスに居を構える亜神、ロゥリィ・マーキュリー聖下に稽古を付けて貰えるよう願い出たのである。

アルヌスの街も拡大して聖下の時間も限られるので、余り長い時間は取れないが聖下は至極協力的だった。

そして鉄塊の如き鉾槍で稽古に付き合おうとしたので、流石に火威も躊躇う。

しかしこの先、生きていても栗林程の女を見つける事は不可能と言って良い。ならば死ぬ気で真剣による稽古でも……と思ったかどうかは知らないが、火威半蔵は防御魔法を重ね掛けして聖下との訓練に臨んだのである。

それを臆病と見るか、仕方のない事と見るかは火威を勇猛な戦士と見ていたかどうかで評価は変わってくる。

聖下の場合は「親に貰った命は一つしか無い」と言った温かみのある後者の評価だった。

何故、この慈母のような神が死神の二つ名を持つのか不思議なくらいだ。

 

*  *                            *  *

 

唐突だが、火威は再び金持ちになって家を建てた。火威にとってはエルベから帰って、これが一番か二番目に大きな出来事だ。

帝国正統政府から多額の報奨金を受け取ったのである。

内戦最後に皇帝が臥す寝所を、迫り来る数多くのハリョの刺客から守り抜いた事が理由だった。

数多くの刺客も帝国の兵ではあるから、それを(ないがし)ろにするのってどーなのよ、と思うところであるが、ハリョの刺客、または諜報部隊はゾルザルの私兵ということにされ、正統派帝国政府からは完全に別組織で敵とされてしまった。

私的な任務で皇城に赴いた火威が聞くところによると、内戦から立ち直り、財務が回復してきた帝国で、帝国の全権をピニャに譲った筈のモルトの強い意志が働いだのだという。

早い話しが、この世で大事な物は『愛と正義と義理とお金様』的な発想の火威を帝国の戦力として取り込もうとしているのだ。

能天気に見える火威でも、それと気付けば報奨金で10式戦車にジェットエンジンを積んだヤツを購入しようとか考えてても、そうも行かない。

最近になって隊員の士気を維持する為に、駐屯地施設の一部を改装し、日本からそれぞれの隊員が持ち込み読まなくなった書籍を集めて図書館を作るようになったが、そこにある本で見た航空自衛隊の主力であるF-15Jのジェットエンジンの一発だけでも、報奨金が吹き飛んで借金が出来そうな額だ。

ちなみに、10式戦車は配備当初から安くはなっているものの、一両買えば報奨金の半分以上が吹き飛ぶ値段である。

そうなると火威も考える。日本との行き来が出来るなら真っ先に銀行にでも貯金して、利子を生活費の一部に当てて栗林を目標に魂活(誤字でない)をするのだろうが、それが出来ない今の状況では報奨金の使い道にも困る。

しかし、大金を金庫も無い官舎に置いて、人の在らぬ心を誘ってしまいそうな事は、余りにも心ない業だ。

そこで火威は、アルヌスの丘の麓近くで地理的にも林や森が無く、乙種や丙種の害獣が潜伏しにくい場所に、巨大な家を建てることにした。

そこはジゼルが建てたハーディを奉る神殿、ジゼラの近くである。

「ったく、オレの神殿の近くにこんなデカい家建てるとはなぁ」

火威とて、わざわざジゼルと家の大きさを競う為にこの場所を選んだ訳では無い。

精霊が住む森や林の伐採は、管理者であるテュカからも、大元の組合からも許可を貰えなかったからだ。

理由も無く、好意を持たれている女神様の勘違いを引き起こすように、ご近所さんになる訳がない。

「やー、塞の目としての役割を果たすならこれくらいは必要かなと」

火威はこの家をアルヌス外から攻められた時、或は開門後、万が一にも日本側から外国勢力の進攻があった時の要塞としても位置付けている。

その為に、いざという時は隊員が立て篭もれるように銃眼を設けたり、備蓄用の倉庫もある。火威も住むのだから当然居住性もある。また、隊の活動の手助けになるんだから、開門後に防衛省が一部立て替えてくれると良いなぁ……なんて下心もあったりする。

更に、火威など霊格を持ったものが動かす事が前提だが、内部には魔動式の絡繰りを施す念の入れようである。

そしてアルヌスの街からそれほど離れてないのは、この家が街の宿を兼ねているからだ。特別国家公務員の火威は副業を持てないが、誰かを雇って宿の経営を任せても良いし、退官後は宿を経営しながら過ごしても良い。

だがあくまでも要塞としての機能を重視しているので、外から見ればちょっとした城である。石垣は無いが、一部の自衛官からは「坂の下の火威城」とか「坂の下の忍者屋敷」などと呼ばれている。

これは帝国のアルヌス駐在武官、ボーゼス・コ・パレスティーが富田二等陸曹と所帯を持ち、アルヌスの街から離れた駐屯地近くの場所に建てた屋敷を、アルヌスの人々が「坂の上の黄薔薇屋敷」と呼んでるのを真似たのだろう。

火威も一度見てきたが、自身の実家と比べてみると相当大きい。比較対象が間違っているのだが、個人が住む家にしては大き過ぎる気がした。だがカトーやレレイの話しでは、これでも帝国貴族が住む家にしては小さいのだと言う。

そして広い屋敷の中で、落ち着かない思いをするのは火威の方だった。今は国家公務員として安定した給料を得る立場になった火威だったが、根が貧乏人である。

地下一階、天守閣を入れれば地上四階建てで27LDKの忍者屋敷に一人寝泊りする火威は、早く同居人が欲しいと思う。

ジゼルに同棲でも持ち掛けるのが早そうだが、狙いはあくまでも栗林だ。この辺り、火威は全くブレることはない。

 

 

*  *                             *  *

 

 

火威を悩ます事柄はまだ有る。

以前、閉門直前の作戦中に健軍一佐が空自の神子田一佐から薔薇騎士団のお嬢様方との合コンを頼み込まれる事があった。

健軍は特地語を喋れない。親子程の年齢差があるヴィフィータと恋仲になり、努力はしているのだが「女の子を集めてくれ」なんて事を下手に言ったら誤解される。なので早々火威へ下請けに出したのだ。

その下請け先、間違ってますよ一佐……と、どれだけ言ってやろうと思ったか。

だが燃料も使わず気軽にイタリカや帝都まで行けるのは火威だけだし、「隊員の士気の保持」という海自の二等海佐が狭間に意見具申した事で、これが正式な任務になってしまった。

己の恐面フェイスでどうやって女性達に説明したものか、ツルツルの頭を使って思い描く。

薔薇騎士団の女性達に退かれるのは、翡翠宮やイタリカでの古代龍による被害めいた精霊魔法で敵に多大な出血を強いたのが原因かと思われたが、今にして思えば他にも敵を倒す方法は拙かった。

敵の戦意を挫くために、徒手で敵の首を捥ぎ取るなどしたが、夢に見た鬼人クリバヤシでもあるまいし味方側の人間でも退く戦い方は良くない。

だが健軍から依頼されただけで無く、隊の任務になった以上火威も上手く行くように考えなければならない。

 

「どーも、ピニャ殿下。絵画の具合はどうでしょ?」

RPGゲームに出てくる魔王の城のように大きな皇城で、火威は以前からの私的な任務である運搬の仕事をしていた。

何を運ぶのかと言えば、A4サイズの封書に入れられたケント紙を伊丹二尉に届けるだけの簡単な仕事だ。

「何時も悪いな。これだけの為に」

「いやいや、つい最近に帝都やイタリカに来る任務が発生しましたんで、構いませんよ」

「しかし、封書の中が解らんのでは気が引けるのでは無いか?」

火威もピニャの秘書のハミルトンから封筒の中身が絵画と言うだけの事しか聞いてないので、どういった絵画なのか気にはなっていた。だが渡すのがピニャで渡す先が伊丹だ。日本や特地派遣隊の害悪になるような物とは思えない。

「まぁ多少は気になりますが……」

「であろう。中を開けて見てみるが良い」

「殿下!」

傍に控えるハミルトンが一歩進んで声を上げる。やはり絵画に暗号でも隠されているのか? そう思った火威だが、ピニャは「良い」とハミルトンを声で制して続ける。

「世の中には様々な才能を持った者が居るが、実に羨ましいと思う。その者らが最初から【出来た】という訳では無いのだろうが、きっと練習の時から他の者が目を見張るものだったのだろう」

「うーん、そうですねぇ。俺みたいに起用貧乏だとある程度までは直ぐに出来るんですが、真の才能がある人はその先には大きな展望があるんでしょうねぇ」

言いながら、火威はペリペリと封書を開ける。

中に入っているのはケント紙だが、今のピニャの言葉もある。ちょっと嫌な予感がした火威は下腹部と口角に気合を入れてケント紙を出した。

火威が見たモノ、それはピニャが描いたであろう男同士が絡み合っている801系の絵だ。だが画力が(残念な意味で)画伯レベルだという事である。

次を見てみても、違う構図で男同士が絡み合うゲイ術の絵だ。正直、コレハ酷イ。

三枚目になるとデッサン力を付けるべく果物を書いた絵になっていた。しかし嘗てのレンジャー過程で食べた百足の唐揚げとこの絵の果物、どっちを食べるかと聞かれれば悩むレベルである。

「あ、あぁ……うん、ありますよね。デッサンする為にモデルを目に焼き付けたつもりでも、描くときになって像が霧散していくのとか……」

決して上手いとは言わない。そして801系の感想も言わない。火威の頭脳はここに来て冴えていたのか、エルベ藩国でサリメルに精神力を鍛えられたのかは解らない。

「その通りなのだ! 解ってくれるかっ?」

「えぇ、まぁちょっと」

「火威殿も絵を描いているのか?」

「昔、少し描きましたよ。ガン○ムとかド○えもんとか」

人間以外しか描かないと火威は言う。そしてドラ○もんはすぐに描けるが、○ンダムは昼から陽が欠け始めるまで掛かって漸く頭部しか描けない事を伝えた。伝えなかったのは決して人物は描かないことだ。ましてや801など描く訳がない。

「が‥がんだ○?」

「今度伊丹二尉に聞けば解りますよCDVレコーダーは電池無いから見れませんけど」

「うむ、了解した。して、イタリカや帝都で行う任務とは何であるか、聞かせて貰っても良いだろうか?」

火威の言葉を一言一句聞き逃さないピニャによって、もう一つの任務は大きく前進するのだった。




火威が今回から一軒家持ちになってますが、ストーリーに絡むことは余りないと思います。
で、度々言ってる気がしますが、二部は進みが遅いと思います。
っていうか今回猊下が出てきたのはほんの一部分ですが、猊下のターンです。ホントです。
ただちょっと本編でもヒロインし過ぎた感があるので控え目ですが、ジゼルのターンなのです。
まぁホラ、章のタイトルとかがあからさまに猊下だし。

そういや、さを先生の漫画版のヴィフィータはどんな感じになるんでしょうね。
ベルナーゴに行くから登場はまだまだ先なんでしょうが。

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